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住民健康管理における「過剰診断」とは何だ?

今晩(2014年8月29日)配信した「メルマガ金原No.1832」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
住民健康管理における「過剰診断」とは何だ?
 
 長瀧重信長崎大学名誉教授が座長を務める環境省に設置された「東京電力福島第一原
子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」は、OurPlanet-TVが継続的に取材・撮影してくれています。
 その全てをフォローできている訳ではないのですが、折りにふれて視聴し、色々と思うところがあ
ります。
 今日は、一昨日(8月27日)開かれた第10回会議の模様をご紹介します。
 
(番組案内引用開始)
 東京電力福島第一原発事故に伴う住民の健康調査に関する健康影響を検討している専
門家会議で27日、福島県の県民健康調査検討委員会の座長らが参考人として意見を述べ、全面的な国の支援をあおいだ。また、環境省は「健康調査に関する論点整理」を提示。しかし、論点が「福島県民健康調査」に絞られている上、内容があまりに簡素なため、傍聴者からは「これだけなのか?」と言った怒りの声があがった。
福島県民健康調査の見直し議論
 「住民の健康管理」が会議設置の目的でありながら、過去9回にわたって、ひばく線量評価
やリスク評価のみを議論してきた同会議。前回、委員から批判があがったことを受け、27日はまず佐藤礼子参事官補佐が、福島県で実施されている福島県民健康調査の結果や国の健診体勢を説明。この後、福島県立医大の放射線医学県民健康管理センター副センター長の安村誠二教授と県民健康調査検討委員会の星北斗座長のヒヤリングが行われた。
 星座長は県の健康調査の回答率や受診率が低い一方で、「甲状腺検査の結果だけに注
目が集まってしまっている。」と説明。「考え方を変えていく転機」ではないかと、座長による「中間まとめ」を24日に提示した背景を述べると、委員からは、、「過剰診断のおそれ」や「不安を与える」などの理由をあげ、甲状腺がん検査の継続に慎重な意見が相次いだ。
 しかし、日本医師会の常任理事で小児科医の石川広己医師はこれに反論。「私の立場と
しては、人数的にも増やす。住民に広くやっていただく。健診をもっと発展させるという方向で議論していいのか。」と切り込み、「過剰診断」との意見に対し、「利益、不利益というが、不安を抱えている住民ががん検診をやりたいなら、できるような体制をとるべきだ。不利益とは誰の不利益なのか」と批判した。
 また福島県民健康調査の甲状腺評価部会の座長をつとめる日本医科大学の清水一雄
教授も、「子どもの甲状腺癌は大人に比べアグレッシブ。 亡くならなくてもQOLが下がるケースもある」として、「過剰診断」との声に反発した。
健康調査は福島県内に限定か~論点整理
 会議では、最後に佐藤参事官補佐が、健康調査に関する論点整理が示された。しかし、
内容的に福島県内の健康調査のみに論点が絞られ、県外の健診に対する健康項目や、被ばくによる健診項目についての検討も示されていないため、傍聴席からは驚きの声があがった。論点整理に対し、安村副センター長は、基金などの財政支援だけでなく、人材、ノウハウなどの実質的な国の支援を求めた。
 同会議は、当初の会議の目的として、「福島近隣県を含め、国として健康管理の現状と課
題を把握し、そのあり方を医学的な見地から専門的に検討する」とした上で、「原発事故子ども・被災者支援法」において、国は放射線による健康への影響に関する調査等に関し、必要な施策を講ずることとされていると記載。「線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策のあり方等を専門的な観点から検討する」としていた。
(引用終わり)
 
 
 私は、まだダイジェスト版(約21分)しか視聴していないのですが、皆さんも、上記番組案内で紹介されている石川広己氏や清水一雄氏の発言と、これに対立する「過剰診断論」(ダイジェスト版では祖父江友孝大阪大学大学院医学系研究科環境医学教授の発言に代表されていましたが)を対比して、「もしも自分が福島に住む子を持つ親ならどう思うか」という視点から考えてみて欲しいと思いました。
 
 最後に、この会議の「開催要項」の一部をご紹介しておきます。
 これからも、この「専門家会議」の推移には注目しなければと思います。
 
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 開催要綱
1.趣旨
(1)平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管
理については、国が拠出した基金を活用し、福島県が県民健康管理調査を実施しているところであるが、福島近隣県を含め、国として健康管理の現状と課題を把握し、そのあり方を医学的な見地から専門的に検討することが必要である。
(2)また、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支
えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(平成24年6月27日法律第48号)において、国は放射線による健康への影響に関する調査等に関し、必要な施策を講ずることとされている。
(3)これらの状況を踏まえ、線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策のあり方等を専
門的な観点から検討するため、「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」を環境省総合環境政策局環境保健部に設置する。
2.名称
(略)
3.検討内容
(1)被ばく線量把握・評価に関すること
(2)健康管理に関すること
(3)医療に関する施策のあり方に関すること
(4)その他関連すること 
4.委員構成 
別紙のとおり。
5.運営
(1)専門家会議に座長を置き、座長は委員の互選によって選定する。
(2)座長は、専門家会議を招集し、主宰する。
(3)座長は、あらかじめこれを代行する者を指名し、座長に事故があるときは、その者がその
職務を代行する。
(4)座長は、必要に応じ、構成員以外の専門家等に出席を求めることができる。
(5)専門家会議は、原則公開とする。
6.庶務
(略)