今晩(2014年5月29日)配信した「メルマガ金原No.1741」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
「商社九条の会・東京」という団体があります。
ホームページに掲載された「アピール」によれば、2006年7月に結成されたようです。
私が数ある「9条の会」の中でも特に「商社九条の会・東京」に注目してきたのは、東京という地の利に恵まれているということもあってか、定期的に開催する講演会や学習会の講師陣が実に豪華であるということの他に、それらの講演録が、いずれ反訳の上、講演者自身による校訂を経て、ホームページ上にアップされているからです。
今でこそ、講演の内容は、早ければその日のうちに YouTube や USTREAM にアップされることも珍しくなく、それはそれで非常に有益でらることは言うまでもありません。「商社九条の会・東京」のように、時間と費用を惜しまず講演録を作成するのは時勢に遅れているのかもしれません。けれども、これだけ膨大な映像がネット上で氾濫する中、じっくりと手をかけて作成された講演録の価値は、かえって輝きを増しているように思われます。
今でこそ、講演の内容は、早ければその日のうちに YouTube や USTREAM にアップされることも珍しくなく、それはそれで非常に有益でらることは言うまでもありません。「商社九条の会・東京」のように、時間と費用を惜しまず講演録を作成するのは時勢に遅れているのかもしれません。けれども、これだけ膨大な映像がネット上で氾濫する中、じっくりと手をかけて作成された講演録の価値は、かえって輝きを増しているように思われます。
【講演記録集】
【学習会記録集】
どうでしょう?各地の「9条の会」で講演会の企画を考える立場にある者にとっては、まさに「垂涎の的」と言うべき豪華講師陣が綺羅星のごとく並んでいるでしょう?
ざっと数え上げてみると、天木直人さん、品川正治さん、辻井喬さん、小池清彦さん、保阪正康さん、澤地久枝さん、伊勢﨑賢治さん、伊藤真さん、米倉斉加年さん、浜矩子さん、高遠菜穂子さん、中村哲さん、小出裕章さん(講演録はアップされていませんが)、山田朗さん、宇都宮健児さん(以上「講演」)、西山太吉さん、アーサー・ビナードさん、小倉志郎さん(以上「学習会」)というのですから。
そのような中で、今日特にご紹介しようと考えたのは、2013年3月17日に開催された山田朗明治大学文学部教授による講演会の記録なのです。
山田朗教授の専攻は、講演録の冒頭、講師紹介によれば、日本近・現代史、軍事史、天皇制論、歴史教育論ということですが、この日の講演は、サブタイトルでは「1930年代と現代を比較する」となっていましたが、その前史としての日清戦争、日露戦争当時から説き起こし、政党内閣崩壊への過程を跡づけておられます。
もとより、限られた時間での講演ですから、網羅的な解説にならないことは言うまでもありませんが、注目すべきポイントがどこにあったかを知り、より深く学ぶための取っかかりとして非常に有益だと思いました。
例えば、改憲派がしばしば言挙げする「領土問題」について、「紛糾の原因は講和条約の不備」と喝破される部分(17~19頁)は是非お読みいただきたいですね。
また、講演終了後の会場からの書面質問に対する回答の部分が分かりやすくてためになります。その中から、今後の日本の進路を考える上で非常に示唆に富む回答を1つご紹介します。
もとより、限られた時間での講演ですから、網羅的な解説にならないことは言うまでもありませんが、注目すべきポイントがどこにあったかを知り、より深く学ぶための取っかかりとして非常に有益だと思いました。
例えば、改憲派がしばしば言挙げする「領土問題」について、「紛糾の原因は講和条約の不備」と喝破される部分(17~19頁)は是非お読みいただきたいですね。
また、講演終了後の会場からの書面質問に対する回答の部分が分かりやすくてためになります。その中から、今後の日本の進路を考える上で非常に示唆に富む回答を1つご紹介します。
(引用開始)
回答その5 軍事同盟からの脱却
別に大国に同調する必要はないのですけれども、大国の論理というのを私たちがあらかじめ知っておいて、それで対応策を講じないといけない。小国同士あまり世界的な影響力を持たない国同士の交渉と、やはり世界的に一定の影響力を持っている大国を相手にした場合とは違う。
日本は近代の150~160年の歴史の中で大国相手の外交をずっとやってきたのですけれども、さっきも言いましたように基本的に一番強いところと軍事同盟を結ぶ、その手下になる(笑)、そういう外交をずっとやってきたものですから、対等外交というのはほとんどやった事がない。日本は外交下手だとよく言われるのは、それまで強い国の威を借りて大体行動してきたわけで、自前の論理というのがあまりなくて、俺の後ろには強いのが付いているぞということでだいたいやってきた。それは結構長い伝統になっているのですけれども、やはりそれだけではだめなのです。
確かに軍事同盟というのは今世界の中で少なくはなっているけれども、一定の影響力持っていることは確かなのです。ずっと日本は軍事同盟に依存した外交関係ということでやってきたので、なかなか自前で何か物事を発想するとか、そういう交渉をするとか、なかなかカードが切れない状態になっちゃっている。
これはやはり結局はそこを脱しないとなかなか物事が動かないんだと思います。これは本当に知恵が要ることだし、日本近代のある意味での欠落点、つまり大国と軍事同盟をしてアジア諸国と上手く付き合ってこなかったと言う、そういう長い歴史ができあがってしまっているわけです。それはしようがないというか、もう歴史的事実としてそれがある以上、今度はそれを踏まえて、また反省して次の一手を考えていかなければならない。
回答その5 軍事同盟からの脱却
別に大国に同調する必要はないのですけれども、大国の論理というのを私たちがあらかじめ知っておいて、それで対応策を講じないといけない。小国同士あまり世界的な影響力を持たない国同士の交渉と、やはり世界的に一定の影響力を持っている大国を相手にした場合とは違う。
日本は近代の150~160年の歴史の中で大国相手の外交をずっとやってきたのですけれども、さっきも言いましたように基本的に一番強いところと軍事同盟を結ぶ、その手下になる(笑)、そういう外交をずっとやってきたものですから、対等外交というのはほとんどやった事がない。日本は外交下手だとよく言われるのは、それまで強い国の威を借りて大体行動してきたわけで、自前の論理というのがあまりなくて、俺の後ろには強いのが付いているぞということでだいたいやってきた。それは結構長い伝統になっているのですけれども、やはりそれだけではだめなのです。
確かに軍事同盟というのは今世界の中で少なくはなっているけれども、一定の影響力持っていることは確かなのです。ずっと日本は軍事同盟に依存した外交関係ということでやってきたので、なかなか自前で何か物事を発想するとか、そういう交渉をするとか、なかなかカードが切れない状態になっちゃっている。
これはやはり結局はそこを脱しないとなかなか物事が動かないんだと思います。これは本当に知恵が要ることだし、日本近代のある意味での欠落点、つまり大国と軍事同盟をしてアジア諸国と上手く付き合ってこなかったと言う、そういう長い歴史ができあがってしまっているわけです。それはしようがないというか、もう歴史的事実としてそれがある以上、今度はそれを踏まえて、また反省して次の一手を考えていかなければならない。
(略)
(引用終わり)
講演の映像を通しで視聴するのは、よほど時間的に余裕がないと難しいという人も多いと思いますが、このような講演録になっていれば、自分で時間調整をしながら学ぶことができて得るところも非常に多いと思い、ご紹介しました。