今晩(2015年1月29日)配信した「メルマガ金原No.1985」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
「イスラム国」人質事件については、1月24日に湯川遥菜氏が殺害されたと見られる写真がネットで公開されるとともに、イスラム国がヨルダン政府に拘束されている死刑囚の釈放を要求するという大きな展開がありましたが、同日、そのニュースが伝えられる直前、IWJの岩上休身さんが、21日の柳澤協二さんと高橋和夫さんに続き、加藤朗さん(桜美林大学教授/「自衛隊を活かす会」呼びかけ人)と板垣雄三さん(東京大学名誉教授)のお2人に、いずれも正真正銘の「長時間」インタビューを連続して敢行されています。
私がメルマガに書いてブログにアップした「『イスラム国』人質事件について柳澤協二さんと高橋和夫さんの意見を聴く~IWJに会員登録をして」が、私のブログにしては比較的多くのアクセスがあり、24日に行われたお2人のインタビューについても、是非視聴してメルマガ(ブログ)に書きたいと思いながら、加藤朗さんが2時間53分、板垣雄三さんに至っては3時間15分というのは長い!・・・ということで、今もってさわりを視聴できただけなのですが、緊迫した情勢を考えれば、とにかくインタビューが行われたこと自体を紹介するだけでもしておこうと思い、取り上げることとしました。
この2本のインタビュー動画も、いずれ年会費3万円以上を支払うサポート会員限定コンテンツになるものの、今のところは年会費1万円の一般会員でも全編視聴できます。
是非、この機会にIWJに会員登録されることをお勧めします。
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以下に、2つの長時間インタビューのサンプル動画とアーカイブページ、それから内容紹介記事の一部を引用します。
2015/1/24 【イントロ】岩上安身による桜美林大学教授・加藤朗氏(専門 安全保障論)インタビュー
(抜粋引用開始)
加藤朗氏「人工知能が人間の頭脳を超えるとされる特異点が、2040年だと言われています。そうなったとき、戦争の形態はどうなるのでしょうか。戦場の無人化というものが言われますが、まったく違った戦争のあり方というものが可能になるのではないでしょうか。
私はグローバル・リヴァイアサンという言い方をするのですが、全世界を情報で覆ってしまえば、人工知能が無限にターゲティングして攻撃をし続ける状態が現出しえます。人間の倫理すらも、分析してインプットすることができるかもしれません。
そういった状況への最後の抵抗として、人間が爆弾を抱えて攻撃をする、という状態を捉えることができます。それを、米国のグローバルな攻撃システムは捕捉し得ない。そうした図式が今、米国とイスラムとの戦いに見て取ることができます。」
加藤氏「現在の世界で一番問題なのは、支配の正統性がどこにあるのか、ということに対する争いです。では、米国がグローバルな支配を行うことへの正統性は、誰が与えているのか。力が、その正統性の源泉なのか。こうしたイデオロギーに対するのがイスラムではないでしょうか。
中国も米国と同様、自分たちと同様のルールを押しつける、帝国としての性格を持っているのではないでしょうか。形式的には国民国家ではあるけれども、実態は帝国なのではないでしょうか。
テロの本質というのは、心理的暴力です。その拡大はリニアです。現在はネットによって、テロに対する恐怖が一気に広がっていく。ネットの出現によって、心理的暴力を世界中に広めることができます。ですからイスラム国は、ネットを活用するのだと思います。
帝国は、情報によって拡大します。ローマ帝国は道によって、モンゴル帝国は馬によって、イスラム国はネットによって、ということです。
私はかつて『現代戦争論』という本を書いたのですが、その中で、メディアのあり方がテロの形態を変えるだろう、と指摘しました。現在、ネットの出現によって、心理的暴力が伝播しやすくなっているように思います。
近代国家というのは、外在化された神(教会)からの自由と、自立した個人間の平等が前提とされています。近代化というのは、不平等をなくすプロセスでした。しかし『はたして本当にそうなのか』という疑義が、イスラム側から寄せられているのだと思います」
加藤氏「日本人としてどうするかと言えば、憲法9条を実践することが求められているのではないでしょうか。憲法9条というのは、国家権力によって自らの安全を保障してもらわなくてよい、というものだと私は解釈しています。
カントは『永遠平和のために』のなかで、常備軍は必要ないが、民兵は必要だと言っています。憲法9条は、国民一人一人に対し、自衛するのか非暴力でいくのか、問うているのだと思います。」
(引用終わり)
加藤朗氏「人工知能が人間の頭脳を超えるとされる特異点が、2040年だと言われています。そうなったとき、戦争の形態はどうなるのでしょうか。戦場の無人化というものが言われますが、まったく違った戦争のあり方というものが可能になるのではないでしょうか。
私はグローバル・リヴァイアサンという言い方をするのですが、全世界を情報で覆ってしまえば、人工知能が無限にターゲティングして攻撃をし続ける状態が現出しえます。人間の倫理すらも、分析してインプットすることができるかもしれません。
そういった状況への最後の抵抗として、人間が爆弾を抱えて攻撃をする、という状態を捉えることができます。それを、米国のグローバルな攻撃システムは捕捉し得ない。そうした図式が今、米国とイスラムとの戦いに見て取ることができます。」
加藤氏「現在の世界で一番問題なのは、支配の正統性がどこにあるのか、ということに対する争いです。では、米国がグローバルな支配を行うことへの正統性は、誰が与えているのか。力が、その正統性の源泉なのか。こうしたイデオロギーに対するのがイスラムではないでしょうか。
中国も米国と同様、自分たちと同様のルールを押しつける、帝国としての性格を持っているのではないでしょうか。形式的には国民国家ではあるけれども、実態は帝国なのではないでしょうか。
テロの本質というのは、心理的暴力です。その拡大はリニアです。現在はネットによって、テロに対する恐怖が一気に広がっていく。ネットの出現によって、心理的暴力を世界中に広めることができます。ですからイスラム国は、ネットを活用するのだと思います。
帝国は、情報によって拡大します。ローマ帝国は道によって、モンゴル帝国は馬によって、イスラム国はネットによって、ということです。
私はかつて『現代戦争論』という本を書いたのですが、その中で、メディアのあり方がテロの形態を変えるだろう、と指摘しました。現在、ネットの出現によって、心理的暴力が伝播しやすくなっているように思います。
近代国家というのは、外在化された神(教会)からの自由と、自立した個人間の平等が前提とされています。近代化というのは、不平等をなくすプロセスでした。しかし『はたして本当にそうなのか』という疑義が、イスラム側から寄せられているのだと思います」
加藤氏「日本人としてどうするかと言えば、憲法9条を実践することが求められているのではないでしょうか。憲法9条というのは、国家権力によって自らの安全を保障してもらわなくてよい、というものだと私は解釈しています。
カントは『永遠平和のために』のなかで、常備軍は必要ないが、民兵は必要だと言っています。憲法9条は、国民一人一人に対し、自衛するのか非暴力でいくのか、問うているのだと思います。」
(引用終わり)
(抜粋引用開始)
板垣雄三氏(以下、板垣・敬称略)「同時に、いくつものことを感じたり考えたりします。昨年(2014年)末あたりから考えてきたことが、1月7日のシャルリー・エブドの襲撃事件あたりから、表立って表れてきたように思います。その道筋のポイントとして、今回の事件をあげられるように思います。
パリの諸事件を行った人々も、中東訪問を行った安倍総理も、ナイフをかざしているイスラム国の人間も、ある一つの大きな歯車のひとつであり、自覚しないまま一定の役割を演じているように感じられます。
世界全体が解体状況に陥っているなかで、滅びゆく動きを代表する様々な動きが、こうしたかたちで表れているのだと思います。大きく崩れかけている、全体の構造を見なければならないように思います」
板垣氏「昨年末から、世界の関心が集中するテーマがありました。それが、今回のパリの事件によって吹き飛びました。それが、パレスチナの国際政治裁判所(ICC)への加盟申請です。
シャルリー・エブドの事件で感じるのは、表現の自由が重要だというのであれば、イスラエルによるガザ侵攻の時、『私はパレスチナ人』というプラカードを掲げる人がいてもよかったのではないか、ということです。
パレスチナがICCに加盟すれば、イスラエルによる犯罪を国際社会に訴えることができます。そのため、米国議会は、年間で5億ドルものパレスチナへの支援を打ち切るという法案を、可決しました。ICCに加入するなという圧力をかけ続けているのです。」
板垣氏「イスラム国は、イスラエルの問題には直接触れない、ということがあげられますね。イスラム国が生まれる背景を、欧米が作ったということは確かに言えると思います。イラクを解体し、リビアを解体し、シリアの内戦というなかで、イスラム国が生まれる土壌が準備されたのではないでしょうか。
イスラエルによるシリアへの軍事行動を見ると、イスラム国と敵対している側を爆撃しているんですね。そうなると、イスラエルがイスラム国をサポートしているということになりますね。
(略)
日本はイスラム世界から好感情を持たれていましたが、それが劇的に変わりました。イスラムの人々にとって、日本国旗とイスラエル国旗の間で日本の首相が会見するという映像は相当なインパクトがあったと思います。日本がイスラエルに守られているかのようです。
(略)
イスラム国は、この間、様々な変質を遂げています。特に1月に大きく変化したことが、今回の人質殺害予告事件としてあらわれてきました。これまで、関係してこなかったイスラエルとイスラム国が、日本を介して接触することになりました。
(引用終わり)
板垣雄三氏(以下、板垣・敬称略)「同時に、いくつものことを感じたり考えたりします。昨年(2014年)末あたりから考えてきたことが、1月7日のシャルリー・エブドの襲撃事件あたりから、表立って表れてきたように思います。その道筋のポイントとして、今回の事件をあげられるように思います。
パリの諸事件を行った人々も、中東訪問を行った安倍総理も、ナイフをかざしているイスラム国の人間も、ある一つの大きな歯車のひとつであり、自覚しないまま一定の役割を演じているように感じられます。
世界全体が解体状況に陥っているなかで、滅びゆく動きを代表する様々な動きが、こうしたかたちで表れているのだと思います。大きく崩れかけている、全体の構造を見なければならないように思います」
板垣氏「昨年末から、世界の関心が集中するテーマがありました。それが、今回のパリの事件によって吹き飛びました。それが、パレスチナの国際政治裁判所(ICC)への加盟申請です。
シャルリー・エブドの事件で感じるのは、表現の自由が重要だというのであれば、イスラエルによるガザ侵攻の時、『私はパレスチナ人』というプラカードを掲げる人がいてもよかったのではないか、ということです。
パレスチナがICCに加盟すれば、イスラエルによる犯罪を国際社会に訴えることができます。そのため、米国議会は、年間で5億ドルものパレスチナへの支援を打ち切るという法案を、可決しました。ICCに加入するなという圧力をかけ続けているのです。」
板垣氏「イスラム国は、イスラエルの問題には直接触れない、ということがあげられますね。イスラム国が生まれる背景を、欧米が作ったということは確かに言えると思います。イラクを解体し、リビアを解体し、シリアの内戦というなかで、イスラム国が生まれる土壌が準備されたのではないでしょうか。
イスラエルによるシリアへの軍事行動を見ると、イスラム国と敵対している側を爆撃しているんですね。そうなると、イスラエルがイスラム国をサポートしているということになりますね。
(略)
日本はイスラム世界から好感情を持たれていましたが、それが劇的に変わりました。イスラムの人々にとって、日本国旗とイスラエル国旗の間で日本の首相が会見するという映像は相当なインパクトがあったと思います。日本がイスラエルに守られているかのようです。
(略)
イスラム国は、この間、様々な変質を遂げています。特に1月に大きく変化したことが、今回の人質殺害予告事件としてあらわれてきました。これまで、関係してこなかったイスラエルとイスラム国が、日本を介して接触することになりました。
(引用終わり)
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年6月14日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(1)加藤朗さんの「憲法9条部隊」構想
※2010年10月にかもがわ出版から刊行された柳澤協二さんの対談集『抑止力を問う―元政府高官と防衛スペシャリスト達の対話』における加藤朗さんの発言から。
2014年6月14日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(1)加藤朗さんの「憲法9条部隊」構想
※2010年10月にかもがわ出版から刊行された柳澤協二さんの対談集『抑止力を問う―元政府高官と防衛スペシャリスト達の対話』における加藤朗さんの発言から。
「非常に基本的なことですが、自衛隊は、元のとおり日本の本土防衛、および、せいぜい広げてもアジア太平洋地域の平和と安定のための役割に徹する。そこまでが自衛隊の役割だろうと思います。
では、それ以外の国際協力と言われる部分をどうするのか。海外の紛争地域で民生支援を行うボランティア集団をつくるべきではないか。それを「憲法9条部隊」と名付けたのです。
はっきり言うと、私が提唱しているのは、自衛隊のPKO部隊に代わる別組織論です。「憲法9条部隊」と名付けたのは、つい最近のことです。
(略)
自衛隊の国際協力というのは、まさに日米同盟のための国際協力でした。括弧付きの国際協力だったのです。自衛隊は日米同盟のための部隊という性格を持っているから、本当の意味での国際協力というのは、なかなかできなかった。
一方、自衛隊に反対する人たちは、自衛隊の海外派遣に反対することが目的になってしまって、国際協力は二の次なのです。自衛隊の派遣に反対するからには自分たちで国際協力をしてはどうかと、護憲派の会合や区民大学の平和講座などいろいろなところで呼びかけたのですが、「怖いから嫌です」と言う。では自衛隊を出すのかと言うと、「いや、それは反対です」と。
だったらどうするのかということなのです。それで、いまみんなにいろいろと働きかけて勇気あるボランティア(義勇兵)を集めているのですけれど。
(略)
若い人よりも、やはり中高年、定年を迎えた人たちの方がいいだろうと思います。職業経験も豊富で、定年を迎えた人は後顧の憂いもないだろう。だから、万一のときには覚悟を決めて、とにかく現場に行こうということです。
(略)
実は、いろいろなところに行って、思いがけないことがあって、日本はいい国だなと気づかされたのです。その根底にあるのは、兵隊を外国に出さないというところです。
マレーシアの片田舎の両替商のおじさんが、日本は兵隊を出さないからいい国だと、ぼそっと言ったのです。こんなところにまで、そんな話が聞こえているのかと、私はびっくりしました。べつに憲法9条のことを、その人が知っているということではないのですが、実態として日本が軍隊を外に出さないようだという話は、普通の人も知っていた。
カブールに行ったときも、内務省の人にガイドをしてもらっていたのですが、兵隊はもうたくさんだと言われました。そして、「日本はいい国だよな、兵隊を出さないから」ということになる。まあ、兵隊は出さなくていいから、「でも金はくれよな」という話なんですけれどね。
でも、アメリカやイギリスなどに対しては、もう本当にうんざりだという感じです。たくさんの兵隊が来て、たくさん殺している。タリバンであれ、誰であれ、同朋を殺されるというのは、ある種、やはり耐え難いものがあるようです。内務省のガイドも自分たちはタリバン狩りをしているのですが、それにもかかわらず、外国人に同朋が殺されるというのは、引っ掛かるものがあるのだろうと思います。」
(引用終わり)
では、それ以外の国際協力と言われる部分をどうするのか。海外の紛争地域で民生支援を行うボランティア集団をつくるべきではないか。それを「憲法9条部隊」と名付けたのです。
はっきり言うと、私が提唱しているのは、自衛隊のPKO部隊に代わる別組織論です。「憲法9条部隊」と名付けたのは、つい最近のことです。
(略)
自衛隊の国際協力というのは、まさに日米同盟のための国際協力でした。括弧付きの国際協力だったのです。自衛隊は日米同盟のための部隊という性格を持っているから、本当の意味での国際協力というのは、なかなかできなかった。
一方、自衛隊に反対する人たちは、自衛隊の海外派遣に反対することが目的になってしまって、国際協力は二の次なのです。自衛隊の派遣に反対するからには自分たちで国際協力をしてはどうかと、護憲派の会合や区民大学の平和講座などいろいろなところで呼びかけたのですが、「怖いから嫌です」と言う。では自衛隊を出すのかと言うと、「いや、それは反対です」と。
だったらどうするのかということなのです。それで、いまみんなにいろいろと働きかけて勇気あるボランティア(義勇兵)を集めているのですけれど。
(略)
若い人よりも、やはり中高年、定年を迎えた人たちの方がいいだろうと思います。職業経験も豊富で、定年を迎えた人は後顧の憂いもないだろう。だから、万一のときには覚悟を決めて、とにかく現場に行こうということです。
(略)
実は、いろいろなところに行って、思いがけないことがあって、日本はいい国だなと気づかされたのです。その根底にあるのは、兵隊を外国に出さないというところです。
マレーシアの片田舎の両替商のおじさんが、日本は兵隊を出さないからいい国だと、ぼそっと言ったのです。こんなところにまで、そんな話が聞こえているのかと、私はびっくりしました。べつに憲法9条のことを、その人が知っているということではないのですが、実態として日本が軍隊を外に出さないようだという話は、普通の人も知っていた。
カブールに行ったときも、内務省の人にガイドをしてもらっていたのですが、兵隊はもうたくさんだと言われました。そして、「日本はいい国だよな、兵隊を出さないから」ということになる。まあ、兵隊は出さなくていいから、「でも金はくれよな」という話なんですけれどね。
でも、アメリカやイギリスなどに対しては、もう本当にうんざりだという感じです。たくさんの兵隊が来て、たくさん殺している。タリバンであれ、誰であれ、同朋を殺されるというのは、ある種、やはり耐え難いものがあるようです。内務省のガイドも自分たちはタリバン狩りをしているのですが、それにもかかわらず、外国人に同朋が殺されるというのは、引っ掛かるものがあるのだろうと思います。」
(引用終わり)
2014年9月1日
戦争に敗けるということ~加藤朗氏『敗北をかみしめて』を読んで考える
戦争に敗けるということ~加藤朗氏『敗北をかみしめて』を読んで考える