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真宗大谷派・声明「日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う『正義と悪の対立を超えて』」(2015年5月21日)を読む

 今晩(2015年5月26日)配信した「メルマガ金原No.2102」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
真宗大谷派・声明「日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う『正義と悪の対立を超えて』」(2015年5月21日)を読む

 Facebookでは既に取り上げたものの、メルマガ(ブログ)を読んでくださっている方にもご紹介しておいた方が良いと思いますので、以下に全文引用します。
 それは、去る5月21日に真宗大谷派東本願寺)が宗務総長名で発表した安全保障関連法案に対する宗派声明であり、正式な表題は「日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う『正義と悪の対立を超えて』」というものです。
 
 これまでも、真宗大谷派については、何度か私のメルマガ(ブログ)で取り上げてきました。私は、生まれてからずっと浄土真宗本願寺派西本願寺)の末寺の檀家(の家族)として暮らしてきましたが、西本願寺を取り上げたことは一度しかありません(西本願寺の原発問題についての考え方(西郷章氏の質問に答えて)/2011年11月17日)。

 私が取り上げたのは、真宗大谷派東本願寺)が以下のような問題について、積極的に宗派としての意見を発表したことをご紹介するためでした。
 
 
 以上の流れからすれば、真宗大谷派が、今般の戦争法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)の国会上程に際し、これに抗議する宗派としての声明を発したとしても少しも不思議なことはありません。
 しかし、5月21日に発表された同派の宗務総長名による宗派声明を読んで私は驚きました。その内容に驚いたということではなく、より正確に言えば、何よりもその声明の文章に込められた切迫感、危機感の大きさに胸を打たれたのでした。
 以上にご紹介した過去の声明や決議を読んだ際には、もちろん内容には共感したものの、ここまで差し迫った息づかいを感じることはありませんでした。
 とにかく、皆さんにも是非この声明を読んでいただきたいと思います。
 
(引用開始)
            
日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う
                 「正義と悪の対立を超えて」
 
 私たちの教団は、先の大戦において国家体制に追従し、戦争に積極的に協力して、多くの人々を死地に送り出した歴史をもっています。その過ちを深く慙愧する教団として、このたび国会に提出された「安全保障関連法案」に対し、強く反対の意を表明いたします。そして、この日本と世界の行く末を深く案じ、憂慮されている人々の共感を結集して、あらためて「真の平和」の実現を、日本はもとより世界の人々に呼びかけたいと思います。
 私たちは、過去の幾多の戦争で言語に絶する悲惨な体験をいたしました。それは何も日本に限るものではなく、世界中の人々に共通する悲惨な体験であります。そして誰もが、戦争の悲惨さと愚かさを学んでいるはずであります。けれども戦後70年間、この世界から国々の対立や戦火は消えることはありません

 このような対立を生む根源は、すべて国家間の相互理解の欠如と、相手国への非難を正当化して正義を立てる、人間という存在の自我の問題であります。自らを正義とし、他を悪とする。これによって自らを苦しめ、他を苦しめ、互いに苦しめ合っているのが人間の悲しき有様ではないでしょうか。仏の真実の智慧に照らされるとき、そこに顕(あき)らかにされる私ども人間の愚かな姿は、まことに慙愧に堪えない
と言うほかありません。
 今般、このような愚かな戦争行為を再び可能とする憲法解釈や新しい立法が、「積極的平和主義」の言
辞の下に、何ら躊躇もなく進められようとしています。
 そこで私は、いま、あらためて全ての方々に問いたいと思います。
 
 「私たちはこの事態を黙視していてよいのでしょうか」、
 「過去幾多の戦火で犠牲になられた幾千万の人々の深い悲しみと非戦平和の願いを踏みにじる愚行を繰り返してもよいのでしょうか」と。
 
 私は、仏の智慧に聞く真宗仏教者として、その人々の深い悲しみと大いなる願いの中から生み出された日本国憲法の立憲の精神を蹂躙する行為を、絶対に認めるわけにはまいりません。これまで平和憲法の精神を貫いてきた日本の代表者には、国、人種、民族、文化、宗教などの差異を超えて、人と人が水平に出あい、互いに尊重しあえる「真の平和」を、武力に頼るのではなく、積極的な対話によって実現することを世界の人々に強く提唱されるよう、求めます。
 
2015年5月21日
                 真宗大谷派東本願寺)宗務総長 里 雄 康 意 
(引用終わり)
 
 声明を読まれた上での感想は人それぞれでしょう。「この世界から国々の対立や戦火は消えることは」ない原因がよく分からないとか、そのことと安倍政権の「日本国憲法の立憲の精神を蹂躙する行為」との間の論理的な連関はどうなっているのだろうか、というような疑問をいだかれた方もいるかもしれません。
 しかし、「人と人が水平に出あい、互いに尊重しあえる「真の平和」を、武力に頼るのではなく、積極的な対話によって実現することを世界の人々に強く提唱」する者だけが、日本を代表する(内閣総理大臣となる)資格があるのだ(と言っていますよね)という結論~それは声明の表題である「日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う」にも端的に表れています~には、このメルマガ(ブログ)を読んでいただいている方の多くが賛意を表してくださるのではないかと思います。
 
 このように、日本国憲法を、その立憲の精神を蹂躙する行為を「絶対に認めるわけにはまいりません」と断言できるのは、日本国憲法に範をとった「宗憲」を持つ真宗大谷派なればこそという気もします。
 一度、皆さんも同派の「宗憲」を読んでみませんか。
 ちなみに、上記声明を発出した宗務総長は、「本派の教師の中から、宗会が指名し、門首がこれを認証する」(真宗大谷派宗憲48条1項)とされており、日本国憲法上の内閣総理大臣に比すべき立場にあります(憲法67条1項参照)。
 
 なお、真宗大谷派でも、親鸞聖人の血筋を引く大谷家の門葉が門首の地位に就くことになっており、象徴天皇制に擬した象徴門首制とでも言うべきシステムとなっているのですが、長らく空位であった同派の門首後継者に関し、昨年来大きな動きがあったというニュースを最後にお伝えしておきましょう。
 
2015年4月24日 中外日報
門首後継者・大谷暢裕氏が会見 大谷派

(引用開始)
 真宗大谷派門首後継者、大谷暢裕鍵役・開教司教(63)が22日、京都市下京区真宗本廟で初めて記者会見した。1歳の時に南米開教区開教使の父・暢慶氏と渡伯し、ブラジル国籍の暢裕鍵役は「受けるべきか悩んだが、ブラジル人の自分が就任すれば、親鸞聖人の教えが世界に通用するという確認になる」と、
後継者就任を受諾した理由を明かした。
暢裕鍵役は昨年4月に門首後継者に選定され、先月末に日本に移住した。会見では「ご門徒さんと一緒に聞法し、念仏申していく生活を大事にしたい」と抱負を述べ、「真宗大谷派は皆で手を取り合う教団であっ
てほしい」「東本願寺真宗本廟)は誰もが集える場所に」と、「御同朋・御同行の精神」を強調した。
 また名門サンパウロ州立大を卒業し、国立航空技術研究所で教授などを務めた「物理学者」の立場から、「科学は人間のために必要だが、それだけでは真に豊かになることはできない。科学で宗教や、人と人
の関係を包み込むことはできない」「両者は両輪」と、現代における宗教の必要性を説いた。
(引用終わり)