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(増補版)日本記者クラブ・研究会の映像で考える“集団的自衛権”(北岡伸一氏、阪田雅裕氏、柳澤協二氏、長谷部恭男氏)

 今晩(2014年5月16日)配信した「メルマガ金原No.1728」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
(増補版)日本記者クラブ・研究会の映像で考える“集団的自衛権”(北岡伸一氏、阪田雅裕氏、柳澤協二氏、長谷部恭男氏)
 
 昨日(5月15日)、安保法制懇「報告書」が提出され、夕刻jからの記者会見において、安倍晋三首相が集団的自衛権行使のための憲法解釈変更に踏み出す意思をいよいよ明らかにしました。
 ちなみに、この記者会見での、安倍首相のあまりと言えばあまりな、論理性のかけらもない情緒的な発言の数々に胸が悪くなった日本人がさぞ多かったことでしょう。
 他方、この首相の会見に恍惚として聞き入る日本人も少なくなかったであろうということにも留意する必要があるでしょう。
 
 さて、今日お届けするメルマガ(ブログ)は、去る3月20日に配信した「日本記者クラブ・研究会の映像で考える“集団的自衛権”(北岡伸一氏、阪田雅裕氏、柳澤協二氏)」の増補版です。
 「増補」というのは、配信後の3月28日に4人目のゲストスピーカーとして、著名な憲法学研究者である長谷部恭男氏(はせべ・やすお/会見当日は東大教授でしたが、4月から早稲田大学に移られました)が招かれて話をされており、かなり専門的な内容であり、はじめはとっつきにくいかもしれませんが、集団的自衛権憲法学の観点から理解するための非常に貴重な視座を提供してくれており、これは是非とも皆さんにも視聴していただきたいと思い、あわせて、先行する3人のスピーカーの発言ももう一度振り返ってみたいと思ったため、増補版としてお送りすることにしたものです。
 
 なお、北岡伸一氏、阪田雅弘氏、柳澤協二氏の会見をご紹介した3月20日の文章はそのまま残し、その後に長谷部恭男氏の会見の模様を付加することにしました。
 

 日本記者クラブは、特定のテーマを設定し、そのテーマをめぐって様々な立場のゲストスピーカーを招く「研究会」をシリーズで開催することがあります。
 そして、現在、最も重要な政治課題の1つである「集団的自衛権を考える」「研究会」が企画され、既に3回実施されています。
 さすがは日本記者クラブだけあって、集団的自衛権行使容認派、反対派の代表的な論客が登場しており、じっくりと視聴する価値はあると思いますので、まとめてご紹介することとしました。
 
2014年2月21日 
北岡伸一氏(国際大学長、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会座長
代理)
 
https://www.youtube.com/watch?v=M46m4ZEu8Sk
(記者による会見リポート・引用開始)
集団的自衛権の行使 「5つの要件」を課して
集団的自衛権の行使を可能にする政府の憲法解釈の見直しは、日本の安全保障政策の方向性を定める大きな一歩となる。これまで、常に議論をリードしてきた北岡氏を「ミスター集団的自衛権」と紹介したところ、「行使には慎重であるべき。憲法解釈の見
直しは、普通の平和国家を目指すささやかな数歩です」との返事が戻ってきた。
政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長代理として、「理解を得るためなら、どこへでも説明に行きますよ」と低姿勢だが、会見前には、「揚げ足ばかり取られる」との本音も......。
見直し反対派が持ち出す「いつか来た道」論については、「戦前の日本は、地理的膨張
への欲求が強く、周辺国や国際社会を軽視し、言論の自由もなかった。いまの日本には何ひとつ当てはまらない」と切り捨て、「それが当てはまるのは、別の国ではないですか」との解釈までつけた。どこの国を指しているのか、会場に詰めかけた誰もがすぐさま思い
浮かんだようだ。
会見は終始一貫して、行使には慎重で抑制的であるべきとの立場だった。密接な関係
国への攻撃、日本の安全に大きな影響、当該国からの明確な要請など、行使には5
つの要件を課すべきだと言い切る。
安全保障論議はイデオロギー対立に陥りやすく、相手の意見に聞く耳を持たないと言わ
れる。それを払拭するには、今回が最後のチャンスかもしれないと感じた。
企画委員 読売新聞調査研究本部主任研究員 勝股秀通
(引用終わり)

2014年3月6日
阪田雅裕氏(元内閣法制局長官、弁護士)
 
https://www.youtube.com/watch?v=DeMGZet7t2o
(記者による会見リポート・引用開始)
「法の番人」としての矜持 行使容認の動きに厳しく警鐘
司会者の冒頭発言のように、内閣法制局がこれほどまで世間の耳目を集めたことは、かつてなかったのではないか。きっかけは「集団的自衛権の行使」容認を目指す安倍晋三首相の再登板だ。
政府は集団的自衛権について、有しているが、憲法上行使できないとの解釈を長年、堅持してきた。その役割を担ったのが内閣法制局である。
安倍首相にはそれが面白くないらしい。法制局長官に行使容認派とされる元外務官僚を起用し、私的諮問機関に行使容認に向けた報告書を作らせるなど、「解釈改
憲」に向けた動きを着々と進めている。法制局にはかつてない圧力だろう。
阪田氏は、行使が認められれば「自衛隊が海外で外国の人を傷つけることも起こり得る」と警鐘を鳴らし、憲法解釈の変更についても「一内閣の判断で変えていいのか」
「国の大-事な政策転換であり、本当に必要なら、憲法改正手続きをして国民投票賛否を問うべきだ」と手厳しい。
法制局を「吹けば飛ぶような役所」と謙遜した阪田氏だが、会見での毅然とした発言は「法律の専門家集団」としての矜持を失わないようにとの、後輩へのエールにも聞こえた。
東京新聞中日新聞論説委員 豊田洋一
(引用終わり)

2014年3月14日
柳澤協二氏(元内閣官房副長官補、国際地政学研究所理事長)
 
https://www.youtube.com/watch?v=lVb4Ul2dOEg
(記者による会見リポート・引用開始)
徹底した政権批判で行使反対訴える
集団的自衛権の行使を可能にする政府の憲法解釈の見直しについて「憲法改正の手続きを踏まなければ、脱法行為になる」と述べるなど、反対の立場から持論を展開した。解釈変更ではなく「個別的自衛権の延長でできる理屈はいくらでもある」
と指摘。
「拡大解釈でかえって危険だ」との批判には「日本が攻撃されたら、という論理のなかで説明できる」と反論した。
用意したレジュメに「日本がとるべき道」として、「抑止だけが戦略ではない。説得・妥協も立派な戦略」と記したが、会場からは「『中国がとるべき道』に直してほしい」との声も出た。
会見冒頭に「実は(昨年末の)安倍晋三首相の靖国参拝で切れちゃったんです」と発言するなど徹底した政権批判を展開。現役時代は慎重に発言する官僚とみられていたが、退官するとここまで言いたい放題になるのかという印象を受けた。
「後輩からは『困った先輩』と言われている」と質問されると「昭和45(1970)年の
防衛庁(当時)入庁以来、集団的自衛権の行使に反対する立場は一貫している」
と強調。もっとも「気がついたら一番左にいるような立場になった」と漏らした。
産経新聞政治部長 有元隆志
(引用終わり)
 
 会見リポートを書いた記者が、北岡伸一氏については読売新聞、阪田雅裕氏については東京新聞中日新聞であったのは、いかにもということで別段違和感はないのですが、柳澤さんについてのリポートを産経新聞政治部長に書かせるというのは、何らかの「悪意」があるのでは?と、つい勘ぐりたくなるほど、この有元隆志という人の書いた文章は下品ですね。皆さん、絶対「真似」はしないように。

 阪田さんや柳澤さんの主張は、これまでもたびたびご紹介してきましたが、北岡伸一安保法制懇座長代理の映像のご紹介は初めてだろうと思います。
 先日の参議院予算委員会公聴会で阪田雅裕氏とともに公述人として意見陳述した西修駒澤大学名誉教授の発言を視聴した時にも感じたことですが、この人たちは、憲法解釈を変えようとしているのではない。そうではなくて、「安全保障」を「憲法」の上位に置き、自分たちが(安倍晋三のような人間が?)勝手に「国の安全を守るために必要」と判断すれば、憲法を黙らせることが正当化される、と言っているのだということがよく分かります。
 その点を確認したい人は、北岡氏映像の43分以降を是非ご覧ください。
 

(増補)
2014年3月28日
長谷部恭男氏(東京大学教授(当時)、早稲田大学法学学術院教授(現))

 
https://www.youtube.com/watch?v=-fZb8XJd2F0
(記者による会見リポート・引用開始)
安倍流解釈改憲は「自己破壊的」と警告
憲法原理は国家の生き死にに関わることなので、そうそう変えてはいけない」。最も言いたかったのはここだろう。
安倍政権が推し進める集団的自衛権行使容認の問題点を、難解な語り口なが
ら鋭く批判し-た。
憲法解釈の変更で何が得られるのか。「その時々の政府の判断で憲法解釈が変
えられるようになれば、後の政府の判断で元に戻るかもしれない」
そうした不安定さを「自己破壊的」と呼び、「政府の憲法解釈全体の将来を危うく
しかねない」と警告した。批判は自民党首脳が最高裁の砂川判決をもとに言い出した「限定容認論」にも及ぶ。「素直にみれば、判決は個別的自衛権の話を
したもの」とあっさり切り捨てた。
矛先は安倍政権の安全保障政策にも。「自由で民主的な政治体制という普遍
的価値を米国と守るのが肝心。日本がナショナリズムにかじを切れば、米国との
信頼関係を損なう。何のための集団的自衛権なのか」と疑問を呈した。
昨年の国会で特定秘密保護法に賛成の意見を述べた長谷部氏だが、こと安倍流の解釈改憲に関する限り舌鋒は容赦なく、痛快でさえあった。
朝日新聞専門記者(防衛問題)
谷田 邦一
(引用終わり)
 
 特定秘密保護法についてはがっかりさせられた長谷部氏ですが、集団的自衛権についての様々な論点を説き明かしていく手際は、さすが一流の憲法学者の名に恥じないものだと思いました。
 そして、安保法制懇のメンバーには、このようなレベルの学者が1人もいなかったということをあらためて確認することになりました。
 ちなみに、長谷部教授は、「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人の1人でもあります。

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