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共産党中央委員会「総選挙の結果について」を読んで“共産党に半分だけ投票した人々”を思う

  今晩(2014年12月16日)配信した「メルマガ金原No.1941」を転載します。

 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。

 
共産党中央委員会「総選挙の結果について」を読んで“共産党に半分だけ投票した人々”を思う

 第47回衆議院議員総選挙において、真に「躍進」の名に値する成果を収めたのが日本共産党であったことは間違いないでしょう。
 議席数が8(全て比例代表)から21(小選挙区1、比例代表20)へと激増したのですから。
 投票率が史上最低となった中で、共産党が獲得した総得票数を過去3回の総選挙と比較してみれば、この面でも「躍進」したことが裏付けられます。
 なお、第44回~第46回は総務省サイトから、第47回はWikipediaのまとめから数字を抜き出しています。

比例代表における共産党の総得票数の推移)
第44回(2005年) 4,919,187票(7.25%) 当選9人
第45回(2009年) 4,943,886票(7.03%) 当選9人 
第46回(2012年) 3,689,159票(6.13%) 当選8人 
第47回(2014年) 6,062,962票(11.37%) 当選20人
 
小選挙区における共産党の総得票数の推移)
第44回(2005年) 4,937,375票(7.25%)
 ※300選挙区に275人立候補して当選0人
第45回(2009年) 2,978,354票(4.22%) 
 ※300選挙区に152人立候補して当選0人 
第46回(2012年) 4,700,289票(7.88%)
 ※300選挙区に299人立候補して当選0人
第47回(2014年) 7,040,130票(13.30%)
 ※295選挙区に292人立候補して当選1人
 
 この「躍進」をもたらした要因についての日本共産党自身のとりあえずの総括が、今日のしんぶん赤旗に掲載されました。
 
総選挙の結果について
12月15日 日本共産党中央委員会常任幹部会

(抜粋引用開始)
(略)
 小選挙区選挙で候補者を先頭にした奮闘により、704万票(13・30%)を獲得したことは、比例での躍進につながっただけでなく、小選挙区自身のたたかいでも、今後の展望をひらく成果となりました。
 全体として、総選挙の結果は、画期的な躍進といえるものとなりました。
(略)
 安倍政権の暴走に対して、多くの国民が「この道は危ない」と感じているもとで、日本共産党がこの暴走と正面から対決する姿勢を鮮明に打ち出したことは、評価をいただけたと考えています。
 同時に、私たちが、「消費税に頼らない別の道」、「北東アジア平和協力構想」など、内政でも外交でも、国民の立場に立った対案を訴えたことは、安倍首相が「この道しかない」というのに対して、国民の前に「別の道がある」ということを示した重要な論戦となりました。
 さらに、私たちが、あらゆる分野で一致点にもとづく共同――「一点共闘」に積極的にとりくんできたことが、いつも国民との共同で頑張っている党、自分たちの代弁者になってくれる党という、日本共産党への信頼を広げることにつながり、今回の選挙で生きた力を発揮しました。
(略)
 選挙戦をつうじて私たちは、自民党日本共産党――「自共対決」こそ、日本の政治の真の対決軸であることを訴えましたが、この選挙で唯一躍進した党が日本共産党だったという事実は、これをいよいよ鮮明にするものとなりました。
(略)
 日本共産党を封じ込めようとする勢力は、この間さまざまな反共戦略をすすめてきました。この10年余の総選挙を振り返ってみても、2003年以来の「二大政党づくり」の動き、それが破たんしたのちの「第三極」論など、偽りの対決の構図に国民をおしこめる策略によって、日本共産党前進を阻まれてきました。しかし、これらの攻撃と不屈にたたかうなかで、いま本格的な「自共対決」の時代をきりひらきつつあるのです。この間の全党の苦闘が、今回の総選挙の躍進に実ったのです。常任幹部会は、この間の全党のみなさんの不屈の奮闘に深い敬意を表するものです。
(略)
(引用終わり)
 
 以上、かなり長目の総括から、選挙結果の分析に直接触れた箇所のみ抜粋して引用しました。
 私は完全な部外者ですから、共産党中央委員会常任幹部会の見解に別段「それは違うだろう」と異を立てるつもりはありませんし、以下の見解などは全面的に賛成です。
 
安倍政権の暴走に対して、多くの国民が「この道は危ない」と感じているもとで、日本共産党がこの暴走と正面から対決する姿勢を鮮明に打ち出したことは、評価をいただけたと考えています。」
 
 ただ、選挙からまだ日も浅い現時点でそこまで精緻な選挙総括を求めるのは無理かもしれないと思いつつ、一言だけ言っておきたいことがあります。
 それは、小選挙区比例代表において異なった政党に投票する有権者の投票行動に対する評価の欠落についてです。
 
 今回の選挙でも、704万人が小選挙区共産党に投票したものの、比例で共産党に投票した人は606万人でした。
 比例で共産党に入れた全ての人が、(沖縄2区、3区、4区を除く)小選挙区でも共産党に入れていたとしても(そんなことはあり得ませんが)、小選挙区共産党に投票した人の内、少なくとも98万人は比例では共産党以外の政党に投票したことになります。
 逆に、小選挙区では共産党以外の候補に投票しつつ、比例代表では共産党に投票したという人も少なくないはずです。
 
 共産党小選挙区での得票数が比例での得票数を上回ったのは、民主党を始めとする他の野党からの立候補者数が著しく減少した結果という一面はあるでしょう。自民党に対する対抗馬が共産党しかいないという選挙区など(和歌山県では3区がそうでした)、自民党に批判的な人にとって他に選択肢がないですからね。そういう人は小選挙区ではとりあえず共産党に投票し、比例区では別の選択をするという人が相当数(全国では優に100万人以上)いた訳です。
 もっとも、前回(第46回)のように野党候補が乱立した選挙でも、共産党小選挙区での得票数は比例での得票数よりもやはり約100万票多かったのですから、野党立候補者数の減少要因をあまり大きく評価するのは誤りでしょうが。
 
 他方、自民党共産党以外の野党候補が競り合っている小選挙区有権者にとって、たとえ共産党の政策に最も親近感を抱いていたとしても、自分の1票が死票となって結果的に自民党をアシストするのは耐えがたいと考え、選挙区では共産党以外の野党候補の中で当選可能性のある最もましな候補に投票し、比例では共産党に投票したという人も相当数いたはずです(いわゆる「戦略的投票」と言われるものです)。
 
 私は、日本共産党中央委員会常任幹部会が発表した「総選挙の結果について」を読み始めた時、このような決して少なくはないと思われる「小選挙区比例代表のどちらか片方で共産党に投票した有権者の投票行動」(これも共産党に対する「支持」のあらわれの一種に違いありません)をどのように評価・総括しているのかを知りたいと思っていました。
 そして、(ある程度予想はしていましたが)その点に何も触れられていないことに淡い失望を感じたという次第です(「淡い」というのは言葉の綾です)。
 
 もっとも、この「総選挙の結果について」の中に、「半分だけ共産党に投票した」有権者に関連した部分が全然ない訳ではないのです。
 
「さらに、私たちが、あらゆる分野で一致点にもとづく共同――「一点共闘」に積極的にとりくんできたことが、いつも国民との共同で頑張っている党、自分たちの代弁者になってくれる党という、日本共産党への信頼を広げることにつながり、今回の選挙で生きた力を発揮しました。」
 
 「一点共闘」というスローガンは良いとして、「あらゆる分野」の中に国政選挙というのは含まれているのか?含まれているとすれば、今回の選挙において、沖縄以外の地でそのスローガンがどのように実現したのか、もしくは実現しなかったのか?実現しなかったとすればその要因は何か?、こそ共産党の選挙総括の中で聞きたいことだったと、少なくとも私はそう思っています。
 そして、「一点共闘」を実現した選挙戦略を本気で考えるのであれば、その「共闘」を支持し、投票行動に結びつけてくれる有権者のかなりの部分は、「半分だけ共産党に投票する」ような人々ではないのか?というのが私の問題意識なのです。

 選挙2日後というこの時期に、そこまで深く掘り下げた総括を期待するのは無理だろうと思いますので、これからじっくりと時間をかけて練り上げた本格的な選挙総括が、日本共産党中央委員会から公表されることを期待したいと思います。
 
 以下は、この稿を書くために過去4回の総選挙のデータを調べていて気がついたことですが、第44回以降の4回の総選挙を振り返ってみると、9割以上の小選挙区に候補者を立てた第44回(2005年)でも、候補者を立てる小選挙区を約半分に絞り込んだ第45回(2009年)でも、比例での得票はほぼ同じ490万票台であり、この辺が安定的な共産党の支持者数ということであったと思われ、その意味からも、実は前回第46回(2012年)の共産党は「躍進」の正反対、「大敗北」だったということが分かります。それが結果として議席減が1議席にとどまったのは、棄権者の著しい増加(投票率の低下)に救われたということでしょう。
 以上のとおり、2009年のいわゆる「政権交代選挙」(第45回)に際して、共産党小選挙区での立候補者を約半分に絞ったのですが、それでも比例での得票数は、その前(第44回)に比べて減らなかった(2万票以上増えている)という結果は示唆的です。
 
 最後に、別に共産党の党員でも何でもないけれど、日本の行く末を按じ、「比例は共産党へ」という自製のポスターを作ってSNSでアピールしてくれた若いデザイナーが和歌山にいたという事例をご紹介しておきましょう。このような努力の積み上げが、共産党の「躍進」をもたらしたのだと思います。