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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

半田滋氏『日本は戦争をするのか―集団的自衛権と自衛隊』(岩波新書)を読む

 今晩(2014年5月24日)配信した「メルマガ金原No.1736」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
半田滋氏『日本は戦争をするのか―集団的自衛権自衛隊』(岩波新書)を読む
 
 半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)の最新の著書『日本は戦争をするのか―集団的自衛権自衛隊』(岩波新書/2014年5月20日刊)を読了しました。
 書評というような大層なものを書く能力はありませんので、簡単な読後感と内容紹介を記し、多くの人が手にとっていただく一助になればと思います。


 まず、出版元(岩波書店)サイトに掲載された案内記事の中から詳細目次を引用します。これによって、どのような事柄が論じられているのか、おおよそ推測していただけると思いますので。
 
■目次
はじめに
第1章 不安定要因になった安倍首相

 靖国参拝の波紋
 在日米軍の奇妙な動き
 「オバマに嫌われている」
 フェイスブックで元官僚を批判
 「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れた……」
 解釈改憲狙った内閣法制局人事
 首相による「クーデター」
第2章 法治国家から人治国家へ
 「最高の責任者は私だ」
 米艦艇を集団的自衛権で守る
 集団的自衛権こそが戦争の口実
 「国家安全保障基本法」で空文化される憲法
 アジアを引き込む軍拡競争
第3章 安保法制懇のトリック
 「間違っている」と憲法を珍解釈
 首相が示した四類型
 「北朝鮮が米国を攻撃」とあおる首相
 米軍とともに海外で武力行使
 「駆けつけ警護」も解禁
 途上国の列に割り込む日本
 他国の武力行使と一体化
 首相が生みの親「積極的平和主義」
 多国籍軍参加への模索
第4章 「積極的平和主義」の罠
 武器提供決めた日本版NSC
 ミサイル防衛が原点、特定秘密保護法
 ウソで塗り固められたイラク派遣
 「積極的」だらけ、「国家安全保障戦略」
 陸上自衛隊海兵隊になるのか
第5章 集団的自衛権の危険性
 憲法違反を避け続けた歴史
 行使解禁求める「ジャパン・ハンドラー」
 米政府は「歓迎」を表明した
 原点は北朝鮮のNPT脱退
 極秘の「K半島事態対処計画」
 自衛隊が見積もる北朝鮮との戦闘
 押し寄せる難民
 自衛隊北朝鮮攻撃を検討した
 米国の要請に応える周辺事態法
 自衛隊北朝鮮対処の演習
第6章 逆シビリアンコントロール
 「人助け」目指して自衛隊
 「オールジャパン」の南スーダンPKO
 米国の「名代」担うソマリア沖の海賊対処
 モンゴル、ベトナムから高級将校
 政治家を動かした海上自衛隊
 裏工作の裏側
 「愛国心」問う自衛隊幹部学校
おわりに

 はじめにお断りしておくべきことは(私が「お断り」する立場でもないのですが)、ほとんど緊急出版と言っても良いような短期間で書き上げたということなので、「どこかで読んだことがある文章だな」と過去の半田さんの著書を思い出す箇所も何カ所かあったりするのですが、それは仕方がないですよね。

 それから、5月15日に提出された安保法制懇「報告書」及びそれを受けての安倍首相の同日記者会見という、半田さんにしてみれば突っ込みどころ満載の最新「素材」は、もちろん時期的に本書には取り込まれていません。
 この新鮮な「素材」については、5月17日から、東京新聞紙上に「半田滋編集委員のまるわかり・集団的自衛権」というQ&Aスタイルでの連載が始まっており、こちらの方で健筆をふるわれています。これまでに掲載された分で取り上げられたテーマは以下のとおりです。
 
「半田滋編集委員のまるわかり・集団的自衛権
第1回(5月17日) どんな権利なのか 他国へのケンカ買う 
第2回(5月18日) 邦人運ぶ米艦船防護 自力輸送の計画無視
第3回(5月19日) 集団安全保障 多国籍軍 離脱は困難
第4回(5月20日) 米艦艇防護 合理性欠き非現実的
第5回(5月23日) 米への弾道ミサイル 迎撃不能 想定に無理
第6回(5月24日) 武器輸送船の阻止 船舶検査 今でも可能
第7回(5月25日) 朝鮮半島有事 米国の出動要請 確実
第8回(5月26日) 攻撃受ける米想定 相互防衛 首相の理想  
第9回(5月28日) 外国海域での機雷除去 派遣は停戦後で十分
第10回(5月30日) 冷戦が生みの親 米ソ同盟国囲い込み
第11回(6月1日) 過去の14事例 大国が侵攻の口実に
第12回(6月2日) 5項目の発動要件 実質 歯止めにならず
第13回(6月3日) グレーゾーン事態 攻撃の口実生む恐れ
第14回(6月6日) グレーゾーン事態 潜水艦警告 武力不要
第15回(6月8日) 駆け付け警護 PKOの任務を逸脱
第16回(6月10日) 武力行使の一体化 補給部隊も攻撃対象
第17回(6月11日) 多国籍軍への支援 武力行使 避けられず 
第18回(6月12日) 日米ガイドライン改定 負担増 追従くっきり
第19回(6月15日) 限定的な容認 戦闘拡大止められず
第20回(6月17日) 朝鮮半島有事なら 日本自ら介入の事態 
特別編(6月28日) 限定容認のトリック 報復されるのは必至
特別編(7月3日) 他国のための武力『先制攻撃』

 いずれこの連載が終了次第、(分量にもよりますが)新書かブックレットとしてどこかの出版社から緊急出版して欲しいなと期待しています。
※7月25日、旬報社から『Q&Aまるわかり集団的自衛権』のタイトルでの刊行が予告されています。 

 さて、『日本は戦争をするのか』です。サブタイトルに『集団的自衛権自衛隊』とあるとおり、憲法解釈の変更によって強引に集団的自衛権行使容認に突き進む安倍政権の行き着く先に、戦争の当事者となって「殺し、殺される」自衛隊の姿を見据え、何としてもそのような悪夢が現実とならないように全力を尽くしたいという思いで書かれた著書だと思います。
 
 半田さん自身、「はじめに」の末尾において、この本の内容を自ら次のように要約しています。
 
(引用開始)
 本書は、安倍政権憲法九条を空文化して「戦争ができる国づくり」を進める様子を具体的に分析している。法律の素人を集めて懇談会を立ち上げ、提出される報告書をもとに
内閣が憲法解釈を変えるという「立憲主義の破壊」も分かりやすく解説した。
 憲法解釈が変更され、集団的自衛権が行使容認となれば、将来、起こるかもしれない
「第二次朝鮮戦争」で何が起こるのかを自衛隊の極秘文書を基に詳細に記した。米国から「強固な国粋主義者」と呼ばれる首相の驕り、勘違いの数々と、憲法の枠内で頑張る自衛隊の活動との落差も知ってほしい。自衛隊の中に潜む、首相と共通する心情が目覚
めかねない危険も書き込んでいる。
(引用終わり)
 
 先に引用した詳細目次と上記の半田さんの「はじめに」によって、本書の内容と狙いはほぼご理解いただけることと思いますので、私が同じことを繰り返す必要もないでしょう。
 ただ、私が通読して一番胸に引っかかったのは、半田さんが最後に書かれた「自衛隊の中に潜む、首相と共通する心情が目覚めかねない危険も書き込んでいる」という部分です。

 最終章(第6章 逆シビリアンコントロール)の最後の部分に「『愛国心』問う自衛隊幹部学校」という項目を設け、「自衛隊の教育は『現場任せ』である。過去の侵略戦争を正当化し、今の憲法は不自由だと不満をいう防大出身の幹部は少なくない。安倍首相の主張と幹部自衛官たちの考えに共通項が多いのだとすれば、憲法解釈を変更し、海外で武力
行使することに共鳴する幹部が出てきたとしてもおかしくない」とあえて警鐘を鳴らしたのは、半田さんの危機感の深さからでしょう。

 私は、去る4月25日に和歌山市で講演された後の懇親会で直接半田さんから伺った言葉をブログでご紹介しましたが、それはこういう言葉でした(参照「半田滋さんの講演から学んだこと(付・半田滋さんの論説『首相の奇妙な状況認識』を読む」)。
  
「私は自衛隊が好きなんです。だから、彼らを無駄に犠牲にしたくないんです」
 
 そうであればこそ、自衛隊自身に内在する危険性にも言及しない訳にはいかないと考えられたのだと思います。
 「集団的自衛権自衛隊」という問題を考えるにあたっては、日本において「シビリアンコントロール」がどのように機能しているのか(していないのか)という側面から光を当てることの重要性を本書によって気づかせてもらったことが、私にとって最大の収穫でした。
 また、類書をあまり読んだことのない方にとっては、安倍首相や安保法制懇の主張のでたらめぶりを明快に解説してくれる書籍でもあり、その関心の所在によって、様々な読み取り方が出来ますので、是非、多くの方に手にとってお読みいただきたいと思います。
 
(付記)
 一昨日のメルマガ(ブログ)にも書きましたが(参照「柳澤協二さんの「安保法制懇報告書と安倍総理記者会見 徹底批判」(5/19)」)、来る6月7日(土)、「自衛隊を活かす-21世紀の憲法と防衛を考える会」が発足し、その第1回シンポに半田滋さんも登壇されて「スライド:21世紀の海外自衛隊のリアル」という報告をされるようです。
 半田さんは、『日本は戦争をするのか―集団的自衛権自衛隊』の最終章末尾において、先ほど引用した部分に引き続き、以下のように書かれています。

自衛隊が暴走せず、むしろ自重しているように見えるのは、歴代の自民党政権が自衛隊の活動に憲法九条のタガをはめてきたからである。その結果、国内外の活動は「人助け」「国づくり」に限定され、高評価を積み上げてきた。政府見解が変われば、自衛隊変わる。冷戦後、国内外の活動を通じて力を蓄えた自衛隊を活かすも殺すも政治次第である」(198頁)
 
 このような問題意識に共感する立場から、「自衛隊を活かす-21世紀の憲法と防衛を考える会」には注目したいと思っています。3人の呼びかけ人、柳澤協二さん(代表)、伊勢﨑賢治さん、加藤朗さんの連名で公開されている「設立趣旨書」を是非ご一読ください。

(追加映像)
 去る2014年5月28日、「集団的自衛権を考える超党派の議員と市民の勉強会」が半田滋さんを(3月に次いで)再び招き、お話していただいています。28分程度と視聴するにも手頃な時間であり、とても分かりやすいです。
 また、話の要点は、IWJの原佑介記者が要領良くまとめてくれています。