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7月13日の意見表明をどう聴いたか~村田晃嗣同志社大学学長vs国民安保法制懇

 今晩(2015年7月14日)配信した「メルマガ金原No.2151」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
7月13日の意見表明をどう聴いたか~村田晃嗣同志社大学学長vs国民安保法制懇

 明日15日にも衆議院安保法制特別委員会(衆議院は「平和安全特別委員会」と略称)で審議中の2法案が採決されるのではと予想される中、作日(7月13日)も様々な動きがありました。
 1つは、衆議院安保法制特別委員会での中央公聴会の開催です。発言した公述人は以下の5人の方々でした。
 
 岡本行夫氏(岡本アソシエイツ代表)
 小澤隆一氏(東京慈恵会医科大学教授)
 木村草太氏(首都大学東京法学系准教授)
 村田晃嗣氏(同志社大学法学部教授)
 山口二郎氏(法政大学法学部教授)

 衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)で視聴できます。
 各公述人の持ち時間は15分以内ということだったため、皆さん早口で原稿を読み上げていますね。5
人の内、野党推薦で集団的自衛権行使を違憲と断じたのは小澤隆一氏、木村草太氏、山口二郎氏でしたが、私が注目したのは村田晃嗣公述人でした。国際政治学者である村田氏の肩書きは、衆議院TVでは「同志社大学法学部教授」となっていましたが、同氏は現在「同志社大学学長」なのです。
 村田晃嗣同志社大学学長が与党推薦の公述人として政府提出法案を擁護する意見を述べたということを知り、私が直ちに想起したのは、今年の3月20日に行われた同志社大学の卒業式において、同大学などを運営する学校法人同志社大谷實総長が述べた「祝辞」の内容でした。
 大谷総長が、同志社大学の卒業生に贈ったは餞(はなむけ)の言葉の一部を引用します。
 
2014年度 同志社大学卒業式 祝辞(学校法人同志社 大谷實総長)
(抜粋引用開始)
 あの悲惨な太平洋戦争の原因の一つであった、全体主義あるいは天皇中心主義といった国や社会のあり方について、深刻に反省し、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」て、全体主義天皇中心主義の国や社会のあり方を180度転換して、「すべて国民は、個人として尊重される」としたのです。憲法13条は、まさに、日本国憲法の根幹を示すものとして規定されたのでし
た。
 ところで、諸君も十分判っていると思いますが、安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがありまして、早晩、改正の動きが具体的になってくるものと予想されますが、そのために、自由民主党自民党憲法草案なるものをまとめて公表するに至りました。その中で、「個人の尊重」という文言は改められて、「人の尊重」となっています。起草委員会の説明ですと、従来の「個人の尊重」という規定は、「個人主義を助長してきた嫌いがあるので改める」というものであります。今日の価値の根源となっている個人主義を、柔らかい形ではありますが、改めようとしているのです。このことは、これまで明確に否定され
てきた全体主義への転換を目指していると言ってよいかと思います。
 先にも申した通り、日本国憲法は、個人主義を正面から認め、人間社会におけるあらゆる価値の根源は、国や社会ではなく、一人一人の個人にあり、国や社会は、何よりも、一人一人の個人を大切にする、あるいは尊重する、といった原理であると考えています。
 自民党草案の他の規定を見ましても、個人よりも社会や秩序優先の考えかたがはっきりと表れており、にわかに賛成できませんが、私は、個人主義こそ民主主義、人権主義、平和主義を支える原点であると考
えています。
 卒業生の皆さんは、遅かれ早かれ憲法改正問題に直面することと存じますが、そのときには、本日の卒業式において、敢えて申し上げた個人主義を思い起こしていただきたいと思います。そして、熟慮に熟慮
を重ねて、最終的に判断して頂きたいと思うのであります。
(引用終わり)
 
 おそらく、この卒業式では村田晃嗣学長が「式辞」を述べたのだろうと思いますが(確認はしていません)、村田学長はこの大谷総長の「祝辞」を一体どういう思いで聴いていたのでしょうかね。
 というようなことを考えながら、村田晃嗣氏の公述人としての意見に耳を傾けました。
 皆さんは(特に同志社大学の学生、卒業生の皆さんは)、どういう感想を持たれるでしょうか。

 私の感想を一言で言えば、「学者は憲法学者だけではない」と大見得を切るのであれば、憲法学者の批判に正面から反論すべきではないのかということですね。反対論者の指摘に一切答えず、自分に都合の良いことをまくしたてるということでは、安倍晋三首相以下の政府・与党の態度と全く一緒です。その意味では、与党の期待に十分応えて使命を果たしたということなのでしょう。
 
村田晃嗣公明党ご推薦【大賛成】戦争法案 7/13公聴会
 

 ところで、昨13日の午後6時半から、日本プレスセンタービル9階において、国民安保法制懇による
緊急記者会見が行われました。
 出席されたのは以下の7名の方々でした。
 
  大森政輔氏(元内閣法制局長官、弁護士)
  樋口陽一氏(東京大学名誉教授、東北大学名誉教授、日本学士院会員)
  長谷部恭男氏(早稲田大学教授)
  小林節氏(慶應義塾大学名誉教授、弁護士)
  柳澤協二氏(元内閣官房副長官補、国際地政学研究所理事長)
  伊勢崎賢治氏(東京外国語大学教授)
  伊藤真氏(弁護士)

 この記者会見の中継動画をご紹介するとともに、各出席者からのコメントを視聴する目安の時間を書いておきます。
 
安保法制に反対する学者ら国民安保法制懇 記者会見 2015.07.13

冒頭~ 伊藤真弁護士
6分~ 大森政輔元内閣法制局長官
31分~ 樋口陽一東京大学名誉教授
40分~ 長谷部恭男早稲田大学教授
40分~ 小林節慶應義塾大学名誉教授
41分~ 柳澤協二元内閣官房副長官補
46分~ 伊勢崎賢治東京外国語大学教授
50分~ 伊藤真弁護士
52分~ 質疑応答
 
 毎日新聞が、要領良く各人の発言を要約してくれていますのでご紹介しておきますが、大森さん以外の6人の皆さんの発言だけを聴くのであれば20分で済みますので、是非動画を直接視聴していただければと思います。
 
毎日新聞 2015年07月13日 21時46分(最終更新 07月14日 11時38分)
安保法案:緊急会見で「暴論」「三重の侮辱」「野蛮な国」

(抜粋引用開始)
 安全保障関連法案が15日にも衆院の委員会で採決される。これを受けて元政府高官や憲法学者らでつくる「国民安保法制懇」のメンバーが13日、東京都内で記者会見し、法案の廃案を求める声明を発表した。この団体は安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制
懇)に対抗し、昨年5月に結成された。
(略)
 大森政輔・元内閣法制局長官 固有の権利として憲法9条が認めている個別的自衛権と違い、集団的自衛権は「他衛権」で本質的に違う。米軍駐留の合憲性を述べた砂川判決を集団的自衛権の根拠として持ち
出すのは暴論中の暴論だ。
 樋口陽一・東京大名誉教授 安保関連法案は「三重の侮辱」だ。内閣法制局が苦心して築いてきた政府見解を覆したのは国会審議への侮辱。砂川判決を持ち出すのは判例への侮辱。首相のポツダム宣言への理
解のなさは歴史への侮辱だ。
 長谷部恭男・早稲田大教授 安保法案が違憲だという点については決着している。何かそこに論争があ
るかのような話があったが、そんなことはない。廃案にされてしかるべきものだ。
 小林節・慶応大名誉教授 国会内外の論戦で安倍政権が一つも答えられる内容を持っていないことが明
らかになった。この怒りを忘れないでほしい。私も語り続けていく。
 柳沢協二・元内閣官房副長官補 当初国民に反対された自衛隊やPKO(国連平和維持活動)が今日支持されているのは、一人も殺していないから。今回の法案は海外で殺し殺される任務を与えるもので、強
行採決しても支持が戻ると考えるのは大間違いだ。
 伊勢崎賢治・東京外語大教授 多国籍軍に加われば、自衛隊は一発も撃たなくても連帯責任を負うこと
になる。憲法に反する。絶対廃案にすべきだ。
 伊藤真弁護士 国民は法案を憲法違反と理解している。日本は法治国家ではなく力で物事を押し通す野
蛮な国になろうとしている。
(引用終わり)
 
 ご紹介した村田晃嗣同志社大学学長の意見と、国民安保法制懇の記者会見に出席した7人の皆さんの意見と、私がどちらを支持しているかなど書くまでもありません。
 しかし、7月13日というこの時期、国会で公述人として政府提出法案擁護の意見を述べるということは、そ
れなりの覚悟をもっての発言でしょう。
 それならそれに相応しい対応を、私たち国民もするのが礼儀に適ったやり方であろうと思います。
 同日午前中の公聴会に出席した小澤隆一氏、木村草太氏、山口二郎氏だけではなく、同日夕刻に開かれた国民安保法制懇緊急記者会見に出席して意見を述べた7人の方々の発言をご紹介し、村田晃嗣氏の意見と対比することをお勧めしたのは、村田氏の公述人としての意見表明に対する最高に礼を尽くした接し方だと思うのですが。