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志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(2)~必ず戦死者が出る

 今晩(2015年6月2日)配信した「メルマガ金原No.2109」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(2)~必ず戦死者が出る

 昨日からスタートした「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」シリーズの第2回をお送りします。
 今日も昨日に引き続き、5月27日に行われた安保法制特別委員会(正式名称は「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」と言い、衆議院は「平和安全特別委員会」と略称していますが、あまりにばかばかしいので、共産党にならい「安保法制特別委員会」とします)での志位和夫日本共産党委員長による質疑です。
 この日は、主に重要影響事態法案(周辺事態法の改正案、正式名称は「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案」)と国際平和支援法案(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案)という2つの法案によって、世界中どであっても(地域的限定は一切なくなる)、従来の「非戦闘地域」という制限も撤廃して、自衛隊に弾薬の提供等の兵站(へいたん)を行わせようとしているということを追及したのですが、昨日に引き続き、まずは武器使用の問題が取り上げられます。
 
 なお、引用する志位和夫氏の発言は紺色、安倍晋三首相や中谷元防衛相ら政府側の発言は赤色、私が書いた補注は黒色、私が引用した条文等は茶色で表記しました。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)

2015年5月27日 衆議院 平和安全特別委員会 動画

 
 
志位 「武器の使用」といいますが、では具体的に聞きましょう。現実に自衛隊イラクサマワに持って行った武器はどのようなものでしたか。具体的に答えてください。持って行った武器。
 
深山延暁・防衛省運用企画局長 お答え申し上げます。イラク特措法に基づきまして、イラク南部サマワに派遣された陸上自衛隊の部隊は、部隊の安全確保のために拳銃、小銃、機関銃、機関銃は2種類でございました。無反動砲、個人携帯対戦車弾を携行してまいりました。
 
志位 いま、具体的にご答弁があったんですけれども、無反動砲も持って行っていますね。無反動砲。
 
企画局長 はい。ご指摘のとおり、84式無反動砲を持って行きました。
 
志位 いま、初めて、持って行った武器の内容が示されました(パネル2)。パネルにどんなものか写真を掲げております。持って行った武器は、ピストルや小銃にとどまらないんですよ。110ミリ対戦車弾、84ミリ無反動砲、12・7ミリ重機関銃など、文字通りの重装備ですよ。「人道復興支援」といわれたイラクサマワでも、これだけの武器を持って行ったんです。
 
 上掲のしんぶん赤旗には、(パネル2)の写真が(モノクロですが)掲載されています。
 「防衛省ホームページから志位和夫事務所が作成」と説明書がありましたので、私も調べてみました。
 陸上自衛隊ホームページの中の装備を紹介したページより、Wikipedia陸上自衛隊の装備品一覧など)の説明の方が詳しかったので、そちらにリンクしておきます。
 
 
 「戦闘地域」での「後方支援」となれば、さらに強力な武器を持って行くことになるでしょう。必要な場合は、こうした武器を使って反撃するということになります。相手方が、仮に戦車で攻撃してきて、必要に迫られた場合には、自衛隊はこの110ミリ携帯対戦車弾を使って反撃するということになるでしょう。これが戦闘でなくて何なのか。こういう武器を持って行っているんですよ。場合によっては使うから持って行っているんです。総理いかがですか。今度は総理です。戦闘でなくて何なのか、総理。
 
首相 まず、そもそもですね、この後方支援をする目的を考えなければならないわけでありまして、重要影響事態については、まさにわが国の平和と安全を確保するためにですね、後方支援を行うわけであります。わが国の平和と安全が脅かされる危険のなかにおいて行うということでございます。
 そして、国際平和支援法につきましては、これはですね、まさに国連憲章の目的にかなうという、そう
いう目的に対して行うということでございます。
 そこで同時にですね、繰り返しになりますが、後方支援を行う上においてはですね、安全な場所を選んで行うと、これはいままでのですね、基本的に非戦闘地域で活動を行うという考え方と基本的には同じで
ありますが、いままでの経験等をもとにですね、整理をしなおしたわけでございます。
 しかし、武器の使用については、先ほど申し上げましたように、任務遂行型ではなくて、自己保存型でありますし、危害要件もですね、正当防衛かあるいは緊急避難に限られるなかで行っていくということで
ございます。
 そこで、万万が一ですね、襲撃にあった場合は、この、応戦をし続けて、任務を続けるということではなくてですね、後方支援任務を続けるということではなくて、直ちにそれは退避するということになるわけでございます。
 
志位 私が聞いたのは、武器の使用をするというところまで総理はお認めになった。安全な場所を選んでやるといったけれども、それでも自衛隊が攻撃される可能性もお認めになった。そのときは武器の使用をするということもお認めになった。持って行った武器はこういうものです。こういうものを使って戦闘といえないのかと聞いたんです。ぜんぜん答えていない。お答えください。まさに戦闘じゃないですか。
 
防衛相 はい。派遣をいたしますので、隊員の安全を確保する必要がございます。あくまでも、これは必要最小限でありますし、また自己保存のための武器使用ということで規定をされております。
 また、その上、そういった近傍において戦闘行為等が発生した場合、予測される場合におきましては、部隊長が活動を一時休止、または回避をいたしますし、また安全に活動するために中断をしたりするわけでございます。
 
 ここで中谷防衛大臣が言い訳めいた答弁をしているのは、重要影響事態法案でいえば第6条、国際平和支援法案では第7条にある以下のような規定のことです。
 
重要影響事態法案(新旧対照表62頁~)
 (自衛隊による後方支援活動としての物品及び役務の提供の実施)
第六条
4 防衛大臣は、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が第三条第二項の後方支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合又は外国の領域で実施する当該後方支援活動についての第二条第四項の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこ
で実施されている活動の中断を命じなければならない。
5 第三条第二項の後方支援活動のうち我が国の領域外におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該後方支援活動を実施している場所又はその近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該後方支援活動の実施を一時休止するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。 
 
 国際平和支援法案の第7条4項は、「後方支援活動」が「協力支援活動」に変わるほか、重要影響事態法案の第6条4項と全く同文、第7条5項は、重要影響事態法案の第6条5項とほぼ同趣旨です(若干文言が相違する)。
 
 現在の周辺事態法・第6条にも、防衛大臣による中断命令(4項)や現場指揮官の判断による一時休止などの規定がありますが、これは、もともと「後方地域(我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)及びその上空の範囲)/同法第3条1項3号」における後方地域支援(弾薬の提供などは含まない)や後方地域捜索救助活動等を行うという大前提があっての中断命令や一時休止なのであって、従来と同様の「自己保存型の武器の使用しかできない」(安倍首相)自衛隊を、今後は、非戦闘地域でもなく(重要影響事態法案第2条3項)、いつ戦闘行為がはじまるかも分からない現場に投入しようとしていながら、「近傍において戦闘行為等が発生した場合、予測される場合におきましては、部隊長が活動を一時休止、または回避をいたしますし、また安全に活動するために中断をしたりするわけでございます。」(中谷防衛相)などと現場に判断を丸投げしてどうするつもりなのか、あまりに無責任ではないか?と、私が陸上自衛隊の現場幹部であれば怒り心頭だと思いますね。
 
志位 自己保存のための武器の使用だから武力の行使にあたらないということをおっしゃった。戦闘にならないんだということをおっしゃいました。
 ここに私が、一昨日(5月25日)に、外務省に提出させた文書がございます。「国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義があるわけではございません」。こ
れが明確な回答であります。
 つまり、国際法上では、「武力の行使」とは別の「武器の使用」という概念や定義そのものが存在しないんです。ですから、「自己保存のための武器の使用だから戦闘じゃないんだ、武力の行使じゃないんだ
」という理屈は、国際社会ではおよそ通用するものではないということをいっておきたいと思います。
 だいたい、いま問題になっているのは、自衛隊が国内の駐屯地で襲撃を受けた。その時に、自己防護のために武器を使用するという話じゃないんですよ。海外で、武力行使をしている米軍を、「戦闘現場」の近くまで行って支援している。その時に自衛隊が相手方から攻撃された。それへの反撃が武器の使用で武力の行使じゃない、こんな議論はおよそ通用しない。憲法9条に違反する武力の行使そのものだといわなければなりません。
 
 あらためて、ここで日本国憲法第9条を思い出しておきましょう。
 
 第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力に
よる威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
志位 さらに私は、具体的な事実に照らして、ただしていきたいと思います。
 自衛隊イラク派兵は、「非戦闘地域」への派兵を建前としておりました。しかし、実際に起こったこ
とは何だったか。
 陸上自衛隊は、対戦車弾や重機関銃など、かつてない重武装サマワに展開しました。宿営地を高さ3メートルの土塁で囲み、その外側に柵や有刺鉄線を設置し、宿泊施設をコンクリート壁と鉄板で固めるなど、いわば要塞(ようさい)化しました。それでも2年半の間に、陸上自衛隊に対するロケット弾や迫撃砲弾などによる攻撃は、少なくとも14回、23発に及んでいます。うち4回、4発のロケット弾が宿営地の敷地内に落下し、コンテナを貫通したこともあります。宿営地外で移動中の陸上自衛隊の車両が手製
の遠隔操作爆弾による襲撃を受けたこともありました。
 昨年4月、NHK「クローズアップ現代」で、「イラク派遣 10年の真実」と題して、自衛隊が撮影
した1000本に及ぶイラク派遣の記録をもとに、その実態を明らかにした番組が放映されました。
 番組ではまず、宿営地に撃ち込まれた迫撃砲の着弾地点を映し出しました。着弾地点から数メートルに
わたって土地がえぐられている、迫撃砲の殺傷力の高さを物語る生々しい映像であります。
 さらに番組では、当時、陸上自衛隊のトップを務めていた元統合幕僚長の先崎(まっさき)一氏のインタビューを放映しました。先崎氏は、「政治的には非戦闘地域といわれていたが、対テロ戦が実際に行われている地域への派遣で、派遣部隊から見れば何が起こってもおかしくないと。戦闘地域に臨むという気持ちを原点に置きながら、危機意識を共有して臨んだ」「忘れもしないですね、先遣隊、業務支援隊が、約10個近く棺(ひつぎ)を準備して持っていって、クウェートサマワに置いて。……自分が経験した中では一番ハードルの高い、有事に近い体験をしたイラク派遣だったと思います」、こう語っています。
 
 2014年4月に放送された「イラク派遣 10年の真実」は、残念ながら私は未見ですが、幸い、NHKオンラインにテキストによる詳しい再現が掲載されていますので、是非通読してください。
 
 
 航空自衛隊は、クウェートの空軍基地を拠点に、C130輸送機で、バグダッドなどへの空輸活動を行い、米軍を中心とした武装した多国籍軍などを空輸しましたが、この活動はつねに攻撃にさらされる危険極まりないものでありました。イギリス軍のC130輸送機が、バグダッド近郊を飛行中、武装勢力によって撃墜され、乗員全員が死亡するという事態も起こっておりました。空自のC130輸送機もバグダッド空港に駐機中、4発の迫撃砲弾がC130輸送機の頭上を飛び越え、空港の敷地内に撃ち込まれたこともあります。空自の輸送機がバグダッド上空にくると、携帯ミサイルに狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴る事態が頻発しました。「3回飛べば1度ぐらいミサイル警告システムが作動した」と証言する空自幹部もいます。機体を左右に急旋回させ、あるいは急上昇、急降下させる命がけの回避行動が必要だったと報道されました。
 総理にうかがいます。「非戦闘地域」が建前だった自衛隊イラク派兵でしたが、実態は戦場に近かった。自衛隊員の犠牲者が出ず、自衛隊が1発も銃弾を撃つことなく終わったのは、ほとんど奇跡といっていいことだと、私は思います。「非戦闘地域」が建前であっても、先崎元統合幕僚長の言葉を借りれば「なにが起こってもおかしくない」、攻撃を受け、戦闘に至る、その一歩手前が現実だったのではないですか。総理にそうした認識はありますか。昨日(5月26日)の本会議で、私は、この質問を総理に投げかけましたが、定かな答えがありませんでした。私は、イラク派遣の現実についての認識を聞いております。はっきりお答えください、総理。
 
首相 イラク派遣についてもですね、非戦闘地域ということをいわば確定してですね、確定してその任務を行っている期間を通じて、戦闘地域…戦闘地域とはならないという地域を選んで、自衛隊が駐留をし、そして復興支援活動にあたったわけでございます。まさに、復興支援活動にあたる上において、先崎さんはですね、自衛隊員の心構えと覚悟についてお話をされたんだろうとこのように思います。もちろん、ここは全く安全な地域では、まったく安全だということではないわけであります。当然、危険がともなう仕事であります。
 しかし、その中においてもですね、この法令にしたがって、われわれは非戦闘地域であるということを確定した区域において、自衛隊が作業を行ってきたと、復興の支援を行ってきたと、ということでござい
ます。
 そして、それはイラクのですね、復興支援には大いに役立ったのは事実であり、イラクの人々にも感謝されているとこのように思います
 
志位 私は、イラク自衛隊の派遣(の実態)が、攻撃を受け、戦闘に至る一歩手前だったという認識はないのかときいたんですが、お答えはありません。
 この問題は、当時の久間防衛大臣が、航空自衛隊の活動について、国会で、「一歩間違うと本当に人命に影響するような状況、見方を変えれば、刃(やいば)の上で仕事をしているようなもの」と答弁しておられます。当時の航空幕僚長だった吉田正氏は、「私は首相官邸で『万一撃たれても騒がないでほしい』『はしごを外さないでほしい』と求めた。テロと同じで、どこで攻撃を受けるかわからない活動だからだ
」と語っております。
 当時の防衛大臣が「刃のうえで仕事している」、あるいは航空幕僚長が「万一撃たれても騒がないでほしい」「どこで攻撃されるかわからない活動」だったと(言っている)。こういう認識があるかどうか聞いているんです、総理。
 
首相 当時もですね、私は官房副長官として官邸にいたわけでございますが、小泉総理も自衛隊を派遣する上において、安全な場所に派遣するという気持ちはもちろん、これは、さらさらなくてですね、まさに危険がともなう仕事の中において、自衛隊の諸君にイラク復興の支援のための活動をしてもらうと、こういう思いで小泉総理も派遣を命じたわけでございますが、しかし同時にですね、派遣をする上においてはですね、活動を通じて、非戦闘地域非戦闘地域という概念においては、武力行使と一体化しないという概念において導き出された、これは概念でございますが、そんなかにおいて、期間を通じて非戦闘地域である。この非戦闘地域であるということは、いわば私たちがこの日本の中で享受しているような安全な状況とは、これは違うわけでありまして、だからこそ日頃訓練をしている自衛隊の諸君にその任務を担ってもらうわけであります。
 同時にですね、同時に、そういう状況になれば、退避、避難をすると、いうことでございまして。今回の法令、法律におきまして、法案におきましても、そういう事態になれば部隊の指揮官が判断する場合もありますし、また防衛大臣が判断する場合もありますが、避難をしたり、一時中断したり、避難をすると。あるいはそういう事態になる可能性があるという予測をした段階でそういう避難を、中断をすると、いう確実な判断をすることも必要だろうとこのように思います。
 
志位 私は、イラクへの自衛隊派遣の実態がどうだったかの認識を聞いたんですが、お答えになりません。いまの答弁では答えてない。
 「非戦闘地域」が建前でも、戦闘に至る一歩手前でした。それは当時の、当事者たちの発言で明らかです。この現実を無視して、これまで「戦闘地域」とされてきた地域での活動を可能にする。しかもこれまでできなかった弾薬の提供、武器や弾薬の輸送もできるようにする。戦闘部隊への補給を断つために、弾薬や武器を輸送する自衛隊は真っ先に攻撃対象とされるでしょう。自衛隊が現実に攻撃され、「殺し、殺
される」危険が決定的に高まるんじゃありませんか。
 イラク戦争の当時、首相官邸自衛隊派兵の中心を担った、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、「朝日」のインタビューでつぎのようにのべています。
 「当時、航空自衛隊は輸送任務でバグダッド空港まで行きました。新たに作る恒久法では、そこから先の戦闘部隊がいる場所まで輸送できるようになる。それは非常に緊急性の高い輸送です。政府案は戦闘が起きたら輸送を中断する仕組みになっていますが、戦闘を行っている部隊の指揮下に入ることになれば、輸送を中断するわけにはいかないでしょう」
 「自衛隊派遣の前提だった『非戦闘地域』という概念は、憲法上のつじつま合わせだけではなかったと思います。実質的に自衛隊を戦闘部隊の指揮下に入れず、直接の戦闘に巻き込ませないという意味があった。この概念を廃止して活動範囲を広げれば、今までより確実にリスクは高まります。イラクでは何とか戦死者を出さずに済みましたが、あれ以上のことをやれば必ず戦死者が出ると思います」。こういわれています。
 柳沢さんは「必ず戦死者が出る」とまで断言されています。イラク派兵の中心を官邸にあって担った、この方の発言は、私は重いものがあると思いますよ。総理、自衛隊員に戦死者が出るようになるのは避けがたいと考えますが、いかがでしょうか。
 
 志位委員長が引用した朝日新聞に掲載された柳澤協二さんのインタビューというのは、以下の朝日新聞デジタルで読めます。(会員登録が必要。無料会員でも1日3本までは閲覧可能)。
 
 
 なお、柳澤さんのご意見はお馴染みですが、私が注目したのは柳澤さんと対比するために掲載されていた川上高司氏(拓殖大学大学院教授)の意見の、特に以下の部分です。
 
(抜粋引用開始)
 ただ、自衛隊を積極的に活用することによって、代償が出てくるのは避けられません。
 例えば派遣先で民間人を誤射するとか、逆に自衛隊が犠牲になるとか。しかし、本当に国際社会の一員
となるためにはこれは覚悟しなくてはならない試練だと思います。その時、指導者である首相がどう反応
するか。そのスタート地点に立つことになります。
 とりわけ自衛隊員の死傷者が出た場合に、国としてどう対応するのかが大事なポイントです。国会で具
体的な法案を議論する際に、しっかりと検討してもらいたい部分です。
(引用終わり)
 
 元防衛研究所主任研究官であった川上氏と、元防衛研究所所長であった柳澤氏と、この2人の「自衛隊員の命」に対する考え方の間には相当な開きがあるようです。
 
首相 柳沢さんはですね、重大な間違いを犯しておられます。まず自衛隊がですね、この輸送して、届ける先の部隊のですね、指揮下に入ることありません。これは明確に申し上げておきたい。柳沢さんはなんでこんな初歩的なことをわからずに、べらべらしゃべっているのかですね、私も大変驚いている。これは極めて重要なことですよ。指揮下に入るか入らないか。入ることはないんですから。自衛隊が独自に判断してですね、そういう状況になれば直ちに退避をする。退避できないのと指揮下に入ってしまうのとは、天と地の違いであります。ですから、彼の証言はまったく意味がない話だろうということはまずはっきりと申し上げておきたいと思います。
 その上においてですね、先ほどらい、中谷大臣も答弁をしておりますように、しっかりとわれわれはですね、非戦闘、戦闘現場ではない、そしてその任務を実行する期間において、そういう戦闘現場となることのない区域を指定して、そこで活動をするわけでございます。ですからそういう意味においては、しっかりとですね、自衛隊の安全を確保、最大限確保しながらですね、われわれはこの後方支援の任務に当たる、当たってもらうわけでございます。
 
志位 自衛隊は指揮下に入らないと、言われましたけれども、兵たん部隊が全体の指揮下に入るというのは軍事の常識ですよ。兵たんをやる部隊が、勝手にどこかにものを置いて、それですむわけがない。統一した指揮下に入るというのは、これは軍事の常識です。日米新ガイドライン(軍事協力指針)でも、「同盟調整メカニズム」とありますが、これは結局、米軍の指揮下に入るということですよ。
 総理は、「安全確保」と言うこと繰り返します。しかし、柳沢さんはこうもおっしゃっています。
 「政府、与党は安保法制に『自衛官の安全確保』を書き込めば、安全になると思い違いをしている。安保法制では自衛隊の活動地域はこれまでの『非戦闘地域』から『非戦闘現場』になる。つまり活動地域が大幅に拡大し、最前線まで武器や弾薬を輸送できる」「(『自衛隊員の安全確保のための必要な措置』というが)法改正で、隊員に与えられる任務の危険性は格段に高くなる。間違いなく戦死者が出ますよ。矛盾も極まれりで、これが荒唐無稽でなくて何でしょうか」。こういわれております。
 私は、今日、具体的な法案の仕組み、そしてイラク派兵の実態に照らして、自衛隊が「殺し、殺される」ことになる危険についての認識をうかがいました。それについて、これだけ聞いても総理はリスクを語ろうとしない。これはあまりに無責任で不誠実な態度じゃないですか。自衛隊の活動地域を、これまで政府が「戦闘地域」としていた地域へと大幅に拡大しておきながら、「隊員の安全確保」をいうのは、全くの自己矛盾であり、荒唐無稽であり、ブラックジョークの類いだといわなければなりません。
 
 志位委員長が指摘した日米新ガイドラインにおける「同盟調整メカニズム」とはどういうものか、該当箇所及びその前後を引用しておきます。
 
日米防衛協力のための指針 2015年4月27日
(引用開始)

Ⅲ. 強化された同盟内の調整
 指針の下での実効的な二国間協力のため、平時から緊急事態まで、日米両政府が緊密な協議並びに政策面及び運用面の的確な調整を行うことが必要となる。
 二国間の安全保障及び防衛協力の成功を確かなものとするため、日米両政府は、十分な情報を得て、様々なレベルにおいて調整を行うことが必要となる。この目標に向かって、日米両政府は、情報共有を強化し、切れ目のない、実効的な、全ての関係機関を含む政府全体にわたる同盟内の調整を確保するため、あらゆる経路を活用する。この目的のため、日米両政府は、新たな、平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を強化する。
A.同盟調整メカニズム
 持続する、及び発生する脅威は、日米両国の平和及び安全に対し深刻かつ即時の影響を与え得る。日米両政府は、日本の平和及び安全に影響を与える状況その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に切れ目のない形で実効的に対処するため、同盟調整メカニズムを活用する。このメカニズムは、平時から緊急事態までのあらゆる段階において自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を強化する。このメ
カニズムはまた、適時の情報共有並びに共通の情勢認識の構築及び維持に寄与する。日米両政府は、実効的な調整を確保するため、必要な手順及び基盤(施設及び情報通信システムを含む。)を確立するととも
に、定期的な訓練・演習を実施する。
 日米両政府は、同盟調整メカニズムにおける調整の手順及び参加機関の構成の詳細を状況に応じたものとする。この手順の一環として、平時から、連絡窓口に係る情報が共有され及び保持される。
B.強化された運用面の調整
 柔軟かつ即応性のある指揮・統制のための強化された二国間の運用面の調整は、日米両国にとって決定的に重要な中核的能力である。この文脈において、日米両政府は、自衛隊と米軍との間の協力を強化するため、運用面の調整機能が併置されることが引き続き重要であることを認識する。
 自衛隊及び米軍は、緊密な情報共有を確保し、平時から緊急事態までの調整を円滑にし及び国際的な活動を支援するため、要員の交換を行う。自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動する。
C.共同計画の策定
 日米両政府は、自衛隊及び米軍による整合のとれた運用を円滑かつ実効的に行うことを確保するため、引き続き、共同計画を策定し及び更新する。日米両政府は、計画の実効性及び柔軟、適時かつ適切な対処能力を確保するため、適切な場合に、運用面及び後方支援面の所要並びにこれを満たす方策をあらかじめ特定することを含め、関連情報を交換する。
 日米両政府は、平時において、日本の平和及び安全に関連する緊急事態について、各々の政府の関係機関を含む改良された共同計画策定メカニズムを通じ、共同計画の策定を行う。共同計画は、適切な場合に、関係機関からの情報を得つつ策定される。日米安全保障協議委員会は、引き続き、方向性の提示、このメカニズムの下での計画の策定に係る進捗の確認及び必要に応じた指示の発出について責任を有する。日米安全保障協議委員会は、適切な下部組織により補佐される。
 共同計画は、日米両政府双方の計画に適切に反映される。
(引用終わり)
 
 安倍首相は、このガイドラインの中の、例えば「B.強化された運用面の調整」において、「自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動する。」とあるのを見つけたら、自衛隊は米軍の指揮下に入るのではない、だから柳澤協二は嘘をついているのだとでも言うのでしょう。
 私などこの規定を読んだとき、まっさきにGHQによる「間接統治」という占領政策を思い出しましたけれどね。
 1945年から1952年まで続いた連合国による占領下においても、日本国民は、直接的には日本政府の統治下にあったのであって、ただその日本政府がGHQの指示に反する行動がとれなかっただけです。
 当然、個々の自衛隊の部隊は、自衛隊自身のの指揮命令系統に基づいて行動するのであって、米軍から直接指揮されて行動するのではない、という建前は建前でしょう。しかし、だからと言って、自衛隊に米軍の意に反してでも独自の判断に基づく行動ができる、などということはあり得ない・・・ということを志位委員長は指摘しているのです。
 
以下、「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(3)」に続く。