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志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(6/完)~ベトナム戦争とイラク戦争を教訓としない国

 今晩(2015年6月6日)配信した「メルマガ金原No.2113」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(6/完)~ベトナム戦争イラク戦争を教訓としない国

 5月27日・28日の両日行われた衆議院安保法制特別委員会(衆議院は「平和安全特別委員会」と略称)における志位和夫日本共産党委員長による質疑は、多くの人に感銘を与え、その動画、文字起こしなどに多くのアクセスが集まりました。
 ささやかながら、5月28日にアップした私のブログもその1つでした。
 そして、6月1日から「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」と題し、しんぶん赤旗に掲載された議事録を転載しながら、関連条文などを引用した補注を施す連載を始めました。それは、以下のような問題意識からでした。
 
 昨年7月1日の閣議決定国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)や今次の戦争法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)について、それがいかに憲法に違反するとんでもないものであるかを訴えても(それ自体はとても大事なことですが)、なかなか多くの国民にその訴えが届いているという手応えが得られない、という焦燥感を抱いていたのは私だけではないと思います。
 そのような中で行われた志位委員長による特別委員会質疑は、重要な歴史的資料の収集を含めた周到な事前準備、限られた時間を有効に使うための論点の絞り込み、まともに質問に答えないであろう首相らの答弁内容を予測し切った上での質問の組み立て、常に冷静さと礼節を失わない毅然とした態度などが渾然一体となって、戦争法案の問題点をえぐり出すことに成功したもので、普段、国会論戦を熱心にフォローなどしていない、また、共産党の支持者という訳でもない多くの人々に、まさにこれが真の「国民の代表」に期待される国会論戦というものだ、という確信と感動を与えたのだろうと思います。
 
 とりわけ、私が重要だと考えたのは論点の絞り込みです。
 実は、2日間にわたって志位委員長が追及した論点は、そう多くはありません。
 5月27日には、周辺事態法(あらため重要影響事態法)と国際平和支援法の2つの法案について、周辺事態法における「我が国周辺の地域」や個別の特措法での活動地域の限定を取り払い(世界中どこへでも)、「非戦闘地域」という要件を外してしまい、活動範囲も拡げられた後方支援(協力支援)という名の危険な兵站業務に自衛隊を従事させるという内容であることを明らかにしました(ここまでが連載の(1)~(3))。
 そして28日には、まずPKO協力法改定法案によって、国連が統括しない国際連携平和安全活動なるものに参加できることとし、さらに、(PKOも含めて)「監視、駐留、巡回、検問及び警護」や駆け付け警護など、著しく危険な任務が追加されていることを指摘した上で、アフガニスタンのISAFに派兵して数十人の犠牲者を出したドイツの例を詳細に紹介し、この法案が成立したあかつきに自衛隊員や日本人がどのような事態に直面することになるのかを具体的に明らかにしました(連載(4))。
 そして、いよいよ28日の後半で集団的自衛権の問題を追及するのですが、ここでは細かな法律論には立ち入らず、日本が国際連合に加盟して以降、ただの一度も“アメリカの戦争”に反対したことがないという事実を実証的に明らかにした上で(連載(5))、ベトナム戦争イラク戦争に対する日本政府の対応を取り上げ、「アメリカが行う戦争は、いつでも、どこでも、常に正義だと信じて疑わない。米国政府の発表は、いつでも、どこでも、事実だと信じて疑わない。ねつ造と分かっても説明も求めず、反省もしない。」とだめ押しをし、日本の自衛隊が“米国の戦争”に参戦させられる運命が確実であることを、誰の目にも明らかにして質疑を締めくくります(本日の連載(6))。
 どうでしょうか、このように振り返ってみると、志位委員長は、実はそんなに多くの論点について追及しているのではないことがお分かりいただけたでしょう。
 私が理解したポイントは以下のように要約できると思います。
 
(1)憲法論的には、重要影響事態法案における後方支援が、軍事的、国際的には兵站そのもの、武力行使と不可分一体のものであることを明らかにすることに重点を置いています。
(2)さらに、重要影響事態での後方支援、国際平和共同事態での協力支援、国際平和協力法に基づく拡大された業務のいずれにあっても、従来とは比較にならない危険な現場に自衛隊を投入し、自衛隊員に「殺し、殺される」任務を押しつけることになることを具体的に明らかにします。、
(3)最後に、上記の各事態においてもそうですが、とりわけ存立危機事態について、米国からの出兵要請を、日本政府が自立的な判断に基づいて拒否することなど到底想定できず、結果として、自衛隊員を“米国の戦争”の尖兵として差し出すことになることを明らかにします。
 
 もちろん、今次の戦争法案については様々な論点(突っ込みどころと言っても良いでしょう)があり、特別委員会での他の野党議員による質疑にも注目が必要です。
 たとえば、岸田文雄外相の答弁が原因で審議が中断するきっかけをとなった後藤祐一議員(民主党)による周辺事態(重要影響事態)と軍事的波及についての質問(5月29日)など、掘り下げていく価値は十分にあると思います(維新の党の柿沢未途幹事長によるtweetまとめが分かりやすくて参考になります)。
 とはいえ、「戦争法案」反対への世論の結集のために残された時間は限られています。多くの言葉を費やしても、それに耳を傾けてもらい、さらに理解してもらうことは容易ではありません。
 その意味からも、私は、多くの法案(形式上は2つですが)の中から周辺事態法(重要影響事態法)を取り上げたことは正しいと思います。以前にも書きましたが、戦争法案の全貌を一挙に理解しようとするのは無理であり、鍵となる法案をしっかりと理解し、そこから押し及ぼしていくのが理解のための早道です。
 そして、上記ポイントの(2)と(3)です。今、最も国民に訴えるべきことは、戦争法案が成立したあかつきに自衛隊員やそれ以外の国民にどういう運命が降りかかるのかについて具体的なイメージを持ってもらうこと、それも単純なキャッチフレーズの連呼によってではなく、事実を踏まえ、あくまで論理的な筋道を通しながら、聞く人の心情に直接訴える、情理を尽くした誰もが納得せざるを得ない議論によって得心してもらうこと、これが最も重要であると思います。
 志位委員長による質疑が多くの人の心をゆさぶったのは、戦後の日本に訪れた最大の危機に際し、最も聞きたい議論を聞けたという感動が得られたからでしょう。
 私が、6回にわたって「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」を連載することにしたのも、この質疑を1人でも多くの方に、視聴していただきたい、お読みいただきたい、そして、より深く理解していただくための一助にでもなればと思ってのことです。
 そして、その副産物として、私自身の戦争法案に対する理解が、この連載に取り組むことによって深まったことは間違いなく、近いうちに行う学習会のための非常に有益な準備となりました。
 
 なお、特別委員会での質疑の模様を衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)で全編視聴する時間のある人はほとんどいないと思いますので、掲載まで10日ほどかかりますが、公式の会議録が順次インターネットで公表されますので、それをお読みになることをお勧めしたいと思います。
 調べたところ、本日(6月6日)現在、5月27日までの分の会議録がアップされています。
 5月22日は委員長及び理事の互選、5月26日は中谷防衛大臣による法案の趣旨説明だけなので、実質審議が行われたのは5月27日からです。
 
第189回(常会)
衆議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会
会議録 平成27年5月27日 第3号

 
 ただし、公式の会議録は、発言の速記録そのものではなく、ある程度(場合によっては相当)整理されていますので、志位委員長による質疑については、しんぶん赤旗に掲載されたもの(関係者にすぐに配布される未定稿を基にして修正を加えたのではないかと推測しているのですが)、つまり私の連載に転載したものでお読みになることをお勧めします。
 
 さて、前置きが長くなりました。・・・と言うか、以上は連載全体の締めくくりのつもりで書いたものです。
 これまでの5回分とは異なり、今回は、特に条文の引用もありませんので、途中で補注を加えることはせず、最後まで質疑を一気に読んでいただこうと思います。
 6回にわたる連載を最後まで読んでくださった方に心から感謝します。
 是非ともこの国民共有の貴重な成果を広めることにご協力ください。
 
 なお今回も、引用する志位和夫氏の質問は紺色、安倍晋三首相や岸田文雄外相の答弁は赤色で表記しました。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年5月28日
国会論戦はこうありたい~志位和夫日本共産党委員長による安倍首相追及を多くの人に視聴して欲しい

2015年6月1日
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(1)~自衛隊は「戦闘地域」に派遣される
2015年6月2日
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(2)~必ず戦死者が出る
2015年6月3日
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(3)~兵站は軍事行動の不可欠の一部

2015年6月4日
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(4)~治安維持でも「殺し、殺される」
2015年6月5日
志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く(5)~日本は“米国の戦争”に反対したことはただの一度もない
 

2015年5月28日 衆議院 安保法制(平和安全)特別委員会 動画

 
 
志位 さらに聞いていきます。
 第2次世界大戦後の世界で起こった国際紛争のなかでも、1960年代から70年代にかけてのベトナ
ム戦争、2003年から今日に至るイラク戦争は、その規模の大きさ、世界に与えた影響という点で、とりわけ重大な戦争でした。そして、この二つの戦争に、日本政府は首までつかって深く関与しています。ベトナム戦争にさいして、日本政府は、米国の軍事介入を全面的に支持し、在日米軍基地をベトナム攻撃の最前線の基地として使用させました。イラク戦争にさいしても、日本政府は、米国による先制攻撃を全
面的に支持し、自衛隊イラクに派兵し、この戦争の協力者になりました。
 第2次世界大戦後の世界で起こったこの二つの戦争に対して、日本政府が、そして総理が、どういう検
証、総括を行ったのか。これは決して過ぎ去った過去の問題ではありません。これを明らかにすることは、いまあなたが、そして安倍政権が、戦後半世紀余にわたる政府の憲法解釈を大転換させ、戦後初めて集団的自衛権行使の道に踏み込もうとするもとで、避けて通ることはできない大問題であります。そこで、
私は立ち入って問題点をただしていきたいと思います。
 まずベトナム戦争についてであります。
 わが党は、この戦争が、アメリカによる侵略戦争だったということは、すでに世界史によって証明され
た、動かしがたい歴史的事実だと考えております。アメリカは、第2次世界大戦で使った2倍半以上の爆弾、枯れ葉剤など残虐兵器を使用し、最大55万人という地上兵力をつぎ込みながら、ついにベトナム民を屈服させることはできず、逆に、全面的な敗北、撤退に追い込まれました。この事実そのものが、ベ
トナム戦争が米国による不正・不義の侵略戦争だったことを示しています。
 ただ私が、今日、ここでただしたいのは、ベトナム戦争の性格をどう見るかではありません。米国がベ
トナムに本格的な軍事介入を進める決定的契機となった、いわゆる「トンキン湾事件」について、日本政
府がどういう歴史的検証を行っているかについてであります。
 米国政府は、1964年8月、ベトナム北部のトンキン湾で、アメリカの駆逐艦が、2度にわたって、
一方的に、北ベトナム魚雷艇に攻撃されたと発表します。そして、それへの「自衛権」として、米空軍北ベトナムの沿岸基地への爆撃を行います。さらにアメリカは、これを契機に北ベトナムへの爆撃――いわゆる「北爆」ですね――これを開始し、地上部隊の大量派兵に踏み出していった。「トンキン湾事件
」とはそういう、決定的な契機とされた「事件」であります。
 しかし米国政府の当時の発表は、ねつ造だったことがいまでは明らかになっております。1971年に
暴露された米国防総省ベトナム秘密報告――いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」によって、アメリカは、この「事件」に先立つ1964年2月から、北ベトナムに対する秘密の軍事作戦を開始しており、トンキン湾での衝突は、米国の軍事的挑発によって引き起こされたものだということが明らかにされました。さらに、米国が、北ベトナム攻撃の決定的口実とした、「(1964年)8月4日の北ベトナムによる魚雷攻撃」なるものは、「実際には行われていなかった」ことが、当時、米国防長官を務めたマクナマラ氏が――ここに持ってまいりましたが、1995年に発表した『回顧録』で証言していることは、ご承知
の通りだと思います。
 私は、政府にうかがいたい。政府は、この「トンキン湾事件」について、現在どのような認識をもって
いるんですか。
 
外相 1964年のトンキン湾事件について、どのような認識をもっているかということでありますが、まずこの点につきましては、平成26年、3月4日、参議院予算委員会において、私自身答弁させていただいております。
 トンキン湾事件について、日本政府は有権的な判定をする立場になく、コメントを控えさせていただく
、これがわが国の立場であります。そして、ご指摘の「ペンタゴン・ペーパーズ」に関する報道、あるいはこの米国高官が引退後について言及したということ、こういった報道等についてはまあ承知はしておりますが、アメリカ政府自体はコメントはしていないと承知をしております。
 
志位 日本政府として「有権的な判定をする立場にない」と、「コメントは控えたい」と、ただ、アメリカ政府自体はコメントはしていないというご答弁でした。
 たしかにアメリカ政府の公式のコメントはありません。しかし、私が、指摘しておきたいのは、先ほど
の「ペンタゴン・ペーパーズ」は、米国の国立公文書館が、2011年に秘密指定を解除して公開し、政
府として公文書として認定しております。
 それからもう一つ、ここに具体的なものを持ってまいりましたが、アメリカのNSA――国家安全保障
局が、2005年、「トンキン湾事件」についてのNSAの分析官の論文を公式に発表しているんです。これを読みますと、この論文では、当時の米軍側の電子情報を全面的に分析しまして、「8月4日の北ベ
トナムの攻撃がなかった」ことを証明しております。ですからこれはもう、ねつ造は明瞭なんです。
 そこで次の問題をお聞きしたい。あなたは「有権的な判定をする立場ではない」ので、「コメントは控
えたい」とおっしゃいましたが、それでは「トンキン湾事件」が起こった1964年当時、日本政府は、
この問題に対して、どういう「判定」をしていたか。ここに私は、当時の議事録を持ってまいりました。
 1964年8月10日、当時の(衆院)外務委員会で、当時の椎名外務大臣は次のように答弁しており
ます。
 
 「公海上においてベトナム側の攻撃があったものと考えておる次第であります」。「公海上で突如襲撃されたのでありますから、これを実力をもって排除する行為はやむを得ざるものであるという考え方でございます」。「その攻撃に対して武力をもって排除したのみならず、そのよって来たる根拠地を攻撃したことは、やはり自衛行為の延長であると考えております」。「アメリカ側がとった行動が自衛権の範囲内のものであると私が考える理由は、アメリカが自衛権の行使として合法的に認められた範囲をまさか逸脱することはあるまいという信頼からであります」。
 
 これが議事録に残っているんですよ。「ベトナムの攻撃があった」と断定しています。米国の「自衛権」の発動を「やむを得ざるもの」と支持しています。米空軍による爆撃も「自衛行為」として支持しています。その理由を問われると「米国を信頼しているから」と答える。あまりにも、あからさまな米国追随の姿が議事録に残っています。
 いまあなたは、いまの政府の答弁は、「トンキン湾事件」について、「判定する立場にない」「コメン
トは控えたい」と言ったんですが、当時は、明瞭に、「アメリカは正しい」と、「判定」しているんですよ。この64年の「判定」は間違いだったとお認めになりますか。
 
外相 あの、私も、当時の議事録を持って手元に持っています。そうした発言があったことは、承知をしております。ただ、米国政府自身はこの問題について正式なコメントを発しておりません。わが国政府として、有権的な判定をする立場にはない、コメントは差し控えさせていただく、これがわが国、政府の立場であります。
 
志位 あのね、64年当時には、「アメリカは正しい」っていう声明を出したんですよ。ところがいまは「コメントは控えたい」と言っているんです。態度を変えているわけですよ。だから当時のものは間違ったと、はっきりお認めください。
 
外相 ご指摘の、当時の発言について、発言のこの背景、意図については十分承知しておりません。いずれにしましても、わが国の政府は、この有権的な判定をする立場にない、コメントは控えたい、これが立場であります。
 
志位 今に至るも誤りを認めない。反省がない。これが明瞭になりました。
 もう1問聞きます。
 「トンキン湾事件」に関する当時の米国政府の発表が、その後、「ペンタゴン・ペーパーズ」、さらに
マクナマラ回顧録』などで、ねつ造だと判明した段階で、日本政府として、米国政府に説明を求めましたか。求めたのか、求めないのか。
 
外相 71年にニューヨーク・タイムズに掲載された「ペンタゴン・ペーパーズ」に関する報道、あるいは95年の『マクナマラ回顧録』の公表後、米国側から、この、どのような説明をうけたか、どのような説明を求めたのか、というご質問でありますが、そうした説明を求めた等の事実関係につきましては、確認中ではありますが、現時点では確認はされておりません。
 
志位 説明を求めたかどうか確認できないってことは、公式な説明を求めていないということですよ。公式な説明を求めたら、確認ができないということはないでしょう。文書が残っているはずです。
 総理に、今度は、うかがいたいと思います。総理に聞きます。これがベトナム戦争をめぐる日本政府の
対応ですよ。
 米国政府の発表を無条件で支持する。ねつ造と分かっても説明も求めない。いまに至るもまともな検証もしない。誤りだったという反省もしない。異常なまでのアメリカ追随というほかないではないですか。日本自身も深くかかわったベトナム戦争について、このような検証もなければ、反省もない姿勢でいいのか。それでいいのでしょうか。
 
首相 この、ベトナム戦争につきましてはですね、このトンキン湾の事件等について、当時の外務大臣当時の認識について、答弁をしているわけでございますが。もちろん、われわれが、いまいま、この、想定しているような、協力、あるいは武力の行使、と言うこととはかかわりのないことでございまして。当時の外務大臣がいわば、外務大臣としての考え方を述べたものであります。そこで、いまどうなのかということにつきましては、岸田外務大臣がですね、現在の立場についてご説明したとおりでございます。
 
志位 当時の態度表明と今の態度表明が異なっているから、反省があるのかと聞いたんだけれども、反省がない。総理からも反省がない。これは本当に重大な問題と思いますよ。日本外交これでいいのかと。アメリカのやることは何でも賛成、検証もしない。これでいいのか。
 
 いま一つ、(次に)進みたいと思います。
 2003年に米英等によって引き起こされたイラク戦争についてであります。
 わが党は、この戦争もまた、国連憲章を乱暴に蹂躙(じゅうりん)したアメリカによる先制攻撃の戦争
、侵略戦争だと考えております。そしてそれは、世界の圧倒的多数の声でもあります。この戦争にさいしては、戦争が始まる前から、反戦平和の嵐のような運動が世界中に広がりました。当時の世界人口の62億人のうち、50億人を抱える130以上の政府が、この戦争に反対または不同意の意思表示を行いまし
た。
 ただ私が、ここでただしたいのは、イラク戦争の性格をどう見るかではありません。米英等が戦争を開
始する最大の口実にした大量破壊兵器の問題です。
 米国のブッシュ大統領、英国のブレア首相は、イラクへの軍事攻撃を開始するさいに、「イラクは大量
破壊兵器を保有している」と繰り返し断定し、それを戦争の最大の理由にしました。当時の小泉首相も、イラク大量破壊兵器を保有している」と断定し、それを最大の理由として米英の軍事攻撃への支持を表明しました。当時、官房副長官だった総理、あなた自身も、国会の答弁で「大量破壊兵器を廃棄させる
ためには武力行使もやむを得ない、それに対する支持をした」とおっしゃっておられます。
 にもかかわらず大量破壊兵器は存在しなかった。これは事実であります。米国政府によるねつ造だった
ことは今や誰も否定できない事実となりました。この事実に対して、日本政府はどういう検証をやってい
るんでしょうか。
 この事実を前にして、ブッシュ大統領は、「イラク大量破壊兵器に関する情報機関の分析は誤りであ
ることが判明した」と、情報の誤りを認めました。「在職していたすべての期間中の最大の痛恨事」とも
のべました。ブレア首相も、情報の誤りについては「責任を感じている」と表明しました。
 総理、米英とも、当事者たちは、戦争を開始したことが間違っていたとは認めていないものの、「大量
破壊兵器の保有」という情報が誤っていた、認識の誤りであった、これは明確に認めているんです。日本政府としても、誤りをきっぱり認めるべきではないですか、総理。(首相は答弁に立たず)総理、あなたが言っているんだ。
 
外相 あの、ご指摘の大量破壊兵器の有無については、2005年12月、米国のブッシュ大統領が、演説において、イラク大量破壊兵器を保有しているとの情報の多くは誤りであることが判明した、この旨述べておられます。米国自身が、イラク大量破壊兵器の存在を確認できなかったことを対外的に明らかにしております。
 そして、このイラク戦争に対する、わが国の考え方ですが、このイラク戦争は、このイラク戦争におい
て、この武力行使を支持するに至った当時の問題の核心は、クウェートに侵攻して、そして国際社会の信頼を失っているなか、査察への協力を通じて大量破壊兵器の廃棄を自ら証明すべき立場にあったイラク、即時、無条件、査察受け入れを求める、この安保理決議、あわせて三つの決議が出されていますが、すべてに違反をし続け、そして大量破壊兵器が存在しないことを自ら証明しなかったことにある、こうした戦争に至った核心がここにあると考えている、と考えているのがわが国の立場であります。
 
志位 聞いていることに答えていません。「大量破壊兵器の保有」という認識が誤っていたということを、キッパリと認めるべきではないかと(聞いている)。答えてないですよ。今度は、総理が答えてください。
 
外相 大量破壊兵器の存在が確認できなかった。これは米国自身、米国の大統領自身が表明しております。そして、このイラク戦争については、わが国として、そして外務省として、見識、見識、有識者をまじえて検証いたしました。そしてその上で、イラク戦争における核心、これは度重なる違反、国連決議にイラクが違反しつづけた、ここにあるという、というこの認識を示しております。
 
志位 何度聞いても答えないわけですが、政府が「検証結果」というものを、2012年12月21日、前の政権の時代でありますが、はっきり出しているんですよ。そのなかで、「事後的に言えば、イラク大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については厳粛に受け止める必要がある」、そういっているだけでしょ。結局、誤りの反省をしていないんです。「事実を受け止める」と、これしかいっていない。これは、極めて重大ですよ。「厳粛に受け止める」というだけで、「反省する」とも「誤りだった」とも言わない。米英とも、情報の誤りを認めているのに、日本(政府)は言わない。
 そしてあなたは、「イラク安保理決議を受け入れなかったことが問題の核心だ」と繰り返しました。
しかし、政府がいまに至るも持ち出している国連安保理決議678、687、1441は、どれも武力行使の根拠になりえないということは、私が、当時の国会で、小泉総理とさんざん議論して、明らかにして
きた問題であります。
 そして、あなたは「核心」がそこにあったというが、当時は何と言っていたか。イラク戦争が開始され
た2003年3月20日の深夜の衆院本会議で、私の質問に対して、小泉首相は、「武力行使なしに大量破壊兵器の廃棄を実現することが不可能な状況下では、米国等による行動を支持することが適切だ」と答弁しました。小泉首相は、また、私が(当時)党首討論で取り上げましたけれども、自らの「メールマガジン」で、「この問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器を廃棄しないことにあります」と、はっきり言ったんですよ。当初は、大量破壊兵器の問題を、戦争支持の「核心」をなす問題と位置づけていたじゃないですか。そうしておいて、大量破壊兵器が存在していないことがわかると、「安保理決議を
受け入れなかったことが問題の核心だ」という、すり替えをやる。こんな不誠実な態度はありません。
 1点聞きます。イラク大量破壊兵器が存在していないことが明らかになった段階で、日本政府として
、米国政府に説明を求めましたか。
 当時、首相官邸で、安全保障・危機管理担当の官房副長官補を務められた柳沢協二氏が、その著書『検
証 官邸のイラク戦争』のなかで、「アメリカに説明を求めなかった」と証言しております。アメリカに説明を求めなかった。これは事実ですか。
 
外相 まず先ほど、委員の方から、このイラク戦争におけるこの安保理決議、これは意味がなかった、こういったご指摘があったと紹介がありました。
 しかし、このイラク戦争に関しまして、先ほど外務省として調査を行ったということを申し上げました
。すみません。有識者を交えてという部分、ちょっといま、確認しましたら、これは外務省として独自の
調査でありました。
 この調査におきましては、この安保理決議678、1990年11月のこの決議、これによって武力行
使が容認され、そして安保理決議687、1991年4月、この決議によって条件付きな停戦決議が行われ、そして、安保理決議1441、2002年11月の決議によって、この最後の機会を与えるとしたわけでありますが、結局、イラクはこの決議に従うことはなかった。これが核心であるという内容をまとめ
ております。
 そして、この大量破壊兵器の有無については、厳粛に受け止める。このような判断をしたところであり
ます。
 この大量破壊兵器の有無については、確認したのかということでありますが、これ、2005年12月
にアメリカ自身がこの自らの考えを明らかにしております。これによって対外的には明らかになったと受け止めております。
 
志位 外交ルートできちんと確認したことがあるんですかと聞いているんです。
 
外相 いま、現状そういったやりとりについては、確認はできておりません。
 
志位 確認してないんですよ。はっきりとその問題に限って、外交ルートで問い合わせをしたということは確認していない。やっていないんです。アメリカの発表を聞いただけで、何も問い合わせしていない。
 いま、あなたはいろいろと国連安保理決議についてるるいわれました。
 しかし、決議678は、1990年の湾岸危機の際に、クウェートからのイラク軍の排除のための武力
行使を容認したものであり、戦争の根拠にはなりません。
 決議687は、湾岸戦争の停戦条件を定めたものですが、「停戦協定違反」をもって武力行使の根拠と
することも不可能です。停戦協定の当事者は国連であり、その違反と失効を決めることができるのは国連
だけですが、国連安保理はそのような決定をしていません。
 そして決議1441も、その決議に違反したからといって自動的に武力行使を行うことを授権したもの
ではありません。
 だからこそ、米英は、あれだけ執拗(しつよう)に、武力行使にお墨付きを与える新しい決議の採択を
安保理に迫ったのであり、それが失敗したことは、この戦争が国連を無視した無法な戦争であることを自
ら証明したわけであります。
 これは、「トンキン湾事件」と同じではないですか。
 総理に聞きます。米国政府の発表を無条件に支持し、ねつ造と分かっても説明も求めない。いまに至っ
ても検証もしない。誤りだったという反省もしない。
 総理、アメリカが行う戦争は、いつでも、どこでも、常に正義だと信じて疑わない。米国政府の発表は
、いつでも、どこでも、事実だと信じて疑わない。ねつ造と分かっても説明も求めず、反省もしない。これが、日本政府の基本姿勢ですか。こんなことでいいのですか。いま(質疑を通じて)、ずーっと明らかになったでしょう。総理お答えください。
 
首相 私?先ほど、イラク戦争に対するわが国の立場は、岸田大臣から答弁させていただいた通りでありまして、当時、フセイン大統領はですね、大量破壊兵器を所有していないことを証明できる立場にあったにもかかわらず、それを行わなかった。そして累次の3次にわたる国連決議に違反し続けたと、いうことでありました。それがまさに検証の結果でもあったわけでございます。これはいま申し上げております通りでございまして、同時に、武力行使を行った米国、あるいは武力行使をイギリス等はですね、また情報収集を主体的に行った両国が、その情報が誤りであったことを認めているということでございます。
 
志位 私は、こんな外交姿勢でいいのかということを聞いたんだけれども、反省がありません。こういう究極のアメリカ従属の政府が、集団的自衛権を発動し、アメリカとともに海外での戦争に踏み出すことがいかに危険か。
 第二の「トンキン湾事件」、第二の「大量破壊兵器」問題が起こった時に、あなたがたは、これまでも
そうだったように、米国政府の発表をおうむ返しにし、無条件で支持し、協力することになるでしょう。
 ただし、ベトナム戦争のさいには、日本の協力は、在日米軍基地の使用にとどまりました。イラク戦争
のさいには、自衛隊を派兵しましたが、「非戦闘地域」での支援にとどまりました。しかしこの法案が通れば、根本的に事態は変わってきます。米国の無法な戦争に、自衛隊武力行使をもって参戦することになります。日本が侵略国の仲間入りをすることになるわけでありまして、その危険性ははかりしれないと
いわなければなりません。
 2日間の質疑を通じて、政府が「平和安全法制」の名で持ち出してきた法案は、武力の行使を禁止し、
戦力の保持を禁止した憲法9条を幾重にも踏みにじる違憲立法であることが明らかになりました。
 戦後最悪の安倍政権による、戦後最悪の戦争法案は、廃案にすることを強く求めて、質問を終わります