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翁長雄志沖縄県知事から沖縄防衛局に対する「指示」~3/23臨時記者会見を見て考えた

 今晩(2015年3月23日)配信した「メルマガ金原No.2038」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
翁長雄志沖縄県知事から沖縄防衛局に対する「指示」~3/23臨時記者会見を見て考えた

 取り急ぎ、今日(3月3日)、翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事が臨時記者会見を開いて発表した内容について、琉球新報による会見動画と号外をご紹介します。
 なお、記者会見の詳細については、少なくとも明日の地元紙には掲載されるはずと思いますが、この稿を書いている時点では電子版に掲載されていないようなので、会見での、翁長知事による冒頭発言の部分のみ文字起こししておきます。
 
琉球新報撮影 20150323翁長知事 臨時記者会見

(翁長知事冒頭発言)
「ハイサイ(聴取不能) 臨時記者会見をご案内しましたところ、ご参加をいただきましてありがとうございます。今日は、辺野古制限区域内での調査・指示に関することについてですね、ご報告をしたいと思います。
 本日3月23日、沖縄防衛局に対し、辺野古の臨時制限区域内において、知事の許可を得ずに岩礁破砕がなされた蓋然性が高いと思料されることから、県が必要とする調査を実施することとし、県の調査終了後、あらためて指示するまでの間、当該許可区域内を含め、当該工事にかかる海底面の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示をしました。
 在日合衆国軍隊の運用上の理由により、県の立ち入り申請を受け入れることができないということについては、臨時制限区域内に民間工事船や海上保安庁の船艇が多数出入りしている。また、沖縄防衛局は、自ら潜水調査を実施していることから、県の調査船の立ち入りが運用上の問題があるとは理由にならず、特に、平成26年6月20日に、負担麻痺向上代替施設の建設にかかる立ち入り制限が課される前までは、自由に航行できた水域について、県の公務遂行の調査さえできないということは不合理きわまりない。
 県としては、漁業調整規則違反の懸念が払拭できない状態であることから、今回の指示を発することとまりました。沖縄防衛局には、この指示を真摯にとらえ、円滑な調査が行われるよう、知事から許可を受けた者として、また、臨時制限区域の共同使用を行う者として、責任ある対応を求めるということでございます」
 
琉球新報 電子号外 2015年3月23日
辺野古作業停止を指示 翁長知事 30日までの実行要求

(引用開始)
 翁長雄志知事は23日午後、県庁で記者会見し、米軍普天間飛行場名護市辺野古への移設計画で、沖縄防衛局が海底に設置したコンクリートブロックがサンゴ礁を傷つけている問題を受け、防衛局に対し、ボーリング調査などの海上作業を30日までに停止するよう指示したと発表した。23日付で防衛局に文書を提出し、作業停止について報告するよう求めた。指示に従わない場合は、辺野古埋め立てに関する岩礁破砕許可を取り消すことがあるとしている。移設阻止を掲げている翁長知事が政府の作業停止に向けた権限を行使した形となる。
 翁長知事は県が岩礁破砕を許可した区域外でサンゴ損傷があった可能性が高いとして「県の調査が終了し、あらためて指示するまでの間、当該工事に係る海底面の現状を変更する行為の全てを停止すること」と求めた。
 さらに現場海域の潜水調査のため米軍に臨時制限区域内への立ち入りを求めていることを挙げ、政府側に米軍との再調整を重ねて要求。立ち入り調査が実現していないことに関し「調査さえできないことは不合理極まりない」と批判した。
 県は前知事時代の昨年8月、防衛局からの岩礁破砕申請を許可したが、ことし2月に許可区域外で大型ブロックによるサンゴ礁の損傷が発覚していた。
 県によると、岩礁破砕許可が取り消されれば、防衛局は海底ボーリング調査などができなくなる。だが政府はこれに従わず、作業を継続する構えを見せている。菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で「粛々と作業を進めていく」と強調した。
(引用終わり)
 
 沖縄県による法的検討の結果を踏まえた本格的な知事の権限行使の第1弾が、今日行われた「指示」であり、国の対応を想定した第2、第3の手立ても当然考えているでしょう。
 実際、法廷闘争も視野に入れた法的検討は、知事が信頼を置く県庁内のスタッフや外部の法律家グループなどが知恵を絞っていることでしょうが、それでは翁長知事自身は何をしているのでしょう?
 もちろん、スタッフ、ブレーンからの進言を基に「決断」するのが知事の最大の責務であることは言うまでもありませんが、これまで、那覇市議、沖縄県議、那覇市長として積み重ねてきた経歴からも分かるとおり、翁長知事は根っからの「政治家」だろうと思います。
 上京のたびに首相や官房長官に面会を求めては拒絶される翁長知事の姿を見て、皆さんはどう思われたでしょうか?私は、「面会を求めて拒否されること自体、知事にとっては、れっきとした政治的布石だろう」と考えていました(今でもそう思っています)。
 大浦湾に巨大ブロックが投下され、貴重な自然環境が破壊されていく様を目の当たりにして、県民の怒りが煮えたぎることもまた、知事にとっては重要な政治的資源となります。
 もちろん、このような政治的布石や政治的資源を活用し、県民の支持を背景として国と対決するのか、それともポーズだけでうやむやになってしまうのかによって、翁長雄志という人物の政治家としての後世の評価が決定することは言うまでもありません。
 翁長知事自身、そのようなことは百も承知で知事選に出馬したのだと思います。
 
 それにしても、事態がこのまま推移すれば、沖縄の地で、中央政府と地方政府が決定的に対立するという事態が出現しかねません。大田昌秀氏が知事の時代にも代理署名拒否問題等で国と対立したとはいえ、今ほどひどい状況ではなかったでしょう。
 また、今月中には、福井地裁が高浜原発3号機、4号機の運転差止を命じる仮処分決定を行う可能性がありますが、もしそうなれば、これも日本で原子力発電所が稼働を始めて以来、「史上初」のことになります。
 
 それもこれも、ここまで「畏れ(おそれ)」を知らない政権(その象徴が安倍晋三首相と菅義偉官房長官)が「史上初」の存在だからでしょう。
 沖縄が長く本土の犠牲になってきたとはいえ、あるいはそうであるからこそ、歴代自民党政権も、沖縄で強権をふるうことに対するある種の「ためらい」というものがあったのだろうと思いますが、安倍-菅ラインにそんなものはありません。彼らはもはや「保守主義者」ではないのですから。
 
 私たち日本国民は、安倍政権、あるいはその亜流政権の存続を許す限り、今まで見たこともない状況の目撃者になる可能性が高いと言わざるを得ません。
 それは、C130輸送機に乗せられて帰国する戦死した自衛隊員の棺かもしれません。東京の真ん中で、あるいは新幹線で爆弾が炸裂するテロ攻撃かもしれません。
 他方、そのような光景を見る前に、自分に課せられた職責を果たそうとする人々も出現するでしょう。樋口英明裁判長や翁長雄志知事に私たちが期待するのはそのためであり、その姿勢が揺るがぬよう、しっかりと支持の声を挙げ続けなければならないと思います。