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日本会議→自民党→県議会→「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」議決?(和歌山県議会の動き)

 今晩(2014年9月18日)配信した「メルマガ金原No.1852」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日本会議自民党→県議会→「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」議決?(和歌山県議会の動き)
 
 今年(2014年)の3月26日付で共同通信が配信した「自民、改憲へ意見書採択を要請 各県連に」という記事を引用しつつ、私が以下の記事をメルマガ(ブログ)に書いたのは、それから1ヶ月以上も経過した4月29日のことでした。
 
 
 上記共同通信の記事を再掲します。
 
2014年3月26日 共同通信
自民、改憲へ意見書採択を要請 各県連に

(引用開始)
 自民党が各都道府県連に、憲法改正の早期実現を求める意見書を県議会や市町村議
会で採択するよう文書で要請していたことが26日、分かった。地方から声を上げさせ、改憲の機運を高める狙い。これまでに、富山県議会などが採択した。党関係者が明らかにした。
 文書は、竹下組織運動本部長と吉野地方組織・議員総局長の連名で都道府県連の会
長、幹事長宛てに13日付で送付された。「党は『憲法改正原案』の国会提出を目指し、憲法改正に積極的に取り組んでいる」とした上で「憲法改正運動には大規模な国民運動が不
可欠だ」と強調した。
 通達後は、富山、香川、愛媛の各県議会などが意見書を可決。 
(引用終わり)
 
 私は、これらの動きを紹介した上で、「いかに論理性のかけらもないひどい『意見書』であろうと、議決がなされるということ自体による政治的影響は無視し得ません。各地における監視を強め、『意見書』採択阻止のための取組が必要だと思います」と書きましたが、その後、集団自衛権行使容認「閣議決定」騒動にかまけてしまい、「明文改憲」の動きに対するフォローがすっかりお留守になっていたのはうかつでした。
 
 私の地元、和歌山県議会では、9月定例会が、9月9日(火)から同月26日(金)までの日程で開会中なのですが、今日(18日)になって、日本会議和歌山(角荘三会長)から和歌山県議会に対してなされた「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」を提出するよう求める請願(本年8月15日付)が、9月9日(9月定例会初日)に総務委員会に付託され、来る9月22日(月)に総務委員会で審議される予定であるという情報が飛び込んできました。
 
 私が入手した「請願書」及び「意見書(案)」のPDFファイルは以下のとおりです。
 煩をいとわずに書き写してみます。
 
(引用開始)
-請願書-
1.国会が憲法改正案に対して国民が判断できる機会を早急に設けるべく、次期国政選挙
までに憲法改正発議を行い、国民投票を実現するよう、和歌山県議会が国会に対し意見書を提出されるよう、地方自治法第124条の規定により請願する。
 
2.理由
 現憲法が昭和22年5月3日に施行されて以来、今日に至るまでの約70年間に、我が国を
巡る諸情勢は劇的に変化を遂げている。
 我が国を取り巻く東アジア情勢は、中国の軍拡による尖閣諸島への軍事的脅威の増大、
北朝鮮による核ミサイル開発によって緊迫化しており、一刻の猶予も許されない事態に直面
している。
 一方、国内では家庭、教育、環境などの問題や、大規模災害等への対応が求められるよ
うになっている。
 成文憲法を持っている世界各国では、現実に合わせるべく憲法改正を行ってきており、戦
後、主要国で憲法改正を行っていない国は日本だけである。
 国民が現実と現憲法規定との乖離の解消を望んでいることは、各種世論調査において、憲
法改正の支持が常に過半数を上回っていることに明らかである。
 また、各政党・各報道機関・民間団体からも具体的な改憲案が提唱されている。
 国権の最高機関として、国民から国政を付託されている国会は、国民に対して憲法規定の
是非を自らが判断する国民投票の機会を一刻も早く与える責務がある。
 
                            平成26年 8月15日
 和歌山県議会議長 阪 本   登 様
 
               請願者 住所(略) 和歌山県神社庁
                     電話番号(略)
                 氏名 日本会議和歌山 会長 角   荘 三
                     電話番号(略)
                 
-意見書(案)-
            国会に憲法改正の早期実現を求める意見書(案)
 
 日本国憲法は、昭和22年5月3日の施行以来、今日に至るまでの約70年間、一度の改正も行われておりません。
 しかしこの間、わが国を巡る内外の諸情勢は劇的に変化を遂げています。すなわち、わが国
を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面しています。さらに、家族、環
境などの問題や大規模災害等への対応が求められています。
 このような状況変化を受け、様々な憲法改正案が各政党、各報道機関、民間団体等から
提唱されております。国会でも、平成19年の国民投票法の成立を機に憲法審査会が設置さ
れ、憲法改正に向けた制度が整備されるに至りました。
 新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早
期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求めます。
 以上、地方自治法第98条の規定に基づき意見書を提出します。
 
 平成26年  月  日
 
                                  和歌山県議会
 
衆議院議長 殿
参議院議長 殿
(引用終わり)
 
 なお、この請願の紹介議員は、尾﨑太郎議員と吉井和視議員であり、両名とも自由民主党県議団の所属です。
 ちなみに、和歌山県議会の定数は42人、現員40人、欠員2人で、会派別内訳は、
  自由民主党県議団 28人
  改新クラブ        5人
  日本共産党県議団  4人
  公明党県議団     3人
となっています。
 
 このような議席状況だとどういうことになるかというと、先の6月定例会に提案された以下の2つの意見書(案)が、いずれも反対多数であえなく否決されるということになる訳です。
 
 
 この前の県議会議員選挙(2011年)において自分が投票して当選した自民党議員が、上記のような「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書(案)」を提案し、議決を目指しているということを知ってなお、和歌山県自民党支持者はそれを容認するのでしょうかね?(もしかすると、何も考えていない?)
 
 現在、総務委員会に付託されて審議予定の「意見書(案)」の内容は、自民党本部か日
本会議本部かが指定したモデル案通りなのでしょう。だいたい他の県議会で議決された意見
書と同じような内容です。
 そのいちいちについて批判するのもばかばかしいのですが、一言くらい言っておきましょうか。
 
日本国憲法は、昭和22年5月3日の施行以来、今日に至るまでの約70年間、一度の改正も行われておりません。
→それがなぜ「改正」を要する理由になるのか意味不明です。有名な話ですが、アメリカ合衆
憲法は、1787年の制定(翌年の発効)以来、条項追加はあっても「改正」されたことなど一度もありません。
 
しかしこの間、わが国を巡る内外の諸情勢は劇的に変化を遂げています。すなわち、わが国を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面しています。
→安保法制懇や安倍内閣閣議決定と同じ「論理」ですが、勝手な決めつけに過ぎない上に、
万一そうだったとしても、それが「憲法改正」によってどのように事態が改善されるのかの筋道が全く不明です。
 
さらに、家族、環境などの問題や大規模災害等への対応が求められています。
→なぜ、いちいち憲法「改正」で対応しなければならないのか、何の論証もありません。
 
新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求めます。
→この結論部分は無茶苦茶です。何でも新しければ良いというものではないでしょう。この「意
見書(案)」では、「この憲法と一体を成す」(日本国憲法96条2項)具体的な「改正案」の発議を促すというのではなく、単に「新たな時代にふさわしい憲法に改める」ための改正発議を求めているのですが、そもそもそんな「改正発議」を憲法96条が想定しているとは到底考えられませ
ん。
 しかも、憲法改正発議に関わる権限を全く有しない県議会が、何故「当該普通地方公共
体の公益に関する事件」(地方自治法99条)としてこのような意見書を国会に提出することができるのか、その法的根拠はすこぶるあいまいです。
 なお、この「意見書(案)」のばかばかしさが、各種世論調査における「憲法改正に賛成か反対か」という(具体的にどう「改正」するかを問わない)ばかげた質問と同質のものであることは言うまでもありません
 
 さて、和歌山県議会総務委員会が4日後の9月22日、その後の本会議は、25日、26日(会期末)と差し迫っており、しかも、会派別の議員数の状況は上に述べたとおりです。さてどうしますかね。何もしない訳にはいかないでしょうが。来年の統一地方選挙もありますから、最低限、各会派、各議員がいかなる対応をしたかはしっかりとみんなで情報を共有しなければなりません。
 
 ちなみに、日本会議和歌山の事務所が和歌山県神社庁の中に入居していることを初めて知りました。
 和歌山県神社庁オフィシャルサイト「概要」の中の〈関係団体〉として、和歌山県神社総代会や神道政治連盟和歌山県本部などとともに、日本会議和歌山もしっかりと関係団体の1つとして紹介されています。
 ということで、調べてみると日本会議本部神社本庁との間にも密接な関係があるようですね。
 気安く参拝している地元の神社が、神社本庁や県神社庁を通じて日本会議に繋がっている
ということを知ると、今まで通り参詣する意欲がそがれるのはやむを得ないところでしょう。
 それこそ、各地の神社に集う善男善女に、本当に「憲法改正」を望んでいるのかどうか、是非きいてみたいものです。
 
 第2次安倍改造内閣の閣僚(首相を含む)19人の内、実に15人が「日本会議国会議員懇談会」のメンバーであり、「日本会議内閣」と称してもおかしくないことはかなり知られてきたことと思いますが、どうやら各地の地方議会でも似たような状況なのかもしれません。
 「日本会議地方議員連盟公式サイトには、正会員を紹介するページがあり、それを見ると、和歌山県議会議員の中の「正会員」は、
  尾崎 太郎  自民党県議団
  長坂 隆司  改新クラブ
  吉井 和視  自民党県議団
の3人だそうです。
 なるほど、それで尾﨑議員と吉井議員が、日本会議和歌山からの請願の紹介議員になった理由もよく分かります。
 ところで、長坂議員は、採決の際にどうするのでしょう? 
 
 最後に、日本会議とはどういう「理想」を掲げている団体かをしっかりと認識しておきましょう。
 とりあえずは、公式サイトの中の「日本会議が目指すもの」に目を通すのが早いでしょう。