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安倍政権を多角的に分析する(政治学、憲法学、経済学、歴史教育の視点から)~神奈川憲法アカデミア・シンポジウムで学ぶ

今晩(2014年10月4日)配信した「メルマガ金原No.1868」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安倍政権を多角的に分析する(政治学、憲法学、経済学、歴史教育の視点から)~神奈川憲法アカデミア・シンポジウムで学ぶ
 
 私たちの周りでは、様々な講演会やシンポジウムが開かれており、私自身、参加するだけではなく、主催者側として企画に関わることも少なくないのですが、10年以上前と現在とを比べて決定的に異なるのは、インターネット動画サイトの普及です。
 かねてその著書を読んで感銘を受け、一度お話を聴いてみたいという方がいたとしても、東京
などの大都会に居住していれば各別、地方在住者にとって、実際にその講演に接する機会などごく限られたものでした。
 ところが今や、YouTubeUSTREAMにより、次々と動画がアップされ、多くは無料で視聴す
ることができます
 もちろん、実際に講演会に足を運んで耳を傾けるという体験と、動画サイトの映像を視聴す
ることを同一視する訳にはいきませんが、その限界は意識しつつ、新たな知見を得るための非常に有力なツールとして、動画サイトの活用は重要です。
 とはいうものの、「あまりに多い!」と嘆声を発せざるを得ない状況の中、限られた時間の中
で視聴するに値する映像を探し出す能力を各自が身につける必要がますます高まっているのですが、「これで決まり」というようなコツがある訳ではないですからね。
 
 今日私がご紹介しようと思う、7月17日に神奈川憲法アカデミアが開催したシンポジウム「安倍政権と日本社会の行方」についても、青井未帆学習院大学教授の講演映像を探している過程で偶然見つけたものでした。
 YouTubeの映像説明によると、神奈川憲法アカデミアとは「(神奈川)県内大学教員・元大
学教員の有志のあつまりで、憲法問題を中心に講演会などを催しています」ということで、県内に法学部を有する大学が存在しない和歌山県に住む者として実に羨ましいと思ったことと、政治学(杉田敦法政大学教授)、憲法学(青井未帆学習院大学教授)、経済学(金子文夫横浜市立大学名誉教授)、地理学・歴史教育(高嶋伸欣琉球大学名誉教授)など、多方面の専門家が、それぞれの立場から「安倍政権」とはいかなる存在かについての意見を述べておられ、そのような多角的視点からの検討によって見えてくるものがあるのではないかという期待からご紹介することとしたものです。
 正直、私自身、まだつまみ食い的に飛び飛びの視聴しかできていませんので、まとまった時間
を作り出して勉強したいと思います。
 
 映像は、シンポジウムの構成に合わせて3本に分かれています。その内容の概略をご紹介します。
 
神奈川憲法アカデミア・シンポジウム「安倍政権と日本社会の行方」
2014年7月17日 於:かながわ県民センター
 
第1部 基調講演「安倍政権は何をめざすか」
 https://www.youtube.com/watch?v=WAvDxyxgVuQ
冒頭~ 司会 阿部浩己氏(神奈川大学教授/法務研究科)
1分~ 開会挨拶 神奈川憲法アカデミア共同代表 中西新太郎氏(横浜市立大学名誉
教授/文化社会学) 
8分~ 杉田敦氏(法政大学教授/政治学) 講演
 
第2部 各分野から考える
 https://www.youtube.com/watch?v=6Ulb3JbZg8M
2分~「集団的自衛権解釈改憲
 青井未帆氏(学習院大学教授/憲法学
「そういうことから考えますと、集団的自衛権というのは、典型的に言うなら他国防衛とい
うことになりますから、とうてい今までの政府の説明からも、説明し得ないはずなんじゃないか。日本国憲法というのは、そもそも、「国家権力」-(マイナス)「軍事に関する昔天皇が持っていたような大権」が日本の国家権力の総和だったんじゃないか。控除説に立つとしても、全ての権力から引いてきたんじゃなくて、「全ての権力」引くことの「軍事に関わる大権」、これがもう欠けちゃっているところで、日本の国家というものを考えてきたんじゃないか。だとすると、今回の内閣がやったことは、そもそも欠けていた部分を作っちゃったんじゃないか。ないものを作り出してしまったに等しいんじゃないか。そういうような、権力が、憲法によって作られた権力がですね、自分を作った憲法を超えるようなことをしているに等しい訳ですよね、言ってみれば。どう考えてもあり得ない。これは正当性が認められるものではないということを主張していかなくちゃいけないんじゃないかなあ」
※以上の青井教授が指摘した点、73条によって憲法が内閣に付与した行政権(一般行政事務)
を超える権限を、内閣自身が閣議決定によって勝手に作り出したに等しいということであり、憲法学上、非常に重要な論点です(木村草太首都大学東京准教授の同様の主張をご紹介したことがありましたね)。 
16分~「アベノミクスと成長神話」
 金子文夫氏(横浜市立大学名誉教授/経済学)
33分~「教育制度と歴史教育」
 高嶋伸欣氏(琉球大学名誉教授/地理学・歴史教育)
 
第3部 質問に答えて
 https://www.youtube.com/watch?v=ucxBRDWhPqo
冒頭~ 杉田敦
7分~ 青井未帆氏
16分~ 高嶋伸欣
※22分~で「1972年5月15日付」の「沖縄タイムス」の紙面(日本国憲法全文が掲載さ
れた)が紹介されていますが、「5月15日」というのは、安保法制懇「報告書」が提出され、安倍首相がトンデモ記者会見その1を行った日なんですよね。
33分~ 金子文夫氏
35分~ 青井未帆氏
39分~ 杉田敦
45分~ 閉会挨拶 神奈川憲法アカデミア共同代表 久保新一氏(関東学院大学名誉
教授/経済学) 
 
(付記)
 「Peace Philosophy Centre」に、高嶋伸欣氏が今年の8月16日にマレーシアで行った講演「日本軍によるマレー戦線の加害事実を掘りおこしてきた私たちのこれまでの取り組み」の講演録が掲載されています。是非ご一読をお勧めしたいと思います。