wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

伊勢﨑賢治氏の最近の発言から~「保護する責任」と日本の果たすべき役割

 今晩(2015年7月4日)配信した「メルマガ金原No.2141」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
伊勢﨑賢治氏の最近の発言から~「保護する責任」と日本の果たすべき役割

 去る6月20日(土)に大阪市福島区民ホールで開かれた「自衛隊を活かす会」初の関西企画に登壇した呼びかけ人の伊勢﨑賢治さんは、冒頭の主催者挨拶(実質は最初のプレゼンテーション担当)を担当した後、第1部が終わるとそそくさと会場をあとにし、同日夕刻からの「伊勢﨑賢治ジャズヒケシin北新地 with 木畑晴哉トリオ」のリハーサルに向かったのでした。残念ながら、私は所用のため、伊勢﨑さんのトランペット演奏を堪能することは断念し(昨年11月14日の和歌山市での講演終了後、ジャズ喫茶を借り切っての打ち上げで、かぶりつきの席で伊勢﨑さんの腕前は堪能していたいし)、まっすぐ和歌山に帰りましたが。
 
 ところで、巻末の伊勢﨑さんを取り上げた私のブログ一覧(網羅はしていません)でもお分かりのように、私は以前から伊勢﨑さんの発言はかなりしつこくフォローしてきたつもりです。
 その私から見ても、戦争法案(政府は「平和安全法制整備法案」及び「国際平和支援法案」と呼称)の国会上程前後から、伊勢﨑さんの発言を目にする機会がぐっと増えてきたように思いますので、ここでまとめてご紹介しておこうと思います。
 ただ、動画を最初から終わりまで視聴する時間がない方は、マガジン9に掲載された文章(談話をマガジン9編集部が整理し、伊勢﨑さんが最終的に手を入れて完成したのではないかと勝手に推測しています)をまずお読みになることをお勧めします。
 そして、動画については、順序は先後しますが、7月1日に行われた衆議院安保法制特別委員会での参考人としての意見陳述をまず視聴するのが良いと思います。時間の都合もあり(約16分)、PKOに絞り込んで話をされており、国会という場を意識してか、いつもになく(?)発語明瞭で非常に聴き取りやすいです。
 そして、かねて伊勢﨑さんが強調されている、「PKO(PKF)は大きく変質した」ということ、そして、そもそも軍法もなく、国家が全責任を負うという体制もない中で自衛隊を海外に送ってはならないという持論が、簡潔かつ説得力豊に語られています。
 
日本記者クラブ 2015年5月20日
伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授 著者と語る『本当の戦争の話をしよう~世界の「対立」を仕切る』 2015.5.20


会見メモ
『本当の戦争の話をしよう: 世界の「対立」を仕切る』の著者、伊勢崎教授が、NGO国際連合職員として世界各地で紛争処理、武装解除などに携わった経験について話し、記者の質問に答えた。
司会 星浩 日本記者クラブ企画委員長(朝日新聞
 
【安保】伊勢崎賢治(参考人) 平和安全特別委員会 2015年7月1日
 

 なお、伊勢﨑賢治参考人の意見陳述は16分程度のものですが、この日は他にも、
  小川和久氏(静岡県立大学特任教授)
  折木良一氏(第三代統合幕僚長
  鳥越俊太郎氏(ジャーナリスト)
  柳澤協二氏(国際地政学研究所理事長)
参考人として意見を述べており、その全体は衆議院TVをご覧ください。
 
衆議院インターネット審議中継 2015年7月1日 (水)
平和安全特別委員会(7時間45分)


マガジン9 特別企画 2015年6月19日 UP
「安保法制は阻止すべき。けれど、そこで終わらせてはいけない」伊勢崎賢治(その1)

(抜粋引用開始)
 PKO協力法改正に関する議論を聞いていると、与野党両方の議員が PKOとはどういうものなのか、まったく現状認識していないと感じます。まあ、それは今の政権だけの問題ではなくて、ずっとそうだったわけですが。
 国会ではいまだ「PKO五原則が」とか「停戦合意が破られたら撤退する」とかいう話が出てきますが、そんなのはすでに国際社会から見れば、20年前の議論なんです。今のPKOというのは、そういうレベルのものではありません。
 かつてのPKOはたしかに、紛争当事国の合意を得て活動し、停戦合意が破られたら、国連が「紛争の当事者」になってしまうのを恐れて撤退するというものでした。しかし、その結果として1994年のルワンダの大虐殺では、100万人を「見殺し」にすることになってしまった。その反省として「保護する責任」(※)の考え方が生まれ、PKOのあり方も大きく変わってきました。つまり、当事国の同意や停戦合意とは関係なく、とにかく「住民を保護する」ことがPKOの最優先任務とされるようになってきたわけです。
 もちろん、それは内政干渉にほかなりません。「住民を助ける」ということは、本来であればその国家の役割。でも、その国家自体が住民を虐殺しているような場合は、国連が本来の国家に代わって「武力行使」する。つまり、以前のPKOが守っていた「中立性」をかなぐり捨てて、戦時国際法もしくは国際人道法上の紛争当事者になるということ。住民を攻撃する勢力に対しては、たとえ自分たちが攻撃されていなくても武力を行使するのです。
 内政不干渉を原則とする国連の存在の根本的な問題にかかわることですから、非常に長い議論はありましたが、結局のところ国連は「住民保護のためには紛争当事者にもなる」という決意をした。今活動している主要なPKOの筆頭マンデート(任務)は(日本が参加している南スーダンの活動も含めて)「住民保護」です。さらに、2010年に始まったコンゴのPKOでは、武装勢力が住民に危害を加える前に殲滅しろということで、先制攻撃をするための特殊部隊までが承認されました。
 いい悪いは別にして、それが今のPKOの現実です。もちろん、昔と違って停戦合意が破れたからといって撤退するなんていうわけにはいきません。住民を守るために送られているのに、それができないなら最初から来るな、の世界になっているのです。実際、こうした現場に「先進国」が派兵するインセンティブはなくなっています。というか、それを前提に各国連PKOミッションの設計が行われていて、兵を出すのは、その国の内戦が密接に内政に絡んでいる周辺国です。昔であれば、これはPKOの「中立性」を損なうという考え方だったのですが、現在は目的が「住民保護」なので、より既得権益感を持って「真剣に」戦ってくれる国の部隊の方が有効、というふうになっている。つまり、集団安全保障の典型である国連PKOが、極めて集団的自衛権な動機に支えられているのです。
(引用終わり)
 
 
マガジン9 特別企画 2015年6月24日 UP
「安保法制は阻止すべき。けれど、そこで終わらせてはいけない」伊勢崎賢治(その2)

(抜粋引用開始)
 さて、繰り返しになりますが、強調したいのは、今回の一連の安保関連法案が不成立になったとして、それで「よかったよかった」で終わらせてはいけないということ。集団的自衛権の行使容認を現政権が閣議決定したことで、急に「自衛隊の海外での武力行使違憲だ」というのが注目されるようになりましたが、実は日本はそうした違憲行為を、とっくに何度も繰り返してきているのです。
 小泉政権下での自衛隊のインド洋給油作戦は、NATO集団的自衛権の行使の作戦の一部ですし、その2年後のイラク派遣は、世界最強の軍事同盟であるNATOでさえアメリカの開戦の正義に異を唱えたのに、わざわざNATO加盟国でもない日本が「参戦」したという、国際法的には弁明のしようがない集団的自衛権の行使です。これを、日本はすべて特措法でやってきました。
 民主党政権下でも同じ。自民党からの政権交代期に特措法が駆け込み可決されたソマリア沖海賊対策は、そもそもは国連承認の集団安全保障である国際海洋作戦への派遣です。でも特措法の目的として、国民を納得させるために使われたレトリックは「邦人保護」でした。民主党政権はこれを廃案にせず、自衛隊の派遣は今でも続いています。前述の国連PKOについても、「住民の保護のために紛争の当事者になる」ことに変貌した国連PKO、南スーダンへの自衛隊派遣を決めたのは民主党政権のときです。
 今、自衛隊員の自殺率が非常に高いのは、こうした矛盾をすべて自衛隊に押し付けてきたことの結果であって、安倍政権になって急に始まった話ではありません。つまり、「戦争法案反対=特措法で違憲行為ができていた以前の状況に戻す」ではダメなのです。
 現代の戦争は、正規の軍隊同士のものではない「非対称戦」です。これは、国連PKOの世界でも、「非国連総括型」と今回の法案で呼ばれる、グローバルテロリズムを想定した有志連合型の軍事作戦でも同じです。民衆の中に敵がいる。笑顔を見せていた住民が、次の瞬間に撃ってくるかもしれない。これが自衛隊が送られる現場なのです。なのに、彼らの置かれた立場に対して国民の理解も、政府の支えもまったくない。そういう状況が、多くの隊員を自殺に追い込んでいるんです。日本がこのまま、今のような形で武装した自衛隊員を海外に送り続けるのなら、まず憲法を改正してからです。閣議決定や法律を弄ぶだけで済む話ではないのです。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年4月17日
伊勢﨑賢治さんの最近の論考から
2013年10月25日
伊勢﨑賢治さんが日本人に問う“リスクを引き受ける覚悟”(マガ9の動画)
2014年6月18日
「自衛隊を活かす会」呼びかけ人から学ぶ(3)伊勢﨑賢治二さんが提起する“非戦”のリアリズム
2014年7月30日
補遺「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~伊勢﨑賢治氏
2014年9月30日
伊勢﨑賢治さんの講演会が和歌山市で開催されます(11/14)
2014年11月11日
若者憲法集会(6/22)での伊勢﨑賢治さんの講演を紹介します~キーワードは「補完」です
2014年11月15日
『日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門』(伊勢﨑賢治氏著)を読む
2015年1月16日
朝日出版社第二編集部の販売戦略に注目!~伊勢﨑賢治著『本当の戦争の話をしよう―世界の「対立」を仕切る』を1章までWEB上で「立ち読み」する
2015年3月7日
伊勢﨑賢治氏著『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』を読む