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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(3)~兵站は軍事行動の不可欠の一部

政治 軍事
 今晩(2015年6月3日)配信した「メルマガ金原No.2110」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(3)~兵站は軍事行動の不可欠の一部

 一昨日からスタートした「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」シリーズの第3回をお送りします。
 今日は、5月27日に行われた安保法制特別委員会(衆議院は「平和安全特別委員会」と略称)における志位委員長による質疑の最終回です。
 
 テロ特措法、イラク特措法によって派遣された自衛隊員の中から多数の自殺者が出ていること指摘した上で、重要影響事態法案や国際平和支援法案によって自衛隊に行わせようとしている後方支援(協力支援)活動が、軍事的、国際法的には武力の行使と一体をなす兵站(ロジスティクス)そのものであり、戦時国際法上、保護の対象となる民用物ではなく、攻撃の対象となるものであることを、政府に対する質疑を積み上げていくことによって論証していく志位委員長の手並みは鮮やかというほかありません。
 是非、今回もしっかりと学びましょう。
 
 なお、引用する志位和夫氏の発言は紺色、安倍晋三首相や中谷元防衛相ら政府側の発言は赤色、私が書いた補注は黒色、私が引用した条文等は茶色で表記しました。
 
 

2015年5月27日 衆議院 平和安全特別委員会 動画
 
 
志位 さらに聞いてまいります。
 これまで、自衛隊員の戦死者は出ていないものの、犠牲者が出ていないわけではありません。アフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、イラク戦争に際してのイラク特措法に基づいて派遣された自衛官のうち、これまでに自ら命を絶った自殺者はそれぞれ何人か、防衛省、報告されたい。
 
真部朗・防衛省人事教育局長 いまお答え申し上げます、平成26年(2014年)度末の現在、その時点でございますが、イラク特措法に基づきまして派遣された経歴のある自衛官のうちですね、陸上自衛官が21名、航空自衛官が8名、計29名。それからテロ特措法に基づいて派遣された経歴のある自衛官のうち、海上自衛官が25名、これは、統計の関係で平成16年(2004年)度以降でございますが、以上ですね、29名と25名で、足し合わせますと54名が帰国後の自殺によって、亡くなられております。一般に申し上げますと、自殺の原因はさまざまな要因が複合的に影響しあって発生するものでございます。従いまして、個々の原因について特定することは困難な場合がおおございます。自殺した自衛官についても、海外派兵との因果関係、こういったものを特定するのは困難な場合が多いということを、付言させていただきたいと思います。
 
志位 54人の自殺ということが報告されました。これは深刻な数字であります。
 さきに紹介した昨年4月放映されたNHK「クローズアップ現代」の「イラク派遣 10年の真実」では、イラク派遣が「隊員の精神面にも大きな影響を与えていた」として、派遣自衛官のなかでの自殺者の問題を、生々しくとりあげました。
 番組では、イラク派遣から1カ月後に自殺した20代の隊員の母親のインタビューを次のように放映しました。
 「派遣中の任務は宿営地の警備でした。20代の隊員を亡くした母『(息子が)「ジープの上で銃をかまえて、どこから何が飛んでくるかおっかなかった、怖かった、神経をつかった」って。夜は交代で警備をしていたようで、「交代しても寝れない状態だ」と言っていた』。息子は帰国後自衛隊でカウンセリングを受けましたが、精神状態は安定しませんでした。母親は、息子の言動の異変を心配していました。20代の隊員を亡くした母『(息子は)「おかしいんじゃ、カウンセリング」って。「命を大事にしろというよりも逆に聞こえる、自死しろ」と、「(自死)しろと言われているのと同じだ、そういうふうに聞こえてきた」と言ってた』。この数日後、息子は死を選びました」。こういう内容が放映されました。
 番組では、現地に派遣された医師が、隊員の精神状態を分析した内部資料を紹介しました。内部資料には、派遣されたおよそ4000人を対象に行った心理調査の記録もありました。睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も1割以上。中には3割を超える部隊もあったことが分かりました。
 これは、深刻な問題だと思うんですよ。総理、「非戦闘地域」が建前の活動でも、これだけの若者が犠牲になり、また心に傷を負っております。これまで政府が「戦闘地域」としてきた地域まで活動地域を広げるとなれば、これをはるかに超える甚大な負担と犠牲を強いることになることは、私は避けがたいと考えますが、総理いかがでしょうか。
 
 前回もご紹介しましたが、昨年4月に放映されたNHKクローズアップ現代イラク派遣 10年の真実」については、NHKオンラインに、動画ではありませんが、テキストによって番組内容が再現されており、志位委員長によって引用された部分も掲載されています。是非お読みください。
 
 
首相 私がかつて官房長官のときに、自衛隊において、他の公務員と比べても自殺率が高いという話を聞きまして、そのカウンセリング等、対応とるように指示したわけでございますが。いずれにいたしましても、そうした形で死を選んだ方々がおられる、大変胸の痛む話であります。しかしそこでですね、こうした活動をおこなっていく。たしかに緊張感をともない、ともなう、わけでございます。そのなかで常に自衛隊の諸君は、さまざまな現場でリスクを負いながら、国民の命と幸せな暮らしを守るために、任務をまっとうすべく、全力をつくしているわけでございます。
 今回のですね、この法案における、後方支援活動とですね、いままでの活動とを比べるなかにおいてですね、先ほども申し上げましたように、非戦闘地域という概念をですね、非戦闘現場と改めたわけでございますが、しかし活動する区域については、実際に活動する区域には午前中の答弁でも申し上げたわけでありますが、例えば自衛隊が宿営する場所、あるいは実際に活動する区域についてですね、その活動している区間、期間ですね、安全が十分に確保されているという、場所で活動するということになるわけであります。いままでは非戦闘地域という、例えば、サマワであればサマワ全体を半年なら半年指定していたわけでございますが、今回は実際にですね、活動する区域を指定すると、いうことにおいてですね、より柔軟性をもつということになるわけでございますが、いずれにせよ実際に戦闘現場になる、そういう危険性があるときには、中止したり、あるいは退避をすると、こういうことになっているわけであります。
 
志位 あのね、「自衛隊の安全確保」の話を聞いたんじゃないんですよ。こういう自衛官が自ら命を絶つという深刻な事態が起こっている。自衛隊の活動領域を広げたら、もっと深刻になるんじゃないかと聞いたんですが、全く答えられませんでした。
 米国には、イラク戦争アフガニスタン戦争の帰還兵が200万人以上おります。うち60万人が戦地で経験した戦闘や恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患っております。そして米国政府によると、1日平均22人、年間8000人もの帰還兵が自殺しており、米国の一大社会問題となっております。イラクとアフガンの戦場での戦死者よりも年間の自殺者が上回るという異常事態であります。帰還兵の支援は、ワシントン・ポスト紙では「米国の次の戦争」といわれております。昨年12月、今年2月の2度にわたって、「兵士自殺防止法」が制定されているほど、事態は深刻になっております。PTSDの原因は、戦場で命を奪われる恐怖とともに、戦場で相手の命を奪ったこと――自爆テロだと判断し発砲したところ、無辜(むこ)の民間人を殺してしまった――などへの心の痛み、苦しみによるものが多く、深刻なものだと報じられております。
 こうした苦しみを、日本の若者にも押し付けようというのですか。これを聞いているんです。日本の若者を戦地に派兵し、「殺し、殺される」戦闘をさせる。心身への深刻な傷痕ははかりしれないものですよ。これを聞いているんです。この認識はどうでしょう。
 
 米国における帰還兵の自殺が重大な社会問題となっていることについては様々な資料があり、最近も、『帰還兵はなぜ自殺するのか』(デイヴィッド・フィンケル著/亜紀書房/2015年2月刊)などが翻訳出版されています。
 ここでは、2012年にニューズウィーク日本版に掲載された記事をご紹介しておきます。
 
 
防衛相 まず、派遣する際における、安全につきましての対応は、さらに大きくしていかないといけないと思います。今ご指摘の通りですね、海外派兵は、非常に過酷な環境で行われておりますので、精神的な負担等につきましてはクールダウンと申しますけれども、さまざまな措置を講じまして、隊員のメンタルヘルスケアの機関を充実させていきたいと思います。
 
志位 私は、米国の実態を引いて、この深刻な事態を示しました。戦争で真っ先に犠牲にされるのは未来ある若者です。若者を戦場に送るわけにはいかないということを強くいっておきたいと思います。
 さらにここで私は、「後方支援」の本質論を聞いていきたいと思います。
 そもそも政府の法案で、「後方支援」と呼んでいる活動――弾薬や燃料などの補給、武器・弾薬・兵員などの輸送、壊れた戦車の修理、傷病兵の医療、通信情報などの支援などの活動は、国際的には兵たんと呼ばれている活動であります。
 「後方支援」という言葉は、日本政府だけが使っている造語であって、国際的には兵たん、「ロジスティクス」と呼ばれております。
 だいたい、4月に日米両政府が交わした、(日米)新ガイドライン(軍事協力指針)でも、日本語では「後方支援」ですが、英文は「ロジスティック・サポート」となっている。「ロジスティック」には、前方とか後方などという含意はありません。
 
 志位委員長が指摘されるとおり、去る4月27日に合意された新たな(第3次)日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)については、和文と英文の両方で公表されましたが、和文で「後方支援」とある部分は、英文では全て「Logistic Support」となっています。是非一度ご確認ください。
 
 
 そこでこの兵たんが、国際的にどのように扱われているか。戦時国際法を見てみたいと思うんです。戦後、国連憲章のもとで、戦争と武力行使は一般的に禁止されました。しかしそのもとでも、国際的な武力紛争は繰り返されました。そこで国際的な武力紛争が起こった際に、戦争の犠牲者を保護する、文民や民用物を保護することが必要とされました。こうしてつくられたのが、1949年のいわゆるジュネーブ4条約「戦争犠牲者の保護に関する条約」と、1977年の「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第1議定書)」であります。「追加議定書」は日本も含めて、すでに世界171カ国が批准し、国際的に確立したルールになっています。パネルをご覧ください(パネル3)。
 「追加議定書」は、第52条に「民用物の一般的保護」という条文があります。読み上げます。
 
 「第52条 民用物の一般的保護
 1 民用物は、攻撃又は復仇(ふっきゅう)の対象としてはならない。民用物とは、2に規定する軍事目標以外のすべての物をいう。
 2 攻撃は、厳格に軍事目標に対するものに限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であって、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る」
 
 ここでは「物」という言葉がありますが、(「追加議定書」の)コマンテール(注釈)では、この「物」には当然部隊も入るということが、解釈として言われております。
 
 志位委員長が指摘された国際条約は以下のとおりです。なお、「戦争犠牲者の保護に関する条約」と言われているのは、おそらく第四条約(文民保護条約)だろうと思います。
 
 
 
 私は、1999年3月26日の(衆議院)ガイドライン特別委員会で行われた周辺事態法案の審議において、周辺事態法自衛隊などが行う「後方地域支援」――軍事活動を行っている米軍にたいする補給、輸送などの活動が、このジュネーブ条約の「追加議定書」の52条で第1項の文民、民用物として保護の対象になるものか、それとも、第2項の軍事目標とされるものか、どちらに仕分けされるものなのかをただしました。この質問に対して、当時、外務省東郷条約局長は、私の質問の最後ではっきりと答弁をしております。どういう答弁を行ったか。その該当箇所を、外務省、読み上げていただきたい。
 
平松賢司・外務省総合外交政策局長 お答えいたします。先ほどの答弁でございますけども、当時の外務省条約局長は、ご質問の第52条、これはどういう趣旨かと申しますと、これは民用物への攻撃の禁止を趣旨とするものでございまして、一般的に申し上げれば、自衛隊の艦船、航空機等は国際法上、民用物というふうには考えられないところでございまして、そういう意味では、ご指摘の第2項のほうに該当するというのはむしろ当然のことではないかと思いますと、答弁しております。
 
 志位委員長が1999年(平成11年)3月26日に行った特別委員会での質疑が掲載された会議録は以下のとおりです。
 
第145回国会 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第3号
平成十一年三月二十六日(金曜日)
 HTML版 会議録 
 
 この時の志位委員長(委員長就任の前年でまだ書記局長でしたが)と東郷和彦外務省条約局長との「論争」は読み応え十分ですが、相当に長いので引用は控えます。会議録で該当箇所をお読みになることをお勧めします。
 なお、余談ながら、この会議録の冒頭を読んでいたら、出席政府委員の中に近年お馴染みの方々のお名前を見つけて興味深かったですね。例えば、
  内閣法制局長官 大森政輔君(現・国民安保法制懇)
  内閣法制局第二部長 宮崎礼壹君(後に内閣法制局長官
  防衛庁運用局長 柳澤協二君(現・立憲デモクラシーの会、国民安保法制懇、自衛隊   を活かす会)
などです。
 
志位 そういう答弁で(当時の質疑が)終わっているんですね。つまり自衛隊が行う、当時は「後方地域支援」について聞いたわけですが、これは攻撃目標になると(答弁した)。それは、兵たんというのはですね、戦争行為の不可欠の一部だと、武力攻撃と一体不可分のものだということを示していると思うんですよ。
 兵たんは、「追加議定書」の第52条でいう、「軍事活動に効果的に資する」活動であって、戦時国際法上、軍事攻撃の目標にされる。兵たんが、国際法上、軍事攻撃の目標にされるということは、兵たんが戦争行為の一部であり、武力行使と不可分の活動だと国際社会でみなされていることを意味するものにほかなりません。
 いま一つ、私が提示したいのは、米海兵隊が作った『海兵隊教本』であります。その(『教本』のうち)ロジスティクス――兵たんの項をここに持ってまいりました。現在使われているものです。
 (『海兵隊教本』は)兵たんについての冒頭部分で、「われわれのドクトリンは、兵たんが戦闘と一体不可分であると認識している」と強調したうえで次のように述べております。読み上げます。
 
 「兵たんはいかに重要か。兵たんは、軍事作戦のいかなる実施の試みにおいても不可欠な部分である。……兵たんなしには、計画的で組織的な活動としての戦争は不可能である。……兵たんなしには、部隊は、戦場にたどりつけない。兵たんがなければ、武器は弾薬なしになり、車両は燃料なしとなり、装備は故障し、動かないままとなり、病人や傷病兵は治療のないままになり、前線部隊は、食料や避難所や衣料なしに過ごさなければならない」
 
 兵たんの重要性について非常に分かりやすく書かれております。
 次に、「兵たんと戦争」という項があります。
 
 「兵たんと戦争。兵たんは戦争の一機能であるがゆえに兵たんシステムとそのシステムを作動させる部隊及び要員は、暴力及び危険の対象となる。……兵たんの部隊、設備、施設は……軍事攻撃の格好の標的であることを認識することが重要である」
 
 先ほど総理は、兵たんというのは安全なところでやるのが常識なんだというふうに言われました。しかし、この『海兵隊教本』には別のことが書いてあるんですよ。戦闘部隊というのはいろんなところに動ける。だから柔軟性がある。しかし、兵たんというのは、これは計画的にやらなければならない。だからより軍事攻撃の格好の標的になる。こうした軍事の常識がはっきり述べられております。
 そして結論です。
 
 「結論。兵たんは戦闘と一体不可分である。兵たん活動は軍事行動の不可欠の一部である。……兵たんはいかなるまたすべての戦争行動の中心構成要素である」
 
 非常に明瞭であります。
 総理にうかがいます。総理は、昨日の本会議での私の質問に対して、「わが国が行う後方支援は他国の武力の行使と一体化することがないように行うものです。このようなことから、武力行使と一体不可分というご指摘は当たりません」と答弁されました。
 しかし、総理が何と言おうと、自衛隊が支援する米軍が、兵たんは武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であり、戦争の中心構成要素だと、ここまで言っているんです。これは、アメリカがこう言っているんです。これが兵たんの本質じゃないですか。
 
 志位委員長が引用された現在使われている「海兵隊教本」がいかなるものか、調べはついていないのですが、古いものであれば(1種類ではないようですが)、軍用品を扱うオンラインショップで、米軍放出品として入手可能なようです。
 
首相 確かにですね、いま志位委員がご紹介されたように、兵たんというのは重要なんですよ。重要であるからこそ、安全を確保しなければいけない。つまり兵たんの安全が確保できないようであればですね、作戦行動というのはもう成り立たないわけであります。ですから、われわれが支援するのは、いわばしっかりと兵たんの安全が確保されている場所において、いわば後方支援をするわけであります。食料等々をですね、届けていく。それが奪われてしまう、攻撃されて奪われてしまったら、これはもう相手に渡るわけでありますから、だからこそですね、また後方支援を受けている間は攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)であるという考え方のもとに、しかし、これをちゃんと安全を確保しましょうという考え方でもあるんだろうと思いますよ。
 後方支援に際しては、危険を回避し、安全を確保することは当然でありまして、むしろ軍事的に合理性があると思います。これは同時に後方支援を十分に行うためにも必要なことでありまして、危険なまさに場所にですね、たくさんの物資を届けるというのは敵に届けてしまうというようなことになってしまうわけでありますから、そういうところでいわば後方支援をしないというのはむしろ常識であるというのは繰り返し申し上げてきたわけでありますが、あえてまた申し上げたいとこう思うわけでございまして。まあそんなかでおいて先ほど答弁させていただいておりますように、戦闘現場ではない場所、そして活動を通じて戦闘現場ではない安全を十分に確保できるということについてですね、しっかりと見極めながら活動を行っていくことに区域を設定していくことになるわけでございます。
 
志位 総理はね、これだけ議論したのに、またね、同じことを繰り返すんです。「安全確保をします」と。しかしね、これは議論してきたじゃないですか。これまでは「非戦闘地域」でしかやっていけないという「歯止め」があった。これを廃止する。そして、「戦闘現場」でなければ、これまで政府が「戦闘地域」と呼んでいたところまで行って、活動することになる。そうすれば、自衛隊が攻撃される可能性がある。そのことを総理はお認めになりました。攻撃されたら武器の使用をする。これもお認めになりました。これは戦闘になるんじゃないかということを私は提起してまいりました。ですから、まさに、これは議論を通じて、自衛隊のやる「後方支援」というのは戦闘になるということがはっきりしたというのが、この議論の到達点なんですよ。
 そして、兵たんというのは、いま海兵隊の『教本』を示しましたが、戦争行為の不可欠の一部であり、武力の行使と一体不可分のものです。だから軍事攻撃の目標にされる。これが世界の常識であり、軍事の常識です。「武力の行使と一体でない後方支援」など、世界ではおよそ通用するものではありません。
 なお、ニカラグア事件に関する1986年の国際司法裁判所の判決は、「兵器または兵たんもしくはその他の支援の供与」について、「武力による威嚇または武力の行使と見なされることもありうる」と明示しております。ですから(政府のいうように)あらゆる兵たん(それ自体)が、すべて武力の行使ではないなどということは、ありえないということは、国際司法裁判所も明示していることであります。
 
 ニカラグア事件そのものについては、Wikipediaの解説がよくまとまっています。
 国際司法裁判所の判決を日本語に全訳したものは、インターネット環境では見つけられませんでした(もしかするとあるのかもしれませんが)。ということで、英語原文をご紹介しておきます。
 
 
 なお、国立国会図書館が発行する「レファレンス」(平成22年1月号)に、本件と関連する以下のような記述がありました。参考までにご紹介します。
 
レファレンス 平成22年1月号
国際法及び憲法第 9 条における武力行使 松山健二(外交防衛課)

(引用開始)
 
日本政府は、国連憲章第 2 条第 4 項でいう武力行使とは、「一般に、国家がその国際関係において行う実力の行使」、国連憲章第 51 条で規定される「武力攻撃」は、「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使」と解する。また、ニカラグア事件は、日米防衛協力の指針の関連法案の審議において取り上げられており、その際、政府は、ICJ 判決、「侵略の定義に関する決議」及び国際法における武力行使についての解釈を示している。
 政府は、ICJ 判決は「個別の事案について判断し、個別の事案の文脈に照らして理解する」ものであり、「この判決においては武力の行使や干渉」として「武器、兵たん、その他の支援の供与というものの援助」が「みなされることもあり得る」とするが、「一般論として、何が武力の行使とみなされることになっているかについて、この判決では全く明確になっていない」としている。(東郷和彦外務省条約局長答弁)また、武力行使と兵站活動については、武力行使とは「専ら実力の行使に係るものと解されております。したがいまして、通常理解されておりますところの兵たん活動、こういうものは含まれていないというふうに解すのが一般的である」とする。(東郷条約局長答弁)
 また、政府は、「侵略の定義に関する決議」については、「安保理として最終的な決断を下すということはこの 74 年の決議において明記されているわけでございます。そしてさらに、前文に「侵略行為が行われたか否かの問題は、個々の事件ごとのあらゆる状況に照らして考慮されなければならない」云々という記述があるわけでございまして、その例示された侵略の行為というものがすぐ武力の行使につながるということではないと考えます。」としている(加藤良三外務省総合外交政策局長答弁)。
 さらに、「[「侵略の定義に関する決議」]6 条に明記されておりますとおり「憲章の範囲をいかなる意味においても拡大し、又は縮小するものと解してはならない。」のであり、当該決議中の武力の行使とは憲章第 2 条第 4 項の武力の行使…と同義であって、専ら実力の行使にかかわるものと解されます。」とも説明している(加藤良三総合外交政策局長答弁)。
(引用終わり)
 
 しかしながら、上掲論文の執筆者は、同論文の「考察」において、以下のように論じていることを付け加えておきましょう。
 
(引用開始)
 
政府の解釈による国際法における武力行使は、一般的な解釈によるものと比較して狭く、
したがって武力行使禁止原則によって禁止される範囲が狭くなる。つまり、一般的な解釈による範囲から政府の解釈による範囲を差し引いた部分(「武器の提供、兵站又はその他の支援」など)を行うことは、政府の解釈によれば、武力行使に当たらず自衛権の行使などの理由づけがなくても許されることになる。
 しかしながら、例えば、A 国の B 国に対する敵対行為を含む武力行使について、C 国が A国に対する「武器の提供、兵站又はその他の支援」を行った場合、その行為には、A 国の敵対行為を含む武力行使が個別的自衛権の行使であるとき、集団的自衛権の要件をみたせば集団的自衛権の行使として、また集団安全保障措置であればその一環として位置づけることで国際法上適法な措置となるものが含まれる。政府が武力行使を狭く解釈するのは、憲法上の制約によって集団的自衛権の行使や集団安全保障措置に関与できないとしていることに関係する。つまり、集団的自衛権の行使や集団安全保障措置であれば違法性が阻却される行為が、政府の解釈によれば、それらを援用することなく国際法上適法な措置として位置づけることができるのである。
(引用終わり)
 
 旧日米ガイドライン(1997年)に基づく有事法制周辺事態法等)成立当時(1999年)の日本政府の「武力行使」解釈が、国際標準に比べて著しく狭いものであったのは、言うまでもなく、米軍に対する「後方地域支援」(兵站)が「武力行使」に含まれるとすると、それを日本の個別的自衛権の行使として説明できない限り「違憲」にならざるを得ないと考えたからでしょう。
 ところで、今次の戦争法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)の立案にあたった官僚たちは、「後方支援」(兵站)と「武力行使」の関係を一体どう考えているのでしょうかね。
 集団的自衛権は行使できないという解釈を投げ捨てた上で、なお、後方支援は武力行使にあらずという都合の良い解釈をとり続けているのでしょうか?(多分そうなんでしょうね)。
 
 しかもこれまでは、「非戦闘地域」に限るとか、「弾薬の補給をやらない」とかの「歯止め」がありましたが、今回の法案はそれらの「歯止め」も外してしまっているじゃないですか。「武力の行使と一体でない後方支援」というゴマカシは、いよいよ通用するものではありません。
 今日の質疑を通じて、政府の法案が、武力の行使を禁止した憲法9条1項に反する違憲立法であることは、明瞭になったと思います。絶対に認めるわけにはまいりません。
 私は、引き続き明日も質疑に立ち、PKO法改定と、集団的自衛権の問題について、引き続き質疑をしていきたいと思います。終わります。
 
 3回にわたってお届けしてきた、5月27日に衆議院安保法制特別委員会で行われた志位和夫日本共産党委員長による質疑のご紹介はこれで終了です。
 次回からは、5月28日に行われた質疑に入ります。
 5月28日に行われた「PKO法改定と、集団的自衛権の問題について」の質疑も重要ですが、27日に行われた重要影響事態法による後方支援活動、国際平和支援法による協力支援活動の危険性、違憲性についての指摘はまことに重要です。
 というのは、存立危機事態を認定して集団的自衛権を行使することなど、昨年来いやというほど論じてきたとおり、憲法上到底容認できるはずがありませんが、実は、そういう事態がすぐに起きて、自衛隊に防衛出動命令が発せられる可能性がどの程度あるかと言えば、とりあえずそんなに可能性の高いものではないかもしれません。
 しかし、政府が重要影響事態と認定すれば、自衛隊に後方支援活動や捜索救助活動を実施させることができるのであり(国会による承認は緊急の必要があれば事後でもよい/同法案第5条)、その発動の要件となる重要影響事態というのは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(同法案第1条)という甚だ抽象的なものなのです。しかも、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」という記載に惑わされる人がいないとも限りませんので念のために言っておきますが、その後に「等」という1字が入ることにより、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」というのは単なる例示(そういう場合も含むというに過ぎない)になるのであって、実際に判断の基準となる要件は「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」だけです。
 重要影響事態法の発動が検討される時には、既に米軍が戦闘状態に突入しているものと思われ、「平時から緊急事態までのいかなる状況においても(略)アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう」「「日米両国が、各々、米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため、主権の十分な尊重を含む国際法並びに各々の憲法及び国内法に従い、武力の行使を伴う行動をとることを決定する場合であって、日本が武力攻撃を受けるに至っていないとき、日米両国は、当該武力攻撃への対処及び更なる攻撃の抑止において緊密に協力する。共同対処は、政府全体にわたる同盟調整メカニズムを通じて調整される。」(新日米ガイドライン)と合意している以上、米国からの出動要請を受けた日本政府が「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と認定するであろうということは、まことに残念なことながら、100%確実でしょう。
 我が国の政府が、独自の判断で米国の出動要請を断れると思う日本人がいたら、よほど「物を知らない」「何も考えていない」人だと言わねばなりません(この点は5月28日の質疑でしっかり質されています)。
 また、国際平和支援法案においては、国際平和共同対処事態(国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの/第1条)において、国連総会または安全保障理事会の何らかの決議に基づいて活動する諸外国の軍隊等(第3条1項1号)に対する協力支援活動等を行うというものであって、活動の内容は重要影響事態の場合ととほぼ同じです。
 つまり、このまま戦争法案の成立を許してしまった場合、まず最初に「犠牲者」が出る可能性が高いのは、存立危機事態ではなく、重要影響事態(もしくは国際平和共同対処事態)であると思われ、志位委員長が初日の質問において、まずこの2つの法案を取り上げた理由もそこにあるのではないかと思います。
 
以下、「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(4)」に続く。