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“非戦闘地域”と“集団的自衛権”~志位和夫共産党委員長の国会質問で明らかになったこと

 

 今晩(2014年6月6日)配信した「メルマガ金原No.1749」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
非戦闘地域”と“集団的自衛権”~志位和夫共産党委員長の国会質問で明らかになったこと

 去る6月3日の「安全保障法制整備に関する与党協議会」において、政府が、過去の自衛隊の国際協力で「活動は非戦闘地域に限る」としてきた制約を外す方針を示して以来、にわかに「戦闘地域」「非戦闘地域」という、多くの人にとって忘れかけていた「用語」(テロ特
措法、イラク特措法等で使用された法律上の概念です)が注目されるようになりました。
 
平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法
(基本原則)
第二条 政府は、この法律に基づく協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動その他の必要な措置(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に我が国として積極的かつ主体的に寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に努めるものとする。
2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない
3 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環とし
て行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。
 一 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第六条
第五項において同じ。)及びその上空
 二 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。)
4 略
5 略
 
イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法
 http://www.kantei.go.jp/jp/houan/2003/iraq/030613iraq.html
(基本原則)
第二条 政府は、この法律に基づく人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下
「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、前条に規定する国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与し、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に努めるものとする。
2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない
3 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環と
して行われる人を殺傷 し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。 
 一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に
限る。ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号その他の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。) 
 二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第八条
第五項及び第十四条第一項において同じ。)及びその上空
4 略
5 略
 
 6月3日に政府が「外す」ことを提案した「制約」とは、以上の2つの特措法(既に失効していますが)の第2条第3項で示された概念であり、現実問題とし、「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別など出来るのか?という疑問が呈されたりはしたものの、結果として、この「制約」が自衛隊員の命と日本の声望をからくも守ったという評価も可能でしょう。
 
 そのことを明確に示してくれる映像と会議録をご紹介します。
 現在、開会中の第186回国会(常会)での、去る5月25日に開催された衆議院
算委員会における質疑の中の最後から2人目、日本共産党志位和夫委員長による安倍晋三首相に対する質問部分です。
 
 まず、映像は以下の方法で視聴できます。
 
衆議院インターネット審議中継
   ↓
カレンダー検索で2014年5月28日を選択
   ↓
会議名から予算委員会を選択
   ↓
発言者一覧から志位和夫日本共産党を選択(約26分)
 
 なお、チャンネル自体はあまり推奨しませんが、YouTubeでも見られるようです。
 
 次に会議録も公開されています。
 
第186回国会(常会) 衆議院予算委員会 会議録 第十六号 平成26年5月28日
 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001818620140528016.htm
 
 志位委員長は、限られた時間の中で、集団的自衛権を容認するとはどういうことかを明らかにするため、両特措法の2条で課せられた「制約」、すなわち、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」(2項)及び「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次
に掲げる地域において実施する」という2つの歯止めを「残すのか」「残さないのか」という一点に絞って答弁を求めるという作戦に出ました。
 結局、安倍首相は最後まで明確な答弁はせずに逃げ続けましたが、結局。2つの歯止
めを「残す」とは言わず、6月3日の「安全保障法制整備に関する与党協議会」に対する提案となったものです。
 是非、この質疑の映像をじっくりとご覧いただきたいと思います。
 虚心にこの映像を見ても、なお安倍首相の主張を支持する人は、多分「説得不能」で
ょう。
 
 なお、志位委員長の質問が周到に準備されたものであることは、最後の以下の質問を聴けば分かると思います。安倍首相の答弁とあわせて会議録から引用します。
 
(引用開始)
○志位委員 私が再三聞いても、残すとは言わなかった、歯どめを残すと言わなかった。
逆に自衛隊の活動を拡大する方向で検討するということを今答弁で言われました。極めて重大であります。
 そうなりますと、検討と言いますけれども、歯どめを外す方向での検討ということにならざ
るを得ない。すなわち、自衛隊が戦闘地域に行くこともあり得るということであります。極めて重大な答弁だと思います。
 戦闘地域に行ってはならないという歯どめを外してしまったらどうなるか。
 二〇〇一年の米軍のアフガニスタン戦争に際して、NATO諸国は、米国の要請に応
えて集団的自衛権を発動し、この戦争に参戦しました。そのときに、自衛隊派兵のテロ特措法の審議の中で、当時の小泉首相は、NATO諸国との違いを問われて、こう言いましたよ。武力行使はしないんです、戦場には出ないんです、戦闘行為には参加しないんです、明らかに違うんです。戦場に行かない、これが一番の違いだと言ったんです。
 当時の福田官房長官は、自衛隊の活動地域は、現に戦闘行為が行われておらず、
かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に限られている、そのことがNATOと決定的に違う、NATOとの決定的な違いは戦闘地域に行かないことだと答弁したのであります。
 総理に伺います。
 自衛隊はどんな活動であれ戦闘地域に行ってはならないという歯どめを外してしまったら、
アフガン戦争に参戦したNATO諸国と同じになっちゃうんじゃないですか、どうですか。
○安倍内閣総理大臣 アフガン戦争に参加したいわばNATO軍においては、まさに集
自衛権の行使として、武力の行使を目的として戦闘に参加をしているわけでございます。これはできない。これが決定的な違いと言ってもいいんだろうと思います。
 その上において、この戦闘地域と後方地域については、志位議員もその地域の概念に
ついてさまざまな疑問を呈してこられたのは事実でございます。そうしたことも含めて、さらに精緻な議論をしていく必要があるだろう、このように思うところでございます。
○志位委員 NATOの部隊は武力行使を目的にしていた、そこが違うんだと言いますが、
パネルをもう一枚ごらんください。
 これは、アフガン戦争に際して、NATOの諸国が集団的自衛権の発動として決定した
八分野の支援であります。燃料補給、空港、港湾の使用許可、米国施設などの保安強化、地中海東部への艦艇の派遣、早期警戒機AWACSの派遣、加盟国の領空通過許可、NATO責任地域への人員、装備の補充、テロに関する情報の協力強化、テロの脅威にさらされた関係国支援、この八項目ですよ。直接の戦闘活動など一つもありません。兵たん活動、後方支援ばかりであります。
 それにもかかわらず、NATO諸国の多くの国々が、アフガニスタン戦争で多くの犠牲者を
出しております。戦争開始から今日まで、米軍の犠牲者は二千三百二十二人、米軍を除くNATO諸国の犠牲者は、二十一カ国、千三十一人に上ります。
 なぜ、自衛隊から犠牲者が出なかったにもかかわらず、多くのNATO諸国で犠牲者が
出たか。それは、NATO諸国には、日本のような、武力行使をしてはならない、戦闘地域に行ってはならないという歯どめがなかったからですよ。
 この歯どめ抜きに米国の戦争に参戦すれば、それがたとえこのような兵たん活動、これ
から開始されたとしても、相手側の攻撃の対象となって、戦闘に巻き込まれます。戦争の泥沼に抜き差しならない形ではまり込んでしまう。こうしてNATO諸国でも多数の国から犠牲者が出ることになったのであります。
 総理に最後に伺いたい。
 総理は、「この国を守る決意」という著書の中で、こう述べておられます。「軍事同盟と
いうのは“血の同盟”です。」「しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです。」こう述べて、集団的自衛権の行使の必要性を説いておられます。
 総理、集団的自衛権の行使とは、端的に言えば、アメリカの戦争のために日本の若
者の血を流すということですね。いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 それは明確に違うということは申し上げておきたい、このように思
います。
 これは我が国の平和と安全にかかわる、まさに我が国の安全に深刻な影響を及ぼす、
そういう観点から判断をしたときに、いわば制限的な中において集団的自衛権の行使を可能にするか。これは、制限的な中において、いわば制限された中において、許容できる範囲の中の集団的自衛権の中においても、もし行使が認められるとしても、我が国に大きな影響を及ぼす、そして、それは国民の生命あるいは国の存立に影響等々も勘案した上において、これは判断するかどうかということにつながるわけでありまして、アメリカのために、要請されれば直ちに集団的自衛権を行使するというものでは全くないということは申し上げておきたいと思います。
○志位委員 るる言われましたけれども、自民党の石破幹事長は、集団的自衛権
行使するようになれば、自衛隊他国民のために血を流すことになるかもしれない、はっきり言っておられます。
 かくも重大な国のあり方の大転換、海外で戦争する国への大転換を、一内閣の閣
議決定で、憲法解釈の変更という手段で強行するなど、絶対に認めるわけにまいりません。立憲主義の否定そのものであります。
 憲法破壊の暴挙を中止することを強く求めて、質問を終わります。
(引用終わり)
 
 最近の国会審議の中でも特に重要な質疑であると思い、ご紹介することとしました。
 
 なお、冒頭で言及した「安全保障法制整備に関する与党協議会」に示した政府の新方針の最新情報について、今日(6月6日)の報道は以下のように伝えています。
 こちらの方も大問題です。
 
毎日新聞 2014年06月06日 15時00分(最終更新 06月06日 16時38分)
後方支援活動:4条件撤回、戦闘中の地域除外…政府提示へ
(抜粋引用開始)
(略)
 政府は3日の協議会で、「侵略行為を制裁する多国籍軍武力行使への支援」
の事例について、過去の自衛隊の海外派遣で設定した「非戦闘地域」の制約を撤廃する方針を提示した。
 その上で、「武力行使との一体化」で憲法違反とされるのは(1)現に戦闘中の他
国部隊が対象になる(2)戦闘に直接使われる物品・役務を提供する(3)活動場所が、他国部隊が現に戦闘中の現場にあたる(4)活動が戦闘行為と密接な関係がある-の4条件をすべて満たす場合だとしていた。
 これに対し公明党から、4条件では自衛隊の活動・任務が限りなく戦闘行為に近
づきかねないとの懸念が出ていた。
 政府は6日午前、公明党に、4条件を撤回し別の条件を示す方針を伝えた。新
条件では、実際に戦闘が起きている地域や戦闘中の他国部隊への後方支援は行わないとする。一方で、戦闘を一時中断した地域や他国部隊などには、自衛隊による医療支援や兵士輸送、食糧・水の補給などの後方支援が可能になるとみられる。
 政府は「武力行使との一体化」を判断する際の基準となっている1997年の大森
政輔内閣法制局長官の国会答弁は踏襲する考えも示す方針。この答弁では、自衛隊が後方支援を行う場合、戦闘地域との地理的関係や行動の内容などを勘案する考えを示している。
(略)
 公明党井上義久幹事長は6日午前の記者会見で、「できれば午後の会議で一
定の方向性を出し、党内手続きに入れればいいかなと思う」と語った。
(引用終わり)