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モートン・ハルペリン氏が語る特定秘密保護法の問題点

 今晩(2014年5月11日)配信した「メルマガ金原No.1723」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
モートン・ハルペリン氏が語る特定秘密保護法の問題点

 米国からモートン・ハルペリン氏を招き、特定秘密保護法の問題点を考える国際シンポジウムを開くことが企画されているということを知って、「何となく聞きおぼえのある名前だな」と思ったのは、沖縄返還交渉に際し、佐藤栄作首相の「密使」を務めた京都産業大学教授(当時)の若泉敬氏(わかいずみけい・故人)を取り上げたNHKスペシャル「密使若
泉敬 沖縄返還の代償」(2010年)という番組を録画・視聴した際、若泉氏の交渉相手であった米国側担当者の1人としてハルペリン氏が登場していたからでした。
 この番組を視聴して心のこもった感想を書かれた池田香代子さんのブログ「無残なり日本外交 NHKスペシャル『密使若泉敬 沖縄返還の代償』」(2010年7月6日)の一部
を引用したいと思います(思えばこの頃、池田さんは熱心にブログを書かれていました)。
 
(抜粋引用開始)
まずは、日本外交の無残です。アメリカは、日本の非核三原則を最大限に利用し、沖
縄を「返還」することで、米軍基地を固定化し、より自由に使えるようにした。沖縄「返還」交渉は、アメリカの完勝だったのです。
軍事技術の進歩で、当時すでに核兵器はどこからでも撃てるようになりつつあり、いつも沖
縄に置いておく必要はなく、アメリカは撤去するつもりだった、けれどそれが困難なことのようにふるまって日本側の注意をそこにひきつけ、「有事核持ち込み」という、アメリカにとっては二義的な価値しかないことを密約というごたいそうな演出までほどこして日本に飲ませ、その裏で基地の固定化と自由使用を手に入れた、というのです。
佐藤首相(当時)の密使として、沖縄「返還」交渉にあたった若泉敬は、「返還」20年を記念してひらかれたシンポジウムでそのことを初めて知り、愕然とします。騙された、核問題は目くらましだったのだ、と。しかもアメリカ側の意図と交渉戦略を得々と発表したのは、若泉の交渉相手であり、アメリカ留学時からの友人でもあるハルペリンという人物でした。
(引用終わり)
 
 外交交渉に際し、自らに課されたミッションよりも「友情」を重んじなかったからといって、ハルペリン氏が非難されるいわれはありません。それは、若泉氏が自らの行為について「結果責任」を自覚し、最終的に「自死」を選んだとしてもです。
 なお、NHK「戦後史証言アーカイブス」で、モートン・ハルペリン氏に対する沖縄返還渉についてのインタビュー映像が公開されています(2013年6月5日収録)。
 
 ところで、今回ハルペリン氏が招聘されたのは、氏のその後の経歴、特に、オープン・ソサエティ研究所上級顧問として「ツワネ原則」の作成に関与されたからでしょう。
 5月9日のシンポジウム・チラシに書かれたハルペリン氏略歴を引用します。
 
(引用開始)
アメリカ合衆国の政治学者。専門は、外交政策論、核戦略論。現在、外交問題評議
会上級フェローおよびオープン・ソサエティ研究所上級顧問。ジョンソン政権で国防次官補代理、ニクソン政権で国家安全保障会議NSC)メンバー、クリントン政権で大統領特別顧問、国家安全保障会議メンバー、国務省政策企画本部長を歴任。その後、「アメリカ市民の自由協会」ワシントン DC 支部長を務める。
(引用終わり)
 
 来日されたハルペリン氏は、連日精力的に各所で発言されています。「STOP!秘密護法」サイトに掲載された「実行委(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会)の活動報告」のページに順次レポートが掲載されています。
 
 事前に海渡雄一弁護士から予告された来日スケジュールに基づき、見つかった映像をリンクしておきます。
 
①【2014年5月8日(木)12:00~ 衆議院第1議員会館国際会議室】
超党派議員と市民の秘密保護法学習会
基調講演「秘密保護法と国際人権基準(ツワネ原則)」
 
 IWJアーカイブ映像がありました。但し、会員限定配信です。
 
2014/05/08 元NSC高官が秘密保護法を痛烈批判「ツワネ原則から逸脱するのであれば日本政府は説明を」
 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/138696
 
②【2014年5月9日(金)10:00~ 議員会館
柳沢協二氏との対談セッション(主催:憲法自衛隊の活用を考える会)
 
 映像はまだ発見できていません。
 
③【2014年5月9日(金)13:00~ 】
日本外国特派員協会記者会見
 
 ビデオニュース・ドットコムのニュースコメンタリー(神保哲生さん、宮台真司さん)の中で一部紹介されています。
 
厳密な運用基準を施行令に入れるべき:モートン・ハルペリン氏が講演
 
④【2014年5月9日(金)15:00~ 】
日本記者クラブ記者会見
 
 日本記者クラブ公式チャンネルにアップされるはずですが、残念ながらまだのようです。
 代わりに共同ニュースの短い映像をご紹介しておきます。
 
自衛権、周辺国にも配慮を 元米高官、丁寧な論議促す
 
⑤【2014年5月9日(金) 全電通会館 多目的ホール
秘密保護法の廃止を求める国際シンポジウム(実行委員会主催)
 
20140509 UPLAN M・ハルペリン 秘密保護法の廃止を求める国際シンポジウム
 
IWJ 2014/05/09 元NSC高官ハルペリン氏が証言「沖縄密約、米国はむしろ公開したかった。返還費用が米国負担でないことを米国民に説明できるからだ」~秘密保護法シンポジウムで
 
⑥【2014年5月10日(日) 弁護士会館 2Fクレオ
秘密保護法国際シンポジウム-米安全保障専門家が語る知る権利と秘密保護のあ
り方ー(主催:日本弁護士連合会)
 
 複数の映像が公開されていますが、音声レベルの点から、ビオニュース・ドットコムによる映像を推奨します。
 
PART1 モートン・ハルペリン氏講演
PART2 ハルペリン氏と西山太吉氏(元毎日新聞記者)との対談
 
 他に以下の映像もあります。
 
20140510 UPLAN 【前半】(ハルペリン氏講演)
20140510 UPLAN 【前半】(ハルペリン氏、西山太吉氏対談)
 
⑦【2014年5月11日(日)13:30~ 名古屋学院大学 白鳥学舎翼館クラインホール】
講演会「秘密保護法と国際人権基準・ツワネ原則」(主催:名古屋学院大学平和学
研究会)
 
IWJ 2014/05/11 【愛知】元米NSC高官 モートン・ハルペリン氏講演会「秘密
保護法と国際人権基準・ツワネ原則」(動画)
 
 今日(11日)の名古屋講演が最終のようですが、それにしても短期間にこれだけのスケジュールをよく受け入れてくれたものだなと感心します。
 映像については、(私を含めて)全部視聴するような時間はとてもないと思いますので、
(自分の直感を信じて)最も興味深く視聴できそうな映像を選んで視てくださることをお勧めします。
 現在、最大の政治課題となっている「集団的自衛権」とも密接に関連する秘密保護法制の問題点について、「日本国外からの一つの視点」として受け止めるべき貴重な発言だと思います。
 
(参考サイト)
特定秘密の保護に関する法律
ツワネ原則(英語正文)

  http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf