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日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言―国民的合意形成に向けた暫定保管」をこれから読む

 今晩(2015年5月7日)配信した「メルマガ金原No.2083」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言―国民的合意形成に向けた暫定保管」をこれから読む

 2月に書いたメルマガ(ブログ)(「核のごみ」をめぐる注目すべき動き~国の「基本方針」改訂と日本学術会議の「提言」)でも触れたとおり、3月にも公表されるのではと言われていた、高レベル放射性廃棄物の処分に関する日本学術会議の政策提言が、ようやく去る4月28日に日本学術会議ホームページに掲載されていたことに気がつきました。
 まだその詳細を読むだけの時間は持てていませんが、とりあえず、その「要旨」と「目次」をご紹介しておきます。
 「提言」を鵜呑みにする必要がないのはもちろんですが、日本人のみならず、人類全体にとって避けては通れない難問について、自ら考えるための有力な素材を提供してもっらたというのが、要旨を読んだ段階でのとりあえずの私の受け止め方です。
 皆さんも、「自分ならこう考える」という批判的視点を持ちながら、じっくりこの「提言」を読み進んでいただければと思います。
 
 
 この提言は、日本学術会議高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会の審議結果を取りまとめ公表するものである。
 
日本学術会議高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会
委員長 今田 髙俊 (連携会員) 東京工業大学名誉教授、統計数理研究所客員教授
副委員長 山地 憲治 (連携会員) 公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長
幹事 柴田 德思 (連携会員) 公益社団法人日本アイソトープ協会専務理事
幹事 長谷川 公一 (特任連携会員) 東北大学大学院文学研究科教授
町村 敬志 (第一部会員) 一橋大学大学院社会学研究科教授
岸本 健雄 (第二部会員) お茶の水女子大学客員教授東京工業大学名誉教授
相原 博昭 (第三部会員) 東京大学副学長・大学院理学系研究科教授
小澤 隆一 (連携会員) 東京慈恵会医科大学教授
小野 耕二 (連携会員) 名古屋大学大学院法学研究科教授
斎藤 成也 (連携会員) 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門
教授
千木良 雅弘 (特任連携会員) 京都大学防災研究所教授
担当職員 省略
 
要 旨
1 作成の背景

 日本学術会議は、2010年9月7日、原子力委員会委員長から「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」という審議依頼を受け、課題別委員会「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」を設置した。委員会では、原点に立ち返った
審議を行い、2012年9月11日に原子力委員会委員長に回答を行った。
 回答で提示した提言を政府等が政策等に反映しやすくするために、より一層の具体化を図ることが重要であるとの認識から、2013年5月に「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」を設置し、回答のより具体的な方策について技術と社会という総合的視点から検討を重ね
た結果、以下の12の提言を取りまとめた。
2 提言の内容
(1) 暫定保管の方法と期間
提言1
暫定保管の方法については、ガラス固化体の場合も使用済燃料の場合も、安全性・経済性の両面か
ら考えて、乾式(空冷)で、密封・遮蔽機能を持つキャスク(容器)あるいはボールト(ピット)貯蔵技
術による地上保管が望ましい。
提言2 暫定保管の期間は原則50年とし、最初の30年までを目途に最終処分のための合意形成と適地選定、さらに立地候補地選定を行い、その後20年以内を目途に処分場の建設を行う。なお、天変地異など不測の事態が生じた場合は延長もあり得る。
(2) 事業者の発生責任と地域間負担の公平性
提言3 高レベル放射性廃棄物の保管と処分については、発電に伴いそれを発生させた事業者の発生責任が問われるべきである。また、国民は、本意か不本意かにかかわらず原子力発電の受益者となっていたことを自覚し、暫定保管施設や最終処分場の選定と建設に関する公論形成への積極的な参加が求められる。
提言4 暫定保管施設は原子力発電所を保有する電力会社の配電圏域内の少なくとも1か所に、電力会社の自己責任において立地選定及び建設を行うことが望ましい。また、負担の公平性の観点から、この施設は
原子力発電所立地点以外での建設が望ましい。
提言5 暫定保管や最終処分の立地候補地の選定及び施設の建設と管理に当たっては、立地候補地域及びそ
れが含まれる圏域(集落、市区町村や都道府県など多様な近隣自治体)の意向を十分に反映すべきである
(3) 将来世代への責任ある行動
提言6
原子力発電による高レベル放射性廃棄物の産出という不可逆的な行為を選択した現世代の将来世代
に対する世代責任を真摯に反省し、暫定保管についての安全性の確保は言うまでもなく、その期間につい
て不必要に引き延ばすことは避けるべきである。
提言7 原子力発電所の再稼働問題に対する判断は、安全性の確保と地元の了解だけでなく、新たに発生する高レベル放射性廃棄物の保管容量の確保及び暫定保管に関する計画の作成を条件とすべきである。暫定
保管に関する計画をあいまいにしたままの再稼働は、将来世代に対する無責任を意味する。
(4) 最終処分へ向けた立地候補地とリスク評価
提言8
最終処分のための適地について、現状の地質学的知見を詳細に吟味して全国くまなくリスト化すべ
きである。その上で、立地候補地を選定するには、国からの申し入れを前提とした方法だけではなく、該当する地域が位置している自治体の自発的な受入れを尊重すべきである。この適地のリスト化は、「科学
技術的問題検討専門調査委員会(仮称)」が担う。
提言9 暫定保管期間中になすべき重要課題は、地層処分のリスク評価とリスク低減策を検討することである。地層処分の安全性に関して、原子力発電に対して異なる見解を持つ多様な専門家によって、十分な議論がなされることが必要である。これらの課題の取りまとめも「科学技術的問題検討専門調査委員会」が
担う。
(5) 合意形成に向けた組織体制
提言10
高レベル放射性廃棄物問題を社会的合意の下に解決するために、国民の意見を反映した政策形成を
担う「高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会(仮称)」を設置すべきである。この委員会は、「核のごみ問題国民会議(仮称)」及び「科学技術的問題検討専門調査委員会」を統括する。本委員会は様々な立場の利害関係者に開かれた形で委員を選出する必要があるが、その中核メンバーは原子力事業の推進に
利害関係を持たない者とする。
提言11 福島第一原子力発電所の激甚な事故とその後の処理過程において、国民は科学者集団、電力会社及び政府に対する不信感を募らせ、原子力発電関係者に対する国民の信頼は大きく損なわれた。高レベル放射性廃棄物処分問題ではこの信頼の回復が特に重要である。損なわれた信頼関係を回復するために、市民
参加に重きを置いた「核のごみ問題国民会議」を設置すべきである。
提言12 暫定保管及び地層処分の施設と管理の安全性に関する科学技術的問題の調査研究を徹底して行う諮問機関として「科学技術的問題検討専門調査委員会」を設置すべきである。この委員会の設置に当たっては、自律性・第三者性・公正中立性を確保し社会的信頼を得られるよう、専門家の利害関係状況の確認、公募推薦制、公的支援の原則を採用する。
 
 高レベル放射性廃棄物の処分については、多くの国で処分地の選定と国民の合意形成が進められている。日本でも早急な対応が望まれる。
 
目 次
1 はじめに
(1) 本提言作成の背景
(2) 原子力委員会・政府の対応と本委員会の検討
2 提言取りまとめのための指針
3 暫定保管とは何か-中間貯蔵及び地層処分との違い
4 暫定保管と処分に関する政策提言
(1) 暫定保管の方法と期間
(2) 事業者の発生責任と地域間負担の公平性
(3) 将来世代への責任ある行動
(4) 最終処分へ向けた立地候補地とリスク評価
(5) 合意形成に向けた組織体制
5 おわりに
<参考文献>
<参考資料1>高レベル放射性廃棄物の処分をめぐる海外の動向
<参考資料2>審議経過
 
 なお、この日本学術会議の「提言」と並行するように、経済産業省総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループにおいて、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」第3条に基づく「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」の改定作業が進められており、パブコメ原子力委員会、原子力規制委員会からの意見聴取も終えたという段階まで来ています。政府の動向についても注意を怠らないようにしなければなりません。
 なお、最新の同ワーキンググループ第19回会合(4月17日開催)の配付資料及び動画が公開されています。
 
 
 
 
動画・放射性廃棄物WG(第19回会合)②

(弁護士・金原徹雄のブログから)