wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(5)~日本は“米国の戦争”に反対したことはただの一度もない

 今晩(2015年6月5日)配信した「メルマガ金原No.2112」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(5)~日本は“米国の戦争”に反対したことはただの一度もない

 6月1日から連載を開始した「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」シリーズも、前回から5月28日の質疑に入り、まずPKO法改定法案が取り上げられましたが、いよいよ今回と次回で、集団的自衛権行使の問題が議論されます。
 志位委員長による質問のポイントは、米国が先制攻撃をしかけて始まった場合でも、集団的自衛権を行使するのか、ということです。
 
 なお、引用する志位和夫氏の質問は紺色、安倍晋三首相や岸田文雄外相の答弁は赤色、私が書いた補注は黒色、私が引用した条文等は茶色で表記しました。
 
 

2015年5月28日 衆議院 安保法制(平和安全)特別委員会 動画

 
 
志位 次に進みます。
 第三の問題は、政府のこれまでの憲法解釈を大転換して、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカとともに海外での武力行使に乗り出すという問題であります。政府は、
武力攻撃事態法」の改定、自衛隊法の改定などで、その「根拠」をつくろうとしております。
 ここでの最大の問題は、集団的自衛権の発動の要件である武力行使の新3要件、これを満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量にまかされており、事実上いくらでも無限定に広がる恐れがあるという
ことであります。
 具体的に私は、ただしていきたいと思います。
 私は、一昨日の本会議での代表質問で、「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動するのか」と総理にただしました。総理からは、定
かな答弁がありませんでした。
 そこで総理に重ねてうかがいます。米国が先制攻撃を行った場合でも、新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動することがありうるのか否か。はっきりお答えいただきたい。
 
 この質問から始まる志位和夫共産党委員長による追及は、もっぱら米国による先制攻撃で始まった戦争(武力紛争)でも、いわゆる新3要件を充足すると政府が判断すれば、存立危機事態として自衛隊に防衛出動を命じて戦争に参加させるのか?という1点に集中しています。
 その意図するところを私なりに推測すれば以下のようになるでしょうか。
 そもそも、集団的自衛権行使の前提は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」たことなのですが、皆さん、米国に対して「先制攻撃」をしかけた国ってすぐに思い浮かびますか?
 私は、1941年12月にハワイを攻撃した大日本帝国以降、米国の領土に対して先制攻撃をしかけた国家があったという事例を知りません(実はそれ以前も知りません)。
 9.11事件は、米国による自作自演説はさておくとしても、国家による先制攻撃ではありませんでした。
 領域外の米国軍艦に対する先制攻撃があったと米国が主張したことはありましたが(トンキン湾事件)、これもねつ造でした。
 つまり、米国との関係で集団的自衛権の行使という問題を考えるに際しては、米国が先制攻撃を行って始まる戦争はあっても、米国に「対して」先制攻撃がしかけられて始まる戦争はほとんどあり得ない、歴史上そんな頓狂なことをやった国は日本くらいのものだということは絶対に踏まえておかなければならない事実です。
 そして、日本が国連に加盟して以降(1956年12月~)、米国が起こした戦争を日本政府が国連憲章違反、国際法違反として非難したことが1度でもあるのか?というのが志位委員長の質問の核心です。
 
 ただ、その質疑を読む前提として、今次の戦争法案(法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)において、集団的自衛権の行使がどのように位置付けられているのかを概観しておきましょう。
 
 法律案の構造はごくシンプルです(だから恐ろしい)。
 12年前(2003年)に出来た武力攻撃事態法という法律があります。同法は、武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態)が発生した場合の基本的な対処方針を定めた法律です。
 
武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
(平成十五年六月十三日法律第七十九号)

 
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。
二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認めら
れるに至った事態をいう。
三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至っ
た事態をいう。
(以下略)
 (対処基本方針)
第九条 政府は、武力攻撃事態等に至ったときは、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針(以下
「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
2 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 武力攻撃事態であること又は武力攻撃予測事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実
二 当該武力攻撃事態等への対処に関する全般的な方針
三 対処措置に関する重要事項
3~15 略
 
 以上のとおり、政府が武力攻撃事態等と認定した場合には、それぞれの事態に対応した命令が自衛隊に発動されることになりますが、それを定めているのは自衛隊法です。
 例えば、武力攻撃事態と認定した場合の規定は以下のとおりです。
 
自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
 (防衛出動)
第七十六条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法
律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
2 内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。
 
 今次の戦争法案は、簡単に言えば、武力攻撃事態と並んで存立危機事態なる新たな「事態」を設け、ほぼ武力攻撃事態と同じ枠組みで武力行使ができるようにするというものです。
 以上に概観した現行法が、改定法案ではどうなっているかを見てみましょう。
 
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(新旧対照表76頁~)
 
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 武力攻撃 略(現行通り)
二 武力攻撃事態 略(現行通り)
三 武力攻撃予測事態 略(現行通り)
四 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立
が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。
(以下略)
 (対処基本方針)
第九条 政府は、武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときは、武力攻撃事態等又は存立時期事態へ
の対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
2 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 対処すべき事態に関する次に掲げる事項
イ 事態の経緯、事態が武力攻撃事態であること、武力攻撃予測事態であること又は存立危機事態である
ことの認定及び当該認定の前提となった事実
ロ 事態が武力攻撃事態又は存立危機事態であると認定する場合にあっては、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由
二 当該武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する全般的な方針
三 略(現行通り)
3~15 略
 
自衛隊法改定案(新旧対照表1頁~)
 (防衛出動)
第七十六条 内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合
には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第
七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生す
る明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態
二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国
民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
2 略(現行通り)
 
 以上のとおり、戦争法案では、存立危機事態であるという認定は、武力攻撃事態と同様、政府が行います(事態対処法案第9条2項1号イ)。そして、存立危機事態であると認定すれば、内閣総理大臣自衛隊に防衛出動を命じることができます(自衛隊法改定案第76条1項)。
 どうですか、非常にシンプルでしょう?
 その存立危機事態の要件たるや、安倍首相自身が、ホルムズ海峡の機雷掃海のために出動できると公言している以上、事実上「何でもあり」でしょう。
 つまり、米国が何らかの武力紛争の当事者となり(大抵、米国の先制攻撃で始まるでしょう)、米国から日本政府に「日本にとっての存立危機事態だから自衛隊を派遣してくれ」と言われたら、地球上どこへでもまいります、という法制ができようとしているということです。
 これを嘘だと思う人は、2012年8月に公表されたいわゆる第3次アーミテージ・レポート(「米日同盟―アジアの安定を保持する―」リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ共著)における日本政府への「勧告」を読むべきです。
 
『米日同盟―アジアの安定を保持する―』
リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ著 筑紫建彦訳
前編後編) 

原文“The U.S.-Japan Alliance anchoring stability in asia”
Richard L. Armitage .Joseph S. Nye

(抜粋引用開始)
<日本への勧告>
●東京は、海賊行為と戦い、ペルシア湾の海運を防護し、シーレーンを確保し、イランの核計画でもたらされているような地域の平和への脅威に立ち向かう多国間の努力への積極的な関与を続
けるべきである。
●役割と任務の新たな見直しにおいて、日本は、日本の防衛および地域的な不測の事態において米国とともに行う防衛を含む責任分野を拡大すべきである。この同盟は、日本の領域をかなり超える、より強健で、共有され、共通運用可能な「情報・監視・偵察」の能力と作戦を要求している。米軍と自衛隊が、平和時、緊張、危機および戦争という安全保障の全局面において十分に協力して対応することを許すのは、日本側の責任当局であろう。
ホルムズ海峡を封鎖するというイランの意図が言葉で示され、またはその兆候が出た際は、日本は単独でこの地域に掃海艇を派遣すべきである。日本はまた、航海の自由を確保するため、米国と協働して南シナ海の監視を増やすべきである。
●東京は、2国間および国家の安全保障上の秘密を防護するため、防衛省の法的権限を強化すべきである。
●PKOへのより十分な参加を可能にするため、日本は、必要な場合には武力をもって市民や他の国際的平和維持要員を防護することを含めるため、平和維持要員の許容範囲を拡大すべきである。
(引用終わり)
 
首相 いまの質問にお答えする前にですね、先ほどのこのアフガンの例で誤解をもたれないように、もう一度申し上げておきますが、答弁をですね、いわば行うにさいしても、本会議においてですね、アフガンの状況をいま再現して、それを判断することは困難というふうに申し上げましたが、しかしですね、当然、5原則があるということも申し上げているわけでありまして、この5原則のなかでいえばですね、治安状況がですね、ドイツが派遣されたようなアフガンのような治安状況であるということはですね、当然、一般に想定されないというのは、これ5原則からみて、当然のことであるということは申し上げておきたいと思います。
 そこで、ただいまのご質問でございますが、憲法上ですね、武力の行使が許されるのは、あくまでも新3要件を満たす場合に限られるわけでありまして、わが国またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としているわけでありまして、いかなる場合にも新3要件を満たすことになるかはですね、いかなる場合に新3要件を満たすことになるかはですね、事態の個別、具体的な状況に即して政府がすべての状況を総合して客観的、合理的に判断することになりますが、同時に、また、国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮にある国がなんら武力攻撃を受けていないにもかかわらず、違法な武力行使を行うことは、国際法上認められていないわけでありまして、わが国が、自衛権を発動してそのような国を支援することはないわけであります。
 
 安倍首相が援用しようとしている国連憲章の規定をご紹介しておきましょう。
 
第2条
1、2 略
3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしな
いように解決しなければならない。
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎
まなければならない。
5~7 略
第33条
1 いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用
その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
2 安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決する
ように要請する。
第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
 
志位 アフガンの問題については、総理の答弁で(ISAFへの参加が可能かどうかを)「評価するのは困難」だといって否定されなかったから、私はこれを聞いたわけです。否定されなかったんですよ、事実として。
 いまの問題に戻りますが、いまの総理のご答弁は、仮にある国家が、武力攻撃を受けていないにもかかわらず、違法な武力の行使を行うことは、国際法上認められていない行為だから、そういう国を支援することはないというご答弁だったんですが、私が聞いたのは、「仮にある国」がじゃないんです。米国が先制攻撃の戦争をやった場合でも、集団的自衛権を発動することがあるのか否かを聞いたんです。米国がです。
 
首相 これは、あの、いま一般原則としてですね、原則として申し上げているわけでありますから、当然、これは対象となるのはすべての国々が対象となっているということでございます。
 
志位 お答えにならないんですけれども、米国は違法な先制攻撃をやらないという認識ですか。
 
首相 あの、特定の国がですね、違法なことをするということを前提に答弁するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、当然ですね、これ、私が申し上げているのは、いわば、原則としてこのように申し上げているわけでありますから、そうした国連憲章上、違法なことをした国に対してですね、日本が武力行使をもって協力することはないのは当然のことでございます。
 
志位 それじゃあ、米国の政策について聞いていきましょう。
 ブッシュ政権の2002年の国家安全保障戦略では、次のようにのべております。
 
 「米国は長い間、わが国の安全保障に対する十分な脅威に対抗するため、先制行動という選択肢を保持してきた。……たとえいつどこを敵対者が攻撃するのか不確実であっても、われわれ自身を守るために先制行動を取らざるをえなくなる。敵対者によるこのような敵対的行動の機先を制し、あるいは阻止するために、必要とあらば米国は先制的に行動する」。
 
 むき出しの先制攻撃論の宣言であります。
 じゃあ、最近のオバマ政権はどうでしょう。オバマ政権の2015年の国家安全保障戦略では、次のようにのべています。
 
 「われわれは、われわれの核心的利益に対しては一方的に行動(する)」「米国は、われわれの永続的利益が求める場合――わが国民に脅威が及んでいる、われわれの生活が危機に瀕(ひん)している、同盟国の安全が危機にさらされている(場合に)――、必要なら一方的に、軍事力を行使する」。
 
 「先制的」という言葉こそありませんが、米国の「核心的利益」「永続的利益」のためには一方的に軍事力を行使すると宣言しています。いまでも先制攻撃論を続けているわけであります。
 総理、米国は、先制攻撃戦略を一貫して国家の基本戦略においているではありませんか。そういう認識はないんですか。
 
岸田文雄外相 ご指摘のようなこの米国のこの安全保障政策はあるわけ…発表されているわけですが、いずれにしましても、わが国が武力行使を認める、許されるのは、この再三申し上げておりますように、新3要件に該当したときのみであり、わが国が国際法に違反した行為に対して支援をすることはありえないと考えています。(志位「(米国の)政策についての認識を聞いている」)
 
首相 他国のですね、他国のですね、安全保障の安全保障の考え方の個別な文、文言に対してですね、論評することは差し控えさせていただきたいと、このように思いますが、いずれにせよですね、先ほど申し上げましたように、国連憲章に反する、国際法に反するいわば先制攻撃ということでございますが、わが国に武力攻撃が発生していないにもかかわらず、武力攻撃を行使している、これは国連憲章上、国連憲章に違反する行為に対してですね、わが国が武力行使をもって協力することはないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 
志位 承知していないというんですがね、「同盟国」の米国の国家安全保障戦略ぐらい読んでおきなさいよ。
 アメリカは、戦後、何をやってきたのか。国連憲章国際法を踏みにじって、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。パネルをごらんください(パネル2)。そのうち1983年のグレナダ侵略、1986年のリビア爆撃、1989年のパナマ侵略に対して、国連総会は3回にわたって、アメリカを名指し
国連憲章違反、国際法違反と非難する決議を採択しております。
 国連総会は、1983年のグレナダ侵略では、米国の武力行使を「国際法及びグレナダの独立、主権、
領土保全の重大な侵害」と非難する決議を採択しております。
 1986年のリビア爆撃にさいしては、米国の武力行使を「国連憲章国際法の侵害」と非難する決議
を採択しております。
 1989年のパナマ侵略では、米国の武力行使を「国際法と諸国の独立、主権、領土保全へのはなはだ
しい侵害」と非難する決議を採択しております。
 ここで外務大臣に確認します。国連総会決議に対する日本政府の態度は、グレナダ侵略問題では棄権、リビア爆撃問題では反対、パナマ侵略問題では反対だと思います。この事実関係に間違いはありませんね。この三つの事案について、日本政府がどういう態度表明をしたのか、簡潔に明らかにされたい。
 
外相 三つの事例についての指摘をいただきました。まず1983年のグレナダ派兵につきましては、質問主意書に対する(政府)答弁書という形で「遺憾である」という遺憾の意を表明いたしました。
 そして、1986年、リビア攻撃に関しましては、外務大臣談話を発しまして、「事態の推移を重大な
関心をもって見守る」、こうした意を表しました。
 そして、1989年のこのパナマのこの軍事介入についてですが、これも外務大臣談話を発しまして、
遺憾の意を表明しております。
 その上で、いまご指摘がありました国連総会の決議についてですが、日本政府はグレナダの事案については棄権、リビアとパナマの事案については反対をいたしました。この反対につきましては、この決議全体における、このパナマ等の情勢に対するこの判断、バランス等に、ことを考慮したと認識をしております。
 
志位 いま外務大臣が、グレナダの問題、パナマの問題で、日本政府が遺憾の表明をしたというふうにおっしゃいました。私は、ここに、あなたがいま読み上げた文書を全部もってきております。それぞれについての政府見解は、次のようなものです。
 まず、グレナダ派兵についてのあなたが言った(政府)答弁書(1983年11月8日)でありますが、そこでは次のようにのべております。
 
 「政府としては、実力行使を含む事態の発生を見るに至ったことは遺憾であると考えている。他方、米国の行動については、米国人の安全確保の問題や、関係諸国の強い要請等の事情があったと理解している」。
 
 これが結論なんです。
 
 調べてみると、この質問主意書を提出したのは野間友一衆議院議員日本共産党)、中曽根康弘内閣の時でした。野間先生は既に物故されましたが、和歌山弁護士会の大先輩です。
 
 
 それからもう一つ、パナマの侵略の問題、あなたが言った外務大臣の談話(1989年12月21日)、全文もっております。そこではこうのべております。
 
 「米国がパナマにおいて武力を行使し、多くの死傷者を出す事態となったことを遺憾とするものであるが、同時に、同国が自国民を保護するために軍事行動を取らざるを得なくなった背景は、理解する」。
 
 両方とも「理解」なんですよ。両方とも政府声明の結論は、どちらも米国が行った軍事行動そのものについては「理解」で終わっているんです。あなたはちゃんと全部読まなきゃだめですよ。
 この三つだけじゃありません。アメリカは戦後、数多くの先制攻撃を実行してきました。私は、一昨日の本会議で、「日本が国連に加盟してから今日まで、日本政府が米国による武力行使に対して、国際法上違法な武力行使として反対したことが一度でもありますか」と質問いたしました。総理は、「日本は米国
武力行使国際法上違法な行為として反対したことはありません」と明確に答弁されました。
 日本政府は、戦後、ただの一度も、アメリカの戦争を国際法違反として批判したことはないんです。全部「賛成」、「支持」、「理解」してきた。国連総会の3回の対米非難決議に対しても、日本政府は反対・棄権してきたんです。こんな異常な米国への無条件追随の国は、世界の主要国のなかでもほかにありま
せんよ。
 総理は、先ほどから再三おっしゃっております。「国際法上違法な武力の行使を行っている国を支援することはない」。しかし、米国が違法な先制攻撃を繰り返しても、これだけ国連総会で非難決議があがっても、ただの一度も違法と批判してこなかった日本政府が、そしてあなたが、「違法な武力の行使を行っている国を支援することはない」といって、いったい誰が信用しますか。お答えください。
 
首相 これはあの、先ほども遺憾の意は表明しておりますし、理解は、同時に理解も示しておりますが、支持はしていないわけでありまして、支持をしていないわけですから、当然ですね、後方支援等、あるいは集団的自衛権の行使としての武力行使とかいうことは、まったくそれは考えられないわけでございまして。これはですね基本的に先ほど申し上げましたように、国連憲章上認められているのはですね、まず自国に対する武力攻撃が発生している場合になるわけでございまして、その関連から、国際法が認めていない、認められていないですね、武力の行使を行っている国に対する支援ということは行わないと、これはもう再三申し上げているとおりでございます。
 
志位 いろいろおっしゃいましたけどね、(米国の武力行使に)反対したことは一度もないんです。「賛成」、「支持」、「理解」なんですよ。こんな国は主要国でありませんよ。
 米国の戦争に口が裂けても「反対」といえない。このような政府が、米国から「武力攻撃されたから支援してくれ」、「支援しないと日本の存立にかかわるぞ」といわれて、どうして自主的な判断ができるか。米国が先制攻撃の戦争に乗り出しても、違法な戦争と批判できず、言われるままに集団的自衛権を発動することになることは明瞭であります。
 
 志位委員長は、この後さらに、ベトナム戦争イラク戦争を素材として、無批判に米国への追随を続けてきた日本の外交姿勢を明らかにしていくのですが、それは次回(最終回)でご紹介します。
 
 なお付言すると、万一、米国が先制攻撃を「受けて」戦争が始まった場合であっても、日本自身が武力攻撃を受けていない以上、集団的自衛権を行使することが憲法に違反することは言うまでもありません。当然、日本共産党もその立場です(のはずです)。
 なぜ、それが違憲なのかということについては、既に散々論じられてきており、私自身も昨年まであちこちの学習会の講師を務めながら説明に努めてきましたので、今さらという気もしますが、参考までに、昨年6月に開かれた憲法学習会用のレジュメとして書いたものをご紹介しておきます。
 
 
 また、昨日(6月4日)開かれた衆議院憲法審査会における参考人質疑において、与党推薦の方を含め、3人の参考人全員(長谷部恭男氏、小林節氏、笹田栄司氏)が集団的自衛権行使を容認する法案を憲法違反と断じたことが話題となっていますが、その動画、特に3人の参考人の基調発言と民主党中川正春議員による質疑を視聴するのも良いかもしれません。
 
 
以下、「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(6)」に続く。