wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

青法協和歌山支部憲法連続講座第3回「集団的自衛権の閣議決定の問題点を知ろう」を開催しました(10/31)

今晩(2014年10月31日)配信した「メルマガ金原No.1895」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
青法協和歌山支部憲法連続講座第3回「集団的自衛権閣議決定の問題点を知ろう」を開催しました(10/31)

 2回にわたって開催してきた今年の青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法連続講座~深めよう集団的自衛権~」も、いよいよ今日(10月31日)、最終回を迎えました。
 過去2回の内容については、私のブログで簡単にレポートしておりますので、ご参照いただければと思います。
 
2014年9月29日
青法協和歌山支部憲法連続講座第1回「集団的自衛権ってなあに?」を開催しました
(9/29)
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/40458670.html
2014年10月16日
青法協和歌山支部憲法連続講座第2回「政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めて
こなかったのか」を開催しました(10/15)
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/40770143.html 
 
 今日開催された第3回(最終回)のテーマは「集団的自衛権閣議決定の問題点を知ろう」というもので、司法修習62期の若手・浅野喜彦会員が周到に用意したレジュメに基づいてまず前半で基調報告を行いました。
以下に、浅野会員のレジュメから、主要な項目を抜き出して、その構成をご紹介しようと思います。なお、参加者には、浅野会員が用意した7頁のレジュメとともに、閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」全文も併せて配布しました。
 
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf
 
(浅野喜彦弁護士によるレジュメ「閣議決定の問題点を知ろう」から抜粋引用開始)
第1 閣議決定の概要-3つの論点-
1 武力攻撃に至らない侵害への対応
  →いわゆるグレーゾーンの問題
2 国際社会の平和と安定への一層の貢献
自衛隊の海外派遣や武器使用の問題
3 憲法9条の下で許容される自衛の措置
→新3要件の設定による集団的自衛権の容認
 
第2 本閣議決定における集団的自衛権-新3要件-
1 第1要件 
「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に
対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸
福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」こと
ⅰ)「我が国と密接な関係にある他国」とは
ⅱ)「これにより~明白な危険」とは
2 第2要件
「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がない」こと
3 第3要件
「必要最小限度の実力を行使」するものであること
 
第3 政府が想定する事例-集団的自衛権の行使が可能とされる事例-
1 在外邦人を乗せた米軍艦船の防護
2 米国に向けて日本上空を横切る弾道ミサイルの迎撃
3 近隣有事の際の船舶検査
4 国際的な機雷掃海活動への参加
5 その他の想定事例 
 
第4 集団的自衛権に関するその他の問題点
ⅰ)国際法憲法の関係
ⅱ)日本の参戦が「先制攻撃」と見なされるおそれ
ⅲ)閣議決定によって集団的自衛権を認めることの問題
ⅳ)集団安全保障(例えば多国籍軍)による武力行使への参加を容易にするおそれ
ⅴ)十全の問題が忘却されるおそれ
ⅵ)いわゆる数量的概念の理論(参考)
 
第5 集団的自衛権以外の論点
1 武力攻撃に至らない侵害への対応
ⅰ)離島等への侵害に関する早期の下命・手続の迅速化
ⅱ)米軍の武器等を保護するための自衛隊による武器使用
2 国際社会の平和と安定への一層の貢献
ⅰ)支援活動範囲の拡大
ⅱ)武器使用範囲の拡大
 
【巻末資料】
資料1:新旧3要件比較表
資料2」「明白な危険」の判断基準(内閣官房ホームページ「一問一答」より)

 http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhoshouhousei.html
【問21】国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?
【答】現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か
客観的、合理的に判断します。
資料3:7月14日松野頼久議員の質問に対する岸田外相の答弁
「先ほど私は、日米同盟に基づく米軍の心材及び活動、これがわが国の平和と安全を維持する上で死活的に重要である、まずそれを申し上げました。そして、そのアメリカに対する武力攻撃は、わが国の国民の命や暮らしを守るための活動に対する攻撃になるわけですので、こ
れは3原則に当てはまる可能性が高い、そういった趣旨の発言をさせていただきました。」
(引用終わり)
 
 今日は朝からぐずついた天候であり、開会前にはかなりまとまった雨が降ってきたりという悪条件もあってか、弁護士を含めても約40人と、やや寂しい参加者数でしたが、それでも、このとんでもない閣議決定を何とかしたいという共通した思いが、以下のような質問となってあらわれたのだろうと思います。
 ちなみに、後半の質疑応答の回答は、基調報告を担当した浅野会員と、由良登信元支部長(司法修習38期)が務めました。
 
(参加者の質問から)
○国会での承認もなく、閣議決定でこのように重大な問題を決めて良いはずはないと思
うの
だが、法律家団体も含めて、これを非難する動きが弱いのではないか。
○この違憲閣議決定を司法の場でどのように争えばよいのか。
○この閣議決定について、国会ではどのような議論が行われ、野党は効果的な反論が
でき
たのか。
閣議決定に基づく法令整備を阻止するために具体的にどのような方策があるのか。
○政府・自民党が国民をなめきっているのは、過大な議席数を持っているからで、これを
正するためには小選挙区制を何とかしなければと思うが、そのためには具体的にどうすればよいのか。
 
 どの質問をとっても重要な問題ではあるものの、「明快な回答」を提示することが非常に難しい質問ばかりで、回答者となった浅野、由良両会員は大変だったでしょう(私でなくて良かった)。  
 
 今回で、青年法律家協会和歌山支部が主催した「憲法連続講座~深めよう集団的自衛権~」は一応終了しました。
 昨年、同じく3回連続で実施した「憲法連続講座~完全攻略 深めよう憲法~」との比較で言うと、宣伝不足ということはあるものの(それは去年も同じです)、はっきり言って、今年の方が相当に参加者数を減らしています。
 去年は7月から8月にかけて実施したのに対し、今年は様々な行事が重なりがちな9月終わりから10月にかけてという時期的な問題もあったかもしれませんが、やはり、「集団的自衛権」というテーマを広く一般市民にアピールするのは非常に難しいと、あらためて感じざるを得ませんでした。
 
 今日の参加者には、青法協和歌山支部の中の「あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)」会員が、出来たばかりの「あすわか」特製「混ぜると、もっとキケン」チラシを配っていました。
 
http://web2.nazca.co.jp/nwkv89851/mazerutomottokiken.pdf
 昨年、今年と青法協和歌山支部が開催したような「憲法連続講座」も十分に意義はあると思っていますが、「混ぜると、もっとキケン」チラシなどを武器として、積極的に女性や若者(には限りませんが)にアプローチする試みが切実に求められているのだなと思います。
 
 昨年は3回で4人、今年は3人、計7人の若手会員が基調報告と質疑応答を担当しました。中には、厳しい質問への回答に苦慮し、何とか名誉挽回しようとファイトをたぎらせている会員もいるなど、青法協和歌山支部の「若手会員スキルアップ大作戦」は、期待通りの成果を上げつつあります。
 今後は、このように一段と力をつけた若手会員を様々な「憲法の現場」に投入するマネージメントが必要とされるのだろうと思います。