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「鼎談 戦後70年、ジャーナリズムのなすべきこと」(JCJ)を読む(付・「報道特集」の健闘に感謝)

 今晩(2015年2月10日)配信した「メルマガ金原No.1997」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「鼎談 戦後70年、ジャーナリズムのなすべきこと」(JCJ)を読む(付・「報道特集」の健闘に感謝)

 昨日(2月9日)お伝えした「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」の続報、というわけではありませんが、問題意識を共有する著名なジャーナリストによる鼎談を読みましたので、皆さまにも一読をお勧めしたいと思います。
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙「ジャーナリスト」第682号(2015年1月25日)の巻頭に掲載された「戦後70年、ジャーナリズムのなすべきこと」という鼎談で、“Dayly JCJ”に全文掲載されています。
 
 
 
 鼎談参加者は以下の方々です。
 
金平茂紀さん(「報道特集」キャスター、TBS執行役員
原寿雄さん(ジャーナリスト、元共同通信
藤森研さん(専修大学教授、元朝日新聞
 
 以下に、それぞれの発言で印象に残った部分を引用します。
 
金平茂紀さん
「産経や読売、日経の中で日米安保同盟死守をいう人たちを知っていますが、彼らは自分の中に確固とした信念を持っているとは思えません。
 ハンナ・アーレントがアイヒマン裁判を傍聴して見たものは、無思想で組織の中での上昇志向が強く、忠誠心が強い人間像でした。彼女は「凡庸な悪」とよんでいますが、今の日本の右派メディアも「凡庸な悪」と通底しているのではないか。
 だからこそ朝日の役割はまだまだ大きい。
 社論に合わせて記事を書くのはダメなのです。産経や読売の記者も含め、ジャーナリストの内部的自由の確保が一番大事です。
 現場を取材した記者には「抗命権」がある。デスクから「今日はこれをトップで行くから色をつけろ」と言われて「できません」と断るのが僕らの教えられた記者の誠実さでした。かつては逆らう記者、手におえない記者がいっぱいいた。デスクの言うことを聞かない。勝手に動く。やりすぎる。そういう記者がマスメディアを活性化させていた。
 会社の上司より、現場で競っている他社の記者の方が信用できる。それがなくなってきた。」
 
原寿雄さん
「戦前は権力がマスコミを抑えた。戦後は、権力による規制だけでなく、権力のお先棒を担ぐジャーナリズムがある。そこが決定的な違いですね。そこを深刻に考える必要がある。
 戦争の前には戦争反対派と賛成派の分裂が起きる。今は国家主義的政策をめぐってジャーナリズムの分裂が起きている。
 日本では足並みをそろえて戦争に反対したという経験はない。満州事件の時も現地に行っていた記者は関東軍に共鳴していた。満州は日本の生命線だという国益論に共鳴していた。今でも国益論は危険です。
 言論機関は権力のポチどころではなく、政府はリードするという意識がある。今の政権のいう国益国家主義国益で、相当に危険です。」
 
藤森研さん(専修大学教授、元朝日新聞
「メディア界が二つに割れて、読売・産経と朝日・毎日・東京に分かれていることを、学生たちは、それは言論が多様なのだからいいことだといいます。
 しかし、少し違う。日本は議院内閣制で、内閣と議会多数派が一体。司法が権力分立としてチェックすべきですが十分に機能しない。そこで戦後70年間、メディアが権力のチェックをやってきた。何党が政権に就こうが、ジャーナリズムはあらゆる権力に対して距離をとるべきだ。それが基本ですが、今はメディアの半分が権力につながっている。」
 
 なお、上記鼎談に参加された金平茂紀さんがメインキャスターを務めるTBS「報道特集」では、2月7日に「イスラム国」邦人人質殺害事件についての「徹底検証」を放送し、大きな反響を呼んでいます。
 
 
 同番組内の「金平茂紀ブログ ハートに火をつけて」に、2月7日の番組の「スタジオ部分」が再録されています。
 
 おそらく、大きな風当たりがあるとは思いますが、ジャーナリストたちのの魂が直接視聴者に届く番組が、まだ大手メディアの一角から発信されていることに希望を抱くとともに、私たち1人1人がこのような優れた報道に対して感謝と支持を具体的に表明することが必要なのだと思います。