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原発事故子ども被災者支援法基本方針改定(案)パブコメに意見を送ろう(8月8日まで)

 今晩(2015年7月16日)配信した「メルマガ金原No.2153」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
原発事故子ども被災者支援法基本方針改定(案)パブコメに意見を送ろう(8月8日まで)

 去る7月10日、復興庁は、原発事故子ども被災者支援法(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)第5条第5項において準用する同条第3項の規定に基づき、被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針の改定(案)のパブリックコメントを下記のとおり実施すると発表しました。
 
                
実施期間:平成27年7月10日~8月8日(30日間)
実施形態:任意の意見募集
対象文書:被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針改定(案)
参考資料:子ども被災者支援法基本方針改定(案) 概要
 
東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成二十四年六月二十七日法律第四十八号)
(目的)
第一条
 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「東京電力原子力事故」という。)により放出された放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等のため、一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者(以下「被災者」という。)が、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられており、その支援の必要性が生じていること及び当該支援に関し特に子どもへの配慮が求められていることに鑑み、子どもに特に配慮して行う被災者の生活支援等に関する施策(以下「被災者生活支援等施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援等施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条 
被災者生活支援等施策は、東京電力原子力事故による災害の状況、当該災害からの復興等に関する正確な情報の提供が図られつつ、行われなければならない。
2 被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。
3 被災者生活支援等施策は、東京電力原子力事故に係る放射線による外部被ばく及び内部被ばくに伴う被災者の健康上の不安が早期に解消されるよう、最大限の努力がなされるものでなければならない。
4 被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮がなされなければならない。
5 被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、子ども(胎児を含む。)が放射線による健康への影響を受けやすいことを踏まえ、その健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低減及び健康管理に万全を期することを含め、子ども及び妊婦に対して特別の配慮がなされなければならない。
6 被災者生活支援等施策は、東京電力原子力事故に係る放射線による影響が長期間にわたるおそれがあることに鑑み、被災者の支援の必要性が継続する間確実に実施されなければならない。
(基本方針)
第五条
 政府は、第二条の基本理念にのっとり、被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 被災者生活支援等施策の推進に関する基本的方向
二 第八条第一項の支援対象地域に関する事項
三 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項(被災者生活支援等施策の推進に関し必要な計画に関する事項を含む。)
四 前三号に掲げるもののほか、被災者生活支援等施策の推進に関する重要事項
3 政府は、基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
4 政府は、基本方針を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(支援対象地域で生活する被災者への支援)
第八条
 国は、支援対象地域(その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域をいう。以下同じ。)で生活する被災者を支援するため、医療の確保に関する施策、子どもの就学等の援助に関する施策、家庭、学校等における食の安全及び安心の確保に関する施策、放射線量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組の支援に関する施策、自然体験活動等を通じた心身の健康の保持に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 前項に規定する子どもの就学等の援助に関する施策には、学校における学習を中断した子どもに対する補習の実施及び学校における屋外での運動が困難となった子どもに対する屋外での運動の機会の提供が含まれるものとする。
3 第一項に規定する家庭、学校等における食の安全及び安心の確保に関する施策には、学校給食の共同調理場等における放射性物質の検査のための機器の設置に関する支援が含まれるものとする。
4 第一項に規定する放射線量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組には、子どもの保護者等による放射性物質により汚染された土壌等の除染等の措置、学校給食等についての放射性物質の検査その他の取組が含まれるものとし、当該取組の支援に関する施策には、最新の科学的知見に基づき専門的な助言、情報の提供等を行うことができる者の派遣が含まれるものとする。
(支援対象地域以外の地域で生活する被災者への支援)
第九条
 国は、支援対象地域から移動して支援対象地域以外の地域で生活する被災者を支援するため、支援対象地域からの移動の支援に関する施策、移動先における住宅の確保に関する施策、子どもの移動先における学習等の支援に関する施策、移動先における就業の支援に関する施策、移動先の地方公共団体による役務の提供を円滑に受けることができるようにするための施策、支援対象地域の地方公共団体との関係の維持に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。
(支援対象地域以外の地域から帰還する被災者への支援)
第十条 
国は、前条に規定する被災者で当該移動前に居住していた地域に再び居住するもの及びこれに準ずる被災者を支援するため、当該地域への移動の支援に関する施策、当該地域における住宅の確保に関する施策、当該地域における就業の支援に関する施策、当該地域の地方公共団体による役務の提供を円滑に受けることができるようにするための施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。
(避難指示区域から避難している被災者への支援)
第十一条
 国は、政府による避難に係る指示の対象となっている区域から避難している被災者を支援するため、特定原子力事業者(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第三条第一項 の規定により東京電力原子力事故による損害の賠償の責めに任ずべき原子力事業者(同法第二条第三項 に規定する原子力事業者をいう。)をいう。第十九条において同じ。)による損害賠償の支払の促進等資金の確保に関する施策(当該区域における土地等の取扱いに関するものを含む。)、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、前項に規定する被災者で当該避難前に居住していた地域に再び居住するもの及びこれに準ずる被災者を支援するため、前条の施策に準じた施策を講ずるものとする。
 
 原発事故子ども被災者支援法第5条5項に基づく基本方針の変更(改定)についての意見を考える前提としては、現行の基本方針を(特にその不十分さ、不適切さについて)理解する必要があり、さらにそのためには、法律自体の理念を再確認する必要があります。
 そこで、煩をいとわず重要な規定を、引用しました(ここまでくれば、あと少しで全条文を読めますけどね)。
 現行の基本方針は以下のとおり。
 
 
 さて、どのように変更しようとしているのか、その概要を読んでみましょう。これも少し長くなりますが、全文引用します。
 
(引用開始)
子ども被災者支援法 基本方針改定(案) 概要(平成27年7月)
1 改定の趣旨

 集中復興期間が終了し、復興・創生期間が始まるに当たり、今後、どのような施策をどのような方針で行っていくべきか示す必要がある。また、発災から4年が経過し、避難指示区域以外の線量が大幅に低減していることなどの状況もある。他方で、避難先での生活の定着といった状況もある。このため、被災者が自ら居を定め、安心して生活ができるよう、帰還や定住の支援に重点を置く方針を明らかにするため、子ども被災者支援法基本方針(平成25年10月閣議決定)を改定する。
今回が初めての改定となる。
2 改定案の主な内容
(1)支援対象地域について
①変更点
・支援対象地域は、線量が発災時と比べ大幅に低減し、避難する状況にはないことを明記。(現行方針では記載していない。)
②変更しない点
・避難先での生活の定着化により、被災者が帰還又は他の地域への定住を新たに判断するためには、一定の期間を要することから、当面、支援対象地域の縮小はしない。
・また、支援対象地域以外の地域であっても、準支援対象地域として、引き続き、施策ごとに支援すべき地域及び対象者を定めつつ、適切に施策を実施。
※支援対象地域:原発事故発生後、相当な線量が広がっていた「福島県中通り浜通り(避難指示区域等を除く)」を設定。
※準支援対象地域:支援対象地域より広い地域で支援を実施するため、施策ごとの趣旨目的に応じて準支援対象地域を設定。
(2)被災者生活支援等施策に関する基本的な事項について
○変更点
 個別施策を網羅的に列挙することをやめ、以下の特に重要なものについてのみ、記載。
・「住宅の確保」については、福島県が示した災害救助法に基づく応急仮設住宅の提供期間(1年延長した上で、平成29年3月末まで)は、線量の大幅な低減等とも整合的である旨、明記。
政府としては、被災者がいずれかの地域において安心して生活を営むことができるよう、適切に対応。
・「放射線による健康への影響調査、医療の提供等」については、事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進、福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握、福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実、リスクコミュニケーション事業の継続・充実に取り組む。
・各種支援団体の支援により、被災者がいずれかの地域において安心して生活を営むことができるよう、適切に対応。
・その他、地方創生分野の取組など各施策も活用しながら、引き続き必要な施策を行っていく。

(引用終わり)
 
 例えば、「支援対象地域は、線量が発災時と比べ大幅に低減し、避難する状況にはないことを明記。」というが、 「避難する状況にはない」 という断定の根拠が薄弱であるばかりか、被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。」(法第2条2項)という基本理念中の基本理念を真っ向から否定するものではないかと疑われます。
 また、「「住宅の確保」については、福島県が示した災害救助法に基づく応急仮設住宅の提供期間(1年延長した上で、平成29年3月末まで)は、線量の大幅な低減等とも整合的である旨、明記。」としつつ、「政府としては、被災者がいずれかの地域において安心して生活を営むことができるよう、適切に対応。 」と抽象的に書くだけで、「適切に対応」とは具体的にどうするということなのかがさっぱり分からないなどというようなことがただちに思い浮かびます。
 是非、1人でも多くの方にパブリックコメントに意見を送っていただければと思い、長目に引用しました。
 
 なお、国際環境NGO FoE Japanから、以下のような声明が出ていますので参照していただければと思います。
 
声明:「子ども・被災者支援法」基本方針の見直しについて~法を無視した「基本方針」は許されない~(2015年7月10日) 国際環境NGO FoE Japan