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法律家等4団体が憲法改正促進意見書を採択した和歌山県議会に対して抗議声明

 今晩(2014年10月22日)配信した「メルマガ金原No.1886」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
法律家等4団体が憲法改正促進意見書を採択した和歌山県議会に対して抗議声明
 
 和歌山県議会が、9月定例会の最終日である9月26日、多くの県民、諸団体からの反対や慎重審議を求める申入れを一顧だにせず、「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」
を採択したことは、本メルマガ(ブログ)で詳しくお知らせしたとおりです。
 試みに、「和歌山県議会」「憲法改正」「意見書」というキーワードでグーグル検索してみると、
トップページに出てくる記事の半分以上は私のブログでした(何と言ったら良いのか・・・)。
 いちいち経過を再説する煩を避けるため、私の「連載」記事にリンクしておきますので、興味のある方はそちらをお読みください。
 
2014年9月18日
日本会議→自民党→県議会→「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」議決?(和歌山県議会の動き)
2014年9月24日
法律家等4団体が和歌山県議会議長・各会派に共同申入書を送付(憲法改正促進意見書採択を阻止するために)
2014年9月25日
日本会議&自民党による改憲促進「意見書」運動を取り上げた朝日新聞のすぐれた調査報道(8/1)に遅ればせながら注目した
2014年9月26日
馬場潔子さんのレポートで読む和歌山県議会が県政史に汚点を残した1日 ※追記・訂正あり
2014年9月27日
地方議会の「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」は憲法尊重擁護義務に反する
 
 さて、上記記事のタイトルを一読していただくだけでも、おおよその流れはご理解いただけると思いますが、「意見書」採択に反対する4団体(9条ネットわかやま、憲法9条を守る和歌山弁護士の会、自由法曹団和歌山支部、青年法律家協会和歌山支部)が共同で、「本請願を拙速に採択することなく、伝えられるような内容の『意見書』を議決されぬよう」求める申入書を、裁決の2日前に県議会及び各会派に送付していましたので、これを無視した「意見書」採択を放置はできないだろうということで抗議声明を出すことになりました。
 「申入書」を4団体共同で送付した以上、その内の一部の団体だけで抗議声明を出すというのも変なので、4団体で合意できる内容に調整するために少し時間がかかりましたが(と言うほど意見の食い違いがあった訳ではありません)、本日(10月22日)、以下の内容の
「抗議声明」を、4団体共同で発表し、県議会事務局及び各会派にも参考送付しました。
 以下にその全文をご紹介します。
 

    和歌山県議会が議決した「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」
                   についての抗議声明
 
2014年(平成26年)10月22日
 
                      9条ネットわかやま
                        世話人代表  花 田 惠 子
                            同    藤 井 幹 雄
                      憲法9条を守る和歌山弁護士の会
                        代表世話人  豊 田 泰 史
                            同    藤 井 幹 雄
                            同    山 﨑 和 友
                      自由法曹団和歌山支部
                         支 部 長  由 良 登 信
                      青年法律家協会和歌山支部
                         支 部 長  岡    正 人
 
 私たちは、本年9月24日、和歌山県議会及び県議会全会派に対し、「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」提出を求める請願を「拙速に採択することなく」、そのような意見書を議決することがないよう申し入れた。
 しかるに、和歌山県議会は、本年9月26日、全く十分な議論をすることなく、「国会に憲
法改正の早期実現を求める意見書」の提出を求める請願を採択した上、総務委員会提出
による同題の意見書(以下「同意見書」という)を議決した。
 そもそも、和歌山県議会は、和歌山県民からの負託を受け、和歌山県民の総意を代表す
べき立場にあるものである。他方、憲法改正については、日本国民、和歌山県民の中には様々な意見があるところであるが、「国会に憲法改正の早期実現を求める」意見は、そのうちの(ごく)一部の意見にすぎない。これを和歌山県民の総意を代表する和歌山県議会の意見として提出するのであれば、その前に、公聴会を開く、あるいはパブリックコメントを募集するなど、県民から広く意見を求めるべきである。しかるに、同意見書についての審議は、一議員の反対討論があったのみで、全く十分な審議がなされたとは言いがたく、極めて拙速に行われ
た議決という批判を免れない。
 そして、同意見書は、前記申入書で指摘したとおり、その内容自体、法論理的にも極めて
問題があるものである。
 即ち、同意見書は、具体的に日本国憲法のどの条項をどのように改正すべきかについては
一言も述べず、ただ「我が国を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面して」おり、「家族、環境などの諸問題や大規模災害等への対応が求められている」ので、「新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求める」と結論付けているが、そのような理由が、国会が憲法改正発議(憲法96条1項)をすべき理由になるとは到底考えら
れない。
 前段の東アジア情勢悪化論は、何の根拠も示さぬ決めつけに過ぎず、よしんばそのような情
勢があったとしても、憲法を具体的にどのように改正することによってどのように国際環境が改善するのかという論証を抜きにした改正発議などあり得ない。また、後段の理由としてあげられている「家族、環境、大規模災害への対応」についても、そもそも、現在の対応が不十分なのかどうか、仮に不十分な点があるのなら「法律改正」ではなく、「憲法改正」でなければならない
理由は何なのかという検証が全く欠落している。
 そして、「国民が自ら判断する国民投票を実現する」ために国会に対して憲法改正発議を
するよう求めるという同意見書の結論それ自体、憲法解釈論上、成り立ち得ないものである。なぜなら、日本国憲法96条は、具体的個別の条項を修正する必要がある場合に、国会による改正発議、国民投票による承認という手続を経た上で、「この憲法と一体を成すものとして」(憲法96条2項)公布すべきと定めていることから明らかなとおり、施行以来「一度の改正も行われていない」からとか、「新たな時代にふさわしい憲法に改めるため」などという理由で、「国民が自ら判断する国民投票を実現する」ための改正発議など、そもそも全く想定していな
いからである。
 以上のとおり、私たちは、内容的にも非常に問題の多い同意見書を、県民から広く意見を
聴取することなく、拙速に議決した和歌山県議会に対し、強く抗議する次第である。
 

 上記「抗議声明」をより良く理解していただくためには、やはり、和歌山県議会が議決した「意見書」そのものを読んでいただくべきでしょうね(和歌山県議会「意見書」と、その手本となった石川県議会「意見書」の徹底比較は、私のブログ~9月27日に書いたもの~をご参照ください)。

                                          和議第152号
         国会に憲法改正の早期実現を求める意見書(案)
 
 日本国憲法は、昭和22年5月3日の施行以来、今日に至るまでの約70年間、一度の改正も行われていない。
 しかしこの間、わが国を巡る内外の諸情勢は劇的に変化を遂げている。すなわち、我が国
を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面している。さらに、家族、環
境などの諸問題や大規模災害等への対応が求められている。
 このような状況変化を受け、様々な憲法改正案が各政党、各報道機関、民間団体等か
ら提唱されている。国会でも、平成19年の国民投票法の成立を機に憲法審査会が設置さ
れ、憲法改正に向けた制度が整備されるに至った。
 新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改 正案を早
期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求める。
 
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 
  平成26年9月26日
 
          様
                          和歌山県議会議長 坂本  登
                                (提 出 者)
                          総務委員会委員長 花田 健吉
 
(意見書提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
 
 9月24日に提出した「申入書」と、本日発表した「抗議声明」では、共通の主張ももちろん多いのですが、読み比べてみれば、「申入書」にはあった「2つの99条問題(地方自治法日本国憲法)」への論及が「抗議声明」では落ちており、逆に、「抗議声明」では新たに、県民の間に意見の相違がある問題について、その一方の意見を県民の総意として「意見書」採択をするというのであれば、議会は、県民から広く意見を求めるべきであったのに、全く十分な審議がなされなかったという点を強調しています。
 私は、その間の変化を説明する立場になく、説明するのが適切だとも思いません。
 ただ、9月27日に書いた記事のタイトルにも明示したとおり、「2つの99条問題」の内、少なくとも憲法99条(憲法尊重擁護義務)は、一連の地方議会による憲法改正促進「意見書」採択を考える際に絶対避けてはならない論点だと、個人的には確信しています。
 
 実は、青年法律家協会弁護士学者合同部会から、機関誌「青年法律家」の次号(524号)のために、和歌山県議会におけるこの間の経緯を踏まえた原稿を執筆して欲しいという依頼があり、まもなく掲載号が届くと思うのですが、まだ発行前なので、全文転載は遠慮すべきでしょう。
 ただ、拙稿の末尾において、私が「この問題には、『地方議会議員憲法尊重擁護義務』という非常に重要な憲法上の論点も関係しており、青法協の組織をあげて、理論的・実践的な取り組みを進めていただきたいと希望する」と書いたことをご紹介し、今後の議論の進展に期待したいと思います。