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 『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」

今晩(2014年11月8日)配信した「メルマガ金原No.1903」をお届けします。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
 『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」

 今日(11月8日)は、朝から自宅近くの河北コミュニティーセンター(和歌山市)において、私も運営委員の1人として準備に関わってきた「守ろう9条 紀の川 市民の会」主催による第11回「憲法フェスタ」が開催されました。
 どのような内容の企画を用意しているかについては、既にこのメルマガ(ブログ)で告知してきました。
 
2014年9月11日
清水雅彦日体大教授が11/8第11回憲法フェスタ(守ろう9条 紀の川 市民の会)で講演

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/40141476.html

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 その概要だけ再掲しておきます。
 
第11回憲法フェスタ
9条をまんなかに ~えがこう平和への道~
開催日:2014年11月8日(土)
会 場:河北コミュニティセンター(和歌山市市小路192-3)
会員でなくてもどなたでもご参加いただけます!
 
メイン会場(2F多目的ホール
【開始】14:00【終了】16:30頃
第1部 祈りの歌の会「みかんこ」feat.歌舞
第2部 【実践報告】かぜのこ保育園より~保護者会活動での平和のとりくみ~
第3部 講演「ちょっと待った!集団的自衛権~日本を戦争する国にさせない~」
 講師 清水雅彦さん(日本体育大学教授・憲法学
 
映像の部屋(2F活動室小)上映時間:10:30~12:55
─DVD上映─九条の会発足10周年講演会「集団的自衛権憲法9条
 
展示の部屋(2F活動室大1)10:00~13:45
地域のみなさんの文化作品、絵・書・写真・絵手紙・リフォーム・手芸・陶芸などの展示と、交流・おしゃべりの場。喫茶コーナーあり。
 
リサイクルひろば(2F活動室大2)10:15~13:00
着なくなった服や雑貨などを、袋持参でもらいにきてください。お子さん連れも大歓迎!
 
写真展示(2F多目的ホール)13:00~16:30
ヒロシマナガサキ 原爆と人間」

主催:守ろう9条 紀の川 市民の会 
 
 今年のリサイクルひろばは、これまでの1階和室から2階活動室大2に会場を移したことも功を奏したのか、多くのお客さんで賑わっていましたね。リサイクルひろばを目当てに、午前中だけ河北コミセンを訪れた方も多かったようです。こういう人たちに、午後のメイン会場での企画に参加してもらうにはどうしたら良いのか、参加が無理でも、少しでも憲法をめぐる問題に関心を持ってもらえるようにするにはどんな工夫をしなければならないないのか?ということが今後の課題だと思いました。

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 映像の部屋での上映、今年は、九条の会発足10周年講演会のDVDでした。例年、展示の部屋やリサイクルひろばに比べて訪れる人の数は多くないものの、見るべき価値のある映像を紹介する意義はあるということで、毎年続けている企画です。私自身、金泳鎬さん(韓国・檀国大学碩座教授)と池田香代子さん(ドイツ文学翻訳家)のお2人分しか視聴する時間がなかったのですが、出来れば全部見てみたかったと思いました(長いですけどね)。
 
 というような調子で書き始めるときりがないので、以下、午後2時からの多目的ホールでのメイン企画について簡単にご紹介したいと思います。
 
 第2部では、かぜのこ保育園(和歌山市大谷)での保護者会(父母の会)が続けている平和講座への取組がパワーポイントを使って報告されました。
 2007年、堤未果さんの講演会(たしか、核戦争防止和歌山県医師の会主催でしたね)を聴きに行った5人のお母さんがたちが、終了後その衝撃を語り合ったところから取組が本格的にスタートしたという話を聴きながら、たしかこれは、楠見子連れ9条の会発足のきっかけでもあったということを思い出していました。この5人のお母さんたちの動きが、1つはかぜのこ保育園の保護者会活動として現在に至るまで継続され、もう1つの流れが楠見子連れ9条の会の活動に結実しているということを知ると、まず自覚した人たちが勇気をもって動き出すことの大切さをあらためて認識しました。
 
 第3部の講演には、「闘う憲法学者」と私が勝手に名付けている清水雅彦さん(日本体育大学教授・憲法学)に講師をお願いしました。
 清水さん自身がブログに書かれていたとおり、「守ろう9条 紀の川 市民の会」が最初に清水さんに講師として来ていただけないだろうかと接触したのは昨年12月のことであり、それから11ヵ月経ってようやく実現したものです。もともとは、例年3月に行っている総会での記念講演をお願いできないだろうかという打診だったと記憶するのですが、それは日程的に無理ということでしたので、それでは秋の憲法フェスタにおいでいただけないかということで交渉を継続したのでした。
 私たち、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の企画に関与した者が、一致して遠く関東から清水雅彦さんをお招きしたいと考えたのは、歯切れ良く問題点を指摘される著書や講演(当然、ネットで視聴したものですが)での明快な語り口に感銘を受けるとともに、憲法研究者として、特定秘密保護法集団的自衛権をめぐる解釈改憲に反対するための活動に率先して取り組まれるその行動力に敬服したことが理由だと思います。そして、清水さんの講演を通して、私たちの今後の活動をより活性化できればというのが企画者の願いであった訳です。
 聴衆の動員ということに関しては、私たちの力不足のために、必ずしも満足のいくものでなかったことは、往復9時間(!)を費やして神奈川から来ていただいた清水さんにも申し訳ない次第でしたが、一時保育を準備した甲斐あってか、何人もの子育て中のお母さんに最後まで参加してもらえたことは収穫でした。7年前の堤未果さんの講演会を聴いたおかあさんたちが蒔いた種が今大きく花開こうとしているように、今日の講演を聴いた人たちが新たな種を蒔いて育てていっていただければと切望しています。

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 さて、清水さんの講演の内容を詳しくご紹介する余裕がなくなりましたので、(やや手抜きですが)以下に詳細なレジュメの項目(一部要点)のみ抜き出してご紹介します。
 
(清水雅彦日体大教授作成のレジュメから抜粋引用開始)
はじめに
一 自民党集団的自衛権行使容認論
 1 明文改憲・立法改憲解釈改憲
  ① 明文改憲(2012年4月の「日本国憲法改正草案」)
  ② 立法改憲(2012年7月の「国家安全保障基本法案」)
  ③ 解釈改憲(「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書)
  ④ 解釈改憲(政府の「基本的方向性」「閣議決定」など)
 2 ゴールにある自民党改憲案(2012年4月の「日本国憲法改正草案」)
  ① 国家主義
  ② 人権規定
    ・人権制約原理(12条、13条)
    ・個人として尊重されることの否定(13条)
    ・大幅な義務規定の拡大
  ③ 平和主義
    ・9条改正
  ・平和的生存権の削除
二 9条解釈
1 憲法学界(学説)
  ① 戦争の放棄(9条1項)
    ・A説…「国際紛争を解決する手段」としての侵略戦争を放棄
・B説…自衛・侵略の区別無理故、自衛戦争を含む一切の戦争放棄
② 戦力の不保持(9条2項)
    ・甲説…「目的」は「国際紛争を解決する手段」→自衛力保持は許される
・乙説…「目的」は1項全体→自衛力保持も許されない
  ③ 1項と2項解釈の組み合わせ
    ・多数説…A説+乙説(9条2項全面放棄説、「武力なき自衛権」論)
・少数説…A説+甲説(限定放棄説)、B説+乙説(9条1項全面放棄説)
 2 従来の政府解釈
① 9条解釈
・1項…A説
    ・2項…「戦力」は「自衛のための必要最小限度の実力を超えるもの」
    →「実力」は憲法上保有できる(自衛隊は「軍隊」ではない)
  ② 個別的自衛権行使の3要件(1954年政府見解)
    ・我が国に対する急迫不正の侵害があること
・これを排除するために他の適当な手段がないこと
    ・必要最小限度の実力行使にとどまること
  ③ 集団的自衛権についての従来の見解
    1972年参議院決算委員会提出資料
    1981年政府答弁書
三 日本国憲法の平和主義
 1 戦争違法化の歴史
① 戦争の種類をめぐって
② 戦争の方法をめぐって
2 国連憲章日本国憲法の相違点
① 集団的自衛権国連憲章51条)の考え
② 集団安全保障(国連憲章41条・42条)の考え
③ 武力による威嚇と武力行使の考え
    ・国連憲章2条4項 …「慎まなければならない」
    ・日本国憲法9条1項…「永久にこれを放棄する」
日本国憲法には国連憲章の連続面と断絶面がある
     28か国目の「軍隊のない国家」になるのか、「普通の国」になるのか
四 集団的自衛権の問題点
 1 国際社会
  ① 国連憲章上の問題点
  ② 行使の実態
 2 日本
  ① 憲法上の問題点
    →政府による解釈変更は立憲主義の否定
  ② 安保条約上の問題点
    →安保条約上改正なしに日本は集団的自衛権行使できるのか
  ③ 砂川事件最高裁判決解釈の問題点
    →旧安保条約による米軍の日本駐留の合憲性が問題
     田中耕太郎長官が駐日アメリカ大使に事前に面談
おわりに~あらためて考える日本国憲法の平和主義と運動の課題
  ① 集団的自衛権とは何か、安倍首相の狙いは何か
  ② 二つの平和主義
    ・憲法9条
     …消極的平和(negative peace)の追求、暴力(戦争)のない状態をめざす
憲法前文
     …積極的平和(positive peace)の追求、構造的暴力(国内外の社会構造による貧 困・飢餓・抑圧・疎外・差別など)のない状態をめざす
  ③ どのように考え、行動するか
    ・政治と運動について…
    ・政治運動体について…
    ・一人ひとりの課題…
    ・市民団体等の課題…
(引用終わり)
 
 以上の引用でお分かりのように、憲法集団的自衛権をめぐる議論状況を明瞭に分析し、これを俯瞰する視点を与えてくれる講演だったと思います。
 私にとっては、特に「おわりに ②二つの平和主義」で語られた「9条」と「前文」の関係についての解説がとても新鮮でした。今まで、私は、「前文」が基本的理念を語り、9条がそれを、国家の構造として具体化した規範であると理解していたのですが、こういう視点から「前文」と「9条」を考えることによって、「平和主義」の中身をより豊かに把握することが可能になると思いました。
 
 なお、「どのように考え、行動するか」という提言の中で、いかにして若い人に運動に加わってもらうかという、どの団体にとっても切実な課題について、実に具体的なアドバイスがあり、非常に参考になりました。その2、3を標語風にご紹介します。
○今の若者は打たれ弱い。
○行事のあとには懇親会に誘え。そこで説教はするな。費用はこちらが負担する。
○金は出しても口出すな。
 
 最後に、第1部に出演していただいた「祈りの歌の会 みかんこ feat. 歌舞」の演奏について簡単に触れたいと思います。
 「みかんこ」に是非出てもらいたいというのは、今年の5月3日、和歌山城西の丸広場で開催された“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”での「みかんこ」の演奏に感銘を受けたフェスタ実行委員の一致した希望であり、その意向を受けて私が交渉役を担当したのですが、快く出演を引き受けていただき、ゲストボーカルの歌舞さん(にしでいづみさん)を交えた練習を重ねられた成果を、今日のステージで披露してくださったのですが、素晴らしい演奏でした。
 演奏された曲目は以下のとおりでした。
『コシ・シケレリ・アフリカ』
『平和の琉歌』
『脱走兵』
見上げてごらん夜の星を
 MCは松永久視子さんが担当し、ゲストの歌舞さんは2曲目からの登場でした。

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 この4曲の白眉は、何と言っても歌舞さんをメインボーカルとしてフューチャーした3曲目の『脱走兵』でした。
 ボリス・ヴィアンが1954年に作った『脱走兵』(ベトナム戦争~アメリカが参戦する前の宗主国フランスによる~を背景とした曲)は日本でもよく知られた曲であり、私のような関西フォーク世代にとっては、高石友也さんが『拝啓 大統領殿』という自らの訳詞で歌ったヴァージョンで知ったという人もいるでしょうし、その後、沢田研二さんが歌ったヴァージョンで知ったという人も多いと思います。
 そして今日聴いた『脱走兵』。私はステージのすぐ側、下手側(つまり歌舞さんの立ち位置に最も近いところ)にいたのですが、正直、鳥肌がたちました。
 沢田研二さんの歌唱を YouTube で聴いた時も感心しましたが、今日の歌舞さんの歌唱の迫力はそれどころではありません。まるで何かが乗り移ったような・・・。
 『脱走兵』を今日のメインプログラムに選定し、歌舞さんにボーカルを担当してもらうというアイデアが誰によって提供されたかは聞いていませんが、今の日本の置かれた状況が無縁であるはずはありません。
 
 閉会挨拶で私が「シンガー・歌舞さんがフューチャーされた『脱走兵』に感動しましたよね?」と問いかけた際、はっきりと多くの聴衆がうなずいて同意してくれました。皆さん、今この曲を聴くことの意味を理解して感動されたのだと思います。
 そして、私は閉会挨拶の最後を以下のような言葉で締めくくりました。
 
「私はこの曲を今までフランスやアメリカのことだと思って聴いてきました。しかし、今や日本の自衛隊員が脱走し、その弁護をしなければならない時がくるかもしれません。そんなことが絶対ないように頑張りましょう」