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クーデター「成功」前夜に考えるこれからの課題(付・6/29「戦争をさせない和歌山委員会」設立総会でのスピーチ)

 

 今晩(2014年6月30日)配信した「メルマガ金原No.1773」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
クーデター「成功」前夜に考えるこれからの課題(付・6/29「戦争をさせない和歌山委員会」設立総会でのスピーチ)

 淡々と予定通りにクーデターが進行している光景を、日本のマスメディアが淡々と報じるのに
も慣れっこになってしまった今日この頃ですが、今日は、与党合意の前提となる公明党内での「一任取付」が行われました。
 
NHKニュース 2014年6月30日17時39分
集団的自衛権 公明が執行部に対応一任
(引用開始)
 公明党は、外交・安全保障に関する合同調査会を開き、政府が示した憲法解釈を変更し
集団的自衛権の行使を容認する閣議決定案について、対応を執行部に一任することを決めました。執行部は1日朝の与党協議で合意し、党内の了承手続きを進める方針です。
 公明党は、1日に集団的自衛権などを巡る与党協議の11回目の会合が開かれるのを前
に、30日、国会内で外交・安全保障に関する合同調査会を開き、対応を検討しました。会合では、政府側が「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにって日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、必要最小限度の実力を行使するのは、自衛の措置として憲法上許容される」などとする閣議決定の最終案を示しました。
 これに対し、出席者から慎重な対応を求める意見が出されましたが、執行部側が「与党協
議のメンバーにあすの対応を一任しほしい」と述べたのに対し、異論は出ず、対応を一任することを決めました。(略)
(引用終わり)
 
 ところで、こういう報道に接する時、いつも首をかしげるのは、“政府側”が示したとか、説明したという場合の“政府側”って一体誰なんだ?ということです。
 いずれ、どこかの官僚なのでしょうが、内閣法制局か?内閣官房か?出身官庁はどこか?
(外務省か、防衛省か)など、知りたいことだらけです。
 しかも、いかに上命下服が原則の官僚組織であれ、個々の官僚にも当然憲法尊重擁護
義務が課されているのであって、官僚個人が、将来クーデター荷担の責任を問われる可能性ももちろんあるはずであり、その場合には、「義務の衝突」の法理で解決することになるのでしょうか。
 余談ですが、「自分はクーデターに荷担などできない」として辞表をたたきつけた官僚が現れ
たという話をついぞ聞きませんね。まあ、みんな家族を養わねばならないという事情もあるのでしょうが。
 
 それから、公明党の公式Facebookによれば、去る6月27日(金)夜、山口那津男公明党代表が和歌山市で講演したいたのですね(全然知らなかった)。
 公明党Facebookを読むだけでも腹が立ってきますが、記録にとどめるために一部引用して
おきます。
 
専守防衛を今後も堅持 安保環境の変化に万全の備え 和歌山時局で山口代表
(引用開始)
 公明党山口那津男代表は27日夜、和歌山市内で開かれた党和歌山県本部(角田秀樹代表=県議)の時局講演会に山本香苗女性局長(参院議員)と共に出席し、あいさつした。
 席上、山口代表は、日本を取り巻く安全保障環境について、近隣国で弾道ミサイル開発が行われるようになったことなどを挙げ「かなり変化が出てきた」と指摘し、「そういう状況への備えを固め、日米安保条約に基づいた関係を強める。備えがしっかりすれば、外交でもっと前向きな対話と新しい信頼関係を生み出すことにもつながるということで今、安全保障の議
論をしている」と述べた。
 さらに日本を守るために活動する米艦が攻撃されるような事態を例に挙げ、「それを放っておくと国民の権利が根底から覆される状況が起きてしまいそうならば、武力を使うことを認めてそれを防がなければならない。そこが政府が保ってきた憲法の変えてはならない柱であると考えている」と表明。その際の武力行使については、「従来、言われてきた個別だ集団だという区別とは少し違うが、限りなく個別自衛権に近いもの、それに匹敵するものだ」とし、「そういうものに限って、日本を守るために必要不可欠なものであれば、それを認めて良いではないかという議論をしている」と述べた。
 その上で、安全保障の観点からの安全保障法制整備に関する与党協議会では、自国防衛のための武力行使への明確な歯止めを設けるための議論が進められているとして、「結論を出していく方向性は、憲法が柱としてきた本筋はいささかも曲げることなく、時代の変化に応じた備えのあり方をこれからも長く保てるべきものになっている」と指摘。
 「日本がこれまで国民や世界に訴えてきた専守防衛や軍事力を拡大しないこと、非核三原則を守ることなどの平和主義の柱はこれからも維持していくことになる」と強調した。
(引用終わり)
 
 会場を埋めた善男善女の多くが創価学会会員と推測されますが、みんながみんな、この程度の「まやかし」に丸め込まれる愚か者ばかりではないと、同じ和歌山県民としては信じたいですね。
 
 和歌山県民と言えば、以前開催を告知したとおり、昨日(6月29日)、「戦争をさせない和歌山委員会」の設立総会が開かれました。
※チラシ http://web2.nazca.co.jp/nwkv89851/sensosasenaiwakayama.pdf
 和歌山県平和フォーラムが事務局を務める組織の立ち上げですが、会場となったプラザホープ4階ホールには、多様な立場の方々が数多く駆け付けてくださいました。もとより、現在の状況の深刻さが反映した結果であることは疑いないでしょう。
 自民党支持者や創価学会の会員が来てくださっていたかは不明ですが、今後は、良識
と危機感を共有するそのような方々との連携をいかに模索していくかが重要だと考えています。
 
 昨日の設立総会で採択された「アピール」を以下にご紹介しておきます。
 
(引用開始)
 「いま、日本はいままでとまったくちがった国に姿をかえようとしています。わたしたちが願い、
誓ってきた、人間と人間が殺し合う戦争はもう絶対にしない、国際的な紛争は粘り強く話し合いで解決する、という人類普遍の理想を、安倍政権は、なんの痛みも感じることなく捨て去ろうとしています。」(戦争をさせない1000人委員会より)
 安倍政権の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法
制懇)は5月15日、集団的自衛権の行使について憲法解釈を変更して容認するよう求める報告書を提出しました。この「報告書」を受けて、集団的自衛権の行使について、閣議決定により、従来の「憲法9条の制約から、保有するが行使できない」とする憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使を可能にしようとしています。
 このままでは、日本は、「地球の裏側」まで場所を問わず、戦争する国となるとの深い疑
念と懸念を抱く大江健三郎(作家)さん、鎌田慧(ルポライター)さんら16名の著名人が発起人となって、「戦争をさせない1000人委員会」を設立、全国的な運動の展開を呼びかけました。
 わたしたちはこれに応えて平和であり続けたいと願う人びととともに、「戦争をさせない和
歌山委員会」を設立いたしました。
 戦争をさせない1000人委員会はさらに訴えます。
 「平和のうちに生きたいとする願いは、世界の人びとの共通のものです。わたしたちはそれ
をさら拡げるために、憲法九条を空文化し、集団的自衛権の行使を認め、戦争準備をすすめる秘密国家をつくろうとする政府への批判活動と行動をつよめます。」
 わたしたちも、戦争への道を突き進む政府の暴走を阻止し、一人ひとりの平和に生き抜
く権利を守り抜くために、「戦争をさせない和歌山委員会」に結集し、憲法改悪を許さない県民運動を、総力をあげて展開してまいります。
     2014年6月29日
                      戦争をさせない和歌山委員会設立総会
(引用終わり)
 
 私自身、「戦争をさせない和歌山委員会」の10人の呼びかけ人の1人ではあるものの、このアピールの文章を事前に示されていた訳ではなありませんので、正直、首をかしげる部分がないこともないのです。一番気になるのは末尾の「憲法改悪を許さない県民運動」というところですが、その理由をここで細々と書くのも適切ではないと思いますので、「憲法
悪」というのは「憲法破壊」のことだと「善解」(我々の業界用語ですが)することにしておきます。
 
 最後に、出席した呼びかけ人がそれぞれ挨拶をするということで、私も短いスピーチを行いましたので、その原稿をご紹介しておきます。時間の都合で端折った部分もありますが、基本的にはこういうことを話しました(もっとも、スピーチの内容を新たに考えている時間がなかったので、前日の6月28日に配信したメルマガ(ブログ)「集団的自衛権行使“限定容認”のまやかしと政治的正当性の喪失」で主張したことを抜き書きしたものです)。
 
  2014年6月29日 戦争をさせない和歌山委員会 設立総会での挨拶
 
                         弁護士 金 原 徹 雄
 
 私は、ひょんなことから、今年の4月から和歌山弁護士会憲法委員会の委員を務めていますが、立場上、個人的な意見を押し通す訳にもいかず、ある程度「自制」しているのですが、今日は個人として来ていますので、別に「自制」はしません。
 
 私は、安倍内閣の最大の特色は「恥を知る」という徳目を完全に欠落しているとだと思っています。集団的自衛権は行使できないという長年の見解を無理矢理変更させるため、慣例を破って、内閣法制局長官を自分のいいなりになる外交官にすげ替えたり、ろくでもない「お友達」や自分の元家庭教師をNHK経営委員に任命したり、これまでの、まともな「恥を知る」保守政治家であれば、到底なし得ないことをやってのけ、しかも見え透いたウソをつくことを何とも思わない「恥知らず内閣」という評語が最も適切な内閣です。
 私は、単に安倍政権を罵倒して快をむさぼろうとしているのではありません。「恥
らず」であるということは、この政権の最大の「強み」であり、そうであるがゆえに適切な対抗手段を見出しがたいことが我々にとっての決定的な問題だということを言いたいのです。
 明後日にも閣議決定されると言われている集団的自衛権についての「限定容
論」「新3要件論」なども、論理的な整合性などかけらもありませんが、「恥知らず内閣」にとって、そんな批判は痛くもかゆくもないでしょう。
 このような相手にどう立ち向かえば良いのか、これをみんなで考えるために「戦争
させない和歌山委員会」が発足したのだと思っていますし、今日のゲストである佐高さんから貴重なヒントをいただけるのではないかと期待しているところです。
 
 最後に、7月1日に想定されている「閣議決定」について一言。
 この「閣議決定」がなされたからといって、その日から目に見えて何かが変わる訳
はありません。ただし、この「閣議決定」以降、日本は憲法があっても、政府も与党も、それを無視して政治を行う国だということになります。
 私は、その瞬間、自民党公明党も、存立の根拠、政治的正当性を喪失す
ると思っています。形の上では巨大与党による国会占拠が続くでしょうが、理念上は、両党に政治的正当性を主張する資格はなくなります。
 正当性を喪失した団体が、形の上でも消滅するまでの時間に長短はあるでし
ょうが、いずれ、正当性を回復しようとする政治的復元力の波に洗い流され、自民党も公明党も消滅するはずです。私はこれは歴史的必然だと思っています。
 ただし、そうなるまでの間に、実際に日本が戦争当事国となり、「とりあえずの破
局」が「真の破局」になるかどうかは、これからの私たちの努力にかかっているのだと思います。
 みんなで頑張りましょう。ありがとうございました。
 

(付録)
『Don't mind(どんまい)』 作詞作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
※何日か続けてこの曲を聴いていただければと思います。