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補遺その2「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~会場からの発言と質疑応答

今晩(2014年8月25日)配信した「メルマガ金原No.1828を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
補遺その2「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~会場からの発言と質疑応答
 
 去る6月7日に設立記者会見を開くとともに、第1回シンポジウム「自衛隊の可能性・国際貢
献の現場から」を開催した「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会(略称:自衛隊を活かす会)」については、既に何度もこのメルマガ(ブログ)でご紹介してきましたし、おそらく、今後とも注目を続けていかねばらなないだろうと考えています。
 
2014年6月14日 
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(1)加藤朗さんの「憲法9条部隊」構想
2014年6月15日
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)柳澤協二さんが語る「日本の安全保障」
2014年6月16日
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)続-柳澤協二さんの最新講演(6/13神
戸市)
2014年6月18日
自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治さんが提起する“非戦”のリ
リズム
2014年7月4日
「衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」
2014年7月30日
補遺「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現
場から」~伊勢﨑賢治氏
 
 既に7月26日に開催された第2回シンポジウム「対テロ戦争におかる日本の役割と自衛隊の文字起こしも一部同会WEBサイトにアップされていますが、これはもう少しまとまってからご紹介することとして、今日は、第1回シンポジウム「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」の補遺その2として、「会場からの発言と質疑応答」の文字起こしをご紹介します。
 
自衛隊を活かす会 第1回シンポジウム 自衛隊の可能性・国際貢献の現場から
会場からの発言と質疑応答
 
 以下、会場からの発言、講演者からの発言の中から、興味深く読ませてもらった部分を何カ所か抜き出して引用したいと思います。
 落ち穂拾い的な面白さもあり、また、講演部分で「はてな?」と思った点が氷解したりと、やは
り「質疑応答」もしっかりと読むべきものですね。
 このように、大変な手間をいとわず、シンポの録音を文字起こししてWEB上に公開し
てくれると、その内容をじっくりと検討することができ、まことに有益です(近い将来、かもがわ出版から書籍化するための準備作業なのかもしれませんが)。
 
会場発言者 泥氏(おそらく泥憲和氏)
兵庫県から参りました、泥と申します。かつて陸上自衛隊に奉職しておりました。若い頃です
けれど、少年工科学校というのがありまして、そこに入った時に自衛隊の任務とは非常に崇高なものであるということを教育されたのですが、何が崇高なのかさっぱりわからなかったのですよ。しかしある時、横須賀の町で反戦デモがあった時に、一人の区隊長がこう言ったのです。
 『今日は外出禁止である。国民の中には君たちを否定する国民もたくさんいる。しかし君たち
を否定するデモをできる日本、自由な日本、民主主義の日本を守るのが君たちの任務である。従って、君たちは崇高な任務に就いているのである』
 こういう教育をされた時に、非常に納得ができました。それ以来、日本国憲法下で日本国憲
法を守る自衛隊員であるということは、私の誇りでした。いま気になっていますのは、たとえば田母神さんが自衛隊士気歴史認識を絡めてみたり、集団的自衛権の議論が起こっているその最中に、総理大臣が靖国だとか従軍慰安婦だとか歴史認識に疑問を持たれるような発言をしたり、どうもすっきりと日本の自由と民主主義を守るための自衛隊なんだと言えないような雰囲気があることです。政治の道具に自衛隊を使っているのと違うかっていう疑問が湧いてきます。自衛官は基本的にノンポリですので、与えられた任務をこなすだけなのですが、やはり同期会で飲んでいると、そういった疑問も出てくるんです。「政府は我々をおもちゃのように扱っているのと違うか」と言う声も出てくる。これは自衛隊士気にも関わることだと思うのですけれども、「自衛隊を活かす会」としては、そういう歴史認識を前に出してきて、自衛隊をどうこうしようとしている風潮について、どのようなお考えをお持ちかなということをお伺いしたいと思います」
 
伊勢﨑賢治氏
「ポスト2014年のアフガニスタンというのは、加藤先生にも追認していただいたように、これからの
未来を考えると非常に重要です。あの辺のことを軍事的に申しますと、アフガニスタンとパキスタンとの両軍が銃を向け合っている所を、ちゃんと軍事監視しなければいけないのです。彼らは歴史的な敵対関係にあります。ですから、完全に半永久的な国際組織として、国連としてのいわゆる信頼醸成措置(CBM)が必要です。
 この役割を含めて、ポスト2014のタリバン化が不可避のアフガニスタンの内政を考えた場合、
その懐に深く入るための特性を考えた場合、更に、南アジア、中国、インド、パキスタン、アフガニスタン、それと隣のイランまで含めて考えたとき、いわゆる西側の国で、この役割に適している国というのは、日本以外にはないです。ドイツの関係者に聞いても、何の疑いの余地もなく、日本が非常に最適であるということが言われます。去年、ドイツのコッホ特使が日本に来たときも、そう言われました。ボン合意のときから、ドイツはアフガンに関わっていますから。だから、かつて2003年から2004年にかけて、日本がSSRに深く関わった時見せたああいうガッツをもう一度というのが、僕が受けたメッセージなんです。
 それと、従来の開発手法では開発できない、麻薬が取り締まれないところをどうやって開発し
ていくのか、拓いていくのかということです。麻薬が植えられているところって、衛星写真からわかるんです。だから枯れ葉剤をまけばいい話なのですが、それができないのです。それをやってしまうと農民達が怒ってタリバンの所へ行ってしまうからです。そこで2004年、2005年にNATOは、芥子の掃討作戦をやめたのです。そういうところがあの地域なのです。ここにいかに入っていくかってことを考えなければいけない。そのアイディアの一つがROZリコンストラクション・オプチュニティ・ゾーンという考え方です。いわゆる特区構想ですね。つまり、何をつくってもいい。とにかく、そういうヤバいところで採れた、つくったもの(麻薬以外は)を日本やアメリカに輸入する時、関税をかけない。つまり、国際投資促進のためのインセンティブです。こういった柔軟な発想をしてこないと、もうやっていけないということです」
 
升味氏(司会)
「伊勢﨑さんがおっしゃっている集団的自衛権というのは、みなさんが共有している集団的自
衛権とは、たぶん概念が違うと思うのですが、どうなんでしょうか?」
 
伊勢﨑賢治氏
「それたぶん僕は9条にあんまりこだわりがないからです。いまのところ、得だから9条を守るべき
だと思ってますけど、教義的なこだわりはありません」
 
柳澤協二氏
「私も政府にずっといた人間ですから、伊勢﨑さんの話には、ピンと来ない面があるのです。ま
あそこは、伊勢﨑さん特有の語り方という面もあるものだから気にしたってしょうがないんですけど。つまり、一般的な集団的自衛権の話しは、武力の行使をするかしないかという概念です。ところが伊勢﨑さんがおっしゃっているのはそういうことじゃなくて、アフガンはもう本当に目の前ですぐ大変になるぞ、アメリカがもうガチャガチャにして、そのまま引き上げようとしている、これを放っといていいのかということです。そこの危機感から来ているので、じつは概念はどうでもいいことなんですよね?」
 
伊勢﨑賢治氏
「はい」
 
加藤朗氏
「それともう一つ安倍さんのことで言うと、歴史認識の問題があります。戦後レジームからの脱
却というのが、たぶん安倍さんのめざす最高の目標なのだろうと思います。でも安倍さんが忘れていることが一つあって、戦後レジームというのは、実は天皇制と平和主義なんです。この2つがセットなんです。憲法9条を変えるということは、同時にポツダム宣言を受け入れるときに、我々が連合国にお願いした天皇制護持の要求と密接にリンクしていますから、平和憲法だけを変えるということはできない。改憲問題では天皇制をどうするかということが、暗黙裏に問われていると思うんです。このことが解決しない限り、我々の国家戦略はなかなか合意が得られないのではないかと思います」
 
柳澤協二氏
「さっき私なりの総括といったことも申し上げさせていただきましたし、長くしゃべれば良い知恵が
出るというわけでもないので、内容についてはお聞きの通りであります。まだまだ我々自身がつめていかなければいけないし、今日もお話しを伺いながら、このメンバーで合意点を見いだすって、このこと自体も結構難しいなと思いつつ、しかし、非常にチャレンジングでアドベンチャラスな部分もあって、いままで考えないですんできたことを考えなければいけない時代に入ったんだと思うんですね。事務局としては最終的にレポートという形で出版まで持っていきたいという希望をお持ちで、私もそうできればいいと思っていますが、必ずしも統一した結論にならなくてもいいとも思います。加藤先生のご報告などは、そのままテレビで発言してもなかなか数字を取れないと思うんですけれども、いまの世の中に対する体系だった問題提起を、この半年ぐらいでして
いければいいなと考えております。引き続きいろいろご批判、ご叱声、あるいはアイデアもいただければと思っております。最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました」
 
(補足)
 加藤朗さんの発言「戦後レジームというのは、実は天皇
と平和主義なんです」については、分かっている人にとっては「常識」でも、もしかするとピンと来ない人がいるかもしれませんね。ただ、この話を始めるとそれだけで1つの重いテーマとなりますので、とりあえず、このテーマを理解する上で必読の歴史資料をご紹介しておきます。
 
1945年8月10日 三国宣言受諾ニ関スル件
(抜粋引用開始)
帝国政府ハ一九四五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ米、英、支三国政府首脳者ニ依
リ発表セラレ爾後「ソ」聯政府ノ参加ヲ見タル共同宣言ニ挙ケラレタル条件ヲ右宣言ハ 天皇ノ国家統治ノ大権ヲ変更スルノ要求ヲ包含シ居ラサルコトノ了解ノ下ニ受諾ス
(引用終わり)
 
1945年8月14日 米英蘇支四国ニ対スル八月十四日附帝国政府通告
(引用開始)
ポツダム」宣言ノ条項受諾ニ関スル八月十日附帝国政府ノ申入並ニ八月十一日附「バー
ンズ」米国国務長官発米英蘇支四国政府ノ回答ニ関聯シ帝国政府ハ右四国政府ニ対シ左ノ通通報スルノ光栄ヲ有ス
一 天皇陛下ニ於カセラレテハ「ポツダム」宣言ノ条項受諾ニ関スル詔書ヲ発布セラレタリ
二 天皇陛下ニ於カセラレテハ其ノ政府及大本営ニ対シ「ポツダム」宣言ノ諸規定ヲ実施ス
ル為必要トセラルヘキ条項ニ署名スルノ権限ヲ与ヘ且之ヲ保障セラルルノ用意アリ又 陛下ニ於カセラレテハ一切ノ日本国陸、海、空軍官憲及右官憲ノ指揮下ニ在ル一切ノ軍隊ニ対シ戦闘行為ヲ終止シ武器ヲ引渡シ前記条項実施ノ為聯合国最高司令官ノ要求スルコトアルヘキ命令ヲ発スルコトヲ命セラルルノ用意アリ
(引用終わり)
 
1946年2月3日 マッカーサーノート(マッカーサー三原則)
(引用開始)

The Emperor is at the head of the State.
天皇国家元首の地位にある。
His succession is dynastic.
皇位世襲される。
His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and
responsible to the basic will of the people as provided therein.
天皇の職務と権限は、憲法に基づいて行使され、憲法の定めるところにより、国民の基本
的意思に対して責任を負う。
II
War as a sovereign right of the nation is abolished.
国家の主権としての戦争は廃止される。
Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for
preserving its own security.
日本は、紛争解決の手段としての戦争のみならず、自国の安全を維持する手段としての
戦争も放棄する。
It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense
and its protection.
日本は、その防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に信頼する。
No Japanese army, navy, or air force will ever be authorized and no rights of
belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.
日本が陸海空軍を保有することは、将来ともに許可されることがなく、日本軍に交戦権
与えられることもない。
III
The feudal system of Japan will cease.
日本の封建制度は廃止される。
No rights of peerage except those of the Imperial Family will extend beyond the
limits of those now existent.
華族の権利は、皇族を除き、現在生存する一代以上に及ばない。
No patent of nobility will from this time forth embody within itself any national or
civic power of government.
華族の特権は、今後、国または地方のいかなる政治的権力も包含するものではない。
Pattern budget after British system.
予算は英国の制度を手本とする。
(引用終わり)