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「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(3)「防衛のプロが語る15事例のリアリティ」

 今晩(2014年11月4日)配信した「メルマガ金原No.1899」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(3)「防衛のプロが語る15事例のリアリティ」 ※追加映像あり

 シリーズでお送りしている(?)「自衛隊を活かす会(自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会)」シンポジウムから学ぶ、その(3)です。
 去る10月5日(日)に東京都千代田区立日比谷図書文化館・大ホールにおいて開催された第3回シンポジウム「防衛のプロが語る15事例のリアリティ」の文字起こしが全て同会公式サイトにアップされましたので、まとめてご紹介することとします。
 いずれ動画も公開されると思いますので、その際は、ブログの方で追加紹介しようと思います。

(映像追加 2014年11月7日)
 第3回シンポジウムの動画がアップされました。
防衛のプロが語る15事例のリアリティ|自衛隊を活かす会


 さて、今回のテーマは「問題の15事例」です。その解説を担当された柳澤協二さんの説明を引用すれば、以下のようなものでした。
 
(引用開始)
 「15事例」というのは、こういう事例に際して集団的自衛権を行使するのだとして、自民党明党の与党協議に出されたものです。今回お話しする資料の元になったのは、その協議に加していた公明党の議員に対して、こういう論点があると説明するために作ったものが最初
です。
(略)
ところが、実際の与党協議では、最初の2~3回は大分詰めて議論をしたのですが、その後、
一気に閣議決定の文言調整に入ることになりました。7月1日の閣議決定に至るプロセスの
透明性の一つの表れでもあると思っております。
 15事例といっても、ご存じのように、大きくは3つに分かれております。最初のグループは「武
攻撃に至らない事態」ということで、いわゆる「グレーゾーン事態」と言われています(3事例)。が「国連PKOを含む国際協力」(4事例)、最後が「武力行使に当たりうる活動」(8事例)とい
うことで、これが集団的自衛権だということになります。
(引用終わり)
 
 この「15事例」については、私の知る限り、政府が公式に国民に説明するために公開したことはないはずです。ただし、そのうちの「事例8 邦人輸送中の米輸送艦の防護」については、噴飯もののイラストを、安倍首相が2度にわたって(5月15日と7月1日)使い回ししたため有名になりましたが、それ以外の事例については、マスコミが報じたところで推測するしかなかったという訳です。

時事ドットコム(2014/05/27-20:10)
政府が提示した15事例の要旨

 
 
 
Q&Aまるわかり集団的自衛権
半田 滋
旬報社
2014-07-25


 その「15事例」について、柳澤協二さんが詳しく説明してくださるのですから、これは是非とも読まねば。
 以下から、シンポジウムの文字起こしをお読みください、
 ちなみに、コメンテーターとして登壇された渡邊隆元陸将は、柳澤さんが理事長をされている国際地政学研究所の副理事長、林吉永元空将補は理事兼事務局長ということで、以前にも書きましたが、石破茂氏などが顧問を務めている国際地政学研究所というのは、面白い組織ですね。
 
 
自衛隊を活かす会 第3回シンポジウム 
「護憲」を超えて③
防衛のプロが語る15事例のリアリティ

2014年10月5日(日)午後1時45分~4時45分
千代田区立日比谷図書文化館・大ホール
主催:自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会(略称:自衛隊を活かす会)
 
① 15事例の分析──その軍事的・政治的リアリティー 
 柳澤 協二 元内閣官房副長官補、国際地政学研究所理事長
 
② (コメント)陸上自衛隊から見た15事例 
 渡邊 隆 元陸将・東北方面総監
「いわゆる集団的自衛権に該当するのではないかと言われている事例については、あまり陸上自衛隊が中心となって該当するところがございません。ただ、私はこのほとんどについて、集団自衛権に該当するのかどうか極めて疑問に思っています。
 安保法制懇で議論された時も、あくまでも日本に明白な危険があるということでした。このま
ま放置すれば日本の国民の生命、財産、日本の平和と安全に極めて影響があるというならば、
それは我が国防衛のことなのではないか。
 ここまでが我が国防衛で、ここからが集団的自衛権という綺麗な線というのは過去においても
現在においてもほとんどないだろうと思います。国連憲章の第51条にある集団的自衛権、個別的自衛権は、明確な区分があるわけではありません。なだらかにエスカレーションしていく、そういうものだろうと思います。」
 
③ (コメント)航空自衛隊から見た15事例 
 林 吉永 元空将補・第7航空団指令
「今日は事例を上げてお話申し上げましたが、集団的自衛権の行使を容認した、その方向に日本が向かう、その決断をしたということは、約70年間、戦争と無縁であった、世界でもまれに見る独特の孤立主義を貫いてきた日本が、その孤立主義を捨てたということです。アメリカがNATOに加盟する時、1947年から1948年にかけては、2年間の議論を積み重ねてモンロー主義、いわゆる孤立主義をかなぐり捨てる決心をしました。ヨーロッパのいずれの国であってもアメリカ人は血を流して助けに行くという決心をしたわけです。それだけに集団的自衛権というのは国民の皆さまの決断によって覚悟をしなければいけないことだと申し上げて、私のコメントとさせて頂きます。」
 
④ (補足発言)海上自衛隊の立場をふまえて 
 柳澤 協二 元内閣官房副長官補、国際地政学研究所理事長
 
 
⑥ 質疑応答と討論(文書質問への応答)
林吉永氏
「『勇猛果敢 支離滅裂』は航空自衛隊の文化だと申し上げましたが、ちなみに陸海をご紹
介しておきます。陸は『用意周到 動脈硬化』と言います。これは作戦の性格を表わしています。作戦の推移の時間など等の性格です。船を一つの国として扱うような海上自衛隊の場合は、『伝統墨守 唯我独尊』と言います。これは3つの世界の一つの四字熟語のつなぎあわせた文化の説明であります。」
 
⑦ 質疑応答と討論(会場からの発言)
柳澤協二氏(泥憲和氏からの「好戦的文民が指揮官のトップにいる場合は、軍事力行使だとか戦争の歯止めにならないと思うんです」がとの質問に答えて)
「私は全く同じ思いです。ただ、OBの立場があるお二人の方には特にコメントは求めませんが、私の意見ではそういう問題意識をお持ちでなければ、この壇上にはお見えになってないだろうと
確信をしております。
 どうやって安倍内閣を止めて行くか、そのために何をすべきかということがあります。私達のこの
会は、直接それを止めることを目的にしているわけではないんですが、思い切って言えば、国が間違った方向に進もうとしている、間違った手続きで物事を進めようとしている時に、一番大事なことは分析と論理に基づいて、しっかり知性としての批判や検証をやり続けていくということしか
ないんだろうと思います。
 あとは政治の力学の中でどう作用するかというのは、そこまでは私どもだけではなんとも力が及
ばないのは事実であります。私たちはできるだけ現場から、具体的であって、かつ理性的であって、論理的なかたちで問題提起を続けていきたい。私も官邸や防衛庁の意思決定の現場にいたわけですし、加藤先生や伊勢崎先生も海外のいろんな現場を踏んでおられるわけです。そういう現場からの作業が、今、メディアも含めて日本中で求められています。メディアによっては一生懸命、政権を応援しているところもありますし、どうしても感情論に走りがちなところですが、感情論に走りがちであるが故に、論理と理性で対抗していくという努力をやり続けなければ、国がおかしくなるということを考えて、私はやらせて頂いております。」
 
(「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ シリーズ)
2014年6月14日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(1)加藤朗さんの「憲法9条部隊」構想

2014年6月15日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)柳澤協二さんが語る「日本の安全保障」
2014年6月16日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(2)続-柳澤協二さんの最新講演(6/13神戸市)
2014年6月18日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治二さんが提起する“非戦”のリアリズム
2014年9月1日
戦争に敗けるということ~加藤朗氏『敗北をかみしめて』を読んで考える

(「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ シリーズ)
2014年7月4日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」
2014年7月30日
補遺「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~伊勢﨑賢治氏
2014年8月25日
補遺その2「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~会場からの発言と質疑応答
2014年9月22日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(2)「対テロ戦争における日本の役割と自衛隊」