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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

想田和弘さんの分析枠組「消費者民主主義」の有効性はいよいよ高まっている~『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』再読 

政治 社会
 今晩(2015年1月5日)配信した「メルマガ金原No.1961」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
想田和弘さんの分析枠組「消費者民主主義」の有効性はいよいよ高まっている~『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』再読 

 独特のスタイルのドキュメンタリー映画(観察映画)で名高い映画監督の想田和弘(そうだ・かずひろ)さんについては、少なくとも過去2回にわたり、私のメルマガ(ブログ)で取り上げました。
 
 
 いずれも想田さんが、マガジン9に連載されている「映画作家・想田和弘の観察する日々」に掲載された文章を読んだことに触発され、想田さんの意見をご紹介しつつ、若干の感想を述べたものでした。
 
 前者では、『選挙2』の撮影中(2011年4月の統一地方選挙川崎市議選)、自民党候補者や自民党川崎支連から受けた取材拒否や撮影した素材の使用禁止(!)の恫喝に対し、あくまで憲法で保障された表現の自由を主張することが、国民の1人1人に求められる「不断の努力」(日本国憲法12条)に他ならないことが語られています。
 そして後者では、テレビ東京が製作することになったドラマ『永遠の0』の主演俳優が、2010年8月15日のブログに、靖国神社に自分が参拝したことを紹介した上で、「必死になって日本の行く末を案じながら散っていった人達のことを考えると感謝の気持ちで一杯です」と書いた記事に対し、4400人以上(記事掲載当時)の読者から、圧倒的に好意的な「善意に満ちた」コメントが寄せられている状況を踏まえ、「素朴で善意の『感謝』がファシズムを支える」と喝破されたのでした。
 
 このように、想田さんご本人の意向とは関係なく、否応なく我が国を代表するオピニオンリーダーの1人になりつつある、というのが私の見方です。
 
 とりわけ、日本の現在の政治・社会の状況を、「消費者民主主義」と「熱狂なきファシズム」という視点から分析する想田さんの判断枠組は、非常に新鮮で意義深いものということで、多くの人の注目を集めました。

 想田さんの上記主張を最もコンパクトにまとめた最初の著書は、岩波ブックレット『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(特にその第3章)だったと思います。


 そして、同書が刊行されたのは、2012年12月の衆議院総選挙、2013年7月の参議院選挙を経過した2013年11月のことでしたが、先月(2014年12月)施行された第47回衆議院議員総選挙の結果を見れば、想田さんが指摘された「仮説」の正しさがいよいよ明らかとなってきたように思われます。
 
 上掲書の一部を引用します(55~56頁)。
 
(引用開始)
 政治家は政治サービスの提供者で、主権者は投票と税金を対価にしたその消費者であると、政治家も主権者もイメージしている。そういう「消費者民主主義」とでも呼ぶべき病が、日本の民主主義を蝕(むしば)みつつあるのではないか。
 だとすると、「投票に行かない」「政治に関心を持たない」という消極的な「協力」によって、熱狂なきファシズムが静かに進行していく道理もつかめます。
 なぜなら、主権者が自らを政治サービスの消費者としてイメージすると、政治の主体であることをやめ、受け身になります。そして、「不完全なものは買わぬ」という態度になります。それが「賢い消費者」による「あるべき消費行動」だからです。最近の選挙での低投票率は、「買いたい商品=候補者がないから投票しないのは当然」という態度だし、政治に関心を決め込んでいるのは、「賢い消費者は、消費する価値のないつまらぬ分野に関心を払ったり時間を割いてはならない」という決意と努力の結果なのではないかと思うのです。
 そう考えると、投票に行かない人がテレビの街頭インタビューなどで、「政治?関心ないね。投票なんて行くわけないじゃん」などと妙に勝ち誇ったように言うのも頷けます。あれは、自らが「頭の良い消費者」であることを世間にアピールしているのです。
(引用終わり)
 
 想田さんの「消費者民主主義」という概念に初めて接した者は、とりわけ、近年の急激な投票率の低下を理解するための非常に有効な分析ツールを得たように感じると思います。
 しかしながら、投票率低下の理論付けは、「消費者民主主義」の一応用場面に過ぎず、本質は、自ら政治の主体となって「不断の努力」を行う道筋をどうすれば構築できるのかということでしょう。
 
 その後、想田さんはその名も『熱狂なきファシズム』河出書房新社)という新刊も刊行されていますが、2013年に刊行した岩波ブックレットも、今なお読むに値するどころではなく、総選挙の結果をうけて、いよいよその価値は高まっているということを、再読して確認しました。
 未読の方は是非手に取ってお読みください。
 
(参考動画)
2014年5月8日 想田和弘さん「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」(福島みずほTV第8回)