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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

国民安保法制懇の重要な指摘~「現在進められている我が国の安全保障政策に対する緊急声明」を読む

 今晩(2014年12月3日)配信した「メルマガ金原No.1928」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
国民安保法制懇の重要な指摘~「現在進められている我が国の安全保障政策に対する緊急声明」を読む

 第47回衆議院議員総選挙の公示を翌日に控えた12月1日(月)午後6時から、東京のプレスセンタービルにおいて、国民安保法制懇が緊急記者会見を行い、「現在進められている我が国の安全保障政策に対する緊急声明~「日米防衛協力指針の見直しに関する中間報告」を中心に~」を発表しました。
 
 出席メンバーは、柳澤協二さん(元内閣官房副長官補)、樋口陽一さん(東京大学名誉教授・憲法学)、小林節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の3人でした。
 
 今のところ、記者会見の映像は、IWJによるものだけしか見つけていませんが、「※ 12月8日まで、会員以外の方にも動画全編公開中!」ということなので、是非多くの方に視聴していただきたいと思います(その上で、会員登録していただけるとなお幸いです)。
 
2014/12/01 【大義なき解散総選挙】「卑怯だ!」選挙公約に「集団的自衛権」の文字がない!? 国民安保法制懇が緊急会見、安倍総理の「逃げの姿勢」を痛烈に非難
 冒頭~ 司会(川口創弁護士/国民安保法制懇事務局)
 1分~ 柳澤協二さん
 20分~ 樋口陽一さん
 29分~ 小林節さん
 33分~ 質疑応答
 
 今回の「緊急声明」は、「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」に対する批判を中心に取りまとめられているのですが、おそらくこの「緊急声明」とりまとめを主に担ったのは柳澤さんだったのではないかと推測されます。記者会見においても、この点については柳澤さんがまず詳しく説明されましたし、何しろ、今まさに「見直し」されようとしている1997年ガイドライン策定時に、防衛庁審議官として日本側の交渉担当者だったのですからね、柳澤さん自身が。
 末尾に、「緊急声明」全文を引用しますので、記者会見での柳澤さんの説明と照らし合わせながら読み込んでいただければと思います。
 私が特に重要だと考えたのは、「今回の中間報告では、安保条約に直接の根拠がない「同盟のグローバルな性質」を述べている。このような地球規模の防衛協力であって、武力行使を伴う可能性があることについて両国間の合意を目指すのであれば、安保条約の範囲を超えた内容を行政府が進めていることに他ならず、この点でも明確に行政府の権限を逸脱している」という部分です。
 まあ、憲法さえ無視しようという手合いが条約を遵守しなくても驚くには当たらないと言えばその通りなのですが、あまりと言えばあまりですからね。
 以下に、問題の「中間報告」と日米安保条約にリンクをはっておきますので、しっかりと理解していただきたいと思います。
 
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
 
日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告(2014.10.8)
(抜粋引用開始)
Ⅱ.指針及び日米防衛協力の目的
 SDC(防衛協力小委員会)は、新たに発生している、及び将来の安全保障上の課題によって、よりバランスのとれた、より実効的な同盟が必要となっていることを認識し、平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和と安全を確保するとともに、アジア太平洋及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、相互の能力及び相互運用性の強化に基づく日米両国の適切な役割及び任務について議論を行ってきた。
 将来の日米防衛協力は次の事項を強調する。
・切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
日米同盟のグローバルな性質
・地域の他のパートナーとの協力
・日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
・政府一体となっての同盟としての取組
 将来を見据え、見直し後の指針は、日米両国の役割及び任務並びに協力及び調整の在り方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を更新する。指針はまた、平和と安全を促進し、あり得べき紛争を抑止する。これにより、指針は日米安全保障体制についての国内外の理解を促進する。
(引用終わり)
 
 なお、IWJ(原佑介記者)の文章の中に、「「集団的自衛権」を選挙公約にきっちり書き込んで、選挙戦を堂々と戦っていく――。11月18日、衆院解散の決定を表明した記者会見の場で、こう断言した安倍総理。しかし、いざ公表された自民党の選挙公約の中に、「集団的自衛権」の文字は見当たらない。「国民を刺激したくない」「争点にしたくない」という気持ちの表れか」とありました。
 そこで、首相官邸ホームページの該当箇所と、実際に発表された「自民党 重点政策集 2014」(選挙公約)とを引用することにしました。質問したウォールストリートジャーナルの記者は「(今回の選挙は)集団的自衛権の関連法案への信任と捉えられるのでしょうか」という表現を使っていますが、首相自身は、「安全保障政策等についても党の公約にきっちりと書き込んで、この選挙戦堂々と闘っていきたい」とは言っているものの、「集団的自衛権」という用語は使っていませんね。
 記者会見の映像を見る限り、冒頭発言だけではなく質疑応答部分でも、左右に設けたプロンプター機器に、あるいは下方の縁台に目を向けているようなので、おそらく質問は全て事前通告済みであり、「模範回答」が用意された上での記者会見と考えるべきなのでしょう。
 もっとも、私もブログで「不誠実」と糾弾したとおり、自民党の公約が「卑怯」極まりないものであることに全く異論はありません。
 
平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見
(抜粋引用開始)
(記者)
 ウォールストリートジャーナルの関口と申します。
 今回の選挙は、消費税先送りやアベノミクスの道筋の是非を有権者に問う選挙とされておりますが、安倍政権は経済成長以外にもエネルギーや安全保障など重要施策を抱えています。総理は今回の選挙の結果を成長戦略だけでなく、原発再稼働や憲法解釈によって行われる集団的自衛権の関連法案への信任と捉えられるのでしょうか。
安倍総理
 自民党は消費税もそうでありますが、常に選挙において逃げることなくしっかりと国民の皆様にお示しをしています。ですから当然、エネルギー政策、原発政策あるいは安全保障政策等についても党の公約にきっちりと書き込んで、この選挙戦堂々と闘っていきたい。有意義な論戦を行っていきたいと考えております。
(引用終わり)
 
自民党「重点政策集 2014」
(抜粋引用開始)
Ⅳ 地球儀を俯瞰した積極的平和外交
<地球儀を俯瞰する戦略的外交を>
(24頁~25頁)
●「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成26年7月1日閣議決定)に基づき、いかなる事態に対しても国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、平時から切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備します。
(引用終わり) 
 
 それでは、国民安保法制懇が12月1日に発表した「緊急声明」を全文引用します。是非1人でも多くの人の目に触れるように、「拡散」にご協力ください。
 
           現在進められている我が国の安全保障政策に対する緊急声明
      ~「日米防衛協力指針の見直しに関する中間報告」を中心に~


                                平成26年12月1日
                                   国民安保法制懇
 
 我々国民安保法制懇は、本年7月1日に政府が行った集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定(以下、7月1日閣議決定)に対し、従来の政府見解との論理的整合性がなく、憲法第9条と両立しえないこと、憲法によって政治権力を制約する立憲主義を覆す暴挙であることなどの点から、7月1日閣議決定の撤回を求める報告書を9月29日に公表した。
 この報告書では、7月1日閣議決定で示された「(他国への攻撃によって)我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」など、いわゆる「武力行使の新3要件」の意味するところが不明であり、何ら明確な「歯止め」となっていないことなども指摘したが、その後の臨時国会における審議においても、これらの疑問が解明されたとは到底言い難い状況にある。
 
 10月8日には、日米の外務・防衛両閣僚による協議(いわゆる2+2)において、「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」(以下「中間報告」と言う。)が発表された。
 中間報告では、「日米同盟のグローバルな性質、地域の他のパートナーとの協力」などを重視する観点から、さまざまな協力項目を例示している。また従来の指針にあった「周辺事態」や「後方地域」の概念を取り払い、世界のいかなる地域においても、米軍が戦闘行為を行っている場所との地理的関係も考慮せず、多様な協力ができることとされた。さ
らに最終的にガイドラインにおいては、集団的自衛権の行使を含む武力行使や武器使用の拡大が反映されるという。
 中間報告は、自衛隊の米軍に対する協力が「いつでも、どこでも、どんなことでも」できるようになると言うものであるが、「いつ、どこで、何をするか」を説明しておらず、すなわち外務・防衛当局に白紙委任することを表明するに等しい。
 中間報告は、以下の 3 つの点で重大な問題を抱えている。
 第 1 に、そもそも憲法上許されない集団的自衛権の行使を前提としている点である。過去の指針においては、米軍の戦闘行為との一体化を避けるなど、憲法との整合性を図られてきた。憲法を最高法規とする法秩序のなかに位置づけられるよう、指針の策定が試みられてきた経緯がある。
 しかし、今回の中間報告では、具体的に集団的自衛権行使を前提とした具体的な協力事項については明示されていないものの、実質的に集団的自衛権行使を予定している点で、憲法との整合性が無視されている。憲法の範囲を超える作業がなされているという点で、行政府の権限を逸脱した作業が行われていると言わざるを得ない。
 第2に、中間報告の内容は、日米安保条約に明記された根拠すら持たないという点である。78 年指針は、安保条約第5条のいわゆる日本有事を対象とし、97 年指針の対象であった「周辺事態」は、主として朝鮮半島における事態など、いわゆる安保条約第6条事態を念頭に置いていた。
 しかし、今回の中間報告では、安保条約に直接の根拠がない「同盟のグローバルな性質」を述べている。このような地球規模の防衛協力であって、武力行使を伴う可能性があることについて両国間の合意を目指すのであれば、安保条約の範囲を超えた内容を行政府が進めていることに他ならず、この点でも明確に行政府の権限を逸脱している。
 第3に、安全保障政策の観点から言えば、周辺事態の概念を廃止することは、我が国の平和と安全確保のあり方を根本から変える可能性があるという点である。周辺事態とは、「我が国周辺における事態であって、そのまま放置すれば我が国への武力攻撃に至るなど、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」とされていた。(周辺事態安全確保法第1条)
 かかる事態においては、早期に事態を収拾するために行動する米軍を支援することによって、我が国が戦争に巻き込まれないようにすることを目的としていた。つまり周辺事態とは、我が国有事への波及を防ぐために我が国有事と区別するべく創設された概念である。今回中間報告で周辺事態の概念を排除したことは、日米防衛協力の地理的範囲を拡大するだけではない。集団的自衛権を行使して米軍と共同の作戦を行うことも想定されているのであるから、我が国への波及を防ぐどころか、あらゆる事態において米軍とともに進んで戦争当事国になる可能性があることを意味している。これは、我が国の安全保障政策の基本的方針の大転換以外の何物でもない。
 安倍首相は、「(集団的自衛権の行使によって)日本が戦争に巻き込まれるというのは誤解」と述べている。しかし、まさに「戦争に巻き込まれる」のではなく「進んで戦争に参加する」ことになる、という点で、事態はより深刻である。
 このように、中間報告は、憲法及び日米安保の範囲を逸脱し、行政府の権限を越えた対米公約であり、我が国の安全保障政策の基本的方針の大転換と言うべきものである。
 しかし、中間報告については、国会での審議がなされていないばかりか、主権者である国民の判断も仰ぐこともなく、最終報告に向けた作業が急ピッチで進められている。我が国の根幹に関わる問題を、民主主義的な手続きを無視して進められている点について、強い危惧を抱かざるを得ない。
 とりわけ、集団的自衛権の行使によって自衛隊が大きな危険にさらされることや我が国への攻撃を誘発して国民に被害が及ぶ可能性が高まることなど、政策転換に伴うリスクやコストについて全く語られていないことは、国民を愚弄するに等しいものと厳しく批判されなければならない。
 我々は、主権者である国民の賢明な判断を期待するとともに、「国民の生命、自由、幸福追求の権利」を守るためにも、現在進められている安全保障政策に対する批判を続けていくことを表明する。
                                                 以 上