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大間原発建設差止訴訟(原告・函館市)に新たな展開(付・「あさこはうす」への支援のお願い)

 今晩(2014年12月29日)配信した「メルマガ金原No.1954」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
大間原発建設差止訴訟(原告・函館市)に新たな展開(付・「あさこはうす」への支援のお願い)

 現在、国内で新設工事を続行中の原子力発電所があるということを、日本国民のうちのどれくらいの人が知っているのでしょうか?
 年明け1月11日(日)には、和歌山市主催の成人式(はたちのつどい)の会場である和歌山ビッグホエール前で、「平和と憲法を守りたい市民の声」が新成人を対象にした恒例のシールアンケートを実施する予定ですが、今年は「憲法9条改正に賛成or反対?」と「原発再稼働に賛成or反対?」の2つのテーマで調査を行うそうです。
 確かに、川内原発をはじめとして続々と再稼働が目論まれていること自体大問題なのですが、今こうしているうちにも、着々と完成を目指して工事中の原発が2つもあるというのは何と言ったら良いのか。
 
 
 
 是非、再稼働に限らず、建設続行・新稼働(?)についても、新成人の考えを聞いてみたいですね(何も考えていない者が多いのではないかという懸念が大きいけれど)。
 
 ところで、上記2つの原発の「建設工事状況」を一覧すれば分かるとおり、工事進捗率は島根原発3号機の方がはるかに進んでおり(完成間近と言ってもよい)、原子力規制委員会に対する新規制基準についての適合性審査の申請は島根の方が先に提出されるだろうと思っていたところ、12月16日、電源開発が先に申請したのには驚きました。
 
大間原子力発電所に係る新規制基準への適合性審査の申請について
(引用開始)
 
当社は、大間原子力発電所について、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査を受けるため、本日、原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出しましたのでお知らせいたします。
 今後、原子力規制委員会の審査に適切に対応していきます。また、自主的な安全対策等を進め、一層の安全性の向上を不断に追求していきます。
 当社は、これからも、全社をあげて安全な発電所づくりに取り組んでまいります。
(引用終わり)
(添付資料)大間原子力発電所における新規制基準への対応について
 
 なぜ申請がこの時期になったのかはよく分かりませんが、世界初のフルMOX燃料による商業原子炉であること、電源開発原発を稼働させた実績がないことなどから、審査に相当長期間を要する見通しと言われており、完成を待ってから申請するのは時間の無駄と思ったのかもしれません。
 
 さて、大間町の対岸、津軽海峡をはさんで向かい合う北海道函館市が、地方自治体としては初めて原発の建設差止等を求める訴訟を東京地裁に提起したということは既にご存知の方も多いと思いますが、最近、その訴訟について進展がありましたので、今日はそのことをお知らせしたいと思います。
 
 ただ、その前に、そもそも函館市はどのような裁判を求めて提訴したのかを確認しておきましょう。
 訴訟では、「どのような裁判を求めるのか」というのは「請求の趣旨」と言い、これを原告による立証、被告による反証の対象として訴訟が進行していく訳で、非常に重要なものです。
 ただし、これが貸金返還請求訴訟などであれば、「被告は原告に対し、金○○○万円及びこれに対する平成○○年○○月○○日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払え」などという決まり切った請求になるのですが、こと原発訴訟、特に今回のように、いまだ建設途中の原発について、函館市のような地方自治体が「建設するな」という請求をしようという訴訟の場合には、そう簡単な「請求の趣旨」になるはずがありません。難しくても、ここは我慢して読んでください。
 
東京地方裁判所 平成26年(行ウ)第152号
大間原子力発電所建設差止等請求事件
原告:函館市  被告:国、株式会社電源開発
 
請求の趣旨
第1 請求の趣旨
1 経済産業大臣が,被告電源開発株式会社に対して,平成24年改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第23条第1項の規定に基づき,平成20年4月23日付けでなした,大間原子力発電所原子炉設置の許可処分は無効であることを確認する。

(1)主位的請求
 原子力規制委員会は,被告電源開発株式会社に対し,大間原子力発電所について,その建設の停止を命ぜよ。
(2)予備的請求
 原子力規制委員会は,被告電源開発株式会社に対し,大間原子力発電所の設置について,原告が同意するまでの間,その建設の停止を命ぜよ。
3 被告電源開発株式会社は,青森県下北郡大間町において,平成20年4月23日付け原子炉設置許可に係る大間原子力発電所を建設し,運転してはならない。
4 訴訟費用は,被告らの負担とする。
との判決を求める。
訴状(平成26年4月3日付)及び訴状訂正申立書(平成26年4月17日付)による。 

 この「請求」をなぜ求めるのか?なぜそれが法的に可能なのか?については、もちろん訴状(の「請求の原因」)に詳述されているのですが、全154頁の訴状を読み通すのは誰にとっても大変なので、以下に「訴状の概要」をご紹介します。
 これは、函館市議会に訴訟提起の承認を求める議案を提出した際、説明資料として議会に送られたものですから、要領良くまとまっています。
 
 
 本件訴訟の審理はこれまで3回行われました。
 
第1回口頭弁論 2014年 7月 3日
第2回口頭弁論 2014年10月29日
第3回口頭弁論 2014年12月25日
 
 それぞれの期日で陳述された準備書面等の訴訟資料は、函館市WEBサイト内の「大間原発に関わる主な経過」というコーナーに集積されており、閲覧、ダウンロードができます。
 
 さて、それではこの訴訟に進展があったというのは何かというと・・・。
 
河北新報 2014年12月26日
大間原発建設差し止め訴訟 安全性実質審理へ

(抜粋引用開始)
 北海道函館市青森県大間町電源開発(Jパワー)大間原発の建設差し止めを求めた訴訟の第3回口頭弁論が25日、東京地裁であった。増田稔裁判長は、原告適格や訴訟で争うべき法律関係の存否(争訟性)の判断を先送りし、原発の安全性に関する実質審理に入る意向を示した。
 地裁は来年3月19日の次回期日に実質審理入りを正式に決める見通し。自治体が原告の原発訴訟は過去に例がなく、被告の国とJパワーは函館市原告適格がなく、市が主張する「自治体の存立維持権」も争訟性がないとして、実質審理前の訴えの却下を求めていた。
 増田裁判長は審理入りを念頭に、国に対し、これまで保留していた市の請求に対する認否と具体的な主張を準備するよう求めた。市には原告適格や争訟性に関する主張の補充を指示した。市は複数行政法専門家の意見書を提出する方針。市の河合弘之弁護団長は「(訴えを却下する)『門前払い』の可能性は低くなったと思う」と話した。
 市は原子炉設置許可の無効確認や建設差し止めなどを求めている。(略)
(引用終わり)
 
 そもそもの問題として、人格権が法的に承認されている個人(自然人)ならともかく、法人(地方公共団体)である函館市になぜ原発の建設差止を求める権利があるのか?については、何しろ先例もないことなので(このような訴訟に踏み切ったのは函館市が初めて)、大きな争点になることは提訴前から予想されていました。
 実際、国も電源開発も、訴えの「却下」(いわゆる「門前払い」ですね)を求める答弁書を提出しています。
 
 
 この問題について、12月25日に開かれた第3回口頭弁論において、裁判所は、被告らによる「本案前の主張」についての判断は留保(棚上げ)し、本案についての審理に入る方針を明らかにしたということです。
 第3回期日というこの段階で、裁判所からこのような方針が示されたということは、弁護団にとっては、とりあえず「大勝利」(期日後の報告会での海渡雄一弁護士の発言・以下の映像の1分~)でしょう。
 以下に、報告会の動画をご紹介しておきます。
 
20141225 UPLAN 函館市大間原発建設差し止め裁判 第3回口頭弁論&裁判報告会
 

 これで、ようやく本格的な立証活動に入っていく訳ですから、今後ともこの訴訟の推移に注目していきたいと思います。
 
 最後に、今年の7月3日に行われた第1回口頭弁論において、原告函館市の工藤壽樹市長が行った意見陳述のうちの「結び」の部分の部分をご紹介します。
 是非この函館市の訴えを、国民の圧倒的多数の声で支援したいものです。
 
第1回口頭弁論 平成26年7月3日(木)15:00~ 東京地裁103号法廷
市長意見陳述(全文)

(抜粋引用開始)
▼ 結び
○安倍首相は,『原子力規制委員会が定めた世界で最も厳しい安全基準を満たさない限り,原発の再稼働はない』と述べる一方,原子力規制委員会の田中委員長は,『規制委は新基準への適合性を審査するだけで再稼働の是非の判断はしない』。『規制委は"絶対に安全"とは言っていない』と述べております。
 原発再稼働の判断をめぐって政府と原子力規制委員会が責任を押し付け合い,事業者は,経済性を優先し,確実な安全安心から目をそらしています。
 そもそも,福島第一原発事故では,誰も責任を取っておりません。このような無責任体制では,福島のような原発事故が繰り返されてしまいます。
原発の安全の確保や万一の事故が起きた場合に,誰が責任を持ってあたるのか。政府なのか,原子力規制委員会なのか,事業者なのか,その根本のところが極めて曖昧なまま,
原発の建設が進められています。
電源開発株式会社という営利を追求する一民間企業の事業のために,27万人の人口を擁する函館市の存立そのものが,同意もなく危険に晒され,そこに住む市民の生命と平穏な生活,そして貴重な財産が,一方的に奪われかねない,そんなことがこの民主主義国家において,許されるのでしょうか。
福島第一原発事故を見れば,原発が本質的に危険なものであり,どんな対策を講じてもゼロリスクにはならず,万一の事故があり得ることは明らかでありますので,司法の場において,自治体の責任者として私が申し上げたいことは,一つ目は,福島原発事故を起こした審査基準で許可され,建設が続けられている大間原発は,建設をただちに止めるべきだということであります。
 二つ目は,建設や稼働にあたって,実効性のある有効な避難計画が策定できるかどうかの確認がなされていない大間原発は,建設を即時中止すべきだということであります。
 三つ目は,避難計画を義務づけられる30km圏に含まれる函館市に同意権を与え,本市が同意しない限り,建設をするべきではないということであります。
○国や電源開発株式会社には,地域の不安になんら配慮をしていただけず,私たちに残された手段は,訴訟するか泣き寝入りするしかありませんでした。
 私は,函館のまちを守り,そして市民の安全安心を守るため,万やむを得ず訴訟を提起いたしました。
○福島の原発事故によって,はっきり分かったことは,ひとたび原発の過酷事故が起きると,地方自治体,その地域が事実上半永久的に消え去る事態に陥るということです。
 地方自治体の存立そのものが将来に亘って奪われる,このようなことは原発事故以外にはありません。
地震津波のような自然災害も大きな被害をもたらしますが,まちを再建することはできます。
 人類は昔からそれを経験してきました。
 しかし,そのことで半永久的に住めなくなった地域はありません。
○戦争もまちに壊滅的な打撃を与えますが,復興は可能です。ある意味で人間はそれを繰り返してきました。
 戦争による最大の悲劇ともいうべき原爆投下を乗り越えてきた広島・長崎も再生しました。
○しかし,放射能というどうしようもない代物を広範囲にまき散らす原発の過酷事故は,これまでの歴史にはない壊滅的な状況を半永久的に周辺自治体や住民に与えるのです。
 チェルノブイリや福島がそれを証明しています。
 函館がその危機に直面しています。
 電気をおこす一手段に過ぎない原発によって,まちの存立そのものが脅かされることになります。
○世界中を見ても今までの法理論では想定されないような事態が,原発事故によって,今この日本で起き,函館市にふりかかっているのです。
○私たち函館市民は,承諾もなく近隣に原発を建設され,いざというときに避難もままならない状況の中に置かれることになります。
 自分たちのまちの存続と生命を守るために,この訴訟を起こしたのです。それ以外に残された道はなかったということを是非ご理解いただきたいと思います。
○私は,反原発脱原発の立場で原発を論じたことはありません。世界を震撼させた福島原発事故を起こした我々世代の責任として,最低限立ち止まって考えるべきだということを申し上げたいのです。
 そのため私が訴えてきたのは,原発建設の無期限凍結なのです。
○福島の事故を目の当たりにし,その後の福島の現実を見て,原発に大きな不安を抱く多くの人たちに対し,国や事業者は真摯に向き合い,もっと丁寧な対応をすべきだということを申し上げたいのです。
 今はその努力,姿勢が全く欠けていると言わざるを得ません。
○いろいろ私の思いを述べさせていただきましたが,市民の生命や財産を守り,函館市という自治体を将来の世代に引き継いでいくためにも,大間原発の問題点,そしてその進め方の乱暴さ,また,地域の思いというものを主張させていただきました。
 どうか私たちの願いをご理解いただきますようよろしくお願い申し上げます。
(引用終わり)
 
(参考映像・工藤壽樹市長記者会見)
2014年4月10日 社団法人日本外国特派員協会にて
 

(付記・「あさこはうす」への支援のお願い~西郷章さんから)
 お母さんの遺志を引き継ぎ、大間原発と対峙する「あさこはうす」の小笠原厚子さんが、お嬢さんとともに和歌山を訪れたのは今年の4月のことでした。招聘に尽力された西郷章さんや寺井拓也さんらの心遣いにより、和歌山の人たちとの交流とともに、お2人のつかの間の息抜き(白浜のパンダにも会えたし!)ともなり、有意義な和歌山訪問であったと思います。
 私の第2ブログ和歌山市での交流会での写真を掲載しています。
 なお、最近の「あさこはうす」からの情報発信は、もっぱらTwitterによっています。
 さて、その小笠原厚子さんを和歌山にお迎えするために奔走された西郷章さんから、年末、FB友達に以下のような要請がなされていましたのでご紹介します。
西郷章さんのFacebookタイムラインより引用開始
 大間原発の敷地のど真ん中で一人居座る小笠原厚子さん「あさこはうす」に激励のはがきを送りましょう。
 大間原発建設反対闘争は小笠原さんを中心に国内外の反対運動を支援する人に守られながら進められてきましたが、海を隔ててすぐそば(30キロ圏内」の函館市の行政が一致して反対し、建設差し止め訴訟を起こすなど抵抗を始めたために厚子さんにとってはこの上ない力強い味方を得たことになります。しかし大間原発(Jパワー)は安倍政権の強力な後押しのもとに、全く経験も自信もないフルモックス燃料〔プルトニウム1対ウラン3?)を使って原発を動かそうと建設を再開しています。モックス燃料100パーセントの原発はひとたび事故を起こせば、日本など吹っ飛ぶと言われるほどの強大な放射能破壊力を持った原発です。それを知りながら強行する事は狂気の沙汰としか言いようがありません。
 さて、つい先だって私の参加している関電和歌山支店前金曜行動の仲間から「西郷さん、大間原発(Jパワー電源)は「あさこはうす」に届く郵便など配布物の到着回数をチェックしているそうです。そして、郵便など配達回数が少なくなればそれを口実に政府は強制撤去に踏み切るでしょうから、ハガキや支援物資などドンドン送ってほしい』とFBに支援団体のメッセージが載っていました」というのです。これを聞いた私は、しばらく途絶えていた支援ハガキ送付を再開することを決めました。そして支援ハガキを送る人は一人でも多い方が力になりますから、皆さんにも是非この際ハガキ支援をお願いするところです。内容は激励に限らず、簡単な挨拶でもかまいませんのでハガキを出していただければ厚子さんも一層元気づくと思います。カンパのできる人も是非合わせてご協力をお願いします。支援ハガキは1枚200円(支援金を含みます)で5枚単位で販売します。ハガキ申し込みは下記住所へ(小笠原厚子さんに直接)お申し込みください。
〒039-4601 青森県下北郡大間町字小奥戸396 「あさこはうす」様
また、カンパの送り先は口座番号 02760-3-66063 へお願いします。
 お問い合わせは ℡ 090-5465-3105(西郷)まで
 写真は今年4月13日~17日まで和歌山に来られた時に龍神村の豆腐工房「るあん」さんに立ち寄った時のものです。
(引用終わり)
※金原補注 カンパ送金先は多分ゆうちょ銀行の記号・番号なのでしょうね。
 

(付録)
“大MAGROCK2013”でのフライング・ダッチマンの演奏