wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

絵本『戦争のつくり方』(2004年)が描いた“未来の日本”と“現在の日本”

 今晩(2014年8月7日)配信した「メルマガ金原No.1810」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
絵本『戦争のつくりかた』(2004年)が描いた“未来の日本”と“現在の日本”
 
 既に、最初の小冊子版、続いて刊行されたマガジンハウス版で読んだ方も多いでしょうし(いずれも現在は絶版)、無料公開されているWEB版で読んだという人も少なくないと思います。
 けれど、この絵本『戦争のつくりかた』(文:りぼんぷろじぇくと、絵:井上ヤスミチ)の存在をまだ
知らないという人も少なくないと思いますので、ご紹介することとしました。
 
 
 上記公式サイトから、この絵本の成り立ちを説明した部分を引用したいと思います。この絵本の制作に関わった人たちの思いを伝えて間然するところがありません。
 
(引用開始)
 絵本『戦争のつくりかた』が生まれたのは、いまから9年前。 戦争に備えるための有事法制
(「有事7法案」と「有事関連3条約」)が国会で審議されていた2004年5月でした。
 いままで戦争をしてこなかった、私たちの国が その「かたち」や「ありよう」を大きく変えようとし
ている------。 そのことに気づき始めた人たちが、インターネットを通じてつながってゆく中で、偶然にも憲法記念日の5月3日、ひとりの人の頭に、突然浮かんだもの。それが、絵本『戦
争のつくりかた』でした。
 最初は絵本を、ささやかな手作りの冊子にして周りの人たちに配っていましたが、配布と同
時に思いがけず大きな反響が巻き起こり、刷り上げた3万3千部はわずか3カ月で底をついてしまいました。多くのマスメディアでも次々と取り上げられ、より多くの方にこの絵本をお届けしたいとの思いから、2004年7月には「株式会社マガジンハウス」より書籍として出版することと
なりました。
 絵本『戦争のつくりかた』は、決して空想にもとづく作り話ではありません。2004年6月に成
立した有事関連法をはじめ、すでに施行されている法律や政令、審査中の法案、国会答弁の内容などをひとつひとつ丹念に読み解いた上でつむいだ「日本のひとつの未来像」を示しています。その際、素人の曲解がないか、法律家の冷静で厳しい目を通してもらうことにも
心を配りました。
 残念ながらこの本で予言された未来は、着実に現実となりつつあるのではないでしょうか。
私たちに残された時間は、もうあまりないのかもしれません。 それでも、まだ道は残されています。私たちが気づき、変えていくことの出来る未来がきっとあります。この国を愛するひとりでも多くの人たちが、「戦争をしない未来を選びとる」ことを、私
たちは願ってやみません。
 2013年5月 りぼんぷろじぇくと
(引用終わり)
 
 以上のような思いから、早い時期からWEB版が公開されており、著作権についても「非営利的使用に限りオープン」とされています。
 
 WEB版では、全34ページであり、その内訳は、
  表紙 1ページ
  挿絵 11ページ
  文章 16ページ
  空白 3ページ
  注解 1ページ
  奥書 1ページ
  裏表紙 1ページ
となっています。
 全部印刷しても34ページですから、家庭用プリンターでプリントアウトしてもそれほど手間は
かかりません。

 ところで、私はこの『戦争のつくりかた』の文章を全文ワープロで再入力したことがあります。そ
の時私は、「これによく似た文体の文章を、以前入力した覚えがある」という印象を抱いたもの
でした。
 その「よく似た文体の文章」というのが、『世界がもし100人の村だったら 4 子ども編』(池
田香代子編、2006年7月・マガジンハウス刊)なのです。

 2008年12月、私が運営委員を務める「守ろう9条 紀の川 市民の会」主催による
第5回憲法フェスタで、私の知人のお孫さん2人に『世界がもし100人の村だったら(子ども編)』を朗読してもらうという企画を立て、その準備のために朗読用の原稿を私が作ることになり、まずは全文再入力したのです。
 その時キーボードを叩きながら感得した文体と、その後入力した『戦争のつくりかた』の文体に大きな類似性を感じたという訳です。
 もっとも、WEB版の巻末には、「制作協力」15人の筆頭に池田香代子さんの名前が掲げら
れており、「100人村」と同じマガジンハウスから出版されたことから考えても、池田さんがかなりの程度、『戦争のつくり方』に関わられたことは間違いないでしょうから、そういう「予備知識」が「文体が似ている」という印象に影響した可能性も排除はできませんが。
 
 さて、前置きが長くなり過ぎました。
 絵本『戦争のつくりかた』をじっくりとお読みください。
 
 
中国語版(PDF)と韓国語版(PDF)は、以下のページからダウンロードできます。
 
絵本『戦争のついくりかた』テキスト部分引用開始)
(2頁)
あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?
 おじいさんやおばあさんから、
 むかしのことを聞いたことが
 あるかもしれません。
学校の先生が、戦争の話を
してくれたかもしれません。
 話に聞いたことはなくても、
 テレビで、戦争している国を見たことなら、
 あるでしょう。
(3頁)
わたしたちの国は、60年ちかくまえに、
「戦争しない」と決めました。
だからあなたは、戦争のために
なにかをしたことがありません。
 でも、国のしくみやきまりをすこしずつ変えていけば、
 戦争しないと決めた国も、戦争できる国になります。
そのあいだには、
たとえば、こんなことがおこります。
(4頁)
わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、
武器を持って よその国にでかけるようになります。
 世界の平和を守るため、
 戦争でこまっている人びとを助けるため、と言って。
せめられそうだと思ったら、先にこっちからせめる。
とも言うようになります。
(6頁)
戦争のことは、
ほんの何人かの政府の人たちで決めていい、
というきまりを作ります。
 ほかの人には、
 「戦争することにしたよ」と言います。
 時間がなければ、あとで。
(8頁)
政府が、
戦争するとか、戦争するかもしれない、と決めると、
テレビや新聞やラジオは、
政府が発表したとおりのことを言うようになります。
 政府につごうのわるいことは言わない、
 というきまりも作ります。
(10頁)
みんなで、ふだんから、
戦争のときのための練習をします。
 なんかへんだな、と思っても、
 「どうして?」と聞けません。
聞けるような感じじゃありません。
(12頁)
学校では、
いい国民はなにをしなければならないか、
をおそわります。
 どんな国やどんな人が悪者か、もおそわります。
(14頁)
町のあちこちに、カメラがつけられます。
いい国民ではない人を見つけるために。
 わたしたちも、おたがいを見張ります。
 いい国民ではない人がまわりにいないかと。
だれかのことを、
いい国民ではない人かも、と思ったら、
おまわりさんに知らせます。
 おまわりさんは、
 いい国民ではないかもしれない人を
 つかまえます。
(16頁)
戦争が起こったり、起こりそうなときは、
お店の品物や、あなたの家や土地を
軍隊が自由に使える、というきまりを作ります。
 いろんな人が軍隊の仕事を手伝う、というきまりも。
たとえば、飛行機のパイロット、お医者さん、
看護師さん、トラックの運転手さん、
ガソリンスタンドの人、建設会社の人などです。
(18頁)
戦争には、お金がたくさんかかります。
 そこで政府は、税金をふやしたり、
 わたしたちのくらしのために使うはずのお金をへらしたり、
 わたしたちからも借りたりして、お金を集めます。
みかたの国が戦争するときには、
お金をあげたりもします。
(20頁)
わたしたちの国の「憲法」は、
「戦争しない」と決めています。
 「憲法」は、
 政府がやるべきことと、
 やってはいけないことを
 わたしたちが決めた、
 国のおおもとのきまりです。
戦争したい人たちには、つごうのわるいきまりです。
そこで、
「わたしたちの国は、戦争に参加できる」と、
憲法」を書きかえます。
(22頁)
さあ、これで、わたしたちの国は、
戦争できる国になりました。
 政府が戦争すると決めたら、
 あなたは、国のために命を捨てることができます。
政府が、「これは国際貢献だ」と言えば、
そのために命を捨てることができます。
 戦争で人を殺すこともできます。
(23頁)
おとうさんやおかあさんや、
学校の友だちや先生や、近所の人たちが、
戦争のために死んでも、悲しむことはありません。
 政府はほめてくれます。
 国や「国際貢献」のために、いいことをしたのですから。
(25頁)
人のいのちが世の中で一番たいせつだと、
今までおそわってきたのは 間違いになりました。
 一番たいせつなのは、「国」になったのです。
(28頁)
もしあなたが、「そんなのはいやだ」と思ったら、
お願いがあります。
 ここに書いてあることが
 ひとつでもおこっていると気づいたら、
 おとなたちに、
 「たいへんだよ、なんとかしようよ」と
 言ってください。
おとなは、「いそがしい」とか言って、
こういうことに なかなか気づこうとしませんから。
(31頁)
わたしたちは 未来をつくりだすことができます。
戦争しない方法を、えらびとることも。
(32頁)
これは、すでに施行されている法律や法令、
審議中の有事関連法案(2004年6月7日現在)や
国会答弁の内容などを踏まえて書かれた物語です。
(引用終わり)
 
 『戦争のつくりかた』が書かれてから10年経ちました。10年前の「予言」がほぼ実現の「一歩手前」にまで来ていることは、まことに残念ながら認めざるを得ません。
 しかし、そのような状況であるからこそ、「まだ道は残されてい」ると信じて、自らの責任を果たす
以外にありません。
 そして、「戦争をしない未来を選びとる」ための有力なツールとして、この絵本『戦争のつくりか
た』をみんなで活用できればと思います。
 

(付録)
『Don't mind (どんまい)』 作詞作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ