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「日刊SPA!」で読む“オフグリッド生活”の新展開

 今晩(2014年12月20日)配信した「メルマガ金原No.1945」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「日刊SPA!」で読む“オフグリッド生活”の新展開

 (株)扶桑社といえば、れっきとした(?)フジサンケイ・グループ傘下の出版社であり(現在はフジ・メディア・ホールディングスの完全子会社)、かつて「新しい歴史教科書をつくる会」編集の教科書を出版するなど(現在は同系列の育鳳社が「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」編集の教科書を出版)、私にとって無縁の存在であって当然だと思われるのですが、何と同社発行の新書が2冊も私の自宅の書棚に並んでいます。
 
足立力也 『丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略―』 (扶桑社新書)
丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略― (扶桑社新書)


小出裕章 『原発のウソ』(扶桑社新書)
原発のウソ (扶桑社新書)
小出 裕章
扶桑社
2011-06-01


 2冊では少ないと思われるでしょうか?
 毎月、読みもしない本を何十冊も購入していた30代、40代のころならともかく、めっきり書店に足を向ける機会が減り、どうしても必要な本はネットで注文するようになってしまったここ数年の私の読書生活からすると、決して少なくはないのですね。
 
 そもそも、フジサンケイ・グループとひとくくりにして、「どうせ右翼を喜ばせるろくでもない本や雑誌を出しているのだろう」という色眼鏡をかけて見ていればこそ、扶桑社新書が「2冊もあった」と驚くことになるのであって、偏見から自由になるというのはまことに難しいという一例なのですが。
 
 もっとも、私が普段よく接しているフジサンケイ・グループはどこかといえば、フジTVの番組は見ておらず(フジに限らずテレビはめったに見ない)、扶桑社の雑誌も買っていないので(私が定期購読している雑誌は「DAYS JAPAN」だけ)、結局、WEBサイトで読む産経新聞の記事がほとんどその全てということになります。
 その産経はといえば、日常的なニュースはまだしも、論説はひどい!ほとんどジャーナリズムの名に値しません。
 結局、私のフジサンケイ・グループに対する「偏見」の大本は、大半が産経新聞の論説(「主張」等)に由来しているのでした。
 
 ということで、扶桑社に対しても、先入観を排し、個々の雑誌(やサイト)の編集方針や記事自体に虚心に向かい合う必要があると痛感しています。
 
 ところで、なぜ扶桑社の話をする気になったかというと、私は、田中優さんが主導する電力の自給自足(オフグリッド生活)に注目し続けているのですが、その最新ニュースを報じたのが「日刊SPA!」だったからです。
 「日刊SPA!」というのは「週刊誌『週刊SPA!』の記事と周辺情報をベースにしたニュース&エンターテイメント情報サイトです」。
 その「日刊SPA!」に、以下のような記事が掲載されているのに気がつきました。
 
2014年12月14日 ―[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【1】―
「新電力」に続々と切り替える地方自治体の動き

(抜粋引用開始)
 東電など大手電力会社から、新規に電力事業に参入した「新電力」へと、電力の購入元を切り替える動きが自治体の間で広がっている。
 昨年1月末、神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表。全国市民オンブズマンが行っている各都道府県へのアンケートでも、購入総額は’10年の112億円から昨年は186億円に増加。各都道府県の新電力からの電力購入割合は、長野県(83.7%)や長崎県(56.1%)が高い。そのほか宮崎県、福岡県、大分県でも3~4割。九州では新電力への乗り換えが進んでいるようだ。自治体が新電力に乗り換えている大きな理由は経費削減。神奈川県は、新電力への乗り換えで電気代が年間で1億5000万円節減できたという。
(略)
 昨年9月、自治体として全国で初めて新電力を設立して注目を集めているのが、群馬県中之条町原発事故後、原発に頼らない「電力の地産地消」のため自然エネルギーを推進するとして昨年6月に条例を制定。町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」を立ち上げた。
 現在、中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、設備容量は全体で5000kW。年450万kWほどの町内の公共施設の電力需要に対し、600万~700万kW程度の発電が見込める。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電し、その利益は中之条町自然エネルギー推進のために使われる。
(略)
(引用終わり)
  
2014年12月19日 ―[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【2】―
「脱・大手電力」が進む企業。“安さ”だけでない新電力が選ばれる理由

(抜粋引用開始)
 新電力全体の電力供給量の約5割と、圧倒的なシェアを誇るのが「エネット」だ。みなと銀行が「エネットへの切り替えで年間2300万円を節減できた」と発表するなど、安価な電気を求める自治体や企業の需要を背景に、契約数は右肩上がり。’12年の約1万件から今年は約1万9000件と倍増している。
 大手電力会社は値上げの一途だというのに、なぜ安くできるのか。同社企画営業部に聞くと「人件費などの一般管理費が少なく、後発のため最新鋭の高効率な発電施設を使えることでしょう」とのこと。
「大手電力は一般管理費の経費に占める割合は十数%ですが、当社は1%ほど。また当社の株主であり、有力な電力供給元である東京ガス大阪ガス天然ガス発電に、同じく株主のNTTファシリティーズは太陽光発電に力を入れているというのも大きいでしょう」(エネット企画営業部)
(略)
 企業の選択理由は安さばかりではない。エネットと契約した城南信用金庫の担当者は「結果的に電気代は安くなったが、そのことが目的ではない」と言い切る。
原発に頼らず、自然エネルギーや民間の余剰電力を販売していることが切り替えの理由です」
 大手電力各社は原発再稼働に血道を上げているが、’16年の一般家庭向けへの新電力の市場参入後は、「脱原発」「自然エネルギー推進」を理由とした新電力への顧客流出が続出することもありうる。今後、大手電力会社もこれまでのような「殿様商売」を続けていくのは難しいだろう。
(略)
(引用終わり)
 
2014年12月19日 ―[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【3】―
自分が使いたい電気は自分でつくる「オフグリッド」な生活とは?

(抜粋引用開始)
「節電も大事だけど、自分が使いたい電気は自分でつくればいいんです」
 そう話すのは、’12年9月に東京の新宿から岡山県玉野市へ移住した鈴木みどりさんだ。原発事故の後、「東京から避難したほうがいいのではないか」と思いながらも、原発反対のデモに参加。1年くらいしてから、このままでは何も変わらないことを痛感し、自分の暮らしを変えることを決意する。
(略)
 移住資金は、東京の持ち家を売って捻出。ソーラー発電システムや太陽熱温水器、薪ストーブも設置することができた。屋根の上には240Wのパネルが8枚あり、家の裏にあるスチール物置の中に、ゴルフカートの再生バッテリーが12個入っている。一般的なソーラー発電と異なり、電力会社に売電しないで、バッテリーに電気を蓄めて自分の家で使う仕組みだ。
(略)
 中国電力との契約は継続しているものの、毎月の電気料は基本料の300円ほどしか払っていない。雨や曇りが続いてバッテリーの電気が足りなくなれば、電力会社に切り替えられるようになっている。
 このシステムを全国に普及させ、施工しているのが「自給エネルギーチーム(自エネ組)」の中心人物、大塚尚幹さん。すでに29か所で独立型のソーラー発電を設置している。大塚さんは福島第一原発に近い川内村の「漠原人村(ばくげんじんむら)」というコミューンで電気・ガス・水道のない暮らしを営み、ソーラーパネルで電気を自給していたが、原発事故後に妻の実家のある岡山県に避難してきた。
「震災後、独立型ソーラー発電一式を持って南三陸に復興支援に行きました。ところが、屋根にたくさんソーラーパネルが載っているのに、バッテリーに蓄められないシステムなので、いざというときに使えなかったんです」(大塚さん)
(引用終わり)
 
2014年12月19日 ―[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【4】―
自分が使いたい電気は自分でつくる「オフグリッド」な生活とは?【vol.2】

(抜粋引用開始)
 
そこで、環境活動家の田中優さんも加わり、新たな独立型ソーラー発電キットを提案した。それまではバッテリー費用が高すぎて導入してもペイできないというのが最大の問題だったが、フォークリフトやゴルフカートの廃棄バッテリーを再生することで解決。これらは定期的に交換されるため、まだ使えるものが捨てられているのだ。それを「パルス充電」という方法で再生したり、極板を活性化させる添加剤を併用して長く使えるようにしたりと工夫している。
「ITE電池研究所の鉛電池用活性剤(スーパーK)を2年おきに入れることで寿命が10年、20年と延び、20年間の電気代とほぼ同じ費用で独立型電源を設置できるようになりました。一式の費用は157万円(施工費別)です」(大塚尚幹さん)
 大塚さんと一緒に自エネ組を立ち上げたのが、元東電職員の木村俊雄さん。中学卒業後に東電学園に進学、卒業後は東電で原子炉の設計・管理などを担当していた。
「使用済み燃料の処分方法が決まっていないなど、『原発に未来はない』と直感して退職届を出しました。東電は給料や待遇が非常によくて、地元ではエリート扱いでしたから、両親や同僚に大反対されました」(木村さん)
 退職後、福島県大熊町でさまざまな仕事をするうち「漠原人村」に出入りするようになった。
(略)
 大塚さんと木村さんは、こうしたオフグリッド(電力会社に接続しない)電源を普及させたいと考えるようになった。ところが原発事故が起き、西へ避難することに。木村さんはサーファー仲間を頼って高知で家を借りた。現在は230Wのパネルを9枚設置してバッテリーに蓄めている。
(略)
「今年の8月は晴れた日が1日くらいしかなく、けっこう大変でした。それでも、電力会社と縁が切れるのは爽快で痛快だし、革新的だと思いますね。誰かに頼らなくても、家庭単位でひっそりと独立できるんです」(同)
 木村さんは「停電したときに自分の家だけ明るいのも申し訳ない」と、軽トラにソーラーパネルを積んだ電源車をつくり、停電時は地域の非常用電源として活用できる。
(引用終わり)
 
2014年12月19日 ―[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【5】―
自分が使いたい電気は自分でつくる「オフグリッド」な生活とは?【vol.3】

(抜粋引用開始)
 
今年の夏、神奈川県横浜市で新築住居を建てた佐藤隆哉さん・千佳さん夫妻も、自エネ組の独立型ソーラー発電を導入した。自然派住宅を施工する「天然住宅」が主催した「オフグリッドセミナー」に参加し、初めて独立型ソーラー発電があることを知ったのだ。
「最初は電力会社に買ってもらうつもりでした。でも、そのコストを一般家庭が電気料金で負担するということを知り、売電をやめて独立型にしようと思ったんです」(佐藤千佳さん)
 家電は一般家庭にあるものとほぼ同じで、400リットルの冷蔵庫、洗濯機、エアコン、PC、プリンター、照明など。特に家電の使用をガマンしているわけではない。暖房はガス給湯式床暖房で、いずれ真空管式の太陽熱温水器を設置してガス使用量も減らすつもりだ。
 発電量は晴れれば4~4.5kW、雨のときは1kWほど。平均2.7kWで、ほぼ一日に使う電気は賄える。バッテリー残量も70%をキープ。もちろん佐藤さんも電力会社に払う電気代は0円だ。
(略)
 庭の畑は耕さない自然農。「いずれは小さな田んぼでコメもつくりたい」と言う。晴れの日は掃除機、炊飯器、電動芝刈り機、電動ノコギリなどを使い、雨の日は節電してゆっくりと読書などを楽しんでいるとか。オフグリッド生活を始めると、自然に寄り添う暮らしになるのかもしれない。
取材・文・撮影/新井由己 志葉玲 北村土龍
(引用終わり)
 
 田中優さんの岡山でのオフグリッド生活については、以下に取り上げた私のブログなどをご参照いただきたいのですが、優さんが先駆的に導入した数百万円はかかる本格的なシステムではなく、「普及版」のオフグリッド・システムが徐々に広まりつつあることを伝える好レポートだと思います。
 特に、最後の横浜の佐藤さん夫婦の新築住宅では、おそらく周囲の「オングリッド」の家庭とほとんど変わらない電化製品を無理なく使いつつ「オフグリッド生活」を実現しているということで、「参考にしたい」という人もさらに増えていくように思いました。
 
 ところで、この連載を担当した取材者3人の中に「志葉玲」さんの名前を見つけて少し驚きましたが、志葉さんも、いつもいつも海外の戦場にばかり出かけているはずはないですからね。
 
 また、「日刊SPA!」(さらには「週刊SPA!」)には、この他にも興味深い記事が掲載されることがあるようです。
 例えば、以下のような記事です。
 
014年12月16日 
日本で唯一の例。ダムを撤去したら川も海も再生した

(抜粋引用開始)
 
計画から40~50年経つのにまだ完成していない“亡霊”のようなダム建設計画。眠っていたそれらの計画が「アベノミクス」の名のもとに復活、急激に推し進められている!!
 そんななか、日本でただ1基だけ、撤去中のダムがある。熊本県の荒瀬ダムだ。
「県の企業局の方に現地案内をお願いすると、本当にニコニコして対応してくれます。資料も喜んで出してくれるんですよ」と語るのは、荒瀬ダムの撤去を長年訴え続けてきたつる詳子・元八代市議。撤去作業の責任者たちがホームページで顔写真とともに意気込みを語っているのは、公共事業としては異例だ。地域住民に受け入れられていることがよくわかる。
「撤去作業はまだ途中ですが、川の水はだいぶきれいになりました。土砂も流れ、川の流れや生態系にとって重要な河原も復活しつつあります」(同)
 撤去作業の効果は海にいち早く現れた。長年ダムに溜まっていた土砂が海に流れ、干潟の再生が始まっている。その影響で、貝類の漁獲量が上昇。長らく姿を見なかったウナギまで獲れるようになった。
 ただ、まだ課題のほうが多い。「上流の瀬戸石ダムや河口近くの堰を撤去して、やっと元の清流が戻ってきます」(同)。
(略)
 世界では、既存のダムを撤去する動きが進んでいる。アメリカでは、年に50基のダムが撤去されている。ワシントン・ポストによると、例えば’11年に始まったエルワ川ダム撤去事業は760種の仕事を生み、撤去後にはレクリエーション、旅行業など446種類の通年の仕事が生み出されるとされている。
 ダムは新規建設より撤去こそ、新たな公共事業として有望なのではないか。
※12/16発売の週刊SPA!では「[不要ダム建設]が安倍政権で続々復活中」という特集を掲載中
取材・文・撮影/足立力也
(引用終わり)
 
 冒頭で紹介した『丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略―』の著者・足立力也さんが、このダム撤去の取材を担当していたのですね。
 これからも、「偏見」を持たず、「日刊SPA!」に注目していきたいと思います。

(弁護士・金原徹雄のブログ)
2013年2月24日
再生可能エネルギー固定価格買取制度と「オフグリッド」生活

2013年7月28日
「女性自身」のレポートと映像で知る田中優さんの“オフグリッド生活”
2014年6月22日
田中優さんが先導する“静かな革命”
2014年10月12日
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の曲がり角から考える「オフグリッド生活」~田中優さん宅取材動画を視る