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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治二さんが提起する“非戦”のリアリズム

憲法 平和

 

 今晩(2014年6月18日)配信した「メルマガ金原No.1761」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治二さんが提起する“非戦”のリアリズム
 
 「『自衛隊を活かす会』呼びかけ人から学ぶ」シリーズの3人目、とりあえず最後のお1人は伊勢﨑賢治さんです。「自衛隊を活かす会」では、その肩書きが「東京外国語大学教授、元国連平和維持軍武装解除部長」と表記されていました。伊勢﨑さんご自身がもう1つの肩書きを追加するとすれば「ジャズ・トランペッター」でしょうね。
 
 伊勢﨑さんには、私が事務局長をしていた当時の憲法9条を守る和歌山弁護士の会が、9条ネットわかやまと共催した講演会(2007年11月)の講師として来ていただいて以来、その発言には注目してきました。
 
 昨年、このメルマガ(ブログ)で2回、伊勢﨑さんを取り上げています。自分で言うのも何ですが、いずれも、そこでご紹介した伊勢﨑さんの発言や論考を、もう一度じっくりと視聴したり読み直していただく価値は十分にあると確信します。
 
2013年4月17日
伊勢﨑賢治さんの最近の論考から
2013年10月25日
伊勢﨑賢治さんが日本人に問う“リスクを引き受ける覚悟”(マガ9の動画)
 
 上記2件のブログには是非目を通していただきたいのですが、それを前提として、ここでは以下の2つをご紹介します。
 1つは、5月25日に行われた第32回マガ9学校「集団的自衛権自衛隊」の第2部、伊勢﨑さんと柳澤協二さんの対談をまとめてレポートです(第1部の柳澤さんの講演録は3日前にご紹介しました)。
 
2014年5月25日 第32回マガ9学校
集団的自衛権自衛隊(その2)
柳澤協二さん×伊勢崎賢治さん 対談レポート
 
(抜粋引用開始)
「軍隊がいるから安全」は一側面に過ぎない
伊勢崎 僕は東京外国語大学で、いわゆる紛争当事国出身の学生を集めて平和構築学を
教えているんですが、先日、学生たちに「今話題になっている集団的自衛権の議論が全然分からないから説明してくれないか」と言われたんですね。それで「日本がアメリカと一緒に戦争をするかどうかについてもめてるんだよ、今まではやってこなかったから」と説明したら、シリア出身の学生がびっくりして「もうやっちゃったでしょ!アレはなんだったの!?」と(笑)。
柳澤 ああ、イラク戦争で。
伊勢崎 そうなんです。中東の彼らにすれば、日本はすでにアメリカの戦争に参加している、と
記憶の中に刻まれてるわけですね。それをいまさらなぜ議論しているのか、と。たしかに、イラクけではなくてアフガニスタン戦争のときのインド洋給油活動だって、NATO集団的自衛権行使という形で継続するOEF(不朽の自由作戦)の下部作戦であるMIO(海上阻止行動)だったわけですから。
 つまり、日本での議論はそうではなかったけれど、外の目で見ると「やっている」。この辺を議論
の出発点にしていかないといけないと思うんです。日本はアメリカと違って、あのときにどうするべきだったかという総括もしていないじゃないですか。
(略)
柳澤 ところで伊勢崎さんにお聞きしたいのですが、あのとき、アフガニスタンにも自衛隊を派遣するという話になったときに、現地で灌漑事業支援などを続けている医師の中村哲さんが、国会に来て証言をしましたよね。「自衛隊が来たら、自分たちが現地の人たちに敵だと思われて危険になるから絶対にやめてくれ」と。アフガンにいた伊勢崎さんから見て、そのあたりの感じはどうだったのでしょうか。
伊勢崎 難しいですね。僕は中村さんのことはとても尊敬していますし、あの活動はノーベル
和賞にも相当すると思っています。おっしゃっていることも、半分は当たっているんじゃないでしょうか。
 ただ一方で、中村さんたちが活動しているジャララバードというのは、米軍が駐留しているから
こそアフガニスタンで一番治安のいい地域の一つになっている、という側面もあるんですよね。米軍にとって「地元社会と上手くやっている」ことの「ショールーム」みたいなところで、復興開発にも力を入れているし、麻薬撲滅も進んだ。それを考えると、一概に「軍隊がいるから危険になる」と言えないところもあって…。
(略)
 
安倍首相の掲げたパネルの「もう一つの嘘」
伊勢崎 先ほど、柳澤さんは安倍首相の会見でのパネルを「あり得ない想定」といって批判さ
れてましたけど、実はもう1枚のパネルがあったんですよね。あれにも重要なごまかしがあるんです。ちょっとその話をしていいですか。
 これは、日本のNGO職員や国連の日本人職員に対して、武装勢力が攻撃したときに、自
衛隊員――ブルーヘルメットをかぶっているので、国連PKO部隊ですね――が駆けつけ警護をできない、それでいいのか、という話でした。でも、これって根本的におかしいんですよ。僕は国連PKO部隊を統括した経験がありますけど、こういう話は、駆けつけ警護ではなくて、正当防衛の話になります。一つの国連のファミリーとして、文民国連職員、国連と提携するNGOを敵から守るのは正当防衛なんですよね。当たり前です。
 それとあと、日本の自衛隊だからといって日本人を優先的に保護するということは、国連では
あり得ません。
柳澤 それはそうですね。
伊勢崎 そういうことを議論すること自体が国連ではタブーです。国連ですから。同国人か否か
で差別しちゃいけないんです。例えばそこにいるのが自衛隊じゃなくて韓国軍でも、絶対に日本国連要員を助けてくれるし、NGOについても国連に登録されているNGOであれば、どこの国の団体でも救出する義務がある。だから「自衛隊が日本人を助ける」っていうこの図自体が、どう考えても国連PKOの世界では不謹慎なんです。
 ついでに言うと、今国際社会で問題になっているのは、こういう正当防衛のケースではなくて
住民の保護です。PKOがいたにもかかわらず100万人の虐殺を防げなかったルワンダに対する反省があって、国際社会には無辜の住民を「保護する責任」がある、という考え方が、国連でも主流になってきている。自衛隊が参加している南スーダンを含め、PKOのマンデード(使命、権限)に住民の保護が含まれるのはもう、普通のことになっているんです。この場合、住民が武装勢力にやられそうになったら、責任として助けなきゃいけないんですね。
(略)
 
国連の本来業務である「非武装の停戦監視」を
柳澤 私も以前、ゴラン高原国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に参加していた監視要
員のサイトを視察したことがありますが、本当に丸腰なんですね。だからかえって抑止力があるのか、と感じました。でも、最近そういうPKO派遣のあり方は全然議論されてないですね。
伊勢崎 そうですね。僕のこういう発言が新聞などに載ると、「最前線に自衛隊を丸腰で送る
なんて馬鹿なことができるか」といった批判が来るんですが、これは伝統的な、国連の本来業務だということを忘れてはいけないと思います。そもそも国連というのは外交の場、戦争回避のための組織なのであって、武装した軍隊を派遣するPKOなんていうのは、近代的な発展形過ぎない。非武装での停戦監視こそが本体業務中の本体業務だということを、いま一度してもらいたいですね。
(略)
 そのためには、やはりこちら側のイメージが重要になるんですよね。例えば、アフリカ諸国では東と同じで、まだ日本はいいイメージを保っているんですから、ODAなんかを活用して――中国に対抗するとか変な下心を出さないで――、そういうイメージを構築していくということをやってほしいんですが。
(略)
 
一度自衛隊を派遣すれば、そう簡単に撤収はできない
伊勢崎 最後に、これは少し意地悪な質問かもしれませんが、南スーダン自衛隊が派遣
されていますよね。派遣後、現地では政府勢力と反政府勢力との抗争が激化して、状況がどんどん悪くなりつつあります。さらにこれが広がって本格的な戦闘がはじまったら、派遣時の法的根拠であるPKO協力法の「5原則」が崩れてしまうことになるわけですが、もし柳澤
さんが今官邸にいたとしたら、「撤収せよ」と言えますか。
柳澤 …言えないですね。PKO法の枠組みでは、停戦合意が崩れたら業務を中断しなく
てはならないし、戦闘が恒常化するようなら撤収するということになっています。法律上はそうです。しかし、日本だけが撤収するというのは、周りへの影響も非常に大きいし、やはり難しい。私が官邸にいたら、なんとか理屈をつけて撤収を引き延ばそうとしたでしょうね。
伊勢崎 僕もそれが正しい道だと思います。自衛隊が一番先に撤収したら、世界中の人
団体から非難が来ると思いますよ。
柳澤 ただ、いくら撤収を引き延ばしても根本的な解決にはなりませんし、あとは状況任せ
というわけにもいきませんから、非常に悩んだでしょうね。
 スーダンへの派遣は私が官邸を離れた後ですが、実は官邸にいたときも、なんとか自衛隊を出せないか、という話はあったんです。それに対する一番の「抵抗勢力」は防衛省でした。あんな物騒なところに部隊は出せないし、何の国益があるんだ、というんです。防衛省が、一番そこのところを現実的に考えていました。それくらい、一度出しちゃったら引けないということ
なんです
伊勢崎 だから、そもそも大部隊を送ることの根本的な是非を考えたほうがいい。出しちゃったらもうしょうがない、少々の犠牲が出たからといってそんな簡単に引けるものではないんです。安倍首相の言う「積極的平和主義」についても、その観点を持った上で議論をしていくべきだと思います。
(引用終わり)
 
 もう1つは、今年(2014年)の5月4日に東京の神楽坂で行われた伊勢﨑さん講演会の映像です。
 
20140504 UPLAN 伊勢崎賢治氏講演会「集団的自衛権をめぐる国際情勢と日本の行方」
 
 質疑を含めて2時間30分を超える長時間の講演会ですが(編集されているようですから、実際はもっと長かったようです)、伊勢﨑さんのお話はいつもそうですが、非常に「刺激的」です。私自身、まだ全編は視聴できていませんが、時間の都合をつけて、是非通しで視聴したいと思います。
 余談ですが、伊勢﨑さんが自衛隊でも教えておられるということは聞いていましたが、この講演で「自衛官の父親でもあります」(8分過ぎ)ということを初めて知りました。
 
 加藤朗さんが提唱する憲法9条部隊にしても、伊勢﨑賢治さんが主張する非武装の幹自衛官を停戦監視団に派遣することも、実は今まで以上に「リスクを引き受ける覚悟」必要であることは間違いありません。
 そして、お2人とも、自分自身が危険に身をさらす覚悟(と実績)をもって発言されていることは言うまでもありません。
 戦争を知らない軍事オタクの妄想とは無縁の、現実を踏まえた上で、日本が国際平和のために何をなし得るか、何をなすべきかについての具体的な提言として、全面的に賛成するか否かは別として、私たちはこれを重く受け止めて、自ら考えをめぐらせる必要があると思います。
 

(付録)
『Work Song』 伊勢崎賢治