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ドキュメンタリー映画『A2-B-C』順次公開中

 

 今晩(2014年5月26日)配信した「メルマガ金原No.1738」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ドキュメンタリー映画『A2-B-C』順次公開中
 
 「A2」「B」「C」というアルファベットと数字を眺めて、すぐにこれが何を意味するものか分かる人がどれだけいるでしょうか?
 療育手帳の等級は都道府県が独自に定めていますので、これに似たところがひょっとする
あるかもしれませんね。
 けれども、福島県で子どもさんがいる家庭であれば、これが何を意味するかは直ちに分か
るはずです。
 
(引用開始)
A判定
(A1)
結節又はのう胞を認めなかったもの。
(A2)結節(5.0㎜以下)又はのう胞(20.0㎜以下)を認めたもの。
B判定 結節(5.1㎜以上)又はのう胞(20.1㎜以上)を認めたもの。なお、A2の判定内容
あっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した場合は、B判定としている。
C判定 甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの。
(引用終わり)
 
 以上は、「福島県ホームページ」→「県民健康調査について」→「甲状腺検査について」→「概要について」でたどり着いたページからの引用です。
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65918.pdf
 
 そこからさらにたどると「県民健康調査『甲状腺検査』の実施状況について」という、平成25年度末までの集計データがまとめられてるページに行き着きます。
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65174.pdf
 その集計結果には、「細胞診結果(平成26年3月31日現在)」として、以下のようなデー
タが掲載されています。
 
(引用開始)
平成 23-25 年度合計
・悪性ないし悪性疑い 90 人(手術 51 人:良性結節 1 人、乳頭癌 49 人、低分化癌
疑い 1 人)
・男性:女性 32 人:58 人
・平均年齢 16.9±2.7 歳 (8-21 歳)、震災当時 14.7±2.7 歳(6-18 歳)
・平均腫瘍径 14.2±7.4 ㎜(5.1-40.5 ㎜)
(引用終わり)
 
 データはあくまで数字の羅列ですが、これらの数字の背後には、その元になった1人1人の子どもたちやそのご両親、祖父母、兄弟などがいるのだということを思うだけでも胸が苦しくなってきませんか?
 
 私自身、予告編を観ただけであり、5月10日から公開が始まったばかりの映画『A2-B-C』をメルマガ(ブログ)でご紹介しようと思ったのは、この作品のタイトル(もちろん、甲状腺検査の判定等級です)に込めた監督の思いを、実際の作品で是非確かめたいと思ったからです。
 
 まず予告編をご覧ください。
 
 
 映画公式サイト( http://www.a2-b-c.com/index.html )から、抜粋して引用します。
 
(引用開始)
イントロダクション
2011年3月11日 東日本大震災による福島原発事故発生その11日後、日本在住のドキュメンタリー監督イアン・トーマス・アッシュは、福島の取材
を決意する。
(略)
まるで家族のポートレートを撮るかのように愛情をもって、原発事故以降の福島を撮り続
けるアッシュ。
テレビでは報道されない福島の厳しい現実と、福島に住む人々の切実な訴えが、カメラ
を通して静かに映し出される―。
果たして、子どもたちの未来は安全なのか?
それでも、私たちは、何も起こっていないと見過ごすことができるのか―。
監督紹介
イアン・トーマス・アッシュ(Ian Thomas Ash)
1975年生まれ。
アメリカ・ニューヨーク州出身。
初めて撮った長編ドキュメンタリー「the ballad of vicki and jake」(2006年)が、スイス
で開催されるドキュメンタリー映画祭 Nyon Visions du Reel でグランプリを受賞。2000年に英語教師として来日して以来、日本滞在歴は13年にも及ぶ。(後略)
(引用終わり)
 
 レーバーネット日本に、堀切さとみさんがこの映画を観た上での感想を書いておられますのでご紹介します。
 
覚悟する福島の母親たちの怒り~ドキュメンタリー映画『A2-B-C』
 http://www.labornetjp.org/news/2014/0525eiga
(引用開始)
 5月24日、ポレポレ東中野でドキュメンタリー映画『A2-B-C』を観た。最高。福島の
現実を知るにはこの映画が一番だと思った。
 10年前から映画制作をしているイアン・トーマス・アッシュ監督(日本在住の米国人)
は、「こういう映画を撮りたいと思っていたわけではないし、福島に行きたいとも思っていなかった」「ただ福島の母親たちの怒りに心が動いた。母親たちの声だけでいい」と、ナレーションも音楽も一切なしで70分にまとめた。カメラの前で「私はA2(甲状腺にのう胞あり)」と言う女子高生。「ここは放射能があるから近づいちゃダメ」と促す少年たち。子どもたちは現実を見据えていた。
(略)
 上映後、松江哲明氏とスカイプをつないでイアン監督が対談。監督は「何かをせずに
はいられないと、映画を観て感じてほしい。すべて国が悪いというのは簡単すぎる」。松江氏は「ポレポレにこの映画を観に来る人は既にわかっている人たち。本当に観に来なくちゃいけない人は、あえて観に来ないのだろう。この温度差を縮めたい」。この、知りたい人と避ける人との格差を縮めたのが『美味しんぼ』だったのかもしれない。だからこそあれだけ紛糾したのか。
 イアン監督は言う。映画の中では力強く語っている人たちの中にも、現在は話すこと
を怖がっている空気があると。同感だ。怒りや疑問や不安を口にするだけで変人扱いされてしまうんだから、それに抗うのは大変なことだろう。この不自由さとの闘いが、今後も撮り続けるにあたってのテーマだという。それは撮影者だけでなく、被写体となる人々の課題でもあるだろう。風化させないために、何が出来るか考え続けたい。(ドキュメンタリー映画『原発の町を追われて』制作者)
(引用終わり)
 
 堀切さんの書かれた「知りたい人と避ける人との格差を縮めたのが『美味しんぼ』だったのかもしれない。だからこそあれだけ紛糾したのか」には思わず頷ずいてしまいました。
 
 もっとも、本当に観せたい人に映画『A2-B-C』を観てもらうことが不可能と決まったものでもないでしょう。それは、かなりの程度、私たちの努力にかかっているのだと思います。
 その意味からも、昨日、メルマガ金原の臨時増刊号でお伝えした椎名千恵子さんを迎えて開催される「福島の現状と課題について」(5月31日(土)14時30分~/和歌山市河北コミセン1階和室)に参加可能な方は、是非1人でも2人でも周りの方に声をかけて足をお運びいただければと思います。
 
椎名千恵子さんを迎えて(5/31@和歌山市河北コミセン)
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888-3745ta/archives/38310337.html