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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

もう一度問う 自衛隊員の「服務の宣誓」~宣誓をやり直さねばおかしい

 今晩(2015年5月31日)配信した「メルマガ金原No.2107」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
もう一度問う 自衛隊員の「服務の宣誓」~宣誓をやり直さねばおかしい

 今日(5月31日)午後2時00分から、和歌山JAビル11階において開かれた「九条の会・わかやま」連続講座「戦争しない国をいつまでも」第1回にお越しいただいた皆さま、ありがとうございました。
 第1部では、「九条の会・わかやま」よびかけ人で、元和歌山ユネスコ協会事務局長の江川治邦さんが、「ユネスコ世界遺産憲法九条―その通底するもの」という含蓄豊かなお話をされ、私も非常に参考となりました。A4版1枚のレジュメで大体のお話の流れが分かると思います。
 ただし、第2部の私の話は、指定された「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」という演題の大きさに負けて、雑駁なとりとめのない話になってしまったのではないかと思います。
 そこで、「よく分からなかった」という人は、以下の私のブログ(弁護士・金原徹雄のブログ)でご紹介した動画を視聴して勉強して欲しいとお願いしておきました。
 
 
 さて、今日は、昨日(内閣総理大臣の孤独な闘い~天皇制と日本の若者を救った幣原喜重郎(この仮説は知っておく価値がある))に引き続き、「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」余論その2として、自衛隊員の「服務の宣誓」の問題を取り上げたいと思います。
 私は、これまでにも2回、この問題を取り上げてきました。
 
2013年8月29日
自衛隊員等の「服務宣誓」と日本国憲法
(抜粋引用開始)
 昭和29年(1954年)の自衛隊創設以来、一貫して維持してきた「専守防衛」の考え方をかなぐり捨て、「集団的自衛行使容認」に突き進む総理大臣が、日本国憲法の遵守を誓約してその職に就いている自衛隊員を指揮監督しているという恐るべき「背理」について、国会の場で追及する政党はないものか?とかねがね思っていました。
 去る7月の参議院議員選挙において、日本共産党参議院で10人以上の議員を有する院内交渉団体の資格を得たことから、是非「党首討論」でこの点を衝いて欲しいものだと期待しているのです。
(引用終わり)
 
2014年7月3日
今あらためて考える 自衛隊員の「服務宣誓」
(抜粋引用開始)
 自衛隊法3条が定める「自衛隊の任務」を「自覚し」「国民の負託にこたえる」ことが「服務宣誓」の本体なのですから、この3条の内容が大きく変容すれば、「服務宣誓」もそれに応じて変わるのが当然であり、もしも、集団的自衛権の行使を自衛隊の「任務」に付け加えながら、「任務は変わらない」と強弁し、「服務宣誓」のやり直しも必要ないとするのであれば、それは、自衛隊員の命をもてあそぶ許しがたい「ペテン」であると言わねばなりません。
(引用終わり)
 
 上に少し引用したとおり、2013年には、日本国憲法を遵守することを宣誓した自衛隊員を、日本国憲法をあからさまにないがしろにする人物が指揮するという恐るべき「背理」に注意を促そうと思って書き、2014年には、いよいよ集団的自衛権を行使できるという解釈を打ち出しながら、服務宣誓のやり直しの必要がないと国会答弁を行う安倍首相の不誠実さを非難したものです。
 
 詳細は、上記2つの記事をお読みいただきたいと思いますが、自衛隊員に課せられている「服務の宣誓」の根拠条文については以下に再掲します。
 
自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
 
第五章 隊員
  第四節 服務(第五十二条
(服務の本旨)
第五十二条 隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し
、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえるこ
とを期するものとする。
(服務の宣誓)
第五十三条 隊員は、防衛省令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
※今次の「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」では、52条、53条とも改正の対象とはなっていません。
 
自衛隊法施行規則(昭和二十九年六月三十日総理府令第四十号)
 
第三章 隊員
  第四節 服務の宣誓
(一般の服務の宣誓)
第三十九条 隊員(自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等及び非常勤の隊員(法第四十四条の五第一
に規定する短時間勤務の官職を占める隊員を除く。第四十六条において同じ。)を除く。以下この条において同じ。)となつた者は、次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない。自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となつたとき(法第七十条第三項又は第七十五条の四第三項 の規定により予備自衛官又は即応予備自衛官自衛官になつたときを除く
。)も同様とする。
     宣 誓
 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め
、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
自衛官候補生の服務の宣誓)
第三十九条の二 略
(学生及び生徒の服務の宣誓)
第四十条 略
予備自衛官の服務の宣誓)
第四十一条 略
即応予備自衛官の服務の宣誓)
第四十一条の二 略
予備自衛官補の服務の宣誓)
第四十一条の三 略
(幹部自衛官の服務の宣誓)
第四十二条 略

 さて、私がブログ(今あらためて考える 自衛隊員の「服務宣誓」)でご紹介したとおり、2014年6月16日の衆議院決算行政監視委員会において、社会民主党の吉川元(よしかわ・はじめ)議員からの質問に対し、安倍首相は以下のように答弁しました。
 
(抜粋引用開始)
 この瞬間にも、例えばソマリア沖に対して海賊対処活動を行っているわけであります。海賊対処活動というのは、これは完全に安全な活動ではないわけでありまして、まさに、時には危険な状況の中においてしっかりと任務を完遂しなければいけないという中において、緊張感を持って、まさに命をかけて、日本
人の代表として活動を行っているわけでございます。
 そういう意味におきましては、この宣誓の基本的考え方は、今まだ、与党の協議を行っていて、集団的自衛権の限定的な行使を容認するかどうかということについては結論が出ていないわけでありますが、も
し出たとしても、この中身が変わることはないと考えております。
(引用終わり)
 
 要するに、今でも危険な任務に「命をかけて」従事しているのだから、集団的自衛権の限定的な行使を容認するという結論が出ても、「服務の宣誓」の「中身が変わることはない」と言い放ったのですが、これを書き写すだけでも怒りがふつふつとわいてきます。
 
 とはいえ、とりあえず怒りを抑えながら、今次の戦争法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)を概観してみましょう。
 「存立危機事態」における防衛出動が憲法9条にも73条にも違反するとか、「重要影響事態」における後方支援活動や「国際平和共同対処事態」における協力支援活動というのは、要するに兵站(Logistics)を言い換えただけであって(実際、日米ガイドライン英語正文では、「後方支援」は全て「Logistics support」と表記されています)、憲法9条1項で禁止された「武力の行使」そのものだろうとかいうことはもちろんあるのですが、ここでは自衛隊員の「服務の宣誓」と直接関わる条項の変更を指摘したいと思います。
 
 もう一度、自衛隊法施行規則39条に定められた宣誓文を読み返し、その骨格となる部分だけを抜き出してみましょう。
 
私は、(略)日本国憲法及び法令を遵守し、(略)専心職務の遂行に当たり、(略)もつて国民の負託にこたえることを誓います。
 
 略した部分が枝葉という訳ではありませんが、これらが無くても残りだけで意味の通じる文章になるでしょう?このぎりぎり残った部分が文章の骨格です。
 要するに、「専心職務の遂行に当た」ることを宣誓しているのですから、その「職務」の内容に、大幅な変更があったにもかかわらず、従前の宣誓の効力を変更後にも(本人の意思を問うことなく)流用することはアンフェアでもあれば、違法でもあるだろうという問題なのです。
 
 それでは、自衛隊員の「職務」とは?その基本を定めているのが自衛隊法であり、武力攻撃事態法周辺事態法などの関連法規なども総合的に視野に入れて解釈する必要があるのですが、最も重要な規定は、(自衛隊の任務)を定めた自衛隊法3条でしょう。
 現行規定は以下のようになっています。
 
自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
 
第一章 総則
自衛隊の任務)
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が
国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定
めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の
平和及び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む
国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
 
 それでは、この自衛隊法3条の規定はどのように変えられようとしているのでしょうか?
 一見すると、改正部分はわずかです。上記の下線を引いた2箇所、すなわち「直接侵略及び間接侵略に対し」(1項)と、「我が国周辺の地域における」(2項1号)を削除するというだけです。
 
我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律
自衛隊法の一部改正)
第一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
 第三条第一項中「直接侵略及び間接侵略に対し」を削り、同条第二項第一号中「我が国周辺の地域にお
ける」を削る。
 
 「我が国周辺の地域における」を削除したのは、もともと朝鮮有事を想定して作られた周辺事態法から「我が国周辺の地域」という限定をはずして重要影響事態法とし、世界中どこでも米軍やその友軍への後方支援(兵站)等が出来るようにしたことに対応するものであることは言うまでもありません。
 また、新たに規定される国際平和共同対処行動や国際連携平和安全活動は、もともとある3条2項2号でそのままカバーできるということでしょう。

 そして、1項の「直接侵略及び間接侵略に対し」の削除です。
 現行規定「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし」は、自衛隊に防衛出動が命じられるのは、「我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合」(つまり「侵略」があり、個別的自衛権を行使する場合ということ)とされていることに対応しています(自衛隊法76条)。
 その防衛出動の要件を定めた76条は、武力攻撃事態に新たに存立危機事態を付け加え、この場合にも防衛出動を命じられるように「改正」されようとしています。
 自衛隊法3条1項から「直接侵略及び間接侵略に対し」を削除するというのは、以上の「改正」を踏まえたものであることは言うまでもありません。
 
 さて、「服務の宣誓」に戻りましょう。
 かつても引用しましたが、昨年7月3日付の東京新聞の記事を再度引用します。
 
 安倍晋三政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことにより、自衛隊の任務は外国の侵略に対抗する専守防衛から、他国防衛へと大きく変わる。自衛官は「日本の平和と独立を守る」という宣誓文を読み上げ、署名・押印して入隊するが、安倍首相は「(任務が)変わるわけではない」と宣誓のやり直しを否定。元防衛官僚は「契約違反だ」と批判している。(編集委員・半田滋)
(略)
 安倍首相は6月16日の衆院決算行政監視委で、野党議員から宣誓のやり直しについて問われ、「(任務の)中身が変わることはないと考えております」と否定した。その理由として「自衛隊武力行使を目的として戦闘に参加することはない」と述べたが、他国のために武力行使するのが集団的自衛権行使だ。
首相の説明は筋が通らない。
 過去にはやり直した例がある。1954年、警察の補完組織だった保安隊、警備隊が、国防を任務とする現在の自衛隊となった際、新任務にふさわしい宣誓が求められた。その際、全隊員の6%にあたる約7
300人が宣誓せずに退官した。当時の新聞は「宣誓拒否」と大きく報道した。
 「大部分は陸上自衛隊任期制隊員」(1954年8月9日参院内閣委、木村篤太郎防衛庁長官)とされる。任期制隊員は陸上が2年、海上と航空が3年。自衛官22万4000人のうち、任期制隊員は陸上自衛官を中心に1万6000人おり、宣誓をやり直せば、拒否して退官する人が出る可能性がある。首相
がやり直しを拒否するのは、政権への影響を避ける狙いがあるとみられる。
(引用終わり)
 
 自衛隊員が自衛隊法53条で義務付けられている「服務の宣誓」。
 「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務と」する自衛隊の隊員として、「専心職務の遂行に当た」ることを誓った「職務の宣誓」が、自国防衛ではなく、他国防衛のために海外に防衛出動すること、さらに、従来の非戦闘地域や我が国周辺の地域という制限も一切なくなり、ほぼ無限定に世界中至るところで米軍やその友軍のための兵站活動に従事することが任務となったにもかかわらず、「服務の宣誓」をやり直さなくても良いという理屈がどうしてあり得るでしょうか。
 もっとも、私たちの解釈によれば、新たな「服務の宣誓」は、日本国憲法に違反する任務でも命をかけて遂行します、という内容にならざるを得ないという問題はあるのですが、とにもかくにも、従来の宣誓がそのまま新たな任務についての宣誓に流用されるという、違法かつ非道な事態を座視することはできないでしょう。
 
 特別委員会審議の序盤は、志位和夫共産党委員長の質問しかフォローしていないので、既に「服務の宣誓」について質問した野党議員がいるのかどうか分からないのですが、早晩、誰かが厳しく追及してくれるものと期待しています。