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真宗大谷派・宗議会決議「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力発電に依存しない社会の実現を求める決議」(2012年2月23日)をあらためて読む

 今晩(2015年5月27日)配信した「メルマガ金原No.2103」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
真宗大谷派・宗議会決議「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力発電に依存しない社会の実現を求める決議」(2012年2月23日)をあらためて読む

 今日は、昨日に引き続き、真宗大谷派による声明・決議をご紹介しようと思います。
 実は、昨日、メルマガ(真宗大谷派・声明「日本国憲法の立憲の精神を遵守する政府を願う『正義と悪の対立を超えて』」(2015年5月21日)を読む)を配信して間もなく、最近メルマガの読者になってくださった私の同業者(金沢弁護士会所属)から、「御存じかもしれませんが,脱原発についても,下記に挙げられている以外に,素晴らしい決議(!)がなされているので,お知らせいたします。」というメールが届きました。
 「下記に挙げられている」というのは、過去のメルマガで私が紹介した、脱原発に関わる以下の声明等のことです。
 
 
 
2012年6月12日付
宗務総長による宗派声明
大飯原子力発電所再稼動に関する声明

 
 昨晩、教えていただいた「素晴らしい決議!」というのは、以下のようなものです。
 これは私も知りませんでした。なるほど、素晴らしい!
 
2012年2月23日 宗議会(臨時会)決議
すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力発電に依存しない社会の実現を求める決議

(引用開始)
2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故では、原発の周辺はもとより、広い範囲に放射能汚染が拡がり、多くの人々が故郷や家族、仕事という生活基盤を奪われ、農林水産業の未来をも根底から揺るがす事態となっています。そして、何よりも子どもたちのいのちへの不安と恐怖が深刻化し、かつて経験したことのない甚大な核災害の様相を呈しています。昨年末に政府は事故の収束宣言を行いましたが、未だ原子炉内部の状況も不明であり、放射性物質の拡散は食い止められず、除染の目処もつかない厳しい状況が続いています。
 
地震にいつ襲われるとも知れない狭い日本の国土に54基もの原発が作られ、電力供給を原子力発電に依存する生活を私たちは営んで来ました。一旦、大事故が起これば、生きとし生けるものすべてのいのちを奪う深刻な放射線被曝によって、取り返しのつかない事態となる危険性のあることに目を伏せ、日本の原発は安全であり、原発なしでは電力の安定供給ができないという、いわゆる「安全神話」と「必要神話」を安易に信じ込み、エネルギーと物の大量消費を限りなく続けていくことが「豊かさ」であると私たちは思い込んで来たのです。
 
原発の危険性を電力の大消費地である大都市から離れた立地地域に押しつけ、また、放射線被曝の危険に絶えずさらされている原発作業員、ことに社会的に弱い立場に置かれた下請け労働者の問題にも目をそらして来ました。さらには、原発を運転し続けることで必然的に発生し、半減期が何万年にも及ぶものさえある膨大な放射性廃棄物を安全に管理することは、人間の能力を遥かに超えています。
 
この度の事故によって、原子力発電を続けるなら、現在のみならず未来のいのちをも脅かす放射線被曝を避け得ないことが明らかになった今、原発に依存しない社会の実現が何よりも急がれています。すべてのいのちを摂めとって捨てない仏の本願を仰いで生きんとする私たちは、仏智によって照らし出される無明の闇と事故の厳しい現実から目をそらしてはなりません。そして、私たちの豊かさの内実を見直すと同時に、国策として推進される原子力発電を傍観者的に受け容れてきた私たちの社会と国家の在り方を問い返し、すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力発電に依存しない社会の実現に向け、歩みを進めることをここに表明し、決議といたします。
 
2012年2月27日
 
真宗大谷派宗議会一同
(引用終わり)
 
2012年2月23日 宗議会(臨時会)建議
東日本大震災に関し、継続的な支援施策を求める建議

(引用開始)
広い範囲に激甚な被害をもたらした東日本大震災は、発生以来、一年を迎えようとしています。被災地では復興へ向けて懸命の努力が重ねられていますが、被害の規模があまりにも大きく、様々な問題から、その進捗は順調であるとはとても言えません。中でも、東京電力福島第一原子力発電所の事故では、広い範囲に渡って放射能汚染が拡がり、汚染の激しい地域では今後長期間、居住すらもできない状況が続くと思われます。
 
大震災の発生以来、大谷派宗門は、宗祖御遠忌の第一期法要を被災者支援のつどいとしてお勤めし、全国から寄せられた救援金や支援物資を被災教区・関係自治体等に届けるなどして支援を行ってきました。この間、多くの教区から有志によるボランティア活動も盛んに行われ、被災地に派遣された宗務役員は延べ440人に達しました。また、福島原発関係では被災地からの要請に基づき、放射線被曝からの子どもたちの一時避難として、北海道教区の青少年研修センター及び高田教区の池の平青少年センターなどが施設の提供を行い、宗門としてその経費の助成を行いました。本臨宗にも、食品の放射能汚染を測定する機器購入や北海道教区と望洋大谷学園で実施予定の一時避難経費などが盛り込まれた2011年度補正予算が当局より提案されています。
 
しかしながら、東日本大震災のもたらした災禍からの復興への道は険しく長く、ことに原発事故による被災については、放射性物質除染に相当な年数を要し、その間、被災地では放射線被曝に怯えながら生活せざるを得ません。その意味でも、宗門が行う支援は単発的なもので終わることなく、息長く継続的になされていくことが強く望まれています。宗議会に身を置く私たちは、真宗大谷派に相応しい支援のあり方を学び問い続け、それが有効なものとして実施されることに力を注いでいく決意であります。当局におかれても、2012年度以降、一定の予算を確保し、より実効性のある支援施策を継続していただくよう、ここに建議するものであります。最後に、宗門各位におかれても、震災被災地に思いを馳せ、継続的な支援を行っていくためのご協力を心よりお願い申し上げます。
 
2012年2月27日
 
真宗大谷派宗議会一同
(引用終わり)
 
 後半の建議は、基本的には宗門内部のことであり、ここで「当局」というのは、日本国政府の「当局」ではなく、真宗大谷派の「内局」(日本国憲法の内閣にあたる)を中心とする執行機関を指しているはずですが、東日本大震災、とりわけ福島第一原発事故に対する宗議会の認識を知るために有益と思い、併せてご紹介しました。

 なお、真宗大谷派宗憲によれば、「宗会は、本派の最高議決機関である。」(22条)、「宗会は、宗議会と参議会の両議会で構成し、宗議会は僧侶たる議員で、参議会は門徒たる議員で、それぞれ組織する。」(23条1項)という2院制が採用されており、上にご紹介した決議・建議は、僧侶たる議員で構成された宗議会が臨時会を開いて可決したものということになります。
 
 ところで、私はこの決議を教えていただき、かねてからの疑問のかなりの部分が理解できたように思います。
 それは、以前、メルマガでもご紹介した2012年1月25日付の毎日新聞の記事が報じた真宗大谷派内での原発問題についての見解の対立が、どのようにして反原発の主張に収斂していったのかということがよく分からなかったのですが、どうやらこの2012年2月23日の宗議会決議がターニングポイントになったことは間違いないようです。
 
2012年1月25日 毎日新聞(大阪)朝刊
脱原発:揺れる仏教界 真宗大谷派が決議案否決 向き合う難しさ浮き彫り

(抜粋引用開始)
 事故後、福島県いわき市在住の同派住職らが「国内の全54基の廃炉を」と訴えたのを機に、11年6月、僧侶が議員となる「宗議会」で、宗派声明を求める声が上がった。しかし安原晃・宗務総長は、原発の問題点を指摘しつつ、「誰かを悪者にしなければ収まらない状況から離れねばならない」と拒んだ。
 
※金原注 安原宗務総長(当時)の見解はこのようなものでした。
 
「原子力に依存する現代生活」を問い直す姿勢を表明
 
 「脱原発」を明確に掲げるべきだと考える議員らが提出した「人間は原発共存できない」とする決議案も、安原総長の意見に近い議員らが「結果的に原発を受け入れ、必要としてきたことへの反省の念を示すべきだ」と主張、否決された。
 
 同派は02年に原発の危険性を訴える冊子を発行するなどしてきただけに、「否決」は関係者に波紋を広げた。大阪府泉大津市の同派「南溟寺」の戸次公正住職は「原発を容認したかのような誤ったメッセージを社会に与えかねない」と嘆く。2月の宗議会での決議を目指す動きはあるが、調整は難航している。
 
※金原注 2002年に発行した原発の危険性を訴える冊子というのは、「真宗ブックレットNo.9 いのちを奪う原発」のことでしょう。
(以下略)
(引用終わり)
 
 それからもう1つ、この「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力発電に依存しない社会の実現を求める決議」を読んで感じたのは、以下のようなことでした。
 3.11から間もなく1年が経過しようという段階で可決されたこの決議には、何も目新しいことは書かれていません。そこで指摘されているのは、原発に反対する人たちが皆一致して主張していることばかりです。
 そして、この決議が指摘する論点についての、論理的にも倫理的にも批判に耐え得るだけの反論がなされたという話は聞いたことがないにもかかわらず、原子力発電所を再稼働し、建設中の原発の工事を完成させ、未着工の原発もあわよくば着工し、さらにどんどん輸出しようと考えている勢力が権力を握り続けているという現実を前にして、3年以上前に真宗大谷派の宗議会議員の皆さんが尽力して可決にこぎ着けた決議を読み返しながら、今でも、また今からでも、自分の力の及ぶ範囲で同様の決議を実現する必要性は少しも減じていない、ということを思いました。