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「自民党 重点政策2014」(政権公約)の不誠実さを問う

 今晩(2014年11月26日)配信した「メルマガ金原No.1921」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自民党 重点政策集 2014」(選挙公約)の不誠実さを問う

 自民党は、昨日(11月25日)、「重点政策集2014」を発表しました。昨年の参議院選挙の際のように「選挙公約」とは称していませんが、これが「選挙公約(政権公約)」と考えて間違いないでしょう。
 
「自民党 重点政策集2014」
 
 本文26頁、表紙を含めるとPDFファイル14枚となりますが、私は全部プリントアウトしました。時間があれば全部読んでみたいとは思いますが、今日のところは、「安倍暴走政策集」の1番手、2番手につけることは間違いないと多くの人が考えるであろう(少なくとも私はそう考えています)「集団的自衛権」と「原発政策」について検討してみることにします。

 そして、最初から結論めいたことを言うようですが、「何も14枚も印刷する必要はなかった(インクを無駄にした)」というのが正直な感想です。もしも私と同じ目的でこの「重要政策集2014」を読もうという人がいたとしたら、どう多めに見積もっても3枚も印刷すれば十分だと助言するでしょうね。
 それより、該当箇所を以下に引用しておきますので、必要ならこのメルマガ(ブログ)をプリントアウトしてもらえれば用が足りるはずです。
 
 まずは総論的に、この「重点政策集2014」の構成とページ配分を概観しておきましょう。
 
1頁 安倍晋三自由民主党総裁 巻頭言
「この道しかないんです。あの暗く、混迷した時代に後戻りさせる訳にはいきません。国民の皆さまとともに、この道を前に進んでいく決意です。そして、誇りある日本、世界の中心で輝く日本を、ともに、取り戻そうではありませんか。」
だそうです。
 一昨日(11月24日)のブログでご紹介した講演動画の中で同志社大学の浜矩子教授がいみじくも評していたとおり、「取り戻したがり病」に取り憑かれていることをここでも見事に露呈しています。
2頁~4頁 「アベノミクスで、ここまできています」
5・6頁 「日本再生のためには、この道しかありません」
 経済再生・復興加速、地方創生、女性活躍、財政再建
7頁~26頁 「自民党政策BANK」(ここが公約の本体)
Ⅰ 経済再生・財政再建(8頁~12頁前段)
Ⅱ 地方創生・女性活躍推進(12頁後段~17頁)
Ⅲ 暮らしの安全・安心、教育再生(18頁~24頁前段前半)
Ⅳ 地球儀を俯瞰した積極的平和外交(24頁前段後半~25頁後段前半)
Ⅴ 政治・行政改革(25頁後段後半~26頁後段前半)
Ⅵ 憲法改正(26頁後段後半/見出しを含めて全部で8行)
 
 さて、この中から「集団的自衛権」と「原発政策」がどこに書いてあるのか探すのはなかなか大変ですよ。「集団的自衛権」が「Ⅳ 地球儀を俯瞰した積極的平和外交」の中にありそうだということは何となく想像がつくかもしれませんが、「原発政策」はどこだと思います?「Ⅰ」と「Ⅲ」に分散して書かれているのですが、後者では特に「暮らしの安全・安心」のパートに含まれているのです。これって、見事なブラック・ジョークだと思いませんか?
 
 まずは、その「原発政策」についての公約を読んでみましょう。
 
Ⅰ 経済再生・財政再建
<責任あるエネルギー戦略を>(11頁)
●再エネの導入状況、原発再稼働の状況、地球温暖化に関する国際的議論等を見極めつつ、エネルギーミックスの将来像を速やかに示し、新しい「エネルギー基本計画」に基づいた責任あるエネルギー政策を構築します。
原子力については、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源との位置付けの下、活用してまいります。
●いかなる事情よりも安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進めます。再稼働にあたっては、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組みます。
原発依存度については、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化により、可能な限り低減させます。
 
Ⅲ 暮らしの安全・安心、教育再生
東日本大震災からの復興加速化を>(18頁)
東京電力福島第一原発事故については、廃炉・汚染水対策を安全、着実に進めます。
東電福島第一原発廃炉については、人材育成や研究開発の中核となる国際的な廃炉研究拠点の立ち上げ等により、国が前面に立った取組みを加速化します。
原子力事故災害被災者の方々の一刻も早い帰還を実現するために、復興の動きと連携した効率的な除染の実施や中間貯蔵施設の整備等、復興加速化のための施策を推進し、避難指示の解除を進めます。その上で、企業誘致や営農再開等を推進することで雇用を創出し、自立的に発展できる地域づくりを支援します。
●汚染土壌等の中間貯蔵施設への搬入については、地元の理解と協力を得つつ、廃炉・汚染水対策作業に係る人員や資機材のほか、周辺町村の復興事業関連の輸送をも勘案して、安全で、効率的、効果的な計画を作り、来年1月開始を目指します。
●帰還をお待ちいただく被災者の方々のための住宅建設を進めつつ、避難指示区域全体の将来図を早期に示す等、国・県・市町村・住民が一体となった4輪駆動の「協働」馬力で福島の再生を実現します。
●今次の大震災を踏まえ、避けられない将来の備えとして、同時複合災害の発生に対し的確な初動対応に万全を期すため、国の機関(自衛隊海上保安庁)と自治体の機関(警察・消防等)を機動的に動員・指揮命令でき、平時にあっても救助・復旧に関する研究、機材の開発、訓練等に総合的に対応する「緊急事態管理庁(仮称)」等の設置を至急検討します。
 
 一々コメントしている余裕はありませんので、ここでは一言だけ。一番最後に引用した「避けられない将来の備えとして、同時複合災害の発生に対し的確な初動対応に万全を期す」についてです。
 この部分は、<東日本大震災からの復興加速化を>のセクションの末尾に置かれているのですから、当然ここで言われている「同時複合災害」には、福島第一原発事故のような、大震災と「同時に複合的に」発生する「原発震災」(石橋克彦氏命名)も含まれているということでしょう。
 しかし、まさに問題なのは、万一にも「福島の悲劇」を繰り返すようなことがあれば、日本は破滅的な事態を迎えるということを踏まえ、絶対に「原発震災」を繰り返してはならないということが政策の大前提でなければならないはずであるのに、自民党は、そのような「同時複合災害」が発生することを織り込んだ公約をしているのだということです。
 もとより、原発を「活用し」、「再稼働を進めます」という公約を掲げている以上、「同時複合災害」への備えは当然必要となり、考えようによっては論理が一貫しているとも言えますが、発想の根本が決定的に間違っています。
 何気なく読み過ごされかねないと思いましたので、一言しました。
 
 さて、次は「集団的自衛権」です。関連政策を含めて該当箇所を引用しておきます。
 
Ⅳ 地球儀を俯瞰した積極的平和外交
<地球儀を俯瞰する戦略的外交を>(24頁~25頁)
●「地球儀を俯瞰する外交」を積極的に展開し、米国・オーストラリア・ASEAN諸国・インド等との協力を一層強化するとともに、中国・韓国・ロシアとの関係を改善します。
●国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、地域や国際社会の平和と安定に一層貢献します。また、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々との連帯を通じて、グローバルな課題に貢献する外交を展開します。
南シナ海東シナ海等における「法の支配」等の共通の価値に対する挑戦には、関係諸国とも連携した上で、秩序の維持に努めます。
国益をより重視した新たな「ODA大綱」を作成し、ODAを積極的・戦略的に活用して開発協力を推進します。
●わが国の主権や領土を断固として守る体制を整備するとともに、法と事実に基づく日本の主張について国内外で積極的に普及・啓発・広報活動を行います。
●虚偽に基づくいわれなき非難に対しては断固として反論し、国際社会への対外発信等を通じて、日本の名誉・国益を回復するために行動します。
●日本の「正しい姿」や多様な魅力を世界に伝える拠点として「ジャパン・ハウス」(仮称)の主要国への設置を検討する等、戦略的対外発信機能を強化します。
●大使館・総領事館の新設並びに防衛駐在官を含む外務省定員の着実な増員を図り、欧米主要国並みの外交実施体制を整備します。
経済連携交渉は、交渉力を駆使して、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、特にTPP交渉は、わが党や国会の決議を踏まえ、国益にかなう最善の道を追求します。
●官民連携によるオールジャパン開発途上国に対する支援を強化し、中小企業を含むわが国企業の海外展開支援や資源外交を積極的に推進します。
●「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成26年7月1日閣議決定)に基づき、いかなる事態に対しても国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、平時から切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備します。
●わが国の主権と領土・領海を守り抜くため、尖閣諸島周辺海域漁船の不法行為に対する監視・取締体制の強化等、海上保安庁水産庁の体制を強化するとともに、国境画定の起
点等遠隔離島における活動拠点の整備等を推進します。
小笠原諸島周辺海域等における中国漁船によるサンゴ密漁への取締りの強化を図るとともに、引き続き中国政府への厳重な抗議と厳正な対処を行います。
 
 ごちゃごちゃと色々書いているようではありますが、「集団的自衛権」についてはわずか1項目だけ、それも7月1日閣議決定の要約とも言えぬ簡単な項目だけであり、うっかりすると見過ごしてしまいそうです。
 しかし、一応書いていることは書いているので、もしも今度の総選挙で過半数の議席を獲得すれば、「集団的自衛権の行使を容認した閣議決定について国民の支持を得た」と言うに決まっています。
 もちろん、「原発再稼働」など、「集団的自衛権」よりもずっと多い行数(?)を費やしているのですから、いかに議席を減らそうが、過半数を維持する限り、「国民の理解を得られた」と強弁することは火を見るよりも明らかです。
 
 しかし、日本が戦争をする国になるかどうかという死活的に重要なテーマに費やした分量がわずか5行ですよ。
 これだけで総選挙を乗り切り、「切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備」しようというのですから、この「誠実さ」のかけらもない政党に政権を委ねて良いのか?ということを訴えていくのが私たち1人1人に負わされた課題なのだと痛切に思います。
 
 しかし、ここでも一々の内容にコメントしている余裕はありませんが、見事に「ネトウヨ」好みの政策のオンパレードですね。とりわけ、「虚偽に基づくいわれなき非難に対しては断固として反論し、国際社会への対外発信等を通じて、日本の名誉・国益を回復するために行動します。」はそうです。もしもこれがいわゆる「従軍慰安婦」問題を指しており、この公約を本気で実行に移すのだとすると、その時こそ米国が安倍政権を見放す時でしょう。

 最後に、「憲法改正」の部分を引用します。全部引用しても、見出しを含めて8行しかありません。
 
Ⅵ 憲法改正
<時代が求める憲法を>(26頁)
憲法改正国民投票法一部改正法が施行されたことに伴い、国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正のための国民投票を実施、憲法改正を目指します。
憲法改正のための投票権年齢が4年経過後に18歳になることを踏まえ、選挙権年齢を前倒しして18歳以上に引き下げます。
 
 後半の選挙権年齢はともかく、前半を読んで、私は9月に和歌山県議会が採択した意見書を思い出さざるを得ませんでした。同意見書は「新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求める」とするのみで、一体どんな内容に憲法を改正すべきかについて全く触れないという奇妙な、というよりも、不誠実かつ無責任極まりないものでしたが、この自民党公約は、まさにその「本家本元」ぶりをいかんなく発揮したものなのです。
 
 これについては、今日(11月26日)の毎日新聞社説が適切な批判を加えていましたのでこれをご紹介して本稿を終えることにします。
 
2014年11月26日 毎日新聞社説
:自民党公約 300項目列挙で何を問う

(抜粋引用開始)
 集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定に関しては1項目で「切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備」などの表現で済まされた。来年の通常国会の主要テーマと目されるが、法案の踏みこんだ説明はない。
 一方で国の針路を決める憲法改正について政策集は具体的条文にふれず「国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、(中略)憲法改正を目指します」と記した。よもやこの80字程度の記述をもって選挙結果次第で有権者からお墨付きが得られたと主張するわけではあるまい。
 首相は長期政権を視野に解散を決断したとみられている。だとすれば4年間の衆院議員の任期を念頭に何をなそうとしているかを有権者にわかりやすく説明する責任がある。実のある選択の指標を示すべきだ。
(引用終わり)