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ヒューマンライツ・ナウ「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」を読みましょう

 今晩(2014年11月30日)配信した「メルマガ金原No.1925」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ヒューマンライツ・ナウ「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」を読みましょう  
 
 2014年は、国連自由権規約委員会(7月23日)と人種差別撤廃委員会(8月29日)が、あいついで日本政府各報告書に対する最終見解を採択し、ヘイト・スピーチ等に代表される人種的憎悪を唱える行動を効果的に取り締まる適切な措置を速やかに講じることを求める勧告を行った年として記憶されるでしょう(詳細は後掲私のブログなどをご参照ください)。
 
 そしてこのたび、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(関西グループ内ヘイト・スピーチ調査プロジェクトチームが担当)が、特定非営利活動法人コリアNGOセンターの協力を得て、「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」をとりまとめて公表しました。
 まず、以下にその目次を掲げます。
 
「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」(2014年11月)
1 本調査の目的および調査方法
2 ヘイト・スピーチの法規制に関する国際的基準
3 日本における状況
4 本調査により明らかとなった被害体験や被害感情
5 聴き取りで出された意見や要望
6 ヒューマンライツ・ナウの提言
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
(関西グループ内)ヘイト・スピーチ調査プロジェクトチーム
 雪田樹理、元 百合子、中島宏治、三好吉安、三輪晃義、金星姫、他1名
 
 表紙・目次を除き、本文だけであれば20頁の報告書ですから、全てに目を通すのも容易であると思いますので、是非全文をお読みいただきたいと思いますが、以下には、その概要を知っていただくため、部分的に抜粋して引用させていただきます。
 
(抜粋引用開始)
1 本調査の目的および調査方法
 近年、日本においてはいわゆるヘイト・スピーチが社会問題化し、とりわけ、在日コリアンに対する民族的敵意、差別、憎悪を表明する表現行動や街宣などが相次いでいる。
 こうしたなか、東京を本拠とする国際人権 NGO ヒューマンライツ・ナウ1は、不特定多数の者に向けら
れたヘイト・スピーチの法規制をめぐる議論の前提となるべき立法事実の調査を行った。
(略)
 調査方法は、特定非営利活動法人コリア NGO センターの協力を得て、関西在住の在日コリアン16人(
男性10人・女性6人、10代1人・20代2人・30代4人・40代3人・50代6人)に対する個別
面接による方法で、2014年4月19日、6月25日、7月15日に聴き取り調査を実施し、個別インタビュー形式で、ヘイト・スピーチにより被った被害体験や被害感情の聴取を行った。
 今回の面接調査に協力してくれた人は、無差別に選択された在日コリアンではない。なんらかの形でヘイト・スピーチやヘイト街宣に対抗するカウンター行動に関心を持っている人に限定されている。ただし、調査に応じた全員が、在日コリアンとして社会運動に関わってきた人ということでもない。
 ヒューマンライツ・ナウとしては、多数の在日コリアン一般を対象にした調査が望ましいことは認識しているが、今回は初の試みとして、以上のような調査方法となったことをお断りしておきたい。
 
2 ヘイト・スピーチの法規制に関する国際的基準
(1) 3つの国際人権条約
 国際人権法の分野においては、ヘイト・スピーチという用語自体が新しいこともあり、条約上の定義はなされていないが、人種主義的ヘイト・スピーチを規制する条約が3つ存在する。
 1つめは、「集団的殺害罪の処罰及び防止に関する条約」(ジェノサイド禁止条約)であり、ヘイト・
スピーチの中でも最も危険な「直接的で公然たるジェノサイドの煽動」(3条)を犯罪として禁止し、刑
事規制の対象としている。
 2つめは、人種差別撤廃条約であり、「締約国があらゆる形態の人種差別を撤廃する政策」を遅滞なく
取る基本的義務を定め(2条)、同条1項dは「各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは立法も含む)により、いかなる個人や集団、組織による人種差別も禁止し、終了させる」と規
定する。
 そして4条は、2条の特別規定として、ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムを規制している。
(略)
 3つめは、自由権規約であり、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」(20条2項)としている。
(2) ヘイト・スピーチに関する一般的勧告35
 国連の人種差別撤廃委員会は、2013年8月、「ヘイト・スピーチに関する一般的勧告35」を採択している。
(略)
 また、ヘイト・スピーチがその後の大規模人権侵害やジェノサイド(集団殺害)につながることを強調した上で、人種差別撤廃条約の締約国に対し、以下の各行為が法律により処罰できる犯罪であることを宣言するよう勧告している。
(a) あらゆる手段による、あらゆる人種主義的または種族的優越性または憎悪に基づく思想の流布。
(b) 人種、皮膚の色、世系、民族的または種族的出身に基づく特定の集団に対する憎悪、侮辱、差別の扇動。
(c) (b)の根拠に基づく個人または集団に対する暴力の扇動及び威嚇。
(d) 上記(b)の根拠に基づく個人または集団に対する軽蔑、愚弄若しくは中傷、または憎悪、侮辱もしくは差別の正当化の表現が、明らかに憎悪または差別の扇動となる場合。
 ただし、人種主義的表現の犯罪化は、深刻な事案にとどめるべきであり、かつ刑事制裁の適用は合法性
、均衡性及び必要性の原則に従うべきこと、それほど深刻でないものについては、その性質や標的とされた人や集団に対する影響の大きさを考慮に入れつつ、刑法以外の方法で対処すべきであるとの見解を示している。
 
3 日本における状況
(1) ヘイト・スピーチの現状と法規制を巡る状況

 在日韓国・朝鮮人に対するヘイト・スピーチは、日本による朝鮮半島の植民地支配の歴史と深く結び付
いており、長年、日本社会に蔓延してきたものである。
 関東大震災の時の朝鮮人集団虐殺事件を引くまでもなく、ヘイト・スピーチを実行に移したヘイト・ク
ライム(憎悪犯罪)も行われてきており、1980年代以降は、北朝鮮との関係が悪化する度に、朝鮮学校女子生徒が制服として着用する民族衣装が切り裂かれるなど、朝鮮学校やその生徒への暴言、暴行、嫌
がらせが全国各地で起きてきた。
 北朝鮮拉致事件を認めたことを契機に、2002年9月以降の半年間には、全国で1000件以上の事件が起きた。
 同時に、近年は、インターネットの普及に伴い、匿名の差別的書き込みが急速に広がってきた。200
7年1月に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が結成され、インターネットで参加を呼び掛けた排外
主義デモや差別街宣(ヘイト街宣)が、数十人から数百人規模で全国各地で行われるようになった。
 そして、2012年以降、在特会と類似した排外主義的団体によるヘイト街宣の数は増加し、東京、大
阪、神戸、京都、川崎、札幌などの都市で頻繁に行われるようになった。
 このように、近年、日本社会では、ヘイト・スピーチやヘイト・クライムが急速に広がり、活発化して
きたが、不特定多数の集団に向けられて発せられたヘイト・スピーチを規制する法はない。実際、ヘイト街宣は野放し状態で行われ、警察官は、あたかも排外主義者たちの「表現の自由」を保護するためにそこ
にいるかのような印象さえ与えてきた。
 このような現状に対し、日本では、あらゆる差別を禁止する包括的な差別禁止法が制定されておらず、
また、人種差別を禁止する法律も存在しない。
 現行法では、名誉毀損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪等の刑事法規制が存在するが、集団に対する名誉毀
損や侮辱は成立しないとされており、ヘイト・スピーチに対する国内法規制は存在しない。日本の現行法
で対処できるのは、被害者が特定できる場合に限られている。
(略)
(2) 日本政府の対応
 以上のように、日本ではヘイト・スピーチが蔓延しているが、現行法により対処できるのは被害者が特
定できる場合に限定されており、不特定多数に向けられたヘイト・スピーチに対する法規制はなく、何の
対策も講じられていない。
 また、日本政府は、人種差別撤廃条約 4 条( a)と(b)を留保している。
(略)
(3) 繰り返される国連からの勧告
 国連の人種差別撤廃委員会は、2001年、2010年及び2014年の3回にわたって、日本政府に
対して、同条項の留保を撤回し、ヘイト・スピーチを処罰するように勧告している。
 そして、2014年7月23日、日本政府報告書を審査した国連自由権規約委員会は最終見解を採択
し、「締約国(日本)は、差別、敵意または暴力の扇動となる、人種的優越または憎悪を唱えるあらゆる宣
伝を禁止すべきであり、またそのような宣伝を広めることを意図した示威行動を禁止すべきである。
 締約国はまた、人種主義に反対する意識啓発キャンペーンのために十分な資源の配分を行うとともに、
裁判官、検察官、警察官が憎悪および人種的動機に基づく犯罪を発見する力をつける訓練を受けることを確保するための取り組みを強化すべきである。締約国はまた、人種主義的攻撃を防止し、容疑者が徹底的に捜査され、起訴され、有罪判決を受けた場合には適切な制裁により処罰されることを確保するためのあ
らゆる必要な措置をとるべきである」とする勧告を行った。
(略)
 
4 本調査により明らかとなった被害体験や被害感情
(1) ヘイト・スピーチの体験および被害感情
 冒頭で述べたように、ヒューマンライツ・ナウのヘイト・スピーチ調査プロジェクトチームは、今回、
在日コリアン16人の方々にご協力いただき、個別面接の方法により聴き取り調査を行った。
 その結果、16人から語られたヘイト・スピーチの被害体験や被害感情は、次のとおりであった。
① 30代女性
・ひどい言葉が社会的に許容されている雰囲気を感じる。また、国家として反省していない態度を感じる

慰安婦問題集会にて、会場の外で、「ばばあ」「売春婦」と叫んでいた人たちがいた。「売春婦です」
と書いた紙を本人に付けようとしていた。
② 30代男性
・2013年3月31日に鶴橋で行われた街宣デモのときに現場に行った。遠くて、ヘイト・スピーチは
あまり聞こえなかったが、意外と普通の人が多いと感じた。
・後に動画で見て、言葉遣いがひどいと感じた。2年前の大久保での街宣あたりから、ひどい言葉遣いが
増えたように感じる。
③ 30代女性
・日常の些細な場面で、ヘイト的言動が聞こえて、ビクッとしたり(例えば、飲食店で隣のテーブルから
聞こえる会話など)、また、そういったことを耳にしそうな気がして、ふと不安を感じることがある。
・学校の落書きなどはすごく問題になったのに、インターネット空間では規制がされていない。
④ 20代男性
・自分でどうしようもできないことを理由に、「死ね」「殺せ」と言われることの不条理、痛みを感じる
。単なる罵詈雑言ではない。
・深く考えていない在日コリアンが大部分だが、どこかで深く傷ついている。積極的反応や意見が出ない
ことは、意見が無いことや、傷ついていないことを意味しない。それを表現する場面や機会がない。
⑤ 20代男性
・ヘイト街宣に対する抗議行動が起きるまでは、鬱状態になり、精神科に相談し、カウンセリングを受け
た。しばらくネットを離れるようにアドバイスされた。
・京都にきたヘイト街宣のほとんどに立ち合ったが、カウンター行動はできず、見ていただけだった。心
配で見に行くが、恐怖があってなにもできなかった。
・2013年2月に「しばき隊」をみてショックを受け、不安になった。在日の行動だと思われて、反感
が煽られることが心配だった。
・その後、プラカードを持って鶴橋のカウンターに参加するようになった。2013年3月には新大久保
のカウンターにも参加した。4、5月には御堂筋で酷いヘイト街宣があった。ヘイト・スピーチを浴びる
ので疲労感がある。
⑥ 50代男性
・物的被害はないが、精神的な不快感がある。人として言ってはいけないことを言っている。子どもたち
に見せられるものではない。実際に見て、吐き気がした。自尊心が傷つく。
・ネットで在日に対して誹謗中傷しているのは知っていたが、ヘイト街宣はそれがリアルな社会に飛び出
してきたような感じがする。
⑦ 50代男性
・ヘイト・スピーチについては怒りの感情を持っている。今までも差別があるのは知っていたけれど、今
までと?し違う。うちわで話していた内容が公のものになってきた。顕在化してきた。これは放っておけないと思った。この国で学んで働いてきた人間が、なぜ出て行けと言われなければならないのか。悔しいか
ら、カウンター行動がある。
⑧ 40代男性
・「拡散論」(不特定多数が対象の憎悪表現の被害は拡散するから問題ないという、法規制消極論)は意
味がない。間違っている。自分に向けられたものと感じる。カウンターから帰宅すると胃腸がおかしい。仲間と一緒の時はよいが、寝る時など、一人になると強く感じる。
⑨ 10代女性
・ヘイト街宣参加者の一人と一対一で話し合ってみたが、最後に「あなたは、この国に必要ない。(自国
に)帰ってください」と言われて辛かった。
⑩ 50代女性
・小学校の民族学級の講師として20年以上民族教育に取り組んできた結果、生徒の30%以上が本名を
名乗るようになっていた。しかし、折角の人権教育の盛り上がりが、このところの展開(在特会などの活動の活発化)と逆風で下降傾向にある。特に、民族教育に対する攻撃が激しい。「どこから金もらっているのか」とか「(民族)教師は、国に帰れ」といったバッシングが増えた。保護者も「どう責任持ってくれるのか」といった問いかけをしてくる。民族教育に協力的で熱心な教員もいるが、日本社会を信じられない。
⑪ 40代男性
在日コリアンでもルーツを意識していない人が大勢いるが、ヘイト・スピーチがテレビ放映されたこと
で、ルーツのある子ども達は「自分たちのこと?」という意識が出てきた。
・毎年「仲良くしようぜ パレード」をしているが、そのチラシに子どもの被害事例を掲載している。
「先日の週末、在日コリアンをターゲットにしたデモが鶴橋でありました。近くを偶然通った A 君は、普
段、民族学級に熱心に参加していません。週明けに小学校のソンセンニム(民族学級の教師のこと)をつかまえて、『やっばり僕、自分が韓国人ってまわりの人に言うのはあかんねんな、と思ってん』と、鶴橋
でドキドキしながら、大人たちの様子をうかがっていたことを話しました」
⑫ 50代男性
・訴えられているメッセージは、在日韓国・朝鮮人が実際には受けていない特権を受けているというデマ
ばかりだった。デマがデマを生んでジェノサイドに繋がった関東大震災が頭をよぎり、強い恐怖を感じた
・デモの直後、本名を名乗っている子どもたちは家から出るのを怖がったり、日本人に名前を伝えるのを
怖がるようになった。
⑬ 50代男性
・勤務先の団体に対するヘイト・スピーチ街宣が行われたことがあった。マイクを一人一人回して、「朝
鮮人はうじ虫だ!」「朝鮮人はゴキブリ!」「朝鮮人は死ね!」などと各自が発言し、それに対して他の参加者が拍手をしたりして参加者全員が興奮していた。名札を見られ、拡声器で名を連呼され、暴言を投げつけられた。論理的な抗議ではなく、面を向かって憎悪感情を投げかけてくることに対して恐怖を感じた。その後、街宣をしていた団体のホームページに自分の写真が掲載され、今でも閲覧できる状態にある

⑭ 30代男性
・在日韓国青年会のフェイスブックに書き込みや嫌な反応がある。具体的には「在日特権を何とかしろ」
「日本が気に食わないなら帰れ」と言った反応である。自分が生まれ育った場所を否定されるのは気持ち
の良いことではない。
⑮ 50代女性
・私のことを特定しているわけではないが、直接、私に襲い掛かってくるのではないか、
・一番腹が立つのは警察に対してである。警察は彼らの言動に対して、黙って見ているだけで、何も言わ
ないし、何もしない。中学生が「何でとめないの?」と質問したら、「表現の自由だから」と答えたと言う話を聞いた。
⑯ 40代女性
・民族のことを言われているのは、自分のことを言われているような意識を持つようになった。「殺せ、
殺せ、朝鮮人」と言われ、殺されるんじゃないかという恐怖が襲ってきた。
・一見普通の人が、ヘイト・スピーチに参加している状況が恐ろしい。
(2) まとめ
 聴き取り調査の結果、不特定多数の在日コリアンを対象としたヘイト・スピーチが、個々の在日コリア
ンの人権や尊厳を侵害しており、また、在日コリアンの社会生活やその行動に影響を及ぼしている実態が明らかになった。
① 恐怖
② 自尊心の傷つき
③ 社会生活への影響
④ 子どもへの影響
⑤ 日本社会に対する恐怖
 
5 聴き取りで出された意見や要望
 個別面接では、ヘイト・スピーチの被害体験や被害感情に加えて、ヘイト・スピーチに対する意見や要
望の聴き取りを行った。
 そこで出された意見は、共通して、ヘイト・スピーチに対する法規制のない現状を憂い、何らかの法規制を求めるものであった。ヘイト・スピーチは「表現の自由」ではなく、人種差別である、犯罪である、暴力である、といった意見が出された。
 具体的に、人種差別禁止法の制定を求めるもの、ヘイト・スピーチを歴史的文脈からとらえるべきとする意見、鶴橋などの特定地域での道路使用許可に対する制限を求める意見、教育委員会による実態調査やマイノリティの子ども達へのケアやカウンセリングを求める意見などが寄せられた。
 また、ヘイト・スピーチを取り巻く日本の社会状況が悪化していることが指摘されており、メディアを含むヘイト・スピーチに対する無関心、あるいは容認している日本社会のあり方、日本社会の排外主義の問題としての指摘などがあり、日本人とともに考え、「下から」の改革をしていくことの呼びかけもあった。
 
6 ヒューマンライツ・ナウの提言
 今回の調査結果により、ヘイト・スピーチが在日コリアンの人びとの人権・人間としての尊厳を深く蹂躙するものであることが明らかとなった。
 在日コリアンの人びとは少なくとも、私生活、家族に対して恣意的に干渉され、名誉・信用を不法に攻撃されない権利(自由権規約17条)、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受け
る権利(自由権規約26条、人種差別撤廃条約5条)、自由権規約27条(少数民族に属する者が、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権
利)、効果的な保護及び救済措置を受ける権利(人種差別撤廃条約6条)を明らかに侵害されている。
 この調査結果を踏まえ、ヒューマンライツ・ナウは、日本政府に対し、自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会の勧告及び人種差別撤廃委員会の一般的勧告35に従い、以下のとおり、人種差別の撤廃に向けた積極的な措置を直ちにとるよう提言する。
(1) 人種差別撤廃条約第4条(a)項及び(b)項に付された留保の撤回
(2) ヘイト・スピーチに関する実態調査
(3) 包括的な人種差別禁止法の制定
(4) 教育・啓発に関する取り組み
(5) 刑事規制
(6) 現行刑法による適切な対応
(7) 政策決定プロセスへの民族的マイノリティの参加

(引用終わり)
 
 報告書でも認めているとおり、今回の調査は「多数の在日コリアン一般を対象にした調査」ではありません。
 しかしながら、意識の高い十数人を対象とした聴き取り調査であっても、その「当事者性」が失われる
訳ではなく、非常に貴重な試みであると思います。
 とはいえ、報告書が提言の(2)で提唱しているとおり、まずは国による組織的な「実態調査」が早急に望まれます。
 この「実態調査」を始めとして、ヒューマンライツ・ナウによる日本政府に対する提言が実施に移されるか否については、究極的には我
々日本国民が責任を負うべきことなのだということをあらためて気付かせてくれる報告書であることに感謝しつつ、提言(2)を引用して本稿を終えたいと思います。
 
(引用開始)
(2) ヘイト・スピーチに関する実態調査
 日本政府は、従来の誤った現状認識を改めるとともに、人種差別撤廃に向けた実効的な措置をとるため
に、まずは、日本における外国人や民族的マイノリティに対する差別の実態に関する調査を行うべきである。
 とりわけ、ヘイト・スピーチに関しては、具体的にどのような内容のデモ・街頭宣伝が行われているか
、警察がどのようにデモを規制し警備しているのか、ヘイト・スピーチに対抗するカウンター行動に対してどのような対応や規制を行ったのか、道路使用許可がどのように運用されているのか等について調査を
する必要がある。
 また、ヘイト・スピーチ規制の必要性を市民に説明するためにも、被害者がヘイト・スピーチに触れた
際に受けた精神的苦痛、ヘイト・スピーチの蔓延によって在日コリアンが受けた社会生活上の被害等につ
いての広範な聴き取り調査も不可欠である。
 このように、日本政府は、人種差別撤廃に向けた実効的な措置をとるため、日本における差別実態等に
関する調査を速やかに行うべきである。
(引用終わり)

 
(付記その1)
 上記報告書の作成に携われた中島宏治弁護士からご案内があった関連企画のご紹介です。12月8日に東京で、12月13日に大阪で開催されます。ご都合のつく方は是非ご参加ください。
 以下に、ヒューマンライツ・ナウ公式サイトに掲載された開催案内を引用します。
 
【ヘイトスピーチ関連記事-2014年世界人権デーイベントにむけて-】
 今年の人権デーにあわせたイベントは、12月8日(月)と13日(土)に東京と関西でヘイトスピーチを取り上げることになりました。
 先日ついにヒューマンライツ・ナウ関西グループのイト・スピーチ調査プロジェクトチームによる、「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」も発表されました!
 東京と関西で行われるイベントはこちらです。詳細はそれぞれのURLから移動してご確認いただけます。
 
≪東京開催≫
このままで良いのか ヘイト・スピーチ 
「明らかになった被害の実態」 ~聴き取り調査から見えてきたもの~
日時:2014年12月8日(月)19時~21時 (開場:18時30分)
場所:青山学院大学 青山キャンパス2号館 2階221号室
参加費:1000円(資料代含む)
お申込み:
Eメールにて、ヒューマンライツ・ナウ事務局
info@hrn.or.jpまで件名を「12/8参加希望」としてお名前、連絡先を明記しお申込みください。
詳細
http://hrn.or.jp/activity/event/128hrn/
 
≪大阪開催≫
このままで良いのか ヘイト・スピーチ
「明らかになった被害の実態」 ~聴き取り調査から見えてきたもの~
日時:2014年12月13日(土)17時~19時(開場:16時30分)
場所:CANVAS(キャンバス)谷町 大会議室
参加費:500円(資料代含む)
お申込み:
Eメールにて、ヒューマンライツ・ナウ関西グループ
hrn_kansai@yahoo.co.jpまでお名前、ご所属を明記し、お申込みください。当日午前中まで連絡可能です。
詳細
http://hrn.or.jp/activity/event/1213hrn/
チラシはこちらです。

(付記その2)
 以下のような興味深い企画もあるそうです。
 
【お知らせ】人権デーイベントに向けて、フォトアクションキャンペーン始めました!
 「#ゆるさないヘイトスピーチ・フォトアクションキャンペーン」実施!
 今年の人権デーは「ヘイトスピーチ」の差別被害について取り上げたイベントを東京・大阪それぞれで開催します。それに伴って、『 #ゆるさないヘイトスピーチ・フォトアクションキャンペーン』を実施することになりました!
 
 「ヘイトスピーチ」には反対という、このキャンペーンにご賛同いただける方は、メッセージを書いた紙やボードと共にご自身・お友達同士で撮影した写真を、ハッシュタグ【 #ゆるさないヘイトスピーチ、#hrn】 をつけてご自身のSNSFacebook, Instagram, Twitter)などにご投稿ください!
 
 投稿された写真は、HRNスタッフで集計し、こちらのイベントページで定期的にアップ、またイベント終了後(12月13日)にすべての写真を集めてモザイク画を作成する予定です。
 
 また、このフォトアクションをより広く拡散するために、アイスバケツチャレンジのように、「賛同してくれる知り合いを2名指名して、一緒にフォトアクションに参加してもらう」というルールも作成しました!(強制ではありません、あくまでたくさんの人に参加してもらう、ということが重要だと考えています。)
 
 お友達・お仲間・職場の皆さんとぜひご参加ください!
 よろしくお願い致します!