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「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」

 

 今晩(2014年7月4日)配信した「メルマガ金原No.1777」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場ら」
 
 「自衛隊を活かす会(自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会)」ホームページを調べようと思い、サイト検索していたところ、間違って(?)同会の公式Twitter にアクセスしてしまい、たまたま、「7.1クーデター」当日に、同会呼びかけ人の1人である伊勢﨑賢治さんが、以下のような tweet を発信されていたのに気がつきました。
 
「読売新聞と産經新聞の記者の方々。優先的に、そして、無償で取材に応じさせて頂きますので、ご連絡ください。」(8:53 PM - 1 Jul 2014)
 
 その後、伊勢﨑さんに連絡をとった読売新聞や産経新聞の記者がいたかどうかは不明です。
  
 ところで、私が「自衛隊を活かす会」ホームページにアクセスしようと思ったのは、去る6月7日
に開催された「第1回シンポジウム 「護憲」を超えて① 自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」について、「シンポジウムの内容につきましては、テープ起こしが終了したものから、順次、このホームページで公開したいと考えます」と予告されていましたので、そろそろ「テープ起こし」の結果がアップされているかもしれないと思ったからです。
 そして、公式twitter での寄り道の後に閲覧したところ、既に一部を除いて掲載されていました。
 
報告・発足記者会見とシンポジウム 護憲」を超えて① 
自衛隊の可能性・国際貢献の現場から
 
 発言者は以下の方々でした(特に印象深かった部分を引用しておきました)。
 
自衛隊を活かす会」は何をめざすか
柳澤 協二(元内閣官房副長官補、国際地政学研究所理事長)
昨今の集団的自衛権憲法解釈見直しの議論を聞いていますと、政府のあげる一つひとつの事例が、非常に現場のリアリティーが乏しいものだと私は感じております。また、もう一つの大きな問題として、集団的自衛権を行使するようになることによって、あるいは国際貢献の現場でもっとたくさんのケースにおいて武器を使うようになることによって、日本がどのような戦略目標を達成しようとしているのか、その戦略論がまったく見えないということもあります。戦略論がなくて、かつ具体的な現場的なリアリティーがないということになると、基本的にもう議論にはならないということだと思うんです。
 それに対して、どういう議論が必要か。たんに憲法を守れとか、戦争をする国になっていいのかという、そういう批判の仕方では、日本人のおじいさん、おばあさんを守らなくていいのかという、安倍総理と同じレベルの話になってしまって、まったくかみあわない議論になってしまうと思うのです。どちらかというと護憲派と言われる方々は、いままで自衛隊が防衛の現場や国際貢献の現で何をやっているのか、知ろうともしないできた方が結構多いわけでして、安倍総理を批判するのに不可欠な現場のリアリティーをもっておられない。
 戦後これだけ時間がたって、戦争を経験された世代も徐々にフェードアウトされて、世代交代が進んでいます。そのなかで、日本の原点というものを一度見直さなければいけない時期に来いるというのではないか、それがこの問題の本質的な論点だと私は思うのです。いまの政府がやろうとしていることの結論がどんな形になろうが、この問題はそういう意味で今後の日本にとって、ずっと投げかけられ続ける問題だと思います。ぜひここで、しっかりかみ合う議論の土台を作っていかなければいけないと考えています。「会」のシンポジウムが、「『護憲』を超えて」ということをサブタイトルにしているのは、そういう意味合いがあります」
 
スライド:21世紀の海外自衛隊のリアル
半田 滋(東京新聞論説・編集委員)
 未掲載

対テロ戦争における日本の役割 アフガンを事例に
伊勢﨑 賢治(東京外国語大学教授、元国連平和維持軍武装解除部長)
 未掲載
 
カンボジアPKO派遣の経験と課題
渡辺 隆(元東北本部方面総監・第一次カンボジア派遣施設大隊長
「なおかつ、私は最近ずっと疑問に思っているのですが、必要最小限で良いのだからと言われることがあるのですが、現場の人間にとって必要最小限というのはどういうことなのか、私はいまだにわかりません。「うん、その辺で良いんだよ」と手を抜くような形で戦闘に参加すれば、間違いなくその戦いは負けるでしょう。相手は負けるつもりでそこへ出てきているわけではないので、実際に現場で命のやりとりをする、いわゆる戦う、戦争をする、戦闘する場面で、おそらく必要最小限っていうことを考えながら戦う兵士は一人もいないだろうと思います。持てる力とあらゆる手段を使って戦い、勝利を得ようとするはずです。それが正しい軍事的な姿だろうと思います。それは敵が憎いからではない。イギリスの作家がこのように言っています。「真の兵士は、目の前の敵を憎むからではなく、背後にあるものを愛するがゆえに戦う」。まさに、どこの場所になるかわかりませんが、
自衛隊の戦い方というのは、そういうものであるというふうに私は思っております」
 
スーダンPKO派遣の経験と課題
山本 洋(ビデオ出演)(元中央即応集団司令官
「今後の日本の国際平和協力のあり方についてですが、いま申し上げたような能力構築支援ということと同時に、たとえば国連のPKO局にも有能な自衛官が勤務をしておりますけれども、今後のPKO派遣を我が国が判断をしていくためにも、できるだけ枢要なポジション、高いポジションに自衛官を配置をするということが大変重要になってきます。それからもう一つは、現在、南スーダンの司令部にも三名の幹部自衛官が配置をされて頑張っていますが、それぞれのミッションの司令部にも有能な隊員を派遣することによって、参加をしている日本のPKO部隊が、より効率的な、我が国の能力を発揮できるような活動ができると思います。
 国連側の日本に対する期待も、そのようなものだと思います。高い力を持っている隊員一人ひとりが、PKOの枢要な部門で活躍するということを期待しております。
 余談になりますけれども、たとえば武力の行使に関わるPKF(国連平和維持軍)への参加をどうするかという議論もありますが、そういう部分を担っているのは主として途上国なのです。いまの南スーダンもそうですけれど、そういう所でPKFの基本的なニーズは満たされているというのが国連サイドの見方のようですので、やはり我が国はそういう高いレベルの所で貢献をしていくということが大事だと思います」

私の憲法9条部隊構想
加藤 朗(桜美林大学教授、同国際学研究所長代理、元防衛研究所
「柳澤さんから、安倍政権がいったい今後どういうことをしようとしているのかがよく分からないというお話がありました。私も同感です。ですから私は、日本は今まで通り平和国家のブランドを捨てるべきではない、と強く考えております。それは私の経験によるものです。
(略)
 それが憲法九条のおかげかどうかは別にしても、日本がどうやら平和な国、戦争をしない国であるということは、みんなが知っているということだと思います。その平和国家のブランドを毀損するようなことはすべきではないというのが、私がこの「自衛隊を活かす会」の呼びかけ人になろうと決めた最大の動機です。
 さて、では具体的にどうすれば平和国家のブランドを守ることができるのか。それには二つの戦略があります。
 一つは、専守防衛戦略です。自衛隊専守防衛に徹すべきだということです。国際協力、人道支援であっても海外に行くべきではないと考えています。
 では、日本の国際協力をどうすべきか。それがもう一つの戦略である民間のPKO部隊「憲法九条部隊」の創設です。
(略)
 私たちが自衛隊に何を期待するかということをいろいろ考えてみますと、決して自衛隊が国際協力によって、日本の国際的な評判をあげるということではないはずです。自衛隊が本来やらなければいけない任務はやはり国体を守るということだろうと思います。私が違和感を持っているのは、自衛隊は国民の生命、財産を守るのだといいますけれども、生命、財産を守るのは、警察であり消防です。自衛隊が守るのは国体です。そして、国体とはいったい何か。それは、constitution憲法です。自衛隊憲法を守るということを徹底すること、そのことが実は、私たちが憲法によって国家に命じたことです。
 よく、憲法は国家を規制するものであると言われます。それならば、国家は我々を武力でもって守らなくて良い、そういうふうに我々国民は国家に命じたのです。我々は本来は国家によって武力で守ってもらうべきではないのです。そういうことを憲法九条は言っているわけです。つまり自分の安全を自分で守るというのが、憲法九条の意味です。しかし我々は、一人ひとりが武装することまでは考えていません。その代わりに、自衛隊によって我々の安全をある程度守ってもらうことで合意したのです。自衛隊創設以来60年もの長い年月をかけて私たちはそういう合意を作りあげてきたわけです。逆に言うと、私たちは自分達で自分達の軍隊を選びなおしたというのが、現在の自衛隊のあり方だろうと思います。
 その一方で、私たちは憲法前文で約束した国際社会と協力していく姿勢は、これからもずっと持ち続けていく必要がある。私達一人ひとりが、国際社会のために何ができるかを考えれば、今困っている紛争地たとえばアフガニスタンの国家再建に、私たち民間人が憲法九条部隊を組織して協力することが何よりも重要ではないかと思っています。先ほど伊勢﨑さんが、華僑、印僑は行くだろうけれども、日本人は危険を冒して行かないだろうと言われました。しかし、日本人が危険を感じて行かないというならば、我々は憲法九条を持つ資格はありません。我々に求められているのは、憲法九条のために、時には自らを犠牲にする覚悟だと思っています。
 最後に、内村鑑三の『非戦主義者の死』について。彼は日露戦争に当たって、「非戦主義者よ、進んで死んで来い」と言ったのです。非戦主義者の死は戦争賛成の人の死よりも何倍も意味があることだと言ったのです。我々は、いま一度、内村鑑三の言葉を思い起こして、そして出来れば憲法九条部隊構想に大いに賛同していただいて、志願していただければと思います」
 
会場からの発言と質疑応答
 未掲載
 
 以上が、6月7日のシンポジウムの内容です。冒頭の挨拶で柳澤協二さんが「どちらかというと護憲派と言われる方々は、いままで自衛隊が防衛の現場や国際貢献の現場で何をやっているのか、知ろうともしないできた方が結構多いわけでして、安倍総理を批判するのに不可欠な現場のリアリティーをもっておられない」と言われたとおり、私自身、自衛隊カンボジアスーダンでどういう活動をしてきたのか、ほとんど知りませんからね。
 その意味からも、単なる自衛隊広報ではない、率直な現場の声が聞けるこのような機会は得難いものだと思います。
 登壇者の発言の全てを肯定できなくても(それは当たり前ですから)、真摯に耳を傾ける必要があると思い、ご紹介することとしました。
 
(追記)
自衛隊を活かす会 第2回シンポジウム 護憲」を超えて②
対テロ戦争における日本の役割と自衛隊
2014年7月26日(土)午後1時45分~4時45分
千代田区立日比谷図書文化館大ホール
参加費 1,000円(資料代)
事前予約制 http://kenpou-jieitai.jp/symposium_20140726.html#contact
 アフガニスタンにおけるアメリカの対テロ戦争が壮大な失敗を迎えようとしている。その失敗の
結果、テロ集団がパキスタンやシリアの情勢を緊迫させるまでになり、イラクでは政権が崩壊の危機に立たされている。この対テロ戦争において、アメリカに代わって日本が何をやるべきかを探究することが求められている。
 政府は集団的自衛権を認める閣議決定を行ったが、対テロ戦争においても、「日本の安全にかかわる」として、武力を行使する道を選ぶのか。それによって日本がテロの標的とされることにならないのか。
 「自衛隊を活かす会」は、アフガニスタンや中東におけるテロ問題を解決する上で、日本が絶好の位置にあると考える。中東問題やテロ問題の専門家、元自衛官を招き、徹底的に討論する。
【発言者】
酒井 啓子(千葉大学教授)
宮坂 直史(防衛大学校教授)
渡邊 隆(予定)(元陸上自衛隊東北方面総監)
柳澤 協二(元内閣官房副長官補)
伊勢﨑 賢治(東京外国語大学教授)
加藤 朗(桜美林大学教授)
 
(参考サイト)
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(1)加藤朗さんの「憲法9条部隊」構想
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)柳澤協二さんが語る「日本の安全保障」
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)続-柳澤協二さんの最新講演(6/13神戸市)
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治二さんが提起する“非戦”のリアリズム
内村鑑三『非戦主義者の戦死』
 

(付録)
『ラブソング・フォー・ユー(LOVESONG FOR YOU)』 
 作詞作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ