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日本は先制攻撃した同盟国のためにも集団的自衛権を行使する~2月2日・参議院予算委員会での安倍首相答弁から

 今晩(2015年2月3日)配信した「メルマガ金原No.1990」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日本は先制攻撃した同盟国のためにも集団的自衛権を行使する~2月2日・参議院予算委員会での安倍首相答弁から

 今日(2月3日)は、めずらしく事務所に配達された朝日新聞(大阪本社・13版)を比較的じっくり昼休みに読んだのですが、昨日、参議院予算委員会で行われた質疑の模様は4面の「焦点・採録」欄で簡単に触れられているだけでした。
 実は、朝日新聞の政治欄をじっくり読む気になったのは、共同通信が昨夕、予算委員会での質疑の一部を短く報じたニュースを、何人かのFacebook「友達」が注意喚起のために取り上げてくれており、その部分を朝日の朝刊が詳しく書いてくれているのではないかという淡い期待を抱いたからなのです。
 残念ながらその期待はかなわず、少なくとも私がざっと見たところ、今朝の朝日新聞には、共同通信が報じた質疑については1行も書かれていませんでした。
 私が注目した昨日の共同通信の短信というのは以下のようなものでした。
 
【共同通信】2015/02/02 18:53
同盟国の先制攻撃時も排除せず 集団的自衛権行使で首相
 
(引用開始)
 安倍晋三首相は2日の参院予算委員会で、同盟国による先制攻撃をきっかけに生じた事態でも、武力行使の新3要件を満たせば日本の集団的自衛権行使を排除しないとの認識を示した。民主党大塚耕平氏が「密接な関係がある他国が先制攻撃をした結果、相手側から武力行使を受けた場合も必要条件を満たすか
」と質問したのに対し「3要件を満たすか否かの中で判断する」と述べた。
 「密接な関係にある他国」は一般的に、同盟関係にある米国などを指す。
(引用終わり)
 
 もちろん、質疑は昨日のことなので、会議録が公表されるのはまだ先のことですが、これは聞き捨てにできるような内容ではないでしょう。
 ということで、参議院インターネット審議中継で該当部分を探し出そうと決意したのですが、その前に、大塚耕平議員の質問の流れ、どのあたりで問題の質問がなされたかについての「あたりをつける」ために、以下のサイトを閲覧してみました。
 
TVでた蔵 2015年2月2日放送 13:00 - 17:03 NHK総合 国会中継
出演者 参議院予算委員会質疑 民主党 大塚耕平

(抜粋引用開始)
大塚耕平は密接な関係にある他国が先制攻撃をした結果、第三国から他国に攻撃があったケースでも具体的な武力攻撃になり必要条件を満たすのか質問、中谷元は新3要件を満たす場合だと述べた。安倍晋三は、集団的自衛権の限られた範囲で武力行使をするのは新3要件を満たすことが閣議決定で求められているもの
であり政策判断をしていくと述べた。
(引用終わり)
 
 どうやら、大塚議員の持ち時間のほぼ半ばころに行われたらしいと分かりましたので、以下、動画検索をしてみました。
 
参議院インターネット審議中継
   ↓
「審議中継カレンダー」から「2月2日」を選択してクリック
   ↓
予算委員会」をクリック
  ↓  
別ウインドウが開いて動画が現れるので、「発言者一覧」から「大塚耕平民主党・新緑風会)」を選択してクリック
  
 全体動画の2時間47分~2時間56分、それから休憩をはさみ、2時間58分から4時間59分までが大塚議員による質問です。
 以上の動画の内、共同通信が報じた部分の質疑(3時間32分~)を文字起こししてみます。
 
大塚耕平議員 その密接な関係にある他国に対する武力攻撃、現実に生じたその武力攻撃が、その他国の先制攻撃の結果、相手側から受けた武力攻撃も同等とみなすんでしょうか。
 
中谷元防衛大臣 具体的な法律はこれから検討していくわけでございますが、現在ある3要件というのはあくまで我が国が武力攻撃を受けた事態でごいざいます。今後、我が国の防衛に際して、行動している他国に武力攻撃があった場合において、その中で、閣議決定に従った3要件、これに該当する場合におきましては、それを年頭に法整備をしていくということでございます。
 
大塚耕平議員 もう1回だけききます。密接な関係にある他国が先制攻撃をした結果、第三国から日本の盟友たるその他国に攻撃があったケースでも、この具体的な武力攻撃に該当するとして、必要条件を満たしたと考えるかどうかということです。
 
中谷元防衛大臣 先だっての閣議決定ではですね、我が国が集団的自衛権を行使できるというのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生するのみでは足りずに、これに加えて、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることをはじめ、新3要件を満たす場合でございます。
 
(中谷防衛大臣が大塚議員の質問に対して2度にわたってまともに答弁しなかったため、委員長席で協議が行われ、安倍首相が答弁に立つことになった→3時間35分~)
 
安倍晋三内閣総理大臣 その事案というのはですね、様々な複雑な国際関係の中において生起するわけでございますが、いずれにせよ、今、中谷大臣が答弁したように、我々がこの集団的自衛権の、限られた範囲で行使をする、つまり武力行使をするのは、この新3要件を満たすか否かの中において判断をする。新3要件を満たすことがですね、いわば閣議決定で求められているものであり、かつですね、その上において、その上においてはさらに政策判断をしていくわけでありますが、この純粋に閣議決定との関係において言えば、新3要件を満たすか満たさないかによっているということであります。
 
(安倍首相も結局質問に正面から答えなかったため、ここで再び委員長席で協議が始まり、安倍首相が再度答弁に立った→3時間37分~)
 
安倍晋三内閣総理大臣 安全保障上の事態というのは、様々な国際状況の中において生起するわけでございまして、今我々が、どのような事態、どのような事態とですね、きれいに切り分けそれを整理するということは、実は自ずと机上の論理でしかないわけでありまして、大切なことはですね、大切なことは、あ閣議決定で求められて,我々が決定した、いわば、どのような段階において我々が集団的自衛権の行使を行うかということについては、このまさに新3要件に書いていることでございます。その新3要件に判断をする。かつ新3要件というのは、きわめて、世界の中で集団的自衛権を行使をする国々においても、厳しい3要件でございまして、我が国のまさに存立が危うくなる、そして国民の生命、自由、幸福追求するというこの諸権利が根底から覆される明白な危険という判断の時においてですね、その時にむしろ何もしなければそうなってしまうわけでありますから、それを阻止するというのは国の責任だろうとう判断の中でこの閣議決定がなされているわけでありまして、全てはこの閣議決定の3要件にあたるかどうかで判断すべきものと考えております。
 
大塚耕平議員 聞いていただいている議員の皆さん、閣僚の皆さん、TVの皆さんも、ある程度は論点はご理解いただけていると思いますので、今後の検討に委ねますけれども、総理、積極的平和主義と言っておられるわけですから、私は今度の新たな安保法制を総理がお作りになる時にですね、密接な関係にある他国が先制攻撃をした場合は、いかなる理由があっても先制攻撃をした場合は日本は手助けしないというぐらいの、明確な意思表示をすることが世界から紛争をなくすための日本の貢献であると思いますけれども、いかがですか。
 
安倍晋三内閣総理大臣 今私が申し上げましたように、この3要件というのはですね、これを我々がこの段階で集団的自衛権の行使をしなければ、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険あること、ということが書き込まれている訳でありまして、すなわち、この時に我々が自衛隊によってですね、武力行使をしなければこういう事態になってしまうということであります。それは看過すべきじゃないというのが我々の基本的な考え方であるということでございます。
(~3時間40分)
 
 どうでしょうか、動画を視聴して、あるいは文字起こしを読んでみてどう感じられたでしょうか?
 私は、気軽に文字起こしをしてみようなどと作業を始めたことを後悔しつつ、途中で止めるわけにもいかず、約8分間の質疑(途中で2度も中断していますが)を最後まで文字起こしたのですが、その感想はというと・・・。
 前からそうであったのですが、これほど不誠実な人間を相手にしては、いかに質問内容に工夫をこらしても、糠に釘どころではないということを痛感します。
 
 それから、この質疑について、内容の重大さにもかかわらず、なぜ朝日新聞が3日の紙面に取り上げなかったのかが分かるような気がしました。
 要するに、「密接な関係を有する他国が先制攻撃をしかけて始まった武力紛争であっても、新3要件に該当すれば日本は武力行使するのか?」という大塚議員の質問に対して、具合の悪い質問にはほおかむりするという安倍内閣の「いつもの手」が使われたに過ぎないと朝日のデスクは判断したのでしょう。まあ、その気持ちも分からないではありません。私も文字起こしをしながらつくづくうんざりしましたから。
 
 それでは共同通信の昨夕の報道は「誤報」なのか?というと、私はそうは思いません。
 2度目の中断の直後における安倍総理の答弁のどうでも良い部分をカットして読めば、「大切なことは、(略)全てはこの閣議決定の3要件にあたるかどうかで判断すべきものと考えております。」と言っているのであって、これは、我が国と密接な関係にある他国の先制攻撃で始まった場合であろうがなかろうが、新3要件にあたるかどうかで、集団的自衛権を行使すべきかどうかを判断すると言っているということに他ならず(新3要件を満たした後の「政策判断」にも言及してはいますが)、共同通信の記事は、私は正確な要約であると判断します。

 ということで、過去の戦争でいえばイラク戦争がまさに米国の先制攻撃で始まった戦争ですし、将来的にも、日本の近隣で米国に挑発を繰り返す国もありますから、大塚議員の質問は非常に重要な論点を突いたものであったのであり、もっと大きく報じられてしかるべきだと思います。

 また、中谷防衛相も安倍首相も、昨年7月1日の閣議決定が、あたかもゆるぎない規範であるかのように勿体をつけている「異常」さが印象に残りました。
 そして最後に、このような人たちに「自衛隊」をどうこうするというようなことは言ってほしくないと、もしも私が自衛官なら心底思うでしょうね。
 
(付記))
 なお、民主党の公式サイトでは、昨日の予算委員会での問題の質疑について、以下のようにまとめています。
 
(引用開始)
 集団的自衛権行使の問題で大塚議員は、「密接な関係にある他国が先制攻撃をした結果、その密接な他国が第3国から攻撃を受けたケースも、この新3要件のうちの具体的な武力攻撃に該当して、集団的自衛権行使の必要条件を満たすのか」との問いに安倍総理は、具体的な答弁は全くできなかった。大塚議員は「積極的平和主義と言っているからには、今度の安保法制で、密接な関係にある他国がいかなる理由があっても先制攻撃をした場合は、日本は手助けをしないというぐらいの明確な意思表示をすることが、世界から紛争を無くすための貢献になる」と指摘した。
(引用終わり)
 
 まあ、こういうまとめ方もあるでしょうが、私としては共同通信説に肩入れしたいと思います。
 
(注)文字起こしについては、十分な推敲をする時間的余裕がなかったため、誤りがあるかもしれませんので、もしも引用等される場合には、動画と照らし合わせて正確を期してください。