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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

木村草太氏の那覇市での講演動画の視聴をお勧めします(3/31)

 今晩(2015年4月1日)配信した「メルマガ金原No.2047」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
木村草太氏の那覇市での講演動画の視聴をお勧めします(3/31)

 「気鋭の」という形容詞がこれほど似合う憲法学者は他にいないかもしれない(?)首都大学東京准教授の木村草太(きむら・そうた)氏が、今年の2月から沖縄タイムスに「憲法の新手」という連載(月2回)を始められました。
 「新手」は「あらて」ではなく「しんて」と読む将棋用語だそうです。
 そういえば、木村さんのブログ「木村草太の力戦憲法」には、将棋の駒がそこら中にちりばめられています。
 これまでの4回分は全て沖縄タイムス+で読むことができます。
 
 
 その木村准教授が、昨晩(3月31日)、沖縄タイムスの招きにより、那覇市にある同紙本社ビル(タイムスビル)内のタイムスホールで「憲法と沖縄~戦後70年の内実を問う」と題した講演をされました。
 しかし、沖縄タイムス+(プラス)に掲載された告知記事の中の写真を見ると、本社ビルもホールも実に立派なものですね。
 
 その講演の模様はインターネットでライブ配信され、講演終了後はYouTubeにアップされて誰でも視聴することができます。

沖縄タイムス公式動画チャンネル
木村草太氏講演会「憲法と沖縄~戦後70年の内実を問う」(29分30秒から)
 


 講演は、大ざっぱに言うと、前半が「辺野古新基地建設問題と住民同意(憲法95条)」について、後半(1時間14分~)が「安保法制」について語られました。
 前半の話の要点は、どこに米軍基地を建設するか、現在の法制の下では政府が自由に決められることになっているが、本来、それは法律事項(国会で制定する法律で定めなければならない事項)であり、辺野古新基地建設のための法律を制定しようとすれば、憲法95条により、少なくとも名護市民に賛否を問い、その同意を得ることが憲法上必須の要件となると解釈すべきであるというものです。
 
(土地等の使用又は収用)
第三条 駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。
 
日本国憲法
第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
 
 この点については、「憲法の新手」連載第1回「なぜ、住民投票もなしに、新基地建設が進むのか?」に詳しく論じられていますので、そちらをご参照ください。
 なお、憲法学界における議論状況には疎いので、この説がどの程度支持者のある説なのか分かりませんが(少なくとも通説ではないでしょう)、今後、沖縄県と国との間で繰り広げられることになる公算の高い行政手続をめぐる訴訟において、沖縄県の主張を基底から支える有力な憲法理念として機能し得るのではないかと思いました。
 
 なお、後半の安保法制についてですが、まず解説がなされた集団的自衛権についてのパート(1時間18分~)の動画に乱れがあり(私のパソコンだけに現れた症状なのかどうか不明ですが)、木村さんのお話がほとんど聞き取れませんでした。
 そこで、このパートについては、以下のインタビュー記事で代用したいと思います。
 
 
 この部分は、昨年7月の閣議決定直後から木村さんが主張されていることで、私も2回にわたってメルマガ(ブログ)で取り上げていますが(末尾参照)、この沖縄タイムスによるインタビューでは次のように述べられています。
 
(抜粋引用開始)
 「安倍政権は、武力行使の条件を拡大しようという意図があるようですが、昨年7月の閣議決定の文言上は、日本の防衛以外に軍事活動はしないという現行憲法の枠組みを超えていません。個別的自衛権集団的自衛権には重なり合っている部分があります。閣議決定は、個別的自衛権の行使として説明、対処できる範囲に限り、それが集団的自衛権と重なる場合に、自衛の措置を行使してもよいと確認したにすぎません。文言を法的に丁寧に読めば、そんな内容になっています」
(略)
 「閣議決定の正しい理解としては、個別的自衛権の範囲の一部を、集団的自衛権と呼びたいのであれば、それは問題ないとしているだけです。一方、個別的自衛権の範囲を超えた部分について、何か新しい権利が獲得されたと考えるのは無理があります。集団的自衛権の行使には、非常に大きな制限がかけられていると理解していいと考えます」
 -そもそも、なぜ現行憲法集団的自衛権は行使できないのでしょうか。
「行使できるという議論は、ネッシーを探すくらい難しく、無理があると思います。まず、集団的自衛権を行使する権利を認めた憲法の条文を探さないといけませんが、どこにも書いていません。政府、内閣の権限については憲法73条に列挙されています。73条には一般行政事務のほかに、外交や条約締結などの権限は明示されていますが、他国の主権を制圧する軍事活動の規定はありません」
 「個別的自衛権の行使は、警察行政の延長として国内行政の一環としてぎりぎり理解できます。ですが、日本以外の外国のために国外でする軍事活動は、一般行政にも、相手国の主権を尊重する活動である外交の権限にも含まれません。憲法に軍事権の規定がないわけですから、行使の根拠を探すのはネス湖ネッシーを探すほど難しいのです」
(略)
 -閣議決定で国民には行使が可能になったとの印象があります。
 「閣議決定で、個別的自衛権の範囲を超えたものにも行使が可能になったとの空気が広がっています。繰り返しになりますが、個別的自衛権で対処可能な範囲内にあって、集団的自衛権と重なる部分に限定して、そう言い直しただけで、憲法をいくらでも拡大解釈していいことにはなっていません。集団的自衛権が認められる範囲について異なる見解を持つ自民と公明が、それぞれの意地を通して合意したため、国民には閣議決定の意味が分からなくなり、議論ができなくなってしまいました。一番の犠牲になったのは、国民の議論です」
(引用終わり)
 
 集団的自衛権行使が憲法上認められない根拠として(9条の他に)73条を挙げる説は近時有力になりつつあると言って良いと思いますので、是非注目してください。
 
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること
 
 ただし、「閣議決定は、個別的自衛権の行使として説明、対処できる範囲に限り、それが集団的自衛権と重なる場合に、自衛の措置を行使してもよいと確認したにすぎません」という木村説については、私自身、全面的には賛同しかねるということは、末尾でご紹介しているブログに書いたとおりです。
 
 なお、安保法制の後半部分(1時間31分~)で語られた「後方支援、治安措置の援助に関わる手続・責任・財源の三点セット」は、私自身、集団的自衛権行使容認問題に気を取られ、検討が手薄であったことが否めない分野であるだけに、思考のための枠組みを提示する木村准教授の解説は非常に参考になりました。
 
 ところで、これも私のパソコンだけのことかもしれませんが、質疑応答の音声がほとんど聞き取れないのも残念です。
 しかし、クリアに視聴できる部分だけでも、是非ご覧になっていただきたいと思います。
 新たな発見が得られると思いますよ。

 
(弁護士・金原徹雄のブログから)