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籾井NHK会長が居座る異常さを異常だと言い続けよう

 今晩(2015年2月11日)配信した「メルマガ金原No.1998」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
籾井NHK会長が居座る異常さを異常だと言い続けよう

 一昨日昨日に引き続き、民主主義を根底から支える「報道の自由」「表現の自由」(の危機)について書くことになりました。
 
 安倍晋三首相が自分の「元家庭教師」や「お友だち」を経営委員に任命し、その経営委員会によってNHKの会長に選ばれた籾井勝人(もみい・かつと)氏が、昨年(2014年)1月の就任記者会見において、会長としての資質を疑われる問題発言を連発したことは、当時、非常に話題になり、私もメルマガ(ブログ)で取り上げました。
 
 
 その籾井会長が、就任から1年経った今年の2月5日の定例記者会見において、再び物議を醸す問題発言を行いました。
 
毎日新聞 2015年02月05日 22時53分(最終更新 02月05日 23時00分)
NHK会長:慰安婦問題番組「政府スタンスで放送考える」

(引用開始)
 NHKの籾井勝人会長は5日の定例記者会見で、戦後70年にあたり従軍慰安婦問題について番組で取り上げるかを問われ「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」と述べ、政府が8月にも発表する「戦後70年談話」の行方を見て判断する意向を示
した。自律的な放送を放棄するかのような発言は批判を呼びそうだ。
 また従軍慰安婦に関する政府見解は見直す余地があるかを聞かれ、「その手の質問には答えを控える」と述べた。さらに、答えない理由について問われると「しゃべったら、大騒動になる」とコメントを避け
た。【望月麻紀】
(引用終わり)
 
 私がこの報道を読んで最初に浮かんだ感想は、「相変わらずだな、性懲りも無く」というものでした。
 何しろ、国際放送について質問され、「政府が右って言ってるものを我々が左と言うわけにはいかない」と就任会見で答えた人物なのですから、1年後にこのような発言をすることは、ある意味「当然」であって、まことに「一貫性」があると“賞賛”すべきかもしれないのです(実際、「アチラ」の側でもあまり物を考えない人々からは賞賛されているようです)。
 
 ただし、籾井会長の見た目のキャラクターともあいまって、こちらもついつい「妄言慣れ」してしまいかねないのが怖いところです。
 ということで、この問題も見過ごすことなく取り上げねばとは思っていたのですが、それが遅くなってしまったのは、問題の記者会見の動画で公開されたものはないか?と思って探していたのですが、見つけ
ることができなかったことによります。
 JCJなどによる罷免要求も出てきたことでもあり、これ以上先延ばしする訳にはいかないと思い、取
り上げることにしました。

 まずは、その記者会見での発言自体を正確に知る必要があります。私が動画を探していたのは、出来れば前後の脈絡も含め、正確な発言内容を確認したいと思ったからですが、やむなく新聞報道を引用しておきます(今後、もしも動画・音声などで確認できた場合、訂正する可能性があります)。
 
朝日新聞デジタル 2015年2月5日21時16分
NHK会長「挑発的な質問やめて」 会見主なやりとり

(引用開始)
NHKの籾井勝人会長の2月5日の定例会見の主なやりとりは次の通り。
【戦後70年の番組について】
 ――今年は戦後70年の節目。夏に特集番組や戦争に関するものをやると思うが、基本方針は
 籾井勝人NHK会長 現場で検討してもらっている最中。そういう意味で私が基本方針がどういったものか承知しているわけではございません。戦後70年、前回は60年だったんですが、だんだん戦後が遠くなっている中で、戦争というものの悲惨さと同時に、やはり我々が戦争の廃墟(はいきょ)からどうやって立ち上がってきたのかという、こういう元気が出る番組も入れていただきたいと個人的には思っております。ただ全体としての方針は、まだ聞いておりません。
 ――去年、朝日新聞の誤報問題で従軍慰安婦が脚光を浴びたが、従軍慰安婦問題を戦後70年の節目で
取り上げる可能性は
 籾井 なかなか難しい質問ですが、やはり従軍慰安婦の問題というのは正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えませんよね。そういう意味において、やはり今これを取り上げてですね、我々が放送するということが本当に妥当かどうかということは本当に慎重に考えなければいけないと思っております。そういう意味で本当に夏にかけてどういう政府のきちっとした方針が分かるのか、この辺がポイントだろう
と思います。
(別の質問のやりとりを挟んで)
 ――先ほどの従軍慰安婦問題で、正式に政府のスタンスがよく見えないとおっしゃった。現時点では河野談話があり、現政府も踏襲すると言っている。それでも政府のスタンスがよく見えないというのは、河野談話について変わるべきだとか変わりうるとか言うことでおっしゃってるんでしょうか
 籾井 その手の質問にはお答えを控えさせていただきます。
 
――「よく見えない」という認識は……
 籾井 あの、どんな質問もお答えできかねます。
 ――それはどうしてですか
 
籾井 しゃべったら、書いて大騒動になるじゃないですか。
 ――大騒動になるようなお考えをお持ちなのですか
 
籾井 ありません。そんな挑発的な質問はやめてくださいよ。
(引用終わり)
 
 なお、この続きを読むためには「朝日新聞デジタル・会員登録」が必要ですが、閲覧してみたところ、「4Kテレビ」と「8Kテレビ」に関わる質問でした。この問題も、籾井会長の国策や経済界の意向との位置取りを考えるためには、なかなか興味深いものがあちますが、以上の質疑応答部分とは直接の関係はありませんでした。
 
 さて、この発言を契機として、昨日(2月10日)、放送を語る会と日本ジャーナリスト会議(JCJ)が共同で、籾井会長本人に対して辞任を、NHK経営委員会委員長及び委員に対して籾井会長の罷免を、それぞれ求める申入書を提出しました。 
 
 
 ここでは、罷免要求書を引用します。
 
(引用開始)
浜田健一郎NHK経営委員長並びに経営委員各位
        
             籾井勝人会長の即刻罷免を強く求めます
           
                             2015年2月10日  
                             放送を語る会
                             日本ジャーナリスト会議
 
 2月5日の定例記者会見で籾井会長は、「戦後70年目の節目に従軍慰安婦について番組で取り上げる可能性について問われ、『(慰安婦問題について)正式に政府のスタンスがよくまだ見えない。慎重に考えなければならない』などと述べた」(2/6 朝日新聞)と報じられています。この会長発言は事実上、「番組は政府の方針に従って作る」ことを表明したことにほかなりません。
 また、総選挙公示を控えた昨年11月20日、政権与党である自民党がNHK・在京民放キー局各社に、「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」なる文書を送りました。出演者の発言回数、時間、ゲスト出演者の選定、街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏ることがな
いよう公平・中立、公正を求め、報道内容に対し、露骨に、事細かに干渉するものでした。
 ところがNHKは自民党を庇い立てして、この文書を受け取ったかどうかさえ明らかにせず、その後、籾井会長が記者と懇談したとき、この文書を「あの通りだと思う」と発言し、支持していたことが発覚しました。1月30日の衆議院予算委員会民主党後藤祐一議員の質問に対し、籾井会長は懇談会があったこ
とを認め、その時の発言について否定していません。
 この会長発言は、総選挙報道に関する政権党の露骨な干渉に対し、唯々諾々と従うことを表明したことにほかなりません。NHKが受信料だけで成り立っているのは、NHKが政府から独立した放送機関であ
るためです。
 会長の二つの発言は、日頃「放送法遵守」をお題目のように繰り返す籾井会長が、実は放送法第1条「放送の不偏不党、表現の自由の確保」、第3条「放送番組は、何人からも干渉され、又は規律されることがない」に全く無理解で、自ら「放送の自主・自律」を投げ捨て、政権党の意に従うと宣言したに等しい
と言わなければなりません。
 NHKには全役職員が遵守すべき「NHK倫理行動憲章」「行動指針」があります。「いかなる圧力や働きかけにも左右されることなく、みずからの責任において、ニュースや番組の取材・制作・編集を行います」と決められており、NHK内部からも「籾井発言は、倫理行動憲章違反」との声が出ています。憲
章に従って仕事をしてきた職員を侮辱するものでもあります。
 籾井会長が「放送の自主・自律」を堅持すべき公共放送・NHKのトップ失格であることは明らかです

 7つの市民団体が取り組んできた「籾井会長、百田・長谷川両経営委員罷免要求」署名は、現在7万2千筆を超えています。視聴者の声に耳を傾け、放送法55条に基づき、籾井会長を即刻罷免することを、経営委
員会に強く求めるものです。
(引用終わり)
 
 私は、この罷免要求書によって、初めて「籾井会長が記者と懇談したとき、この文書(自民党がNHKと在京民放キー局に送った)を「あの通りだと思う」と発言し、支持していたこと」を知りました。うかつでした。

 さらに、同じく昨日、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」も、以下の申し入れ書を提出し
ています。

 
 ここでは、経営委員会宛「申し入れ書」を(かなり長いものですが)引用します。
 
(引用開始)
                                      
2015年2月10日
NHK経営委員会
委員長 浜田健一郎様
経営委員 各位
 

         放送の自主・自立を堅持する意思と資質を欠く籾井会長の
                 即時罷免等を求める申し入れ書
 
                      NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                       共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
 

 経営委員各位におかれましては、「放送法」に基づく重責を担われ、日々、ご多忙のことと存じます。
 去る2月5日に開催されたNHK会長定例会見において籾井勝人会長は、記者から、戦後70年の節目にあたってNHKは「従軍慰安婦」問題を取り上げる可能 性はあるのかと聞かれたのに対し、この問題に関する政府のスタンスがなかなか見えない、夏にかけて政府のきちっとした方針が分かるのがポイントだろう、と い
う趣旨の発言をしました。
 しかし、改めて指摘するまでもなく、NHKは自主・自立、特に時の政権からの独立を生命線とする公共放
送であり、国営放送でも政府広報機関でもありません。
 籾井会長が公式の会見の場で、放送の自主、自立を自ら放棄し「放送法」の基本原則を全否定するに等しい上記のような発言を行ったことは、籾井氏がNHK会長の職には堪え得ない資質の持ち主であることの決
定的証しです。
 さらに、強調しなければならないのは、今回の籾井発言は約1年前の会長就任会見で同氏が語った「政府が右というものを左とはいえない」という発言と同根のものだということです。このことは、籾井会長の
脳裏に、放送の自主・自立よりも、政府の意向を忖度する思考が染みついていることを物語るものです。
 しかも、籾井会長は会長就任会見における一連の暴言を「個人的見解」とかわし、今日に至るまで、そ
の個人的見解を撤回しませんでした。
 この意味で、籾井会長の「政府のスタンス」云々という発言は、会長就任当初から持ち合わせた公共放送と相容れない資質が表に出るべくして出たものといっても過言ではありません。
 
 にもかかわらず、この1年間、浜田経営委員長は国会の委員会審議で委員から、経営委員会の会長任命責任監督責任を質される都度、「籾井会長は放送法を遵守して業務の執行に当たると明言しているので、それを見守りたい」、「経営委員会としては、執行機関の今後の動きを監督し、助言し、必要に応じて苦言も呈して、委員会の職務を一層果たしてまいりたい」という答弁を繰り返してきました。(当会が衆参委員会会議録で調べたところ、本年1月末までに浜田委員長は前者の発言を延べ18回、後者の発言を延べ27回繰り返しています。)
 また、経営委員も、この間、各地で開催された「視聴者の皆様と語る会~NHK経営委員とともに」において、籾井会長の言動に対して参加者から出た厳しい意見に対して、「籾井会長は、放送法を守って公共のための放送をこれからやっていきますということを再三明言していますので、籾井会長に私どもは頑張っていた だきたいと。経営委員会はしっかりと監視とか監督をやって
いくということでご理解をいただきたいと思います。」
(2014年4月19日、佐賀県での語る会。石原委員)
「受信料をご負担いただいている視聴者の皆様、まさに視聴者の皆様を代表して執行を監視・監督するのが経営委員の役割でありますので、その点、もう一度自分たちの役割をはっきり再認識させていただいて
頑張りたいと思います。」
(2014年5月24日、青森県での語る会。上田委員発言)
といった決意を表明されました。
 しかし、「政府のスタンスが決まるのを待ってNHKの番組編成の判断をする」という籾井会長の発言は、政府の意向によってNHKの番組が規律されることを進んで受け入れる意思を表明したに等しく、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定
め た「放送法」第3条に真っ向から反するものです。
 また、今回の籾井会長の発言は、「全役職員は、放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、すべての業務にあたる」と定めた「NHK放送ガイドライン」を会長自らが踏み
にじるものです。
 これほどまで「放送法」、「NHK放送ガイドライン」に背く言動を繰り返す籾井会長に対しては、「放送法を遵守して業務にあたると言っているから」などというかばい立ては通じません。また、このような状況でなお、「執行機関に対する監督責任をしっかり果たしていく」などという口上は経営委員会の不作為
責任を糊塗する空言にすぎません。
 籾井会長に残された道は会長職を辞すこと以外になく、当人に辞職の意思が見受けられない以上、会長任免権者である経営委員会が一刻も早く、籾井会長を罷免するのがNHKに対する視聴者の信頼をつなぎとめ
る唯一の道です。
 そこで、当会は貴委員会に対し、以下のことを申し入れます。貴委員会が自らの職責をこれ以上、懈怠せず、毅然たる対処をされるよう、強く求めます。
 
申し入れ 
1.「放送法」第55条第1項(「経営委員会は、会長・・・・が職務の執行の任に堪えないと認めるとき、又は会長・・・・に職務上の義務違反・・・・があると認めるときは、これを罷免することができる。」
)に基づき、籾井勝人氏をNHK会長の職から罷免すること。
 そのため、すみやかに籾井会長の罷免を経営委員会の議題(協議事項)とし、慎重のうえにも迅速な審
議をすすめること。
2.浜田経営委員長は、上記罷免協議を主導的に進め、籾井会長罷免決議ができない状況に陥った場合は、
経営委員長を自ら辞すること。
3.今回、籾井会長から、NHKの自主・自律を貶める発言が出た一因として、経営委員が各地で開催された「視聴者の皆様と語る会~NHK経営委員とともに」において参加者に約束した籾井会長に対する監督責任を果
たしてこなかったことが挙げられる。
 また、浜田経営委員長が、国会で繰り返し明言した籾井会長に対する監督責任を何ら果たしてこなかっ
た責任は極めて重い。
 こうした経営委員長以下、委員の任務懈怠責任に照らし、浜田委員長ほか全経営委員は本年上半期の期
末報酬を全額返上すること。
(引用終わり)
 
 以上の3団体が、2月10日に申し入れを行ったのは、同日、NHK経営委員会が開催されることになっていたからでしょう。
 昨日の経営委員会には籾井会長は出席しておらず、一部の委員がメディアの質問に答えていました。
 
毎日新聞 2015年02月10日 20時53分(最終更新 02月10日 23時40分)
NHK:「政府方針見て」会長発言…経営委員が「遺憾」

(抜粋引用開始)
 NHKの経営委員会は10日、籾井勝人会長が定例記者会見で、従軍慰安婦問題を番組で取り上げるかどうかは、政府の方針を見て判断する意向を示したことについて協議した。放送の自律を放棄したかのような会長の発言には、批判的な意見が多かったとみられるが、籾井会長は欠席だったため、浜田健一郎委
員長(ANA総合研究所会長)が近日中に、真意を確認の上、改めて協議する。
 委員会は非公開。委員会終了後、上村達男委員長職務代行者(早稲田大教授)は記者団に「記録を見た限りにおいて遺憾だ」と述べた。この日は執行部側からの提案事項がなかったため、当初から籾井会長は
欠席予定だったという。
(引用終わり)
 
 今日は、3団体による2つの申し入れ書を長々と引用しましたが、私自身、これらを読んで教えられることが非常に多かったため、出来るだけ多くの方にこの内容を知っていただければということでご紹介しました。
 そもそも、第二次安倍政権が誕生する前であれば、このような発言を繰り返す人物がNHKの会長に就
任することもなければ、万一就任したとしても、既に2~3回は辞任に追い込まれていたことでしょう。
 それが、たいして恥じる様子もなく居座っていられる異常さを、異常と感じるセンスが社会から失
われつつあるのではないか?ということが一番の問題だろうと思います。
 異常なものは異常だという声を上げ続けることもまた、「翼賛体制の構築に抗する」実践の重要な一部なのです。