wakaben6888のブログ

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映画『A2-B-C』を観てイアン・トーマス・アッシュ監督の話に耳を傾けた~次は自分が何をすべきかということ

今晩(2014年10月27日)配信した「メルマガ金原No.1891」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
映画『A2-B-C』を観てイアン・トーマス・アッシュ監督の話に耳を傾けた~次は自分が何をすべきかということ
 
 昨日(10月26日)、かねてお知らせしていたとおり、原発事故後の福島に取材したドキュメンタリー映画『A2-B-C』が和歌山市のあいあいセンターで上映され、監督のイアン・トーマス・アッシュさんにもトークをお願いしました。
 
2014年5月26日
ドキュメンタリー映画『A2-B-C』順次公開中
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/38327464.html
2014年9月9日
映画『A2-B-C』和歌山市上映会(10/26)へのお誘い
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/40105132.html
 
 2011年3月から、「メルマガ金原」の配信を始めて以来、様々な映画の上映会をご案内してきましたし、その中には、自分も呼びかけ人となった作品もありましたが、事前に試写会が開かれる作品は例外として、多くの作品はせいぜい予告編を観ただけで上映会当日を迎えることになります。
 そのような場合、作品の出来映えを予想はしていても、周りの人に広言することは控えるよう
にしてきました。やはり、出来るだけ余計な先入観抜き出作品に向き合ってもらいたいですからね。
 ですから、『A2-B-C』のように、上映会の前から(観てもいないのに)「優れた作品(のはず)
です」と太鼓判を押しながら上映会への参加を呼びかけたりしたのは、多分初めてのことでした。
 第一、上記私のブログの内、5月26日の記事は、日本(東京)での上映が始まってまだ間
がない頃に、和歌山で上映できるかどうかの見通しなどまだ全く立っていないにもかかわらず、「優れた作品に違いない。是非観たい」という予感と願望に導かれて書いたものでしたから。
 従って、昨日の上映(午前の回を客席で観ました)を観終わって最初に口を突いて出た言葉
が、「期待どおりだった」という平凡で短いものに過ぎなかったとしても、事情ご理解いただけるのではないでしょうか。
 
 もちろん、山下俊一教授や小学校の教頭先生(でしょうね)への突撃取材を含め、全編様々な人々へのインタビューで構成され、音楽もナレーションも全く使われていない71分の映画から何を受け取ったかを言語化することはとても大事なことです。監督が言いたいことは全て映画そのものが語っているのですから、それを自分がどう理解したかを自覚してこそ、初めてこの作品を「観た」ということになるのですから。
 
 私が理解したところでは、この映画が突きつける主題は、「自分が何をなすべきか」ということを常に問い続けることだと思います。
 この映画に登場する(取材に応じた)子どもたちやお母さんたちは、否応なく厳しい選択に直
面し続けることを日々を余儀なくされています。給食の牛乳やご飯を拒否して水筒やおにぎりを持参すべきかということを始め、日常生活のあらゆる場面は「選択」の連続です。そのような暮らしに疲れ果て、「選択」を放棄したとしても、それで真の平穏が訪れるものではないでしょう。
 私たちは、そのような現実を想像し、知ろうと努め、その上で、1人1人が「何をしなければばな
らいか」を考えなければならないのです。
 昨日の映画上映後のディスカッション・タイムでイアン・トーマス・アッシュ監督が語った印象深
い言葉を以下にいくつか紹介しようと思いますが、1つここで紹介しておきます。「この映画を作りたくて作ったのではない。作らねばならないから作ったのだ」
 
 さて、昨日は午前と午後の2回上映であり、監督とのディスカッション・タイムも午前と午後のそれぞれ行われたのですが、私は、仕事の都合で、午前の回だけ監督のお話を聴きました。その中で、特に印象に残ったアッシュ監督の言葉をご紹介します。
 

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○上映終了後のディスカッション・タイムの前半は、和田雄輝さんとカーリー・アンさんが聞き手となってイアン・トーマス・アッシュ監督のトークを引き出してくれました。このコーナーでのアッシュ監督のトークの中で、最も印象に残ったお話を1つご紹介しましょう。和田さんから、特定秘密保護法が出来て、作品作りに影響が出ていないか?という質問があったのに対し、アッシュ監督は、「その影響かどうかは分からないけれど、以前に比べると、取材のための壁が高くなったように思う。でも、壁が高くなったおかげで、それを乗り越えなければならないために、そうでない時に比べて、自らを高めて優れた結果を出せるようになったとも言えるのではないか」と答えられました。これは、監督の言葉そのままではありませんが、趣旨を私なりに要約するとこういうことかなと思います。非常に感心したため思わず拍手したのですが、誰もあとに続いてくれず、私だけが目立ってしまいましたけれど。・・・と思って Facebook にそのように投稿したところ、上映実行委員会代表の花田惠子さんから、「私も階段の陰で拍手してましたよ~!それにしても、素晴らしい考えだと思わずウルウル~」というコメントがすかさず入っていました。花田さん、大変失礼しました。しかし、アッシュ監督のこの言葉は、全ての創作活動、いや、創作には限らない、私たちの全ての行動に共通した真理ですよね。
 
○和田さん、カーリーさんとのトークセッションの後は、会場からの質問にアッシュさんが答えるディスカッション・タイム。いわき市から奈良に避難されている彫刻家の安藤栄作さんが質問の口火を切ってくださり、色々な質問が出たのですが、全ての質問に対して誠実に答える監督の姿勢に、参加者の皆さんは深く共感されたことと思います。時間の都合があったのかもしれませんが、映画だけ観て帰った観客も少しいたようですが、実にもったいないことをしましたね。映画そのものが優れていたことはもちろんですが、撮影対象に真摯に向き合うアッシュ監督の人柄に皆さん感銘を受けられたことと思います。
 ところで、質疑応答の中で、『A2-B-C』の続編制作にも触れられていましたが、時が経つ
につれて、いよいよ取材に応じてくれる人が少なくなっているということで、福島での生き辛さがこういう面にも現れているように思えました。

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○この映画を、原発放射能についてもともと意識が高い人だけではなく、もっと多くの人に観てもらうためにどうしたら良いのか、ということを常に考え続けているということでした。そして、監督から私たち参加者に、「こういう映画を観にいこうと思うんだけれど、一緒に行きませんか?」と近所の人に声をかけた人はいますか?(もしかすると、「声をかけて断られた人はいますか?」であったかもしれません)と質問が投げかけられた時、「自分がやろうと思えばできること、そしてやるべきことをやっていないのではないか?」と(監督がそんなことを言った訳ではありませんが)言われているようで、胸が痛かったですね。
 
○なお、この映画についても、必ずしも好意的な反応ばかりという訳ではなく、批判的な記事もあること自体、アッシュ監督は「当然のこと」と思うものの、「週刊アサヒ芸能」という一流ならざる雑誌に掲載された「福島差別映画「A2-B-C」が国際的な“福島差別”を助長する」という記事は、誰が書いたか分からない無署名の記事であり、その点は許せないと思うということでした。
 http://www.asagei.com/23582
 
 最後に、4本の動画をご紹介しておきます。
 1本目は映画『A2-B-C』の予告編。2本目は、この作品がワールドプレミアされたドイツ・
フランクフルトでの映画祭(2013年6月7日)上映後、感動した観客がアッシュ監督のカメラの前で、勇気をもって映画に出演した福島の人々に送るメッセージを語った映像。3本目は同じく世界の様々な映画祭での上映後、カメラの前で多くの人々が語ってくれたメッセージをコラージュした映像。4本目は、日本での公式上映開始に先立ち行われたアッシュ監督インタビューの短い映像です。
 昨日の上映会に参加できなかった全ての人に送ります。是非、全て心を込めて視聴して
ください。そして、近くで上映会が行われるということを知ったなら、是非近所の人を誘って観に行ってください(昨日の監督の話によれば、出演者の意向により、『A2-B-C』がDVD化されることはないようです)。
 
'A2-B-C' (TRAILER予告編) thyroid cysts and nodules in Fukushima children
 https://www.youtube.com/watch?v=ZD9yGONdEUY
From Frankfurt to Fukushima フランクフルトより福島へ
 https://www.youtube.com/watch?v=BBT1bM01qtE
From the World To Fukushima: You are not forgotten 世界から福島へ:「忘れていません」
 https://www.youtube.com/watch?v=3e3UVRu5X8E
映画 「A2-B-C」イアン・トーマス・アッシュ監督インタビュー by Japan Docs
 https://www.youtube.com/watch?v=yJWcp-vC6v0
 
(付記1)
 上記の「フランクフルトより福島へ」と「世界から福島へ:「忘れていません」」の存在は、ドイ
ツ在住のグローガー理恵さんが「ちきゅう座」サイトに投稿された記事で知りました。
イアン・トーマス・アッシュ氏の記録: 世界から福島へ「忘れていません」 (From the
World to Fukushima: You are not forgotten.)
 http://chikyuza.net/archives/48127
イアン・トーマス・アッシュ氏の記録 (2): フランクフルトよりフクシマへ (From Frankfurt
to Fukushima)
 http://chikyuza.net/archives/48203
 
(付記2)
 今週末の11月1日(土)、和歌山県のお隣・奈良県奈良市)で『A2-B-C』の上映会
が開かれます(主催:奈良・市民放射能測定所)。監督は参加されませんが、福島から避難されている方のトークがあります(午前の部は原発賠償関西訴訟・原告団代表の森松明希子さんが話されます)。
 ただし、午前の回、午後の回とも定員90名で事前申込みが必要とのことですから、参加
希望の方は主催者までお問い合わせください。
 原発賠償関西訴訟 KABSAIサポーターズの公式サイトに詳しい告知が載っていましたの
でご参照ください。
 http://kansapo.jugem.jp/?eid=50
日時:2014年11月1日(土)
   午前の回 会場9:30 開演10:00~
   午後の回 会場13:00 開演13:30~
   上映時間:71分
場所:奈良市 音声館(近鉄奈良駅から徒歩15分)
   入場料:大人1,000円 小学生500円 未就学児無料
   定員:90人/1回
   定員以上は入場できません。
   メールかお電話でお申込みをお願いします。
主催:奈良・市民放射能測定所
【お問い合わせ・お申込み】
メール:naracrms@gmail.com
電話:090-6538-1177(すどう携帯)
1.お名前(フルネーム)
2.連絡先(メールアドレスまたは電話番号)
3.午前・午後、どちらか鑑賞希望の回
4.人数(座席が必要な人数、大人・小学生の数)
以上4点をお知らせください。
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○上映後ミニトークディスカッションを予定しています。
  ・入江紀夫先生(西大寺、入江診療所所長)に
   映画の内容に関するコメントをいただいていますので、ご紹介します。(10分)
  ・避難してこられた方のトーク(10分)
   午前の部は森松明希子さんです。短い時間で申し訳ないのですが…   
   裁判のことも紹介していただきます。午後の部は須藤愛子がお話します。
  ・質疑応答 (20分)
○来場いただいた大人の方には
  食品や土壌の放射能を測定できる、無料測定券をプレゼントします。