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「核のごみ」をめぐる注目すべき動き~国の「基本方針」改訂と日本学術会議の「提言」

 今晩(2015年2月19日)配信した「メルマガ金原No.2006」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「核のごみ」をめぐる注目すべき動き~国の「基本方針」改訂と日本学術会議の「提言」

 高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」をどうするのか?ということについて、国、具体的には資源エネルギー庁やNUMO( 原子力発電環境整備機構)は、多額の国費を投入しては、全国各地で「地層処分」推進のためのシンポジウムなどを開催してきており、つい先日(2月7日)も、和歌山市でNUMO主催のシンポジウム「地層処分を考える」が開催されました。
 どんなものであったか、参加された「原発がこわい女たちの会」の梅原さんがレポートしてくださっています。
 
 また、「子どもたちの未来と被ばくを考える会」でも、明後日21日(土)午後2時から、和歌山市あいあいセンター3階会議室第1において、美浜の会代表の小山英之さんを講師にお迎えし、公開学習会「『核のごみ』について 考えよう!」を開催します。
 
 ところで、この「核のごみ」問題について、一昨日(2月17日)、大きな動きがありました。
 
 1つは日本学術会議によるものです。
 
共同通信 2015/02/15 17:21
【核のごみ対策】 原発再稼働の条件に 日本学術会議が国に提言へ  「将来世代に無責任」
 
(抜粋引用開始)
 学術の立場から国に政策提言など行う日本学術会議大西隆会長)が、原発から出る「核のごみ」対策を政府と電力会社が明確化することを原発再稼働の条件にすべきだとする政策提言案をまとめたことが14日、分かった。17日に同会議の検討委員会で議論し、3月にも正式に 公表する予定で、世論形成や国の政策に一定の影響を与えそうだ 。
 学術会議は2012年にも「核のごみ」政策の抜本的見直しを提言しており、あらためて政府に改善を促す異例の対応。 高レベル放射性廃棄物 の処分問題に進展がないまま再稼働を進める国の姿勢を「将来世代に対する無責任」と批判しており、新増設も容認できないと強調している。
 政策提言案は「国、電力会社、科学者に対する国民の信頼は東京電力福島第1原発事故で崩壊した状態で(核のごみの)最終処分地の決定は困難」と指摘。信頼回復や国民の合意形成、科学的知見を深めるため、地上の乾式貯蔵施設で原則50年間「暫定保管」することを提案した。次の世代に迷惑をかけないため、保管開始後30年をめどに処分地の決定が重要としている。
 さらに負担の公平性の観点から「暫定保管の施設は原発立地以外での建設が望ましい」とし、各電力会社が責任を持って管内に最低1カ所、施設を確保する計画の作成を再稼働の条件として求めている。
 また、合意形成のために市民も参加して議論を深める「核のごみ問題国民会議」を設置する必要性を強調。再稼働で生じる放射性廃棄物の抑制や上限設定など「総量管理」についても議論すべきだとしている。
(略)
(引用終わり)
  
 3.11以降の日本学術会議による「核のごみ」についての検討経過については、私のメルマガ(ブログ)でも2度ほど取り上げました。
 
2012年10月1日(2013年2月10日と2014年1発18日に再配信)
2012/9/11 日本学術会議による高レベル放射性廃棄物の処分に関する「提言」

 特に後者で、「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」内の「暫定保管と社会的合意形成に関する分科会」及び「暫定保管に関する技術的検討分科会」による中間報告をご紹介したのですが、その後検討が進んで「提言」がようやくまとまり、3月にも公表されるということなので、正式に発表された段階であらためて取り上げたいと思います。
 
 ところで、奇しくも同じ2月17日、国の方でも大きな動きがありました。
 
NHK かぶんブログ 2015年2月17日18時48分
核のゴミ処分 基本方針の改定案大筋了承

(引用開始)
 原発から出るいわゆる核のゴミの処分について、国の「基本方針」の改定案が経済産業省の専門家会議で大筋で了承されました。
 技術的な問題などがあれば処分を中止して回収できるようにすることや、候補地になる地域の住民との対話の場を設けることなどが新たな柱になっていて、今後より具体的な計画を策定し、幅広い理解を得ながら進めていけるかが課題になります。
 原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる“核のゴミ”は、地下300メートルより深い安定した地層に埋める「地層処分」をする計画ですが、国が13年前に始めた公募による処分場の候補地探しが進まず、経済産業省の専門家会議が抜本的な見直しを進めてきました。
 新しい「基本方針」の案は17日の会議に示され、大筋で了承されました。
 それによりますと、新たな柱として、地層処分の計画は維持しながら技術的な問題などが明らかになった場合や政策の変更に対応するため、埋めたあとでも処分を中止して回収できるようにすること、処分場の候補地は国が適した「有望地」を示したうえで、住民との対話の場を設けて合意を得ることを盛り込んでいます。
 また現在は、使用済み核燃料を再処理したあと、ガラスと固めた廃棄物を処分するとしていますが、処分までには時間がかかることなどから、使用済み核燃料を保管する場所を拡大することや、再処理せずに直接処分するための調査研究も進めるとしています。
 今回の基本方針案について、政府は今後一般からの意見募集をへて来月下旬に閣議決定したいとしています。
 核のゴミの処分を巡っては、安全性や政策の進め方に対する不信や不安が根強く、今後より具体的な計画を策定し、幅広い理解を得ながら進めていけるかが課題になります。
 会議のあと、増田寛也委員長は「安全性の観点から有望地を選ぶとか、地域で合意形成のための対話の場を作るとか基本的な考え方には多くの国民に異論がないと思う。ただ、具体的にどう進めるかはいろいろな意見があるだろう。まずは高レベル放射性廃棄物がどういう問題を抱えているかということから、国民に理解してもらわなければいけない。基本方針が閣議決定されたら、経済産業省が全国各地で説明していってもらいたい」と話しました。 
(引用終わり)
 
 この専門家会議は、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループ」というのが正式名称で、伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)も委員になっておられます。
 
 なおこのワーキンググループの会議の模様については、経済産業省YouTubeチャンネルで公開されてきていますので、2月17日開催の第17回の分もいずれアップされると思いますが、現時点ではまだのようです。
 
 この第17回の会議資料は以下から読むことができます。
 
 取りまとめられた「基本方針」改訂案というのはこれです。
 
 
 この内、とりわけ議論を呼びそうな部分はこれでしょう。
 
(抜粋引用開始)
可逆性・回収可能性、選択肢の確保
<新規追加事項(案)>
 最終処分事業は極めて長期にわたる事業であることを踏まえ、今後の技術その他の変化の可能性に柔軟かつ適切に対応する観点から、基本的に最終処分に関する政策や最終処分事業の可逆性を担保することとし、今後より良い処分方法が実用化された場合等に将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする。このため、機構は、特定放射性廃棄物が最終処分施設に搬入された後においても、安全な管理が合理的に継続される範囲内で、最終処分施設の閉鎖までの間の廃棄物の搬出の可能性(回収可能性)を確保するものとする。
 国及び関係研究機関は、幅広い選択肢を確保する観点から、使用済燃料の直接処分その他の処分方法に関する調査研究を推進するものとする。合わせて、最終処分施設を閉鎖せずに回収可能性を維持した場合の影響等について調査研究を進め、最終処分施設の閉鎖までの間の特定放射性廃棄物の管理の在り方を具体化する。また、最終処分の負担軽減等を図るため、長寿命核種の分離変換技術の研究開発について着実に推進する。
(引用終わり)
 
 「地層処分」の原則を維持しながら、「可逆性を担保する」というようなことが論理的に整合するのだろうか?というのが一番の疑問です。
 明後日の学習会で、小山英之先生に是非ご意見を伺いたいと思っています。
 
 原子力発電に真剣に向き合えば、究極的にはこの「核のごみ」をどうするのかという問題に行き着かざるを得ません。
 言い替えれば、この問題をスルーした議論は、それだけで「ペテン」だと考えて良いのだろうと思います。
 
 2月17日にあった2つの動きは、今後の「核のごみ」問題を考える上で極めて大きなエポックになるかもしれないという気がします。
 日本学術会議の「提言」が公表されるのは3月であり、国が最終処分法に基づく基本方針の改定案を(パブコメを経て)閣議決定するのもやはり3月下旬とされているにもかかわらず、既に多くの新聞が社説でこの問題を取り上げているのも、性急に原発再稼働を急ぐ国の姿勢に警鐘を鳴らしたいということも当然あるにせよ、「核のごみ」問題に大きな転機が訪れているという直感が働いているからでしょう。
 
 この稿を終えるにあたり、最後に伊方原発を地元に抱える愛媛新聞の社説を引用したいと思います。
 
愛媛新聞 2015年2月19日 社説
核のごみ処分 学術会議提言重く受け止めよ 2015年02月19日(木)

(抜粋引用開始)
 国内の科学者を代表する組織である日本学術会議が、原発再稼働の条件として、「核のごみ」の対策明確化を政府と電力会社に求める政策提言案をまとめた。2012年に政策の抜本見直しを提言したが進展はなく、あらためて改善を促す異例の対応である。
 政府は東京電力福島第1原発事故を受けてなお、原発から出る核のごみ問題に正面から向き合ってこなかった。いまも、ごみの行き場も処分方法も決めないまま、原発再稼働に向けた手続きを急いでいる。「将来世代に対して無責任」(学術会議)との指摘はもっともだ。政府はその事実を省み、提言を重く受け止めなければならない。
 提言案は、国民の合意ができるまで地上で原則50年暫定保管し、保管開始から30年をめどに処分地を決定することを政府に訴え、国民の議論の場設置を求めた。
 国民との対話や信頼を欠いたまま、政府が処分地の「科学的有望地」を指定し、いくら説得しても、反発が起きるだけで進展は期待できまい。政府は国民に核のごみに関する情報を積極的に示し、一刻も早く議論を高める努力をしなければならない。
 また、提言案は電力会社の責任も明確に打ち出した。各社が原発立地地域以外の場所に保管場所を確保するよう求めている。国の政策や科学技術の進歩頼みで、結果的に自らが出したごみをため込み続けている現実は重い。これ以上の放置は許されまい。
 その一方で、経済産業省は最終処分に関する政府の基本方針の7年ぶりの改定案を公表した。将来の政策変更や技術開発に応じて、いったん地下深く埋めていても回収できるようにするという。
 自治体が処分地を受け入れやすくしようとの狙いだが、そう簡単にはいくまい。放射性レベルが十分下がるのに数万年もかかる廃棄物を、安易に取り出せるとは思えない。政府はその場を繕うのでなく本腰を入れて明確な計画を練り、国民に示すべきだ。
 核のごみは、原発導入当初から解決しておかねばならなかった根本的問題だ。使用済み燃料を再処理して加工し、燃料として再利用する国策の核燃料サイクルは事実上破綻した。その結果、約1万7千トンの使用済み燃料が全国の原発などに積み上がっている。
 老朽化した原発廃炉を今後進めるに当たっても、放射性廃棄物は出る。膨らむばかりのごみから目をそむけたまま、拙速に再稼働を急ぐことは断じて容認できない。
 これ以上の問題先送りは後世に多大な禍根を残す。九州電力川内原発関西電力高浜原発の再稼働への手続きを進める前に、政府は抜本的な対策に取り組まなければならない。
(引用終わり)