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山城博治氏らは何を根拠に米軍に「身体拘束」され沖縄県警に「逮捕」されたのか?

 今晩(2015年2月24日)配信した「メルマガ金原No.2011」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
山城博治氏らは何を根拠に米軍に「身体拘束」され沖縄県警に「逮捕」されたのか?

 一昨日(2月22日)午前9時過ぎ、沖縄平和運動センターの山城博治議長ほか1名がキャンプ・シュワブゲート前で米軍警備員に基地内に行きずり込まれて「身体拘束」され、同日午後1時過ぎに米軍から沖縄県警(名護警察署)に2人の身柄が引き渡されたものの「逮捕」されてしまい、翌23日の午後8時前、那覇地方検察庁が勾留請求をしなかったため、名護署において「釈放」されるという一連の事件について考えてみ
ます。
 昨日書いた(というよりは地元沖縄から発信された報道等をコラージュした)ブログ
「沖縄で起こったこと、起こってはならなかったこと~地元からの報道で知る」において、私は次のように述べました。
 
「なお、今日のところは時間の余裕がなく、そもそも最初の米軍による2人の「身柄拘束」の法的根拠(そんなものがあったのか?も含め)についての検討が出来ていません。末尾に刑事特別法、日米地位協定の関連条文を引用するにとどめますが、早急に検討したいと思います。」
 
 今日はその宿題の最初のとっかかりにしかならないと思いますが、米軍による「身体拘束」と沖縄県警による「逮捕」について、その法的根拠を考えてみたいと思います。
 ただ、お断りしなければならないのは、私は弁護士とはいえ、刑事訴訟法、刑事特別法、日米地位協定等を特に勉強してきたという者では全然なく、単に条文を読みながら、「こういうことではないのだろう
か?」と考えたことを、思考の整理のために書いてみただけであるということです。
 この2日間の事実経過を裏付ける信頼するに足る資料を基にした、この問題を論ずるにふさわしい識者
の見解を私も是非伺いたいと思っています。
 なお、昨日と同じものですが、刑事特別法、日米地位協定等の関連条項を末尾に引用しておきます。
 
 さてまずは、22日から23日にかけて「何があったのか?」について、当事者の証言に耳を傾けてみましょう。
 昨晩、釈放されたばかりの山城博治さんが、メディアの囲み取材に応えて語ったインタビューの動画と要約(琉球新報)をご紹介します。
 
山城博治インタビュー2/23【全】atsushi_mic版
 
 
琉球新報 2015年2月24日
釈放された山城議長との一問一答
 
(引用開始)
 釈放された沖縄平和運動センターの山城博治議長と記者団との一問一答は次の通り。
―2人目も釈放されたが、知っている人か。初めてシュワブゲート前に来た人か。
「誰だろうと思った。初めて来て、初めて拘束されてびっくりした。警察署の中でもカーテンで仕切られ
て、ほとんど顔も会わせることができなかった。米軍の建物の中で一緒になって以来の再会だ」
不当逮捕と言った理由は。
「認識があれば、ある程度用意もできるが、機動隊とのせめぎ合いが厳しくなった時、これ以上関係が悪
化すれば不測の事態がないとも限らないので、いったん下がろうと言っているところを、後ろから羽交い締めにされて連れて行かれた。基地の侵入というなら分かるが、侵入していない。それをみんな見ているはずだ。黄色いラインから出ようというわけでもなくて、逮捕されて引きずられるのはほとんど理解でき
ない。全くの嫌がらせ逮捕だと思った」
―倒されてどうなったのか。
「いったんどこかに座った気がする。そのあと両脚を引っ張られて、フェンスまで引っ張られた」
―どれくらいの距離か。
「20~30メートルぐらいかな」
―手錠を掛けられた。
「『フェンス沿いに腰を下ろせ』と言われ、立ったまま手錠を掛けられた。脚を引っ張ったのは米軍の警
備員で、手錠を掛けたのは迷彩服を着た海兵隊員だった。海兵隊員に建物の中に連れて行かれた」
―警察と地検に何を聞かれたか。どれぐらいの内容を聞かれたか。
「軍の中に呼び出された時には逮捕状も示さない。逮捕状もないから、弁護士呼べとも言えない。向こう
(米軍施設内)で『これは一体何の拘束なんだ。不当拘束もいいかげんにしろ』『一体何時間たってるんだ』とずっと言っていた。逮捕とも言わないし、ただの嫌がらせかと思った。機動隊がちょっと拘束することと同じと思って、やがて帰されるだろうと思ってたら、身柄を警察に引き渡すと言われたとき、また外されていた手錠を掛けられて、車に乗せられた。(ゲート前で)赤嶺政賢議員が演説の最中だったから、2時前くらいだったと思うが、その時も逮捕状は示さない。刑特法の何条違反で、身柄を送致されたので、名護署に連れて行くという簡単なコメントがあった。その時も逮捕状はない。名護署にも地検にも、
逮捕状を示さないで逮捕はあり得ないと伝えた」
「ここ(名護署)で取り調べられたのは、身上調書、それから事件の調書。午前中と午後の早い時間の取り調べは一切黙秘をした。不当逮捕だから答えられないと言った。その後、弁護士接見があって住所氏名くらは言った方がいい、と言われたので住所氏名を言った。また、自分の言いたいことは言った方がいいという弁護士のアドバイスがあったので、私はみんなを下げるために中の方にいたのに、回り込んで皆さん下がろうと言ったまでだ。その際に後ろから襲い掛かってきた軍の警備員との押し合いの際に脚を引っ張られて、引きずられるように基地の中に連れて行かれた。これが真実だと言った。それ以上のことは分
からないと警察には伝えた。地検の方でも同じことを伝えた」
「特に地検が問題にしたのは、軍側が刑特法違反だと伝えたので、私たちがどこに立っていたのか、黄色いラインだったのか、それが内側だったのか、それを盛んに強調していた。私が伝えたのは、機動隊と最初、仲間が押された時に激しく抗議した、その際確かに抗議の際に、1歩ほど、半歩ほど中に入ったのは事実だと伝えた。しかし2回目は道路側の内側には立っていない。直接の容疑になった際には中には入っていないと伝えた。警察に確認をして一応の取り調べを終えたところだ。とにかくラインの内側だったか外側だったかを気にしていた感じだ。運動としてラインのことは気を付けますかと聞かれたので、ライン
のことは気を付けますと答えた」
―県民集会の日に拘束されたことについて。
「嫌がらせだと思う。軍の海兵隊や軍警が出たのは初めて。きょうは県民大会だから警備がやたら厳しい
としか思わなかった。もしも県民が怒って基地の中に乱入するのを止めるためにいるんだろうな、としか思えない。まさか引っ張るとは夢にも思わなかった。結果としては、憤る県民の怒りに恐れをなして、もう先制攻撃で、黙らせるようにという行動だったと思うけれど、それはそういかない。ますます怒りに火を付ける。何にもしてないのに襲い掛かるなんて、あり得ない。軍側がやっぱりよっぽど恐れているとし
か思えない。そういう思いがあらためて強くなった」
―引きずられた時にけがは。
「頭だけ気を付けた。ガリガリ引っ張られるので、頭だけ押さえていた」
―手錠をされた場所はどこか。
「基地に向かって左側のフェンス。連れて行かれました」
―プラスチックの手錠か。
「金属製の手錠だ」
―地検が勾留請求をしない理由について、何か言っていたか。
「勾留する必要がないからだ。書面に勾留する理由がない 釈放と書かれていた。私と彼は一緒にいたん
ですよ。拘束された後もずっと私が、何をするにも先に行動していた。彼も別々に連れて行かれた。別で
の聴取もあったようだ。彼の取り調べが終わるまで、ずっと部屋にいた。大変なことがあったと思う」
―あらためて今後の運動の展開の仕方は。
「米軍がしゃかりきになってることがよく分かった。つまり私たちの抗議が効いているということだ。第
3ゲートでのフェンスの囲い込みから始まり、米兵らが出てくるのは今までにない。よっぽど警戒しないと、いつテントに襲いかかるか分からない。昨日捕まった時に、もしかしたら私がいないうちに襲い掛かるのではと気掛かりだった。運動はさらに警戒が必要だ。用意周到に、彼らに付け込まれない運動が必要
だと思う。合法的にかつラジカルにしっかり声を上げて運動していきたい」
(引用終わり) 
 
 まず、米軍に雇用された警備員による最初の「身体拘束」ですが、これは一体何だったのでしょうね?後に沖縄県警(名護署)による「逮捕」の根拠となったのは、おそらく刑事特別法2条の「正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条第一項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する。但し刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、同法による。」という罰則規定であったようです。
 そもそも、現場にいた地元紙記者(沖縄タイムス)が目撃した状況に基づいて書いた記事や撮影した写真などから考えて、山城さんにキャンプシュワブの「施設又は区域」に入ろうという故意に基づく行為があったとは到底考えられず、いかなる意味からも不当な「身体拘束」であることは明らかですが、仮にその点をおくとして、一体何を根拠に米軍警備員は山城さんらを基地内に引きずり込んで「身体拘束」をしたのでしょうか?
 
 一つの考え方は、刑事訴訟法に基づく私人による現行犯逮捕であったというものです。今日の琉球新報社説はこの説に立っているようです。
 
琉球新報 2015年2月24日 社説
市民の逮捕送検 米軍の弾圧は許されない2015年2月24日

(抜粋引用開始)
 この行為に在沖米海兵隊報道部は「米海兵隊施設に侵入したとして日本人警備員が『逮捕』した」と説明している。警備員の逮捕は私人逮捕だ。現行犯逮捕なら司法警察職員に限らず誰でも行えることが刑事
訴訟法に定められている。
 現場には当時、約30人の警察官もいた。私人逮捕の場合、現場に警察官が到着するまで身柄を確保す
ることはあるが、現場にはすでに大勢の警察官がいた。すぐに身柄を引き渡せばいいはずだ。
 しかし警備員は警察官のいる方向とは逆の基地内に山城議長らを引きずり込んだ。後ろ手に手錠を掛け、基地内の建物に入れてから手錠を解いたようだが、その後約4時間も拘束を続けている。刑事特別法を
逸脱した人権弾圧だ。
(引用終わり)
 
 刑事訴訟法の該当条文は以下のとおりです。
 
刑事訴訟法(昭和二十三年七月十日法律第百三十一号)
第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行
犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第二百十四条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
 
 琉球新報社説が「私人逮捕の場合、現場に警察官が到着するまで身柄を確保することはあるが、現場にはすでに大勢の警察官がいた。すぐに身柄を引き渡せばいいはずだ。」と書いたのは、刑事訴訟法214条を踏まえたものです。
 「直ちに」「司法警察職員(まあ、警察官のことだと思えばいいでしょう)に引き渡さなければならな」ですからね。ゲート前には多くの警察官がいたのですから、「直ちに」引き渡すことははなはだ容易
でした。
 それに第一、現場には米軍警備員も日本の警察官もいたのですから、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」であるか否かを、多くの警察官をさしおいて私人(検察官、検察事務官及び司法警察職員外の者
)が勝手に判断して逮捕することなど許されるのか?という疑問があります。
 しかも、警備員らは山城さんらを引きずって基地内に「拉致」して「身体確保」したのですからね。これを刑事訴訟法213条の「現行犯人逮捕」とするのは、いくら何でも無理筋過ぎないか、というのが私の意見です。
 
 それでは一体何なんだ?ということですが、日米地位協定17条10(a)に「合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき使用する施設及び区域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」という規定があり、しかもこの条項に関連する「日米地位協定合意議事録」には、「合衆国の軍当局は、施設又は区域の近傍において、当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。これらの者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものは、すべて、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。」とされていますので、これかな?という気もします。

 ただし、「合意議事録」にある「近傍」条項を使った「逮捕」だと主張するのも無理がありそうです。なぜなら、「施設又は区域」に立ち入っていないにもかかわらず、「当該施設又は当該区域の安全に対する罪」の現行犯人として逮捕するとしたら、一体その「」とは何かが問題になります。刑事特別法2条は「入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない」ことが構成要件なのです
から、「近傍」にいるだけでは該当しません。
 それに、刑事訴訟法に基づく私人としての現行犯人逮捕の場合と同様、「直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない」も守られておらず、米軍がこれを持ち出す訳にはいかないでしょう。
 
 それでは、地位協定17条10(a)に基づき、「合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」という包括的な警察権に基づく行為なのでしょうか?
 今のところ、私はこれを一番疑っています。
 琉球新報社説が「この行為に在沖米海兵隊報道部は「米海兵隊施設に侵入したとして日本人警備員が『逮捕』した」と説明している。
」としていることとも矛盾はしないように思います。
 基地内に引きずり込まれても、それは「すべての適当な措置」の一部だと米軍が主張したらどうしようもないのかもしれません。それが、一部で日本国憲法に優越すると言われることもある日米地位協定の恐ろしいところなのでしょう。
 
 ところで、22日に米軍は2人の身柄を沖縄県警に引き渡し、県警は2人を「逮捕」していますが、その根拠は、刑事特別法12条に求めるべきでしょう。
 そうである以上、「合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知」が沖縄県警にあったとしか考えられず、そうすると、「日本国の法令による罪を犯した」として米軍は2人を「身体
拘束」していたということになります。
 ただし、刑事訴訟法に基づく「私人逮捕」ではないので、「直ちに」日本の「検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない」義務はなかったということなのでしょうか?
 
 結局のところ、米軍による「身体拘束」の実体法上、手続法上の根拠は、私の能力ではよく分かりませんと言うしかないのですが、その約4時間後、米軍から2人の引き渡しを受けた沖縄県警(名護警察署)が「逮捕」したことには、当然、日本の法律による根拠があるはずです。
 もちろんこの場合にも、根拠は2つの側面から必要です。
 1つは、どんな「罪」を犯したのか?という実体法上の根拠であり、もう1つは、どのようにして「逮捕」したのかという手続法上の根拠です。
 
 この点について、IWJが三宅俊司弁護士へのインタビューなどに基づいて報じた以下の記事などが参考になります。
 
 
 
 
 いずれにせよ、実体法としては、刑事特別法2条の規定が適用されたのは間違いないようです(というか、事実上それ以外に考えようがない)。

 問題は、「逮捕」の手続が適正であったのか?ということです。
 先ほど述べたように、2人の身柄を沖縄県警が米軍から引き渡された根拠は、刑事特別法12条でしょうから、通常逮捕の要件を満たしていれば12条1項、緊急逮捕の要件を満たしていれば12条2項が適用されることになるのですが、そもそも「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(通常逮捕の場合)も「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」(緊急逮捕の場合)もないと判断した場合には、12条3項の規定に基づ
き、直ちに釈放しなければなりません。
 沖縄県警は、逮捕時、山城さんに逮捕状を示していないのですから、通常逮捕であるはずがありません
刑事訴訟法201条1項)。
 それでは「緊急逮捕」なのでしょうか。刑事訴訟法に基づく緊急逮捕は、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」でなければ適用されないのですが(刑事訴訟法210条)、刑事特別法12条2項は、この規定の特則をなすため、刑事特別法2条違反(一年以下の懲役又は二千円以
下の罰金若しくは科料)であっても、緊急逮捕自体は可能です。
 問題は、「直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」(刑事特別法12条2項後文)という手続を経て逮捕状が発布されながら、それを被疑者に示さないというようなことが許されるのか?ということで
す。
 この点については、刑事訴訟法
に詳しい研究者・実務家の意見に待ちたいと思います。
 
 以上、あれこれ考えてはみたものの、全然すっきりと腑に落ちるという訳にはいきませんでした。
 しかし、米軍による「身体拘束」、沖縄県警による「逮捕」のいずれについても、様々な問題をはらんでいるらしいということ位はご理解いただけたでしょうか。
 
(定義)
第一条 この法律において「協定」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定をいう。
2 この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう。
3 この法律において「合衆国軍隊の構成員」、「軍属」又は「家族」とは、協定第一条に規定する合衆
国軍隊の構成員、軍属又は家族をいう。
(施設又は区域を侵す罪)
第二条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条第一項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する。但し刑法 (明治四十年法律第四十五
号)に正条がある場合には、同法による。
(合衆国軍隊によつて逮捕された者の受領)
第十二条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法
警察職員にその引渡を受けさせなければならない。
2 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させ
なければならない。
3 前二項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を
釈放し、又は釈放させなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による引渡があつた場合には、刑事訴訟法第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。但し、同法第二百三条 、第二百四条及び第二百五条第二項に
規定する時間は、引渡があつた時から起算する。
(刑事補償)
第二十条 刑事補償法 (昭和二十五年法律第一号)又は少年の保護事件に係る補償に関する法律 (平成四年法律第八十四号)の適用については、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留若しくは拘禁又は少年の保護事件に係る補償に関する法律第二条第一項第二号に掲げる身体の自由の拘束とみなす。
 
第十七条
10(a) 合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき使用する施設及び区
域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩
序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。
(b) 前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。
 
1 合衆国の軍当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設及び区域内ですべての逮捕を行なうものとする。このことは、合衆国軍隊の権限のある当局が同意する場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合において日本国の当局が前記の施設又は区域内において逮捕を行なうことを妨げるものではない。
 日本国の当局が逮捕することを希望する者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものが、合衆国軍隊により使用されている施設又は区域内にある場合には、合衆国の軍当局は、日本国の当局の要請によりその者を逮捕することを約束する。合衆国の軍当局により逮捕された者で合衆国軍隊の裁判権に服さないすべての
ものは、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。
 合衆国の軍当局は、施設又は区域の近傍において、当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。これらの者で合衆国軍隊の裁判
権に服さないものは、すべて、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。
2 日本国の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない。ただし、合衆国軍隊の権限のある当局が、日本国の
当局によるこれらの捜索、差押え又は検証に同意した場合は、この限りでない。
 合衆国軍隊が使用している施設若しくは区域内にある者若しくは財産又は日本国にある合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なうことを日本国の当局が希望するときは、合衆国の軍当局は、要請により、その捜索、差押え又は検証を行なうことを約束する。これらの財産で合衆国政府又はその附属機関が所有し又は利用する財産以外のものについて、裁判が行なわれたときは、合衆国は、それらの財産を裁判に従つて処理するため日本国の当局に引き渡すものとする。