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「地方議会での憲法改正促進意見書採択を阻止するために」(機関誌「青年法律家」掲載原稿)

 今晩(2014年11月14日/13日深夜)配信した「メルマガ金原No.1909」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「地方議会での憲法改正促進意見書採択を阻止するために」(機関誌「青年法律家」掲載原稿)
 
 以下は、青年法律家協会弁護士学者合同部会が発行する機関誌「青年法律家」No.524(2014年10月25日)に寄稿した短文を掲載するものです。
 字数が限られており意を尽くせぬところがありますので、私がこの問題(和歌山県議会憲
法「改正」促進意見書採択問題)についてメルマガ(ブログ)に掲載した記事一覧を末尾に掲げておきます。できれば、そちらの方も適宜ご参照ください。


地方議会での憲法改正促進意見書採択を阻止するために
―青法協和歌山支部など4団体が和歌山県議会議長・各会派に共同申入れ―
 
                               和歌山支部 金原 徹雄
 
 9月9日に開会した和歌山県議会定例会に、日本会議和歌山が提出した「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」を提出するように求める請願が係属し、間もなく総務委員会で審議されるという情報が伝わってきたのが9月18日のことであり、その後、9月26日の会期末(意見書は会期最終日に採決されるのが慣例)までの顛末のあらましをご報告し、まだ同様の意見書が決議されていない都道府県議会を抱える支部が、今後の対応を検討される際の一助にでもなればと思い、ある意味「敗北の記録」であるこのレポートをお送りすることにした。
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 2013年11月に開催された「憲法改正実現へ!日本会議全国代表者大会」において採択された運動方針に基づく日本会議の提唱に呼応し、2014年2月、全国の先陣を切って石川県議会が「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」を決議し、翌3月には、自民党本部が、石川県議会の意見書を参考添付した上で、「『大規模な国民運動が不可欠』として、都道府県連に意見書の可決を促す文書を配布」した(朝日新聞)。8月1日付の朝日新聞が伝えるところでは、7月末までに全国18の県議会が意見書を採択しており(他に兵庫県議会が意見書は見送ったものの請願は採択)、9月議会を終えた段階では、おそらく過半数の県議会が同様の意見書を採択している可能性があり、さらに、この動きは市町村議会にも波及しつつある。
 意見書の内容は、基本的にどれも同じようなもので、日本国憲法が施行以来一度の改正も行われておらず、他方、わが国を取り巻く東アジア情勢は一刻の猶予も許されない事態に直面しており、さらに、家族、環境、大規模災害等への対応が求められているので、「新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求める。」(和歌山県議会意見書)というものである。
 確たる根拠もない一方的な決めつけに基づき、具体的にどう「改正」すべきかも示さず、とにかく早期に「国民投票を実現することを求める」という無茶苦茶な内容と言わざるを得ない。
 和歌山県議会の場合、現員40人中、自民党県議団が28人という圧倒的勢力を有しており、採決に至れば意見書が決議されることは確実であるため、至急反対世論を議会に集中させ、継続審査に持ち込むという戦略しかとりえず、その一環として、青法協和歌山支部が中心となって(というのは定例会での機関決定が最も早かったから)、これに憲法9条を守る和歌山弁護士の会、自由法曹団和歌山支部の法律家団体、さらに9条ネットわかやまが相乗りした共同申入書を作成して議長及び各会派に送付したのが、翌日には総務委員会での採決が予想されていた9月24日であったというのは、もう少し早く執行できれば良かったとは思うものの、4団体共同申入れという初めての取組みでもあり、やむを得なかったかとは思う。
 それよりも問題なのは、日本会議和歌山からの請願が審議されるという情報を伝えた報道機関が、結局どこも事前報道をしてくれず、大半の県民が知らないうちに26日の会期末に意見書が決議されてしまったことである。
 本会議での採決に先立ち日本共産党議員が反対討論したものの、賛成討論に立つ者はなく、「見本」である石川県議会意見書とそっくりな意見書があっさりと通過してしまったことは、我々の力不足も含めて痛恨事であった。
 この問題には、「地方議会議員憲法尊重擁護義務」という非常に重要な憲法上の論点も関係しており、青法協の組織をあげて、理論的・実践的な取組みを進めていただきたいと希望する。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年9月18日
日本会議→自民党→県議会→「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」議決?(和歌山県議会の動き
2014年9月24日
法律家等4団体が和歌山県議会議長・各会派に共同申入書を送付(憲法改正促進意見書採択を阻止するために)
2014年9月25日
日本会議&自民党による改憲促進「意見書」運動を取り上げた朝日新聞のすぐれた調査報道(8/1)に遅ればせながら注目した
2014年9月26日
馬場潔子さんのレポートで読む和歌山県議会が県政史に汚点を残した1日 ※追記・訂正あり
2014年9月27日
地方議会の「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」は憲法尊重擁護義務に違反する