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仁坂吉伸和歌山県知事の原発に関する見識・再説(4月30日の定例会見から)

 今晩(2015年5月8日)配信した「メルマガ金原No.2084」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
仁坂吉伸和歌山県知事の原発に関する見識・再説(4月30日の定例会見から)

 4月20日の定例会見において、和歌山県仁坂吉伸知事が、福井地裁が昨年5月21日に大飯原発3、4号機の運転差止を命じた「判決」及び同地裁が今年4月14日に高浜原発3、4号機の運転差止を命じため仮処分「決定」を批判し、原発事故によるリスクと交通事故によるリスクを同列に論じ、「あの人が裁判長の時に、ちょっと誰か、自動車の差止請求したら、本当にされちゃうんじゃないですかね。という風に思います。」などと発言したことに対し、県内の
 脱原発わかやま
 子どもたちの未来と被ばくを考える会
 憲法を生かす会・和歌山
が4月22日に抗議文を提出したことは、このメルマガ(ブログ)で随時お知らせしてきました。
 
 
 
 
 なお、4月20日の定例会見の模様がようやく県のホームページにも文字化されて掲載されています。
 ただし、「なお、この文章は、読みやすいよう発言の趣旨を損なわない程度に整理しています。ので、より忠実な文字起こしを読みたい人は、私の4月22日のブログをご参照ください。 
 
 さて、3団体が抗議を申し入れに行った際には海外出張中であった仁坂知事の帰国後最初の定例会見が4月30日(木)に行われました。
 まだ文字起こしは県のホームページに掲載されていませんが、中継動画は視聴できます。
 
知事記者会見(動画)
4月30日 (再生時間:19分)
在外和歌山県人会周年式典参加(メキシコ・米国・カナダ)(概要と評価)
インド・マハラシュトラ州ファドナウィス首相の来県について
ネパール地震に係る本県の対応について
「本格梅酒」の機能性成分量の分析結果について~飲むなら和歌山県産「本格梅酒」~

 
 右側の「700 kbps」というところをクリックすれば、ウインドウズ・メディア・プレーヤーが立ち上がって会見動画が再生されます。
 注目の「原発の仮処分についての全国の反応について」は、質疑応答に入った10分~16分の部分です。
 既に1週間以上前の会見ですが、3回にわたってメルマガ(ブログ)で取り上げた責任上(?)、3団体による抗議申し入れや全国からの反応についての仁坂知事の見解を取り上げない訳にはいかないと思いますので、以下に、該当箇所を文字起こします。

(2015年4月30日・仁坂知事記者会見の10分~16分の部分を文字起こし)
司会者 それではご質問をお受け致します。
 
毎日新聞記者 毎日新聞の〇〇です。発表資料については、あとでいくつか質問するんですが、前回の会見の時の原発の仮処分についてですね、発言が結構波紋を呼んでいるようだったんですが、この全国での反応についてどのように思いますか?
 
仁坂吉伸知事 全国の反応があったかな?全国の反応は知りませんね。和歌山で抗議に来られた方が3団体あるという新聞記事を読みました。それについてでしょうか?
 でまあ、あの、それぞれ物の考え方色々あるんでね。司法の判断てのは、尊重しなきゃいけないということを一番始めに言いましたけど、それはまあ、なかったね。あの、紙面に。だから、とんでもないアウトローみたいな風に言ってるように、今度は新聞に載ってましたね。私のことをですよ。だから、とんでもないと。ちゃんと司法の機能とか、そういうことをちゃんとよく知っとるぞと、いうことをまず言わないといけませんね。
 それから、1つ目は、判決を尊重しないかんという話がありましたが、ほじゃ、そのあと間髪を入れず今度は九州のやつが、川内、出ましたね。で、それは尊重するんですかね、その人たちは。ということを言いたい。以上であります。
 
司会者 よろしいでしょうか。
 
毎日新聞記者 直接の対話を求めている団体もありましたけど、それについてはどのように。
 
仁坂吉伸知事 聞いたことがありませんね、はい。
 
毎日新聞記者 仁坂知事に直接議論をしたいというようなお話ですが。
 
仁坂吉伸知事 まあ、その必要もないんじゃないでしょうか。でまああの、一番大事なことはね、司法でも行政でもそうなんだけど、物の一面だけ見たら間違うよ、っていうことなんですね。たとえば、原発はいやだなあと思うのは自由なんで、それはあの、ものすごく大事なことだと思いますね。だけど、それを全ての判断に全部優先しなきゃいけないかっていうとね、たとえば私なんかは、和歌山県の県民生活を考えないといけないね。そうすると、電気代の高騰で苦しんでるような、中小企業だっていっぱいあって、生活がかかってますよね。で、そういうことについては、全く知らんというのは間違いですよね。ですから、そういうことの全ての「解」の中で、リスクはみんなそれぞれある訳ですね。で、そのリスクとその便益とを比較して、今この位のバランスかなというように、それぞれ考えるべきなんじゃないですかということを私は言ってる訳ですね。ということです。 
 
司会者 はい他に、どうぞ。
 
共同通信記者 共同通信の〇〇です。今の質問に少しからむんですけれども、先週広報課などに確認した際に、意見書というか、抗議文以外にも、メールであったり電話であったり意見が届いてるということだったんですが、県の方にどれだけどういう意見が届いてるかというのは把握できているでしょうか?
 
仁坂吉伸知事 海外にいたのでね、全部把握できてるかどうか、ちょっと自信はないんですけど、色々新聞記事とか送ってきてくれたんで、それとまあ、なるほどやっぱりねという風に思いましたね。それから、帰ってきたら、メールもいっぱい来てて、それで、その中でやっぱり「けしからん」というような意見が多かったと思いますね。ただ中には、特に和歌山県の住民の方が多いんですけど、「よくぞ言ってくれた」と案外言う人もいましたね。考え方色々でしょうね。で、「けしからん」て言う方を普通言うてくるんで、「よく言った」ちゅう人はあんまり言いませんからね。ま、そういうことじゃないでしょうか。
 
共同通信記者 件数として何件位とかっていうのは分かりますでしょうか?
 
仁坂吉伸知事 全部で?広報課にきいてください。あの、メールによる投書が2、30かなあ。もうちょっとかな。(事務方の方を向いて)3、40?
 
事務方 50位。
 
仁坂吉伸知事 50位。50位来てましたね。まあ、もちろん、ほとんど県外ですけどね。あ、そういう意味ではあれか、「全国の反響」か。そうね。
(文字起こし終わり)
 
 以上のとおりなのですが、はてさて、何と評すればよいやら。
 毎日新聞記者(20日の会見でも知事に食い下がろうとした記者です)からの質問に対する答えのポイントを要約するとこういうことでしょうか。
 
1 20日の会見で自分はまず「司法の判断」は「尊重しなければいけない」と述べたにもかかわらず、新聞報道ではその点が抜け落ちていた(ことが不本意である)。
2 (抗議してきた人は)「判決を尊重しなければならない」と言っているが、それではその人たちは川内原発の差止を認めなかった鹿児島地裁の判断を尊重するのか?
3 あらゆるものにリスクはつきまとうものであるが、そのリスクと便益とのバランスをとることが重要であり、1つの意見を絶対視して全てに優先するとする考えは間違っている。
4 抗議を申し入れた団体が知事と直接話し合いたいと申し入れたということは聞いていないし、その必要もない。
 
 以上の一々に反論する必要もないだろうと思いますが、1点だけ、ポイント2は聞き捨てにできないでしょう。
 この部分の知事発言をもう一度引用します。
 
「それから、1つ目は、判決を尊重しないかんという話がありましたが、ほじゃ、そのあと間髪を入れず今度は九州のやつが、川内、出ましたね。で、それは尊重するんですかね、その人たちは。ということを言いたい。以上であります。」
 
 「1つ目は」と言いながら「以上であります。」は変ですが、この話題を早く終わりたかったのかもしれません。
 しかし、「判決を尊重しないかんという話がありましたが~それは(鹿児島地裁決定は)尊重するんですかね、その人たちは」というのは、「一体何を言っているのか」というものであって、知事はろくに抗議文を読んでいないとしか思えません。実際、記者会見でも新聞記事を読んだとは言っていますが、抗議文を読んだとは一言も言っておらず、実際、読んでいない可能性が高いとしか思えません。仮に読んでいるとしても、いやいやの流し読みでしょう。
 3団体の抗議文は、上記リンク先でお読みいただけますが、「判決を尊重しないかん(しなければならない)」と書いた団体があったでしょうか?
 脱原発わかやまの抗議文の中に、「行政府の長たる知事こそ、司法の判断に謙虚であるべきでありましょう。」という表現はありますが、これは、仁坂知事が「裁判官というのは」「ある意味では謙虚でなきゃいかん」と主張したことに対し、「謙虚になるべきは仁坂知事、ご本人ではないかと思わざるを得ません。なぜならば、わが国における3権分立のもとでは、行政を含む諸行為が適法か違法かを判断するのが司法の役割ですから」と指摘したのであって、裁判所(福井地裁)が差止という判断をした以上それを尊重しなければならない、などと言っているのでないことは明らかです。
 30日の記者会見の質疑において、20日の原発に関する知事発言についての質問が出ることは確実だったのですから、せめて3通の抗議文を事前に熟読するくらいのことがなぜ出来なかったのか、まことに残念でなりません。