今晩(2014年7月15日)配信した「メルマガ金原No.1787」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
生活保護法(昭和二十五年五月四日法律第百四十四号)
思い返してみると、この間、私が「改正生活保護法」問題をメルマガ(ブログ)で取り上げたことは、多分一度しかありませんでした。
2013年5月18日
生活保護法“改正”案のとんでもない内容
「改正生活保護法」の問題点を復習するため、成立直後に日本弁護士連合会が発出した会長声明を読んでおきましょう。
2013年12月6日
改正生活保護法の早期見直し等を求める会長声明
(引用開始)
本年12月6日、「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立した。
本年12月6日、「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立した。
改正法には、①違法な「水際作戦」を合法化し、②保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼすという看過しがたい重大な問題があるため、当連合会は、本年5月17日に「生活保護の利用を妨げる『生活保護法の一部を改正する法律案』の廃案を求める緊急会長声明」を、本年10月17日に「改めて生活保護法改正案の廃案を求める会長声明」をそれぞれ公表し、繰り返し廃案を求めてきた。にもかかわらず、改正法が成立したことは誠に遺憾である。
審議の過程において政府は、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める改正法24条については、①従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない、②福祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する、③給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた改正法24条8項、28条及び29条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である旨答弁し、以上両趣旨を厚生労働省令等に明記し、保護行政の現場に周知する旨繰り返し答弁してきた。
しかし、改正法の法文が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこれまで以上に、助長、誘発される危険性が払拭されたとは到底言い難い。改正法の施行によって、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事態が強く懸念される。現に、参議院厚生労働委員会では、附帯決議において、「いわゆる『水際作戦』はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底する」等の指摘がなされた。そして、厚生労働大臣は、審議の過程で、生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護開始率、餓死・孤立死等の問題事例の動向を踏まえ、問題があれば5年後の見直しの際に十分に考慮する旨答弁し、同旨の附帯決議もなされている。
当連合会は、国に対し、改正法の施行により、申請書を交付しない、添付書類がそろわない限り有効な申請とは扱わない、扶養義務者への援助を求めて門前払いする等の、申請権を侵害する違法な運用が拡大しないようにするため、上記国会答弁及び附帯決議の趣旨を十分に踏まえ、各地の福祉事務所等の誰でも手に取れる場所に申請書を備え置くことを求めるとともに、改正法を理由として申請権を侵害する運用を行わないよう各地の福祉事務所等に周知徹底することを強く求める。また、改正法の施行による影響を逐次に把握するよう努め、問題が生じれば、5年の見直し期間の経過を待つことなく直ちに改正法を見直すことを強く求める。そして、当連合会としても、改正法の施行により違法な「水際作戦」が増加することとならないか厳しく監視することはもちろん、制度の利用資格がありながら利用できていない膨大な「漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用していない層)」をなくし、生活保護制度の「捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)」を高め、憲法の生存権保障を実質化するための真にあるべき生活保護制度の改善に向けた取組を、より一層強化する決意である。
2013年(平成25年)12月6日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
(引用終わり)
「改正法」の主要部分は今月(7月)1日から施行されました。
そして、これを機に、去る7月12日(土)、神戸市の「神戸クリスタルタワー」において、近畿弁護士会連合会人権擁護委員会の夏期研修会が、「今、改めて生活保護と扶養義務のあり方を考える~生存権保障が空洞化する前に~」と題して開催され、IWJ兵庫によって中継された映像を視聴することができます。
私もまだ視聴できていないのですが、必ずや有益な知見が得られると確信しますので(私の長年の“勘”によります)、皆さまにも是非視聴をお勧めしたいと思います。
夏期研修会の内容をチラシから抜粋してご紹介しておきます。
(引用開始)
人気タレントの母親が生活保護を利用していたことに端を発した「生活保護バッシング」。その帰結として、2013年12月、「改正」生活保護法が成立しました。同法は扶養義務者に対する調査権限の強化等を内容としていますが、大阪市が「仕送り額のめやす」を定めるなど、法の施行を待たずに扶養義務者への圧力を強める動きも見られます。
そもそも扶養義務とは何なのでしょうか。
先進諸外国は、扶養義務と生活保護の関係について、どのような制度を採用しているのでしょうか。
本年7月からの「改正」法の施行を機会に、「扶養義務と生活保護の関係」を徹底的に深堀りし、あるべき道筋を探りたいと考えています。
基調報告1 和田信也氏(大阪弁護士会)
基調報告2 森田基彦氏(京都弁護士会)
「家裁における扶養事件の実情と先進諸外国の状況」
当事者の声
基調講演 本澤巳代子氏(筑波大学人文社会系教授)
基調講演 本澤巳代子氏(筑波大学人文社会系教授)
「扶養義務の範囲と生活保護との関係をどう考えるか」
パネルディスカッション
パネルディスカッション
パネリスト
生田武志氏(野宿者ネットワーク代表)
本澤巳代子氏
コーディネーター
鈴木節男氏(大阪弁護士会)
実行委員会からの提言 安永一郎氏(大阪弁護士会)
(引用終わり)