wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

選挙の争点は私たちが決める~集団的自衛権と解散総選挙

今晩(2014年11月20日)配信した「メルマガ金原No.1915」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
選挙の争点は私たちが決める~集団的自衛権解散総選挙
 
 明日(11月21日)、訳のわからないまま衆議院が解散されようとしていますが、解散風が吹き始めてからというもの、私のような田舎弁護士のもとにもいくつかその余波が届き始めています。もっとも、「立候補しませんか?」と言ってきた政党はありませんが・・・という冗談など言っている場合ではありません。
 本当に、冗談ではなく、今回の衆議院総選挙は日本の命運を決する選挙になります。否応
なくそうなります。
 これはお題目でも何でもありません。
 
 今年の7月1日の臨時閣議で決定された「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」は、前文と4項から成っています。
 
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf
 これまで、その3項はこのメルマガ(ブログ)で再三引用してきました。「もういい」「食傷した」と
いう方も多いでしょうし、私にしても「見たくもない」ものですが、この閣議決定を「撤回」する新たな閣議決定を行う政治勢力に政権を委ねるまでは、闘いを止める訳にはいきません。それは、現在の私たちに課された将来世代に対する責任です(他に原発全基廃炉原発輸出禁止を達成するという「責任」もありますが)。
 
(「7月1日閣議決定」3項(3)から抜粋引用開始)
こうした問題意識の下に、現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、我が国に
対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。
(引用終わり)
 
 ところで、私が今日特にこの閣議決定の中で注意を喚起したいと考えたのは、その末尾4項についてです。以下に全文引用します。
 
(「7月1日閣議決定」4項から引用開始)
4 今後の国内法整備の進め方
 これらの活動を自衛隊が実施するに当たっては、国家安全保障会議における審議等に基づ
き、内閣として決定を行うこととする。こうした手続を含めて、実際に自衛隊が活動を実施できるようにするためには、根拠となる国内法が必要となる。政府として、以上述べた基本方針の下、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法案の作成作業を開始することとし、十分な検討を行い、準備ができ次第、国会に提出し、国
会における御審議を頂くこととする。
(引用終わり)
 
 閣議決定だけでは自衛隊は動きません(動けません)。どうしても「根拠となる国内法が必要とな」ります。
 閣議決定の翌日に日本経済新聞電子版は、「政府・与党は集団的自衛権を使えるように
するための憲法解釈変更の閣議決定を受け、関連法案などの準備を急ぐ。加藤勝信官房副長官は2日午前の記者会見で、内閣官房の国家安全保障局に設けた30人規模のチームで作業を始めることを明らかにした。チームは1日付で設置した。同局次長の兼原信克、高見沢将林両官房副長官補の下に外務、防衛両省などの担当者を集めた。(後略)」と伝えました。
 具体的には、自衛隊法、武力攻撃事態対処法、PKO協力法などの法律や、日米物品役
務相互提供協定(ACSA)など、10数本の法令の見直しや新法制定が必要となるとみられています。
 もっとも、その後、秋の臨時国会への法案提出が見送られたばかりか、次期通常国会、それ
も4月の統一地方選挙終了後に法案上程が先送りされたと伝えられて以降、関連法案の準備状況についてはさっぱりニュースを目にする機会が減りました。しかし、官僚は着々とというか、粛々とというか、「やるべきこと」をやっているに決まっています。
 そして、そのような集団的自衛権関連法案等を審議するのが国会であり、衆議院です。
 もしも、今回の衆議院解散がなければ、自民公明両党で衆議院の3分の2以上の議席占めるという状況の下、このような集団的自衛権関連法案等を国会が審議するという事態を覚悟しなければならなかったのです。
 「大義なき解散」と言えばそうに違いありませんが、見方を変えれば、国民の声を一切無視し、
自民党公明党だけで取り決めた7月1日閣議決定に対し、
  「私たちは閣議決定を承認しない」
  「日本は絶対に海外で戦争をしない」
  「他国のために自衛隊員を死なせない」
  「自衛隊員に人殺しはさせない」
という主権者である国民の意思を表明する千載一遇の機会が訪れたと考えることも可能です。
 考えてもみましょう。7月1日閣議決定に基づいた関連法案等を審議する衆議院議員を私たちが選べる機会は、あとにも先にも今回の総選挙だけなのです。
 もちろん、自民公明両党に代わって政権を担えるような野党があるのか?とか、そこまで行か
なくても、自公両党に大きな打撃を与えられるだけの野党協力が進むのか?とか、野党とは名ばかりの自民党の補完勢力も多いではないかとか、懸念材料はいくらでもありますが、今はそんなことを言っている場合ではありません。
 
 おそらく、選挙結果を大きく左右するのは投票率でしょう。
 あらゆる手段を用いて、棄権を回避し、投票所に行くように周囲に働きかけることが重要です。
 
 そして、どの政党に投票するか?これは選挙区ごとに、1人1人が最も賢明な選択をするしかありません。
 個人的なことで言えば、私はいかなる政党とも関わりを持つことなく、「無党派」の立場を貫い
てきたつもりです。もちろん、「無党派」だからといって、特定の候補を応援しない訳ではありません。最近2回の衆議院議員総選挙(2009年、2012年)では比較的旗幟を鮮明にしましたが、それぞれ応援した候補は、前々回と前回では別の政党でした。
 そう、「無党派」というのはそういうものです。
 今回の選挙でも、自民公明両党による7月1日閣議決定に基づく関連法案等成立を阻止
することに少しでも実質的に効果のある投票行動を選択するでしょう。
 また、「無党派」にとって、選挙区と比例区で別の政党に投票することなど「当たり前」です。
 
 このように、「棄権しない無党派」の意識は(自分自身がそうですから)、比較的よく分かるつもりです。
 問題は、「投票に行かない無党派」です。
 もしかすると、今や有権者の中でこの「投票に行かない無党派」が最大勢力かもしれません。
 ということは、仮に自分たちの周囲に「選挙に行ったことがない」という若い人(別に若くなくてもいいのですが)がいたら、それは「国会状況を劇的に変化させるかもしれない有権者(の候補者)」を発見したということに他なりません。
 「自分たちが戦場にかり出されるかもしれない」「投票に行かなければ」と思ってくれる彼もしく
は彼女を1人でも説得できれば、その効果はその彼・彼女の周囲に及んでいく可能性が十分にあります。
 言うは易く行うは難しではありますが、最近ご紹介した伊勢﨑賢治さんや半田滋さんの新著
を一括購入して(!)活用するなど、あらゆる手段方法を駆使しながら、「投票に行かない無党派」への働きかけを強化しなければと思います。
 もちろん、伝統的な「組織を固める」選挙が必要な局面があることは否定しませんが、それだ
けではおそらく大勢を動かすことは困難でしょう。
 
 最初に書いた「余波」の1つでしょうが、私は、今日(11月20日)、某全国紙和歌山支局の記者から取材を受け、「集団的自衛権解散総選挙」についてのコメントを求められました。
 「消費税」だとか「アベノミクス」だとかが争点であるかのような言説が飛び交い、肝心の(とそ
の記者が考える)「集団的自衛権」がなかなか争点とならないことに危機感を抱いていることが分かり、このような記者が第一線にいることを頼もしく思いました。
 私のコメントはどうでもいいのですが、その全国紙(和歌山版)が、是非「選挙特集」の中で集団的自衛権」の問題を大きく取り上げてくれることを祈っています。
 
 私が話したコメントの内、「争点」は何か?ということについて以下のように述べたことをご紹介し、この稿を終えたいと思います。
 
「選挙の争点を決めるのは自民党でもなければ公明党でもありません。1人1人の有権者が、自分の判断で争点は何かを決めるのです。そして、選挙をあとから振り返ってみて、多くの有権者が争点だと考えたことが、結果としてその選挙の争点となるのです」「私は、集団的自衛権行使を容認した閣議決定を認めるのか認めないのか、自衛隊に海外で戦争をさせるのかさせないのかが最大の争点だと思っています」「来年の通常国会に上程すべく準備されている集団的自衛権関連法案等を審議する衆議院議員を選べる機は、今度の選挙しかありません。このことを1人でも多くの人に訴えていきたいと思います」
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年4月11日
今さらながらですが「選挙に行かない男と、付き合ってはいけない5つの理由」(駒崎弘
樹氏)をご紹介します
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/25572641.html
2014年11月15日
『日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門』(伊勢﨑賢治氏著)
を読む
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/41312678.html
2014年11月19日
半田滋氏著『僕たちの国の自衛隊に21の質問』を読む
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/41365937.html