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「自衛隊を活かす会」三題~6/20関西企画、6/19柳澤協二氏講演(神戸)、5/18提言発表記念シンポ

 今晩(2015年6月21日)配信した「メルマガ金原No.2128」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」三題~6/20関西企画、6/19柳澤協二氏講演(神戸)、5/18提言発表記念シンポ

 昨日(6月20日)午後1時半から、大阪市福島区民ホールにおいて、「自衛隊を活かす会」初の関西企画として、「新「安保」法制で日本は危なくなる!?」が開かれ、参加してきました(チラシ)。
開会(自衛隊を活かす会・関西企画) 金銭感覚はシビアと言われることの多い大阪で、参加費(資料代)1,000円というシンポジウムにどの程度の人が来てくれるかと少し心配もしましたが、主催者発表で350人という多くの方が参加し、最後まで熱心に登壇者の話に耳を傾けていました。
 以下に、当日のタイムスケジュールを転記しておきます。
 
新「安保」法制で日本は危なくなる!?
主催 自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会
後援 「自衛隊を活かす会」(略)の関西企画を成功させる会
開会
主催者挨拶
 伊勢﨑賢治(東京外国語大学教授、「会」呼びかけ人)
第Ⅰ部(報告)
1、「安倍ドクトリンの抑止の特徴と護憲抑止」
   加藤朗(桜美林大学教授、「会」呼びかけ人
2、「防衛法制の変遷から見る安全保障法制改正の本質と課題」
   渡邊隆(国際地政学研究所副理事長、元陸将・第一次カンボジア派遣施設大隊長
3、「市民の目線でとらえた戦争法案の問題点」
   石田法子(弁護士、前大阪弁護士会会長)
第Ⅱ部(討論)
 コーディネーター 柳澤協二(「会」代表)
閉会挨拶
 梅田章二(「成功させる会」代表)
 
 ちなみに、伊勢﨑賢治さんが「主催者挨拶」ということになっていますが、事実上、その前の松竹伸幸さん(「自衛隊を活かす会」事務局)のお話が主催者挨拶であって、伊勢﨑さんのお話は、内容的に見て、第Ⅰ部における最初の報告というものでした。
 
 なお、公式サイトへの動画のアップには少し時間がかかるのが普通で、現在視聴できるのは、IWJ大阪による中継アーカイブだけのようです。今のところ、会員でなくても全編視聴できますが、いずれ会員限定になるものと思います。
 
 
 何しろ、3時間に及ぶ長丁場ですから、全編視聴するのは正直大変なので、「とりあえず視聴するとすれば誰の発言が一番お薦めか?」と問われれば、「自衛隊を活かす会」の3人の呼びかけ人の皆さんについてはこれまでも再三ご紹介してきていますので、渡邊隆元陸将の発言(IWJ動画2本目の27分~、3本目の10分~、19分~、4本目の3分~、7分~、19分~)をまず視聴されてはどうでしょうか、とお答えします。一つには、渡邊さんの滑舌が非常に良く、発言が聴き取りやすいということがあります。もちろん、言語明瞭、意味不明瞭では仕方がありませんが、渡邊さんは意味も明瞭です。
 
 ところで、「自衛隊を活かす会」代表である柳澤協二さんは、もっぱらコーディネーターとしての役割に重きを置いておられた関係から、新「安保」法制についての柳澤さんのまとまった意見を知りたいという人にはやや物足りなかったかもしれないのですが、ちょうどタイミング良く、前日の6月19日(金)午後6時30分から、神戸市の兵庫県保険医協会において開催された学習会(「非核の政府を求める兵庫の会」主催)で柳澤さんが講演され、IWJ兵庫によって中継されたアーカイブが公開されています。後半では、泥憲和さん(元自衛官・防空ミサイル部隊所属)との対談もあり、画質・音声とも非常にクリアに全編視聴できますので、これは大変お薦めです。
 
 
 前半約1時間が柳澤さんの講演であり、全編の視聴をお勧めしますが、特に印象に残った箇所を2、3あげるとすると、
18分~ 憲法との矛盾は、武器使用の主体を「自衛隊」ではなく「自衛隊員」とし、「国家の意思」で
はなく「個人の意思」としていることに端的にあらわれる。
40分~ 自衛隊員の「服務の宣誓」における「国民の負託」とは何か?を突き詰めて考える必要がある

56分~ 安倍首相がやろうとしていることの根底にあるのは(パワーポイントのボードから転記する)、対米コンプレックス+対中コンプレックス⇒対米従属による「対等性
」?⇒「ゆがんだ大国意識」
などですが、以下には、冒頭(6分~)のいわば「まくら」とか「つかみ」にあたる部分の一部を文字起
こししておきます。
 皆さんにとっても、多分非常に興味深い「仮説」でしょうから。
 
柳澤協二氏 私らと一緒に国民安保法制懇というところで活動している憲法学者小林節さんは、前から過激な発言で有名でしたけど、長谷部恭男さんていうね、一見地味な、この人、秘密保護法に賛成だったんですね。それで、自民党は「お友だち」だと勘違いして(笑)呼んでしまった。ところが、去年の7月の閣議決定に対して、国民安保法制懇で反対の声明を、非常に激烈な調子で書いた起案者は長谷部恭男んだったんですね。なんで、そんなこと分かんないんだろうなと思って。
 うちの娘、カウンセラーやってるうちの娘の診断によると、フロイトの心理学では「無意識の錯誤」というのがあって(笑)、「本当は、これいけないんじゃないか」と、しかし表向き合わせてるけど「これは間違ってるんじゃないか」と思うとね、無意識のうちにそれを修正するための錯誤を起こすんだという
ね。自民党の船田(元)議員は、そういうことなんじゃないかという娘の診断なんですが。
 こういうことがいくつも起きてくると、確かにこれはもう世の中変わってくる。
 
 柳澤さんが言われている国民安保法制懇閣議決定批判の声明というのは、2014年9月29日に公表した「集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回を求める」という文章です(HTML版PDF版)。
 そういえば、その発表記者会見の模様をご紹介した私のメルマガ(ブログ)を読み返してみると、確かに長谷部恭男さんも会見に出席していました。
 
2014年10月1日
 
 当時、誰がベースとなる文章を起案したのかまで思いが至っていませんでしたが、とにかく読めば読むほど訳が分からなくなってくる7月1日閣議決定国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)に対して、本当に胸に落ちる「解」を与えてくれた最初の文章であるというのが私の感想でした。
 長谷部教授が起案したと聞いた上であらためて読み返してみれば、たしかにこれは憲法学者、それも、
安全保障問題にもそれなりの見識を持った一流の憲法学者が起案したものに違いないと肯けます。
 国民安保法制懇には、長谷部教授の他にも、樋口陽一氏(東京大学名誉教授、日本学士院会員)、小林節氏(慶應義塾大学名誉教授、弁護士)、愛敬浩二氏(名古屋大学教授)、青井未帆氏(学習院大学教授)という著名な憲法学者が揃っていますが、出来上がった文章のある意味「辛辣な」とも言える厳しさは、長谷部教授が書いたと言われてこそ納得できるような気がしてきます(もちろん後知恵ですが)。
 
 ということを前提にあらためて6月4日衆議院憲法審査会での、長谷部教授による違憲発言を振り返ってみると、(時間の制約もあり、質問に対する答えということもあって)実に控え目な表現にとどまっていたということが、昨年9月の国民安保法制懇の声明と比較すればよく分かります。
 それにもかかわらず、自民党公明党の何人もの議員が、火に油を注ぐ発言を繰り返し、長谷部教授を完全に怒らせた結果が6月15日の2つの記者会見、それに週刊朝日での小林節氏との対談などに繋がっ
たのでしょう。
 
 さて、「自衛隊を活かす会」シリーズから、いつの間にか「憲法学者の矜恃」シリーズにスピンオフしてしまいましたが、私が、昨年9月29日の国民安保法制懇「集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回を求める」と同じくらいに重要な文章だと思っているのが、今年5月18日に自衛隊を活かす会が発表した「提言・変貌する安全保障環境における「専守防衛」と自衛隊の役割」なのです。
 そして、その提言の発表をかねた記念シンポジウム「変貌する安全保障環境の中で生きる「専守防衛」と自衛隊の役割」(5月18日/衆議院第2議員会館)の、文字起こしはまだ掲載されていませんが、動画は公式サイトにアップされていますので、最後にこれをご紹介しておきます。5月18日には、2月14日のシンポに続き、冨澤暉氏(元陸上自衛隊幕僚長)が再びゲストとして登壇し、新「安保」法制に基本的
に賛成する立場からの意見を述べています。
 富澤氏ような意見と対峙することにより、新「安保」法制反対の意見にもより深みを与えることができるのであり、これを視聴することによって、安倍首相や自民党公明党の議員となぜ議論が成り立たないのか、ということが分かってくるような気がします。
 
変貌する安全保障環境の中で生きる 「専守防衛」と自衛隊の役割|自衛隊を活かす会
 

(参考書籍)